第2話

 オータム王国の騎士学校の卒業の日。俺は教師に呼ばれてオータム城の応接間にいた。普通の学生が城に呼ばれるなどまず有り得ないことで、周りからは、国王直属騎士団に入るのではないかともてはやされていた。事実、模擬戦でもトップの成績を残し、二位以下に圧倒的な差をつけて満をじしての卒業だった。


 俺もまんざらでもなく、顔をニヤニヤさせながら、今か今かと呼ばれるのを待っていた。これから広がる栄光の未来に胸躍らせ、鼻歌が自然と出るほどに。


 しばらくすると、メイドの女性が俺を迎えに来て、案内をされた。着いたのは、信じられないことに……、国王の間だった。


 部屋の左右には鎧を着た護衛兵が起立しており、地面には高級な赤い絨毯が玉座に向かって敷かれていた。その先には宝石で装飾された玉座に、国王と王女。国王の前には、こちらからは顔が見えないが、4人の男女が立っていた。


 国王のそばで控えていた大臣は、俺の姿を見付けるや否や、こちらへこいと手招きをした。


「ようやく来たか。待ちわびたぞ。サンドラ君。」


 大臣は、なぜだかとても嬉しそうな顔をしていた。今考えればその意味も理解できたのだが、当時の俺は浮かれており、その表情の真意に思いが至ることはなかった。


「さあさあ、こちらが本日騎士団学校を卒業したばかりの期待の新人、サンドラです。ほら、早く挨拶を!」


 促され、慌てて国王に忠誠の意を示そうとした瞬間、大臣がものすごい剣幕で俺を怒鳴りつけた。


「この、ばっかもーーーん!! お前があいさつするのは、隣にいる4人の方々だろうがあっ??」


 突然の出来事に訳もわからず隣を見ると、なんだかどこかで見たことがある人たちが並んでいた。だが、すぐに名前が出てこない。


 ウンウン唸っていると、また大臣から怒鳴られる。


「こちらは、勇者アーレン殿御一行だ! 街中に設置されている大型水晶画面でよく映像が流れてあるだろう? そんなこともわからんとは……。やり直すか? 入学式からっ?!」


 俺を鋭い目つきで睨みつけた後、大臣は勇者達の方に向き直りにこやかに語りかける。


「申し訳ありません、勇者殿。どうやら緊張して頭が真っ白になっているみたいでして。」


「構いませんよ。サンドラ君だっけ? これからよろしく。」


 そう言われて握手を求められた俺は、ある結論に至った。勇者のパーティに加入する。期待の新人サンドラ誕生。ぶっちゃけ戦闘に関しては、腕に自信があるのだ。


 俺の頭は、相当に、おめでたかったのだ。

 勇者パーティに入るという本当の意味を。この時はまだ理解していなかったから。

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