第545話 (一部加筆)

 造船所の上物が完成した後、老人・・・エドガーさんと言うらしいのだが、そのエドガーさんがリストアップした必要機材や材料の手配を通信機で手配すると、早速続々とザイルバルタンのさえじま商会から物資が届いて来る。

 人材に関しては、エドガーさんに心当たりがあるとの事で、お任せした。


 最初のプロトタイプだが、話し合った結果、全長10mクラスの物にする事にした。


「いやぁ、坊主の口車に乗って、こんなにトントン拍子に何か凄い事にとっとるが、ワシ・・・大丈夫かの?」

 とあまりにも急速に状況が整いすぎて、今更ながらビビり出すエドガーさん。


「ははは、物作りに失敗はつき物ですから、例え10回失敗してもその10回の駄目な部分を11回目に活かせば良い訳ですよ。

 私も魔道具沢山作ってますけど、初っ端からバッチリ動く事なんて希ですよ?

 その積み重ねがノウハウであり、知的財産なんですから。

 一番拙いのは、何回かの失敗を放置して、その理由や原因を考えずに、何となく上手く行く事の方が怖いですね。

 物作りや研究開発ってそう言う物でしょ?」

 と海渡が言うと、


「ははは、全くもってその通りだな。」

 と笑っていた。


「飛行機を作る際もそうでしたけど、強度や舵を切った時の旋回性能や、その時発生する歪みに対する強度とか色々は、やってみないと中々判らないですからね。

 ああ、でも飛行機も船もですが、共通する大事な事がありますね。十分な安全性です。」

 と言うと、頷いていた。



 海渡は、プロトタイプが完成したら、連絡してくれる様にお願いし、ザイルバルタンを後にした。





「ねえ、海渡、今日は何してたの?」

 とフェリンシア達から宮殿に戻った海渡に質問が飛んだ。


「ふふふ、今日はうちの国の最東端のザイルバルタンって所に遊びに行ってたんだよ。

 そこでね・・・~~」

 と今日の事を報告すると、


「えーー!? 海渡だけズルイ!!」

 と3人からブーイングが飛んだ。


 うーん、理不尽なり。 サクッと街に行っちゃったのは自分たちなのにな・・・。


「だって、フェリンシア達はサッサと街に繰り出したよね?

 暇だったから、取りあえず国内の視察をしてたんだよ?」

 と言うと、次に視察行く際には、連れて行けと詰め寄られた。


「わ、判ったから。全部判ったから。」

 と言うと、落ち着いてくれた。


 ちなみにだが、レイアはイジケていた。

「親分も姐さんも、酷いっす・・・。」と。





 夕食の前に、オスカーさんとヨーコさんに、ザイルバルタンの冒険者ギルドの受付嬢から言われた、航空運賃等の旅費の事を相談してみた。


「と言う訳で、一般だと金貨1枚の航空運賃は高いので、ワンダーランドに行けないと言う事なんだよね。どう思う?」

 と海渡が意見を求めると、


「確かに、往復の運賃と王都で観光等のお金を計算すると、金貨3枚ぐらいですか・・・。確かに一般だと難しい金額ですよね。」

 とオスカーさん。


「朝の一便に乗ったとしても、数時間は掛かるから、余裕で半日潰れるし、そうすると、1泊して、翌日遊んで、翌々日に帰る感じですか。

 仕事を長期間休む必要あるから、厳しいですよね。」

 とヨーコさんも同意する。


「まあ、値段だけの話なら、方法はありますが、日数的な物は、どうしようもないですね。」


「大量に輸送と言う意味なら、ヒラメ君を旅客機にしちゃえば、1回の輸送人数は増えるし、最高速も格段に早いから、切り替えるのも手だけど、需要ってどれ位あるかな?」

 と海渡が聞くと、


「需要は計り知れない程あると思いますよ。

 その分、運賃も安く設定出来るでしょうし。

 ただ、そうなると、都市間を結ぶ乗り合いバスとの競合が問題になりそうですね。」

 とオスカーさん。


「今都市間の乗り合いバスって、運賃幾らぐらいにしているの?」

 と聞くと、大体銀貨5~10枚前後らしい。


「ヒラメ君を導入して、運賃を銀貨50枚にすると、乗り合いバスの方に、打撃を与えてしまうかな?」


「ええ、それは確実に打撃を与えるでしょうね。

 しかし、あまり保護ばかりしていても、進歩しなくなるから、ある程度の痛みはしょうがないんじゃないですかね。」

 とオスカーさん。


「じゃあ、今度一回ダスティンさんや、航空部門のジャンセンさんにも打診してみるかな。」

 と言って、会議を終了したのだった。



 まあ、地下鉄を作って、都市間を結ぶって事も考えたんだけど、新たに鉄道や地下鉄を作る手間なんかを考えると・・・飛行機の方が断然手っ取り早いし、既に物(ヒラメ君)もあるからね。

 地上を走る鉄道だと、魔物や盗賊の襲撃も考えないと駄目だし、そんな心配が回避出来る地下鉄となると、トンネル掘りが大変だし・・・第一地下だと景色が楽しめないよねぇ。

 旅の醍醐味の1つである景色が楽しめないと、退屈なだけだもんね。

 となると、やっぱりヒラメ君による大量輸送が一番かな。



 夕食後、地下工房でヒラメ君改を1機試作してみる。

 まあ、それ程大した事はせず、単純に座席やシートベルト、トイレや洗面所を取り付けてみた訳だが……うーん、何か酷くガランとした感じだな。

 元々ヒラメ君内部は、色んな物が輸送出来る様にも考慮しているので、室内の高さは5mぐらいは余裕である。

 その為、コクピットの位置は、床から階段を上って入る様な位置となっている。


 そこで、ヒラメ君の内部を1階部分と2階部分に中間で区切り2階を作ってみた。

 何箇所かに階段を作り、乗り降りがスムーズに行える様にして、2階部分にも座席やトイレ、洗面所を配置した。

 結果、ユッタリとした座席間隔でも、1階と2階合わせて470名の乗客を乗せられる旅客機となった。


 フフフ、明日これをテストして問題なければ、量産して就航させるとしよう。

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