第546話

 そして、翌朝から470名を街で公募してのテストフライトを終日繰り返し、3日後には国内外の運航便に就航させて行った。


 ダスティンさんとの協議の上、各国の軍隊へ納品した機体の下取り交換を行う事にした。

 そして、一般向けの1路線の料金を大幅に値下げした結果、それまで庶民にとっては高嶺の華ならぬの高値の華だった観光旅行は、より身近な存在となり、観光ブームが各国で沸き起こった。

 日本やワンスロット王国だけでなく、大陸中の各都市にまで空港が設置される様になり、コーデリア王国もサルド共和国にも王都と各都市を結ぶ路線が定着した。


 またそれ以外にも航空輸送が盛んになり、各商会は色々な商機を求め、彼方此方に進出したりした。


 その効果で、国の税収入は膨らみ、各国は日本に習い、福祉面を充実させていく。

 そして、学校が各都市や街等に建ち、文盲率が減って行く。


 海渡はまさかこれ程の効果があるとは思っても居なかったので、正直驚いていた程であった。





 時系列は若干前に戻るが、エドガーさんが作成したプロトタイプの漁船は、予想以上に素晴らしく、追加で海渡が網を巻き上げる魔動ウィンチを取り付けたり、魔動魚群レーダーや、ナビを取り付けた程度で完成となった。

 2週間程、漁師の人達にモニタリングして貰ったが、欠点と言う欠点はなく、要望でトイレと巨大冷蔵庫を取り付けた程度だった。


 直ぐに増産を開始して、国からの補助金を入れ、漁業人口を増やし、海に面した漁村へと船を供給して行った。

 結果、空路の発達も後押しし、内陸部の街や村レベルでも海の魚が食べられる様になった。


 そして、これまで殆ど知る人の居なかった『寿司』は、日本国内の彼方此方で食べられる様になり、味噌や醤油もそれに伴って浸透して行った。



 希望の岬ダンジョンの魔族だが、地上を知りたいとの要望から、海渡の好意で神王国日本内の一部の土地、約1都市分のエリアをを割譲し、ハイデバルト魔王国の王都と常設型ゲートで結んだ。

 その結果、魔族にもワンダーランドは大人気で、魔族にも観光旅行がブームとなった。




 日本へ観光する者も増えたが、魔法学校へ留学する者も増え始め、現在の敷地では収まりきれなくなり、王都の横に別途城壁で囲んだ広大な学園都市を新たに造り、そこに魔法学校や各職種の専門学校を設立した。

 その学園都市には、大陸Aや大陸Bからの留学生も入って来て、益々栄えた。



 と、ここまでは、良い面だけだが、人の流出入が盛んになると、決まって増えるのがトラブルや犯罪である。

 帝国時代は最悪だった民度だが、現在の神王国日本では、道徳面の教育も浸透した結果、雲泥の差で民度が上がり、スラムを救済する形で浄化したので、犯罪も減ったのだが、留学して来た別大陸の貴族や王族等によるトラブルは格段に増えてしまった。

 一応、留学して来る際には釘を刺してはいたのだが、それでも生まれ育った長年の選民意識は変わらず、海渡は粛々と日本の法律に則り、処罰を下した。


 また、それとは別に別大陸の犯罪組織も進出して来たりして、結果、残念な事に、海渡や弟子ズの出番が増えたのだった。



 その為、治安維持に特化した警察に相当する部署を新たに設立し、その長官には、マチルダさんと結婚し、一児の父となったロジャーさんを任命した。

 また同時に、裏と言うか、情報部も設立し、その長としてミケを任命した。


 この2つの部署が機能し始めると同時に、一時期増えていた犯罪やトラブルも減少し始め、治安は少しずつ元に戻って行ったのだった。

 但し、他国の貴族や王族等によるトラブルを除く・・・なのだが。


 どうやら、色々とそれらのトラブルの原因を探った所、自国では支配層的な権力を持つ彼ら彼女らは、建国して歴史の浅い日本を格下扱いしており、更に国王である海渡自身が子供である事や、独自の軍隊を持って無い事で、舐めてしまっている事が原因と判明した。


「しかし、バカはどうしようもないですね。

 軍隊を持たず、これだけの偉業を達成してきた理由を推し量れないとは。」

 とオスカーさんが吐き捨てる様に呟いていた。


「まあ、俺が子供ってのは、事実だから、見た目で侮られちゃうんだろうな・・・。

 しょうがないから、一応軍隊作るか? うーん、でも普段は仕事ないんだよねぇ。

 まああるとしたら、スタンピードとか、災害救済とかの対応ぐらいだよな。」

 と海渡が言うと、


「ハハハ、我が国には海渡様と言う最強のワンマンアーミーが居ますからねw」

 と笑うオスカーさん。


「まあ、最近は俺が出るまでも無く、1期生だけで全然イケる感じだもんな。

 それに基本この大陸の国とは仲良しだと思ってるから、侵略とかも無いし。

 やっぱり無駄だよなぁ・・・。」

 と軍隊創設は見送る事にし、無茶をヤラかす奴らは個別に絞め、先方の国へ厳重警告する方向のままとなった。







 そして月日は流れて行き、建国から10年が過ぎた・・・。

 神王国日本は、建国時から比べ、2倍の人口となり、その間には新たな都市が7つ増えた。

 人々の平均寿命は延び、ポーションの普及に伴って、怪我や事故での死亡率も激減した。

 また、通信網も発達し、地球のインターネットに相当するネット網も普及した。


 希望の岬ダンジョンは、攻略が進み、現在48階層まで進んでいる。

 一時期は悩んだが、結局軍隊は作らないままであった。


 海渡は17歳となり、そろそろ周囲からは『ご結婚を!』と言われる事が増えたのが、最大の悩みであった。

 フェリンシアは美しい女性の姿へと変わり、ジャクリーンも歳と実年齢が一致する美人さんとなり、ステファニーさんは相変わらずステファニーさんのままだった。

 他に、ラルク少年は、既に少年と言うより青年となり、身長も海渡とほぼ同じで、頼もしい右腕となってくれた。

 お年頃となった、アンとサニーに結婚をチラチラとせっつかれているらしい。


 海渡が、

「ラルク、そろそろ諦めたら?」

 と言うと、


 決まって、

「兄貴こそ! 兄貴を差し置いて、俺だけ先に結婚とかあり得ないっすから。ね?」

 と逃げるのだが、


「ふむ・・・つまり俺さえ結婚しちゃえば、踏ん切りが付くのか? 本当か?」

 と言うと ハハハと渇いた笑いを漏らしていた。


 実際に17歳と言っても、海渡の中身は38歳である。

 結婚したいとは思うのだが、状況から鑑みて、3人を娶る必要が在る訳で、一夫多妻制のこの世界でも、元々の世界を知る海渡としては、非常に心苦しくもある。

 ちなみに、フェンリルでるフェリンシアも、進化した事で人族との間に子供を設ける事が可能らしい。

 女神様的にも、全然OKと言う事で、寧ろ早く結婚しちゃえとまで言われている程であった。



 そして海渡は決断するのであった。

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