第541話

 異世界12ヵ月と8日目。


 なんだかんだで、時間が掛かり、やっと4日間掛けての移動で、第16階層中央の大ホールへとやって来た。

 あれから、ルート上のホールを全て悉にチェックしたが、ロック・コング程の魔物は出て来なかった。

 なのでこの大ホールには非常に期待しているのだが、通路から確認すると、ホール内は大量の魔物の骨で、床が埋まってしまっていて凄い状態。

 しかし、魔物の反応は、中央に1つしか無く、それも微弱である。


「まあ、何処を目指すべきか? はこのホールを一目見ると判る通り、あそこだよな。」

 と中央に飛び出した7m程の高さのピラミッド型の建造物を指差す海渡。


 魔物の反応があの建造物の頂上以外に無いので、一気に飛んで行く事にした。



「兄貴!これは何っすかね?」

「卵?」

「食べる?」

「ゆで卵?」

「オムレツも美味しいで?」



「うーん、反応はこいつだから、卵だろうな・・・」

 とそんなみんなの反応に答える海渡。


 ピラミッドの天辺のスペースで、目の前には、卵形の物体が鎮座している。

 大きさは、バスケットボールぐらい。

 色は、どぎついピンクをベースに、金色っぽいラメが入ってて、見るからに変な色。


「こんな色の卵、流石に食えないよなぁ・・・」

 と海渡が言うと、フェリンシアが「何で?」と言う雰囲気で首を傾げていた。

 まさか、マジで食う気なのか?


『海渡さん、この卵に魔力を込めてみてください。』

 と突然頭の中に智恵子さんの声が響く。


『ん? どう言う事? 魔力を込めれば良いの? そうすると何か面倒な予感するんだけどな・・・』

 と返すと、


『うふふ、大丈夫ですよ。これは良い物ですから!』

 と自信満々の智恵子さん。


 うーん・・・そうか、そこまでプッシュするって事は、きっと良い物なんだろうな?

 鑑定でも中身が見えないってのが、ちょっと不安なんだけど・・・。


 と思いながら、卵の前に出て、

「悪い、みんな、少し離れてくれる? 魔力を込めると何かが起こるらしいから。」

 と全員を3m程バックさせ、両手の平を卵に合わせ、グングンと魔力を込める。

 海渡の手がポワンと白く光り、やがて卵も同じく白く光り出す。


「こんなもんかな? あれ?手が離れないな・・・。 あ、魔力ドンドン吸われてるしw」

 と魔力を込めるのを止めようとしたのに、手もくっついたままで、魔力もドンドン吸われてしまっている現在。


「ははは。いやぁ~欲張りだなぁ~」

 と苦笑いする海渡。


 いや、ほら、俺の魔力量って、数値化出来ない値だからね。


 ちょっと、展開が面白くなってきたので、逆に積極的にガンガン魔力を大量に込め始める海渡。


 一気に眩しい程の輝きを放ち出す卵。


 ブォーン、ブォーーン


 と地鳴りの様な共鳴音が、卵から漏れ出している。


 そして、30秒ぐらい続けた頃、突然卵に「ピシッ」とヒビが入り始める。

 ん? と海渡も気付き、込める魔力量を絞ろうとしたが、全く絞れず、同じ量が吸われ続けている。


 ちょっと海渡は冷や汗を額にかき始めているのだが、残念ながら両手が塞がっているので、肩で汗を拭う。


「ピシ・・・ピシピシ・・・ビシッ ポコン」

 ととうとう卵が完全に割れ殻の一部が飛んだ。


 すると、魔力の吸い込みが無くなり、強烈に光輝いていた、卵の光が失われた。


「ニャ?」

 と卵の中から、黒い物体が飛び出して来て、海渡の頭の上に飛び乗った。


「わぁっ、何だ? 黒猫だと?」


「「「「「「「「「きゃぁー、可愛いーーー」」」」」」」」」

 と一斉に声を上げる女性陣。


 そう、海渡の頭の上で、当然の様に毛繕いをする黒い物体は、どう見ても黒猫だった。


 ≪ケットシーが従魔となる事を希望しています。テイムにしますか? はい/いいえ≫


 あ! ケットシーか!! なるほど・・・と納得して、『はい』を選択すると、


「ニャァニャナー♪」

 と頭の上で子猫が喜んでいた。


「あ、これ、ケットシーなんだって。従魔になっちゃった。」

 と海渡が言うと、


「「「「「「「「「おーーー!」」」」」」」」」

 とフェリンシア以外の全員が響めいた。


「海渡、その子に名前を付けて上げて! 女の子だから可愛いのを。」

 とフェリンシアが難題を持ちかけて来た。


「え!? 俺がまた付けるのか。頭に浮かんだのは、ニャン太だったんだけど、女の子かぁ~」

 と海渡が呟くと、全員がブーイング。


 頭の上の子猫も、前足で、頭をビシビシと猫パンチで抗議してくる。


「ちょっと待って・・・今考えるから。」

 と慌てて、頭の中で候補を並べ始める海渡。



 まず、猫だからとニャン○○的な発想は、捨て去ろう。

 うむ・・・ケットシーかケイト? いや、ケイトちゃんと被るからダメだな。

 ジジ? あれは雄猫だったし・・・ わぁ~ヤバいな。全然思い浮かばないな。

 黒猫・・・ヤマト は男っぽいし、いっそ、一周して、ナデシコ


「ナデシコ とか?」

 と海渡が恐る恐る、皆さんの意見を伺うと、「ニャ♪」と頭の上から賛同の声が挙がった。


「うん、ナデシコちゃんか、あまり聞き覚え無いけど、良いんじゃないかな?」

 とフェリンシアも賛同。


「よし、じゃあ、ナデシコにしよう。決定!!」

 と海渡もそのまま推しきる。


『ご主人様、ナデシコにゃん。宜しくにゃん♪』

 と頭の中に伝心が入って来た。



 そして、海渡達はその場で猫と戯れ始め、本来の目的である『第17階層への階段探し』をスッカリ忘れてしまうのであった。


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ここのところ、忙しく、アップが飛び飛びになってしまい、申し訳ありません。

m(__)m

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