第495話

 異世界8ヵ月と4日目。


 昨夜心に引っかかっていた3つの村をある程度復旧出来た事で、今朝は気分スッキリ、心軽やかな目覚めである。(まあ、普段通りとも言うが)


 朝練と朝風呂の後、朝食を食べながら本日の予定を話している。


「さて今日はどうしようか?

 一応後で皇帝に連絡取って、可能であれば、4つの村の避難民を送り届けたいとは思ってるんだが。

 単純に送り届けるだけだったら、1時間も掛からないからなぁ。」

と口火を切る海渡。


「じゃあ、早い時間で終わるなら、午後辺りからいよいよ魔宮山脈に行きますか?」

とミケが聞く。


「ふふふ、やっぱそれだよなw」

と海渡が微笑む。




 朝食後、皇帝へ連絡し、農作物はダメだが、畑を含め、ある程度3つの村が復旧出来た事を報告し、午前中なら4つの村へ、避難民を送れる事を伝えると、非常に感謝された。

 早急に各所へと連絡し、救援物資を揃えて、1時間以内に連絡を返してくれる事になった。


 ダスティンさんに連絡をして、

「トルメキア大帝国の帝都支店作ったよーーw」

と言うと、


「はぁ~・・・ しかしまぁ、よくポンポン作れますねww

 店長候補、揃える側から、候補じゃなくなるんで、大変なんですよ?」

と苦笑交じりに抗議された。


「いや、本当にいつも感謝してるからw

 頼りにしてますよ、ダスティンさん!」

と海渡が言うと、


「ふふふ、まあ良いんですけどねw」

と言いながら、30分ぐらいで店長らを送り込んでくれる事となった。


 ノンビリとお茶を飲みながら時間を潰していると、さえじま商会のスタッフ達が到着した。

 海渡は、ここでの経緯や、皇帝の人柄等を店長に説明し、後の事を頼み終えた。



 避難民の輸送の予定が決まるまで、自由行動として、海渡とラルク少年組は街を散策中である。

「昨日の豆料理、美味しかったから、何処かで仕入れたいなぁ。」

と街の中を探すが、当然屋台レベルでは難しいので、通行人に豆料理の美味しい店を聞いて廻り、3つの食堂に絞り込んで交渉し、無事に寸胴1個ずつの豆料理を仕入れる事に成功した。


 昨夜食べた平たいパスタも美味しかったので、乾麺を大量に仕入れておいた。

 その他の食材や、出来合の食料もある程度ストックを増やし、魔宮山脈での不測の事態に備える。


「兄貴、今回結構厳重に用意してるっすね。」

とラルク少年が指摘する。


「ははは、まあ特に何かしなくても、一応ストックは沢山あるから不要っちゃ不要なんだけどね。

 もしかすると、ドラゴンと宴会になるかも知れないじゃん?」

と海渡が言うと、


「え?ドラゴンとですか!!」

と驚かれつつも笑われた。


 そ、そうなのか? ラノベだと「わっはっは!気に入ったぞ、小僧!よし、宴会じゃ!」ってフレーズ多い気がするんだがなぁ・・・と内心思う海渡だった。




 皇帝からの連絡で、

「カイト殿!早速準備させておるのじゃが、ちょっと質問があって先に連絡をさせて貰った。

 避難民の支援物資を揃えているんじゃが、家畜類は一緒に運ぶ事が出来るだろうか?」と。


「ああ、確かに家畜は全滅でしたね。ええ、運べますよ? 何百匹でも。」

と答えると、


「ほう! それは素晴らしい。 じゃあ、11時に南門の外で。」

と言って通信が切れた。


 海渡は全員に伝心で、集合時間と場所を伝え、少し早めに行って許可を得ている空港を作る事にしたのだった。




 完成した、空港の滑走路にヒラメ君0号機と、他に2機程用意して並べ、脇にテーブルと椅子を出して、ノンビリしていると、メンバーが集まって来た。

 話を聞くと、やはり屋台を廻り、買い込んだらしい。


 午前11時前になると、ゾロゾロと避難民がや救援物資、そして家畜の群れがやって来た。家畜を専用の2機に分乗させ、避難民は0号機に乗せた。

 そして、同行する行政官?を乗せて上空へと飛び立ったのだった。


 機内の床に座っている避難民は、実に不安気で暗い顔をしている。

 一部そんなに悲観的になってない一団は、村が無傷と言う話を聞いた村の住民と思われる。


 海渡は、

「えー、皆さん、被害のあった3つの村の方、まあ作物はかなりのダメージが残ってますが、建物や畑自体は復旧出来ていると思うので、そんなに気落ちしないで下さい。

 皇帝陛下も救援物資等の援助を約束してくれている事ですし。ね?」

と管理官達に振ると、


「ええ、そうですよ。こちらのカイト殿が、真っ先に避難民の方々への支援を、今回の討伐の報酬に入れておられるので、支援は大丈夫ですから。」

と言うと、少しだけ避難民の眉間の皺が柔らかくなった気がした。


「あと、せっかくの空の旅ですから、空の気分を味わって頂きます。皆さん、足下をご覧下さい。」

と海渡が言うと、室内全面透過モードに切り替えた。


「「「「「「「「「うぉー!!!!」」」」」」」」」

「「「「「「「「「きゃぁーー!!!!」」」」」」」」」

「「「「「「「「「ひゃー!!!!」」」」」」」」」

と驚きの声が一斉に上がる機内。


「あ、ご安心下さい。床はちゃんとあって、床に映像を映しているだけなのでw」

と海渡が笑いながら言うと、ザワザワとしながらも、徐々に床や壁、天井を見渡して、目をキラキラさせる避難民達。

 どうやら、気晴らしにはなったようだ。


「あ、1つ目の村が見えて来たようですね。」

と海渡が言うと、無事だった村の人達が、


「あ、本当だ! あれ?何だあの塀は?」

と驚きの声を上げている。


「ああ、無防備だったので、一応、念の為に城壁を作って置きました。

 これで次のスタンピードがあっても、空から来ない限りは、大丈夫ですよ。」

と言うと、驚きつつも喜んでいた。

 管理官達は・・・、滅茶苦茶驚いていた。


 避難民を降ろし、門の使い方等を説明すると、次の村へと飛び立った。


 先日戦った戦闘エリアを越えて時、上空から改めて見ると、かなり地形が変わっていて、ちょっと苦笑してしまう海渡。


 避難民らの一部は、

「あれ、あんなクレーターあったかな?」

とか呟いていた。


 そして、2つ目の村へ到着すると、生まれ育った村が無事な事にホッとする村民達。


「カイト様、これ全く昨日出て来る前と同じなんじゃ?」

とこの村の村長が聞いて来た。


「ええ、おそらく建物なんかは復旧出来て居ると思うんですが、農作物は良い所50~60%ぐらいしか戻せませんでした。

 まあ、残りの作物の育ちはかなり良いと思うのですが、収穫が半分に減るのは、残念ですが諦めて下さい。」

と言うと、逆に大いに感謝された。


「いやいや、命を救って頂き、更に諦めていた建物も農作物も・・・半分でも残れば御の字です。ありがとうございました。」

と村民一同からお礼を頂く。


 そして、最後の4つ目の村まで人員の輸送が完了し、海渡達の役目は完了した。


 4つ目の村を飛び立った後、進路を念願の魔宮山脈へとセットし、全員で昼食を取る。

 食事中の話題は、勿論ドラゴンである。


 この世界にある絵本とかは、高価な物なので、庶民には普及しておらず、本1冊でこの値段?と日本人の海渡が驚いてしまう様な値段である。

 なので、ここに居るジャクリーンさん以外の全員は、絵本でさえドラゴンの姿を見た事は無い。


 海渡が予想する姿のイラストを描いて、ジャクリーンさんに見せると、

「あら、ダーリンは絵本見た事あるんですね?」

と言っていたので、どうやら、ここの世界のドラゴンは西洋風の姿って事で合っているっぽい。


「話の分かる子かwww」

と海渡がニヤリと笑いながら呟く。


「あ、もしドラゴン見ても、いきなり攻撃仕掛けちゃダメだからね? 人の言葉を話せるらしいし。」

と海渡が言うと、ジャクリーンさんだけが「そんなぁー・・・」と言いながらシュンとしていたww


 まったく、どれだけ、戦闘民族だよww

 女神様から直接聞いただろ!?

 先日神の実を食べたんだから、君は既に人類最強の10人の一人なんだよ? と心の中で突っ込む海渡だった。

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