第496話

 そして、ついにやって来ました、魔宮山脈!!!


 今、魔宮山脈の麓に着陸し、聳え立つ山々を遠目に眺めています。


「しかし、地図上では確認していたけど、こうして見ると、これを歩きで制覇しようとした奴って、バカだよな。

 これ、無理ゲーも良いところじゃん。

 軽く、2000m級の山が麓にゴロゴロあって、中心部分は3000m級だろ? 普通に麓から見た段階で、無理だよなぁ・・・。」

と呟く海渡。


「まあ、そんな私達には、自分で飛ぶ事も、飛行機で向かう事も出来る訳ですが、どうします?」

とミケが聞いて来た。


「流石に徒歩は無しだから、適当に自前で飛んで行こうと思う。」

と海渡が言うと、


「「「「「「「「「「イエス・マイ・ロード」」」」」」」」」」





 と言う事で、現在11人編隊で空を飛び、美味しい魔物を発見すると、殲滅する感じで進んでいる所。


 そして、海渡はこの日一番の衝撃を受ける。


「ね!ちょっとストップ!!」

と海渡が全員に制止を掛けて、眼下を指さす。


「ねぇ、あれ魔物だよね?」

と海渡が指す先には、岩場の上にゴロリと横たわり、肩肘を枕にしていて、片手でニンジン?を食べて居る、まるで日曜の自宅の居間でTVを見ている日曜のオッサンの様な、真っ白な巨大ウサギww

 時々、お尻を掻いたりしてるし・・・。

 実際実は着ぐるみで、中身がオッサンと言われても違和感が無い。


「初めて見ました!」

と興奮するジャクリーンさん。


 全長約3mで腹がタプッっとしている、『ジャイアント・ラビット』と言う魔物らしい。

 しかも、美味いらしいが、殆どお目に掛かる事が無く、その毛皮は滅茶滅茶軽くて暖かく、市場に出れば、凄い金額になるらしい。


 しかし、何だろう・・・滅茶滅茶オッサン臭いあの態度w

 女性陣は、味良し毛皮良しって言う事で、殺る気満々なんだが・・・


「なあ、何かちょっと切ないから、ソッとしておいてやらないか?」

と海渡が言うと、


「「「「「「「「「えぇーー!?」」」」」」」」」

と女性陣のブーイングが。


「だって、何か後ろ姿に中年のオッサンの哀愁が漂っているだよ?

 なんか、ちょっと人生に疲れた感じの哀愁だよ?

 な?お願いだから、ソッと生きさせてやって!!」

と海渡が力説し、何とか女性陣の魔の手から回避させる事が出来たのだったw

 ちなみに、ラルク少年にもオッサン臭さがウケたらしく、バカ笑いしながらも、海渡を援護していた。


 何回か、休憩も兼ねて魔物を討伐しつつ、また移動をする。

 そして、現在2000m級の山を3つ越えた。

 まあ、律儀に各山の山頂を越える必要は無いので、適当に高度が低めのルートを選びつつ中央を目指して飛んで行く。

 何故って? それは寒いし、美味しい茸も面白い魔物も居なくなるから。

 5月後半と言えど、上空に行けば行く程、寒いのである。


 と言う訳で、割と木々が普通に生えてる辺りを飛びながら奥へと向かっている。



 魔物はギルドマスターが言っていた奴らも居たが、先程のオッサン・ウサギじゃなくて、『ジャイアント・ラビット』みたいに聞いて無い物、見た事無い物も結構沢山居た。

 まあ、あれだけ面白いキャラの魔物は今の所居ないのだがw



 午後4時を過ぎた辺りで海渡が切り出す。


「なあ、これさ、もうちょっと先に行った所で、何処か拠点作って置こうか? 秘密基地っぽいのを。」

と提案してみると、


「ああ、それ凄く良いじゃないですか!」

とフェリンシアが食い付いて来た。


「うちも、賛成や! どうせなら、景色のええ所にしよや!」

とステファニーさん。


「ふふふ、流石ダーリンです。魔宮山脈に拠点作るとか、確実に人類初ですよ!」

とジャクリーンさん。


 弟子ズ達も『秘密基地』の単語にノリノリである。


「じゃあ、立地の良さそうな所を各自広がって進んで見つけたら、伝心入れてね!」

と指示して、全員1km程度間隔を開けて進む事にした。


 飛び始めて20分ぐらいすると、

『ボス! こちらに湖を発見しました。

 湖の畔には多少の開けた部分もあります。』

 とサニーからの伝心が入り、全員サニーの所へと合流した。



「おお、ここは良いな。 なるほど、ここだけいわの堅い岩の様な地面で200mぐらいのスペースが空いてるのか。」


 岩盤と言うか、大きな岩が埋まっている様な感じで、目の前の湖に対し、ちょっとした高台となっている。

 海渡は頭の中で、別荘を建てた後の外壁の位置と高さを思案していた。

 余り高い城壁にすると、せっかくの風景が楽しめなくなるし、かと言って、低くすると、魔物入り放題になってしまう。

 じゃあ、湖ごと城壁で囲めとかは、生態系に影響するし、塀に囲まれた湖を見ても楽しくはない。

 湖と周りの森林を含め、雰囲気としては、昔見た日本の十和田湖の夕暮れ時に似ている。


「よし、決めた! この丘の部分を取り囲む様に高さ5mぐらいの城壁にして、風景を優先するか。

 まあ、最悪魔物が入った際は、後日考えるとして・・・。

 じゃあ、弟子ズは城壁高さ5mで幅は・・・1.5mぐらいで良いかな。

 城門は湖側で、一応、真裏にも通用門ぐらい作るか。

 俺は、こっちで建物建てるから。」

と指示をだし、丘の頂上辺りに高さ6mの土台をガチガチに固めて作成し、その上に別荘を設置した。


 フェリンシア達にお願いして、別荘の土台の中をくりぬいて、地下室を2階分作成して貰い、海渡は別荘を改造して、オープンテラスを廻りに作成する。

 素材は、トレントで、ウッドデッキ風。


 門を作成完了した弟子ズが戻って来て、

「ボス! このテラス、素敵じゃないですか!」

と褒められたw


 狙った訳では無いのだが、テラスから湖側に墜ちる夕日が映えて、最高の景色となる。

 夕日を映し、真っ赤に染まった湖と木々の影が、幻想的な雰囲気を作り上げる。


 ここで、リゾートホテルやったら、ウケるんじゃね? とちょっと下世話な事を考えてしまう海渡だった。




 完全に日が落ちて、夜空に星が輝く頃には、月明かりは眩しい程に森を照らし、更なる感動を覚えたのだが、問題点があった。

 どうやら、夜中に行動する、夜型の魔物らが近辺を徘徊して廻り、水を飲みに来た魔物やそれを狙う魔物らの、壮絶なバトルの騒音や、断末魔の鳴き声が凄く、「ウキー!」とか、「グァシャー!」とか、「クキャイーン」とか・・・とにかく五月蠅いのである。

 しかも、元の世界の日本では、夜になると、光りに集まる虫が居たが、ここでは昆虫型のデカくてグロい魔物や飛んで来るのである。

 全長1mを超える空飛ぶGとか、鳥肌ものである。


 流石の海渡も、顔を引き攣らせながら、慌てて結界を発動し、ついでに建物全体に遮音シールドも展開したのであった。

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