第491話

 中庭にヒラメ君0号機を取り出し、一路スタンピードの最前線を目指す海渡達だが・・・。

 現在、弟子ズを交え、ソファーとテーブルを出して、のんびり寛ぎながら、早めの昼食を頂いて居る所である。


「カイト殿!何ですか、この激ウマな物は!!!」

とご飯粒を飛ばしながら吠えているドレイクさん28歳、独身である。


「ちょっ!汚いなぁ・・・ご飯粒飛んでるから!!!」

と慌てて自分のカツ丼に掌を被せて、ガードする海渡。


 そんな2人を見て、「ギャハハ!」と爆笑するキャロラインさん25歳独身。


「喋る時は、ちゃんと飲み込んでから喋って下さいよ。

 これはカツ丼と言う食べ物ですね。

 オークの肉を衣を付けて、油でサクッと揚げ、割り下と玉葱のスライスと一緒に煮て溶き卵をフワッと掛けた食べ物ですね。

 まあ、気に入ったのであれば、この討伐の報酬で拠点の敷地が貰えたら、当方のレストランとかで食べられますよ?

 あとは、従業員の食事にもよく出てますしw

 戦いの前にはゲン担ぎで、『カツ』は欠かせないかなとねw」

と海渡が説明していると、黙って丼を差し出して来た。


 どうやら、お替わりが欲しいらしい・・・。


 そんな2人のやり取りを見て、ラルク少年も腹を抱えて爆笑していた。

「食べてる時に笑わすのは、反則っすから!」と。


「しかし、カイト殿、こうやって美味しい食事を頂いていると、どうしても、ここがスタンピードで爆走している魔物の真上とは思えないぐらい平和ですね。」

とキャロラインさんがシミジミと語っている。



 海渡達は、作戦を立て、その下準備をして、現在その罠に魔物らが嵌まるまで、待機中なのである。

 無闇に先頭集団に攻撃を仕掛けると、魔物達がバラバラに分散する可能性がある。

 そこで、地形を生かし、予めにカタカナの「ハ」の字を反対にした様な、頑丈な高さ15m、幅3mの塀を作成したのである。

 その塀の長さは各サイド、20kmで徐々に先細りになり、最後の200mの隙間には海渡達が、待ち構えると言う無茶苦茶力押しの作戦である。


 最初に機上でこの作戦を聞いた時、余りにもあんまりな作戦に、動向組の2人はアングリと口を開けていた。

 そして、弟子達が、上空100mでホバリングしている機上から、一斉に飛び出して、5分も掛からずにハの字の塀を作り上げて、戻って来た時には、キャロラインさんが驚いて腰を抜かしていた。


 そして、

「な、な、なんと、力業と言うか、魔力押しと言うか・・・こんなデタラメな魔法の使い方も、作戦も聞いた事が無い」

とブツブツ呟いていた。


「しかし、カイト殿、あの塀は魔物の体当たりで壊れないだろうか? 何処かが壊れると、そこから分散する可能性が。」

とドレイクさんが塀の強度を心配していたので、


「ああ、あの塀は、魔法でチャッチャと作った割に、かなり頑丈でしてね。こちらの計算では、ワイバーンの全力の体当たりやブレスでも壊れないと言うお墨付きです。(By 智恵子さん)」

と海渡が言うと、


「マジですか!」

と驚きの声を上げていた。


「ん?じゃああの塀、もしかして、帝都の城壁より丈夫なんじゃ?」

とキャロラインさんも呟いていた。


 まあ、そんな訳で、魔物がポイントに辿り着くまでの間、先に飯食って一休みと言う事になったのである。


「兄貴!これ俺らだけでやっちゃうと、二期生、三期生にズルイって、恨まれないっすかね?

 だって、これだけあれば、入れ食いっすよ?www」

とラルク少年が大爆笑していると、


「これだけ気持ち良く殲滅出来るって、素晴らしい!!」

とプリシラも目の前で両手を合わせて目をキラキラさせている。


「私も、一度やってみたかった戦法があるんですよ。ガトリングガンを両肩に背負って、撃ちっぱなし!」

と目をキラキラさせながら物騒な事を言うアン。


「キャハ♪ それ面白そう! 私もやりたーーい!」

とサニー。


「あっしも、久々の食い放題で、ワクワクするっす。」

とレイア。


「私は、フェリンシア姐さんみたいに、二刀流で舞う様な無双かなw」

とミケ。


「じゃあ、私は両手にハンドガンでレベルMaxのよる無双かな。」

とキャス。


「うーん、私は普段使わない様な、広範囲殲滅型の魔法で殺りたいなぁ!

 あ!あと、高高度からの高熱ファイヤーボール同時200発のループ発動で、題して『火の雨地獄』作戦!!」

とパトリシア。


 そんな弟子ズの様子を見てて、驚くを通り越して、只呆然とするドレイクさんとキャロラインさん。

 それもその筈、伝令による凶報から今朝までは、帝国滅亡の危機と、王都を破棄して逃げるぐらいしか助かる手段が無い状態だった訳だからである。

 しかしながら、数万人と言われる帝都の住民を一斉に避難させる手段も、籠城して防ぎきる手立ても、決定的な物が無く、王城に立てこもるにしても、帝都民の90%は絶望と言う予測がされていたのだ。

 勿論、城壁の結界はあるが、一時的な物で、帝都中の魔石を掻き集めても、精々最長で1時間が限界であった。

 しかも、結界は、無負荷の場合で1時間、攻撃があった場合、その負荷に比例して、必要となる魔力が増大する。つまり、攻撃を実質的に防げるのは、保って30分未満と推測された。


 しかし、降って湧いた様な少年のプランで、一縷の望みが湧き上がった。

しかも、その決戦の場に赴く11名は、まるでピクニックにでも行くかの様な、和気藹々としている。

 戦法も至ってシンプルで、しかも殲滅する事に特化した様な力業。

 驚くなと言う方が無理であった。



「おいおい、お前ら、どうでも良いけど、あまり地形は変えるなよ?

 あと、気象が極端に荒れる攻撃は禁止な!!

 俺もあまり人の事は言えないんだけどなwww」

と海渡が言うと全員が大爆笑していた。


「兄貴、砂漠で丸一日砂嵐にしちゃったんでしたっけ?ww」

とラルク少年が突っ込むと、


 フェリンシアとステファニーさん、ジャクリーンさんが腹を抱えて転げ廻っていた。


「なんか、我々と温度差がありすぎる気が・・・」

とキャロラインさんが、呟いて居たのだった。

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