第490話
南門の前にヒラメ君0号機が着陸すると、南門から、騎士5名が率いる20人程の衛兵らが飛び出して来た。
が、リヤハッチから、騎士とローブの女性を先頭に、ゾロゾロと4つの村の避難民が降りて来るのを見て、
「た、ドレイク隊長!! あ、魔法師団長もご一緒でしたか。」
と駆けつけた騎士が敬礼しながら、出迎えてくれた。
「この避難民達の誘導を頼む。」
ドレイク隊長が、駆けつけた騎士や兵士に命令し、キビキビと誘導して行く。
「カイト殿、この度は、帝国民をお救い頂き忝い。
色々と聞きたい事もある故、大変申し訳ないのだが、城までご同行願えないだろうか?」
とドレイク隊長にお願いされ、
「ええ、対策を取らねばなりませんよね。ご協力しますよw
あ、その前に出来ましたら、ギルドの方で完了してからでも良いですかね?
まだ依頼の途中なんで。時間は掛かりませんから。」
と海渡が言うと、
「いや、出来れば先に・・・いや、まあ城までの途中にギルドがあるから、寄って行く感じにするか。」
と呟き、了承してくれたのだった。
隊長が馬車を用意しようとしていたが、時間が勿体ないので、断りつつ、自動車を出して、3台に分乗して南門を出発したのだった。
「さっきの空飛ぶ乗り物と言い、この馬の無い馬車と言い・・・夢を見ているのかと思ってしまうな。」
とドレイク隊長が呟く。
ローブの女性は、目を輝かせつつ、海渡に色々と質問を浴びせている。
「カイト殿! これはどんな機能のスイッチなんでしょうか?」等々。
あまりの質問攻めに海渡は苦笑い状態。
「これこれ、キャロライン殿、そんなに質問攻めにすると、操縦が出来ないではないかw」
とドレイク隊長が度々止めるも、止まらなかったww
この騎士・・・ドレイク隊長ことジョスティ・フォン・ドレイクさんは、近衛騎士団の第二隊の隊長だそうで。
そして、このローブの女性は、キャロライン・フォン・ラエストロさん、御年25歳独身で魔法師団の団長らしい。
何で歳や独身かまでを知ったか?と言うと、
「ねえ、カイト殿!良かったら、うちの子にならない? おねーさんの家は、伯爵家なんだけどね、一人っ子で跡継ぎが私しか居ないんだよね。
私、結婚願望全くないし、うちの養子になってくれれば、丸っとカイト殿の物になっちゃうよ? どう? ねえ、どう?」
と執拗に養子を奨めてくるキャロライン魔法師団長に対し、ドレイクさんが、
「こらこら、カイト殿が困っておられるだろ! もう25歳なんだから、諦めて、婿を取れw
第一、カイト殿のご両親がそれを許さないだろ?」
と諫める会話からなんだが。
海渡は、孤児と言う設定はここでは言うべきではないと、察して取りあえず渇いた笑いを返すだけだった。
どうやら、この2人は幼馴染みらしく、ドレイクさんが28歳で、やはり独身らしい。
この世界の人族では、男性23歳ぐらい、女性21歳ぐらいで、行き遅れ認定される。
まあ成人年齢が15歳と言う事で、大体15歳~18歳ぐらいまでに『行き先』等が決まるケースが多いらしい。
男性の結婚年齢は大体平均で19歳前後、女性は17歳前後と、現代の日本で考えると、早過ぎない?と思われるだろうが、成人年齢15歳で、早い者だと12歳ぐらいから職についていたりするので、18歳で、ソコソコの収入基盤が出来上がっているのである。
更に貴族や王族となると、年齢層が2歳程低くなり、幼い頃から、婚約者が居るのが普通と言う感じ。
つまり、28歳のドレイクさんも、25歳のキャロラインさんも、どっちも行き遅れと言う事になるのだがw
やっと冒険者ギルドに辿り着き、ドレイクさんが着いて来てくれたお陰で、サクサクと依頼達成のサインを貰えた。
冒険者ギルドの方でも、現在の状況を把握しており、届いた荷物を確認したギルドマスターは、
「これがもう1週間早く各地にあれば・・・」
と嘆いていた。
そんな嘆きを聞きつつも、ドレイクさんに半ば攫われる様に、自動車に押し込められ、宮殿へと急かされるのであった。
宮殿の前に辿り着くと、初めて見る自動車に槍を構える衛兵達であったが、中からドレイクさんとキャロラインさんが声を掛けて、サクサクと門を開けてくれた。
そして今、会議室で皇帝や大臣、将軍達に囲まれて、会議をする事に。
前評判では、賢い皇帝と聞いているので、変な事態にはならないだろうとは思うが・・・。
「この度は、我が帝国民の救助に貢献してくれたらしいな。感謝する。」
と素直に感謝の言葉を述べる皇帝。
年の頃は、40代前半で、引き締まった体に日焼けした顔、若干白髪が交じったブロンドヘアーの良いオヤジ風。
しかし、眼光は鋭く、如何にも海千山千をくぐり抜けた風格があった。
まあ、眼光は鋭いのだが、この事態でかなりお疲れのご様子。
「ええ、まあ、乗りかかった船でしたので。
ああ、申し遅れました。私、冒険者でもありますが、別の大陸では、神王国日本と言う国の王をやっております、カイト・サエジマと申します。
で、一応こちらをご覧下さい。」
と挨拶もソコソコに取り出した大型のガラスディスプレイを指さしつつ、ドローンからのデータを映し出した。
「「「「「「「「おおーー!!!」」」」」」」」
と驚きの声を上げるこの国のトップ達。
「これが現時点での魔物の場所と数です。赤い点が魔物を表してますが・・・もうビッシリで真っ赤っかですね。
一応、数は・・・ああ、3万4532匹となってますね。」
と海渡が言うと、魔物の多さと、それを正確に把握している海渡の両方に驚きの声が上がっていた。
「陛下、こ、これでは、全軍を挙げて戦ったとしても、勝ち目は薄いかと・・・。陛下残念ではありますが、まずは先に避難されるべきかと。」
と将軍が進言していた。
「馬鹿者!帝国民を置いて我だけが逃げる等あり得ん!! もし避難するなら、我が一番最後となる。それが皇帝と言う物だろう?」
と皇帝が窘めていた。
ふむ。前評判通り、賢い皇帝の様で安心したよ。
「ああ、発言の許可を頂けますか? 横からで申し訳ないのですが、我々に指名依頼を冒険者ギルドに出して頂ければ、殲滅して来ますが?」
と海渡が言うと、
「「「「「「「「えぇっ?」」」」」」」」
と会議室の全員が声を揃えた。
「カイト殿、すまぬが、意味が理解出来ぬ。それはその3万4000匹余りの魔物を、カイト殿達だけで始末してくれると言う意味だろうか?」
と皇帝が聞き返してきた。
「ええ、その通りです。以前・・・まあ私の国のある大陸の話ですが、とある国が隷属した魔物を使って計画的なスタンピードを起こしましてね、ヒュドラやキング種を含む2万匹強の魔物を嗾けて来た事があったんですよ。
それを指名依頼を受けて、殲滅しました。こちらのフェリンシアと2人で。」
と説明すると、フェリンシアの頭の上のレイアが、
「あっしが、その時の証人になるっすよ!」
とここぞとばかりに、ドヤ顔で話だす、レイア。
「「「「「「「「えぇっ? 亀?」」」」」」」」
とこれまたいつものパターンっすかw
「あ、初めまして、クィーン・ベヒモスのレイアっす。そのヒュドラとの戦いを見て、速攻で親分の舎弟になったっす。」
とレイアが説明すると、
「「「「「「「「ベヒモスっ!!!!」」」」」」」」
と絶句していた。
暫く唖然としていたが、いち早く復活した皇帝が、
「何か、もう色々有りすぎて、何処から突っ込んで良いのか判らんなwww
カイト殿、そして皆さん、申し訳無いが、指名依頼の方宜しくお願いする!」
と頭を下げる皇帝。
「して、その指名依頼の報酬じゃが・・・これはどうしたら良い物かのう?」
と皇帝サイドが頭を捻っている。
まあ、それはそうだろう。討伐対象が3万4000匹の魔物それもキング種を含む大群である。
通常であれば、100匹ぐらいのオークの集落1つを殲滅する場合、Aランク以上のパーティーが20組みぐらいでも難しいとされている。
出来ればSランクを混ぜた構成にしたいところなのだ。
ましてや、今回の討伐依頼はそんなオークの集落340個を一気に相手する様な物。
1つの集落を壊滅させる報酬が、全部で白金貨20枚として考えると、340×20で黒金貨68毎相当となるが、これが難しい所で、戦力的な物は単純なかけ算にはならないのである。
今回全ての魔物がオークやその上位種と言う訳ではなく、ゴブリンやその上位種も含まれるだろうが、昆虫系の嫌らしい麻痺を伴う魔物や、バジリスクの様な石化を伴う物や、中にはアンデット系も含まれ、色々な魔物が混じっていて、更に難易度を上げている。
冒険者が通常ダンジョンの階層を攻略する場合だが、事前に情報を得て、それに似合った装備や準備を行うのだが、それら全部を一度に相手するとなると、ほぼ無理ゲーも良いところである。
そんな訳で、黒金貨100枚でも安すぎると判断が出来る。
更に、これを国軍が全滅覚悟で対応した場合、現状帝都に駐在している国軍の戦力3000名+騎士500名の殆どは、無事に帰られないだろう。
その人的被害は黒金貨1000枚を上回る。(建造物や物質的な被害は除く)
「ああ、報酬でお悩みの様なので、こう言うのは如何でしょうか?
前にお伝えしたように、当方は、商会もやっておりまして、これまでこちらの各国の首都に拠点を作らせて頂いてまして。
で、こちらの帝都にも、商業に向いた場所に、そうですねぇ・・・150~200m×100mぐらいの敷地が頂ければ、それで。
尤も、敷地が余ってないようでしたら、難しい所ではありますけど。
あ、あとこちらの帝都の南門の外に、空港を建設させて頂くと言うのもお願いしたいです。
あと、今回被害が出た集落の復旧への支援や、被災者への支援を余った分でお願いする・・・と言う感じで如何ですかね?」
と提案してみた。
「なんと。本当にそんな事で良いのか? 大臣、帝都の商業地区にカイト殿の言われる様な敷地はあるか?」
と皇帝が、尋ねた。
「はい、たしか3箇所程該当する所があるかと記憶します。」
と大臣が答える。
「ふむ。では、話は纏まったと解釈して、早急に現場に向かいますね。あ・・・魔物増えましたね。35000超えちゃった。
これ、通り道の魔物がドンドン合流しているのかなぁ?
あ、それと、一応念の為に、こちらの通信機を皇帝陛下にお渡ししておきますね。
何か不足の事態があった場合は、連絡して判断を仰ぎますので。」
と言って、通信機を渡し、使い方を伝授した。
そして海渡達は、部屋を出ようとしたのだが、不意に呼び止められたのだった。
ドレイクさんと、キャロラインさんである。
「カイト殿、大変厚かましい願いで恐縮なのですが、どうか、我々だけでも隅の方で良いので、お連れ頂けないだろうか?」
「少なくとも我らの国の一大事です。絶対に邪魔は致しませんし、足を引っ張らない様に隅の方で見守るだけでも構わないので、ご一緒させて頂けませんでしょうか?」
と2人に縋る様にお願いされてしまった。
海渡は、皇帝の方をチラリと確認すると、
「カイト殿、誠に申し訳無いのだが、その者らの願い聞いて頂けないだろうか?」
とこちらもお願いする方向らしい・・・。
うむ・・・困ったな。
人目があると、一応自重する必要あるしなぁ。
まあ、しかしこの際、余所の大陸だし・・・
「ええ、判りました。お二人の熱意に負けました。
しかし、下手に前に出て来られると、攻撃に巻き込まれ無いとも限らないので、絶対にこちらの指示に従って頂く事が条件です。
もしもの際ですが、私は貴方方お二人の命より、我々の仲間の命を優先する事を、ご了承下さい。」
と海渡が言うと、2人共凄く嬉しそうに、ウンウンと頷いていた。
「あ、あと皇帝陛下、急を要するので、申し訳無いですが、こちらの宮殿の中庭より、飛行機で飛び立つ事をお許し願えますか?」
と聞くと、問題ないとの事。
海渡は弟子ズの方に振り返り、
「じゃあ、みんな、気合い入れて行くぞ!」
と号令を掛けた。
フェリンシアら3名と、弟子ズ7名が一斉に跪き、胸を手にして声を揃えた。
「「「「「「「「「「イエス・マイ・ロード」」」」」」」」」」
そして、海渡ら11名+1匹+行き遅れコンビは、颯爽と会議室を後にしたのだった。
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