第428話
「で、話は戻るのですが、このバカ達、やっぱり骨身に浸みさせて、最終的には滅ぼして置かないとヤバいと思うのですが、どうです?」
と海渡がエリーゼン王国の王城の会議室で話す。
「ああ、確かに。我が妹をあんな目で見ている奴を生かして置くとかは考えられんな・・・。」
と怒りでプルプル震えるアーサーさん。
「ああ・・・思い出しただけでも、鳥肌がでちゃう・・・。 除菌よ! 浄化よ! 殲滅しないと!!!」
と涙目でワナワナしながら叫ぶジャクリーンさん。
気持ちの判るフェリンシアら女性陣が、ジャクリーンさんを抱きしめて、優しく撫でている。
確かに、あれは本当にキモかったな・・・。
「ちなみに、エストニアってまともな貴族や領主って居るのかな? 上があれだと、どうなんだろうか?」
と海渡が聞くと、
「中にはまともな貴族も居ると言う調査結果はあるんですが、そう言う貴族は力を持ってなくて、自分の領土だけは真面目に運営しているとの事だった。
まあ、滅ぼすとしても、まともな領主達は出来れば残したいんだけどねぇ・・・」
とアーサーさん。
「ふむ。じゃあこっちでも一回調べますかね。」
と海渡。
「どうやって?」
とアーサーさんが聞いてきた。
「まあ、この際だから、分散して自分らの足で回るのが早いかなぁ・・・。まあ領都やその周辺の集落を見れば、大体どんな領主か判るんじゃ無いかと。」
と海渡が答えると、
「なあ、カイト君。うちよりは狭いとは言え、エストニアにだって、大小全部で34都市あるよ? 後は領地を持たない貴族が騎士号を除いて70家程だったかな。
それを全部調べるとなると、相当な時間が掛かると思うんだが・・・。」
とアーサーさん。
「まあ、そこら辺は色々と考えてみます。まあ最悪、全部にドローンで情報収集させて、AIで判断させるって手もありますし。」
と海渡が言うと、
「ん? そのエーアイって何だい?」
と聞いて来た。
「ああ、AIってのは、人工知能と言うか、条件で絞り込んで善か悪かを判定させる・・・まあ魔道具だと考えて下さい。」
と海渡が苦しい説明をする。
ん?何故苦しいか? まあ、実際の所、統計学を使って判断するらしいのだが、専門外だから、詳しく説明しろって言われても・・・って話なんだがなw
「何か良く判らないけど、色々考えつくものだなwww やっぱ凄いよw」
と考えるのを放棄した!って感じだったww
「まあ、俺も今回はちょっと頭に来てるので、この救いがたいバカに、最上級の絶望と、生まれて来た事を後悔させながら、引導を渡してやりたいですよねw」
と海渡が黒い顔をして言い放つと・・・何故かジャクリーンさんから、
「ダーリン・・・ありがとう!」
って抱きつかれてしまった。 うーーん、何に??
結局、アーサーさんからの申し出もあり、海渡もその理由に納得し、作戦を幾つかのパターン用意して、臨機応変に対応する方針にした。
アーサーさん曰く、
「カイト君、君の申し出は非常に嬉しいし、ありがたいと思うよ。でも最終的に戦うべきは、やはり、我が国の兵士でないとダメだと思うんだよ。
全てをおんぶに抱っこで、依存しっぱなしってのは、やっぱり筋が違うと思うんだよね。
勿論是非とも協力して欲しいし、宛てにもさせて貰うけど、自国の安全保障を他国に任せっきりってのは、示しが付かないし、僕らもそうだし国民の精神面で、甘えが出る可能性があるんじゃないかと。
だから、うちの軍もバシバシ使って欲しいんだよね。」
と言っていた。
「なるほど! 確かに自国の安全を他者に任せっきりって言うのは、拙いですね。すみません、出過ぎた事を言ってしまって。勿論、協力は惜しみませんよ!
バシバシ、鍛えて、あんなヒョロい魔動砲?素手で弾き飛ばせるぐらいに鍛え上げましょうwwww 何かその方が、絵面的に面白い気もするしwwww」
と海渡が悪い笑みを浮かべる。
「「「「「え? す、素手で・・・」」」」」
と冷や汗を流しながら、ドン引きするアーサーさん達。
自分から言い出した事だが、これから地獄の特訓に入るであろう騎士や兵士に対し、心の中でナムーと手を合わせるアーサーさんであった。
平行して、先日話をしていた農業改革を前倒しで進める事になり、海渡は速攻で希望の岬のエルフ数名に定期的に農業指導させるべく派遣する事にした。(送迎は弟子ズに一任w)
更に明日から、4期生までを動員し、パイロットスキル講習会を行う事にした。
そして、トラック200台、バス100台、自動車10台、飛行機50機をレンタルする事に決定し、主要都市の城壁外に空港を設置する事にした。
決定後、すぐにミケが2~4期のリーダーに連絡を入れ、早々に招集を掛け、30分以内にこちらにやって来る事になったらしい。
おいおい、ミケ・・・有能だな!
「こちらで活動し易い様に、一応集まり次第、冒険者ギルドで登録させます! 細事は我々にお任せ下さい。必要あれば、6期生まではソコソコ使えますので、何なりと!」
と胸の前で拳をグッと握りしめていた。
その勢いに海渡は、
「お、おう・・・ じゃあ宜しく頼むよ・・・」
と押され気味であった。
それからのケモ耳ズ主体の動きは目まぐるしく、王宮前広場に1~4期生の総勢86名が揃った。
ちなみに、1~4期生の最年少は、5歳のラルク少年で、他は7~13歳。
揃いの黒と赤の軍団が整列し、ラルク少年が、(自分で用意したww)台座に登り、簡単な説明を行い、号令を掛ける。
街を行進し、冒険者ギルドを目指す黒と赤の少年少女の隊列に、街行く人々は、目を丸くしていた・・・らしい(海渡は後で伝え聞いた)
10人やそこらなら、子供の兵隊ゴッコ遊びに見えなくもないのだが、86名で揃いの装備・・・しかも超一級品(と言うか超神話級装備)。
しかも、全員が全員、老練なやり手兵士顔負けの雰囲気を持っている集団は、ほのぼのとした物ではなく、異様な集団としか見えない。
よくあるチンピラが街の往来の真ん中を我が物顔に練り歩く・・・と言うのとは違い、ちゃんと礼節を持って道の隅の邪魔にならない所を歩いているのである。
すれ違う冒険者達は、ポカンと立ち止まり、手に持った肉串を落とす者もいた。
冒険者ギルド近くになると、ミケがいち早く、先駆けで受付嬢のおねーさんの所へと走り、79名の冒険者登録を伝えると、
「えーーーー!!!!」
と驚きの声を上げ、すぐにギルドマスター室へと飛んで行った。
ギルドマスターがロビーへ降りて来てた時には、既にラルク少年を先頭にした85名がギルド前に到着し、邪魔にならないように、ビシッと整列していた。
そんな精鋭部隊顔負けな隊列を見た冒険者達は・・・
「黒の軍団が増殖してるぞ!」
「すっげー、黒の軍団、ッパねぇーな!!」
「私も入りたい・・・」
とか呟いていたのだった。
ギルマスの指示に従い、裏の訓練場で急遽登録申請を行う事とし、86名が裏へと回る。
ラルク少年らが、大きなテーブルを何個か出して、全員に申請用紙を配り、記入漏れが無いかを集めてチェックして、
「色々お手数かけます。」
とミケが期生ごとで分けた束をギルド職員へと手渡した。
「なあ、ミケだったよな? こいつらって、どれ位の実力なんだ?」
とギルドマスターが半ば諦めた表情で聞いて来た。
「そうですね。分かり易く言うなら・・・2期生は単独でワイバーン2匹を討伐出来る程度、3期生は2名でワイバーン1匹を討伐出来る程度、4期生は、パーティーでワイバーンを1匹討伐出来る程度でしょうか。
4期生は全員単独でサンド・ワームぐらいなら、2~3匹討伐可能ですね。」
と説明すると、ドン引きするギルドマスターと職員達。
「マジ・・・か。それ程なのか!! 黒の軍団・・・」(黒の軍団はあくまで正式名称ではない!)
とギルドマスター。
「ギルマス、これ・・・ランクどう致しますか? それだけの冒険者をCランクと言うのも・・・厳しいですよね?」
と受付嬢のおねーさん。
「ああ、ご安心下さい。彼らはボスの命で、助っ人でこちらに来た者で、各都市に飛び回る際、動き易い様にとギルド登録をするので、取りあえずCランクでも十分ですよ?」
とミケが言うと、ギルマスが複雑な表情をしていた。
結局、全員をCランクで登録すると言う事にして決着したのだが、
「ワシ・・・大丈夫かな? こんなに一気にCランクで登録して・・・。本部に何て言おうかな・・・。」
と呟いていたのだった。
「じゃあ、BかAかSランク相当の依頼を全員に1~2回やらせますか? 実力証明の補強になるんではないですかね?」
とミケが提案すると、
「おお!!そうして貰えると実に助かるぞ!! まあ本来なら、1つ上のランクの依頼までしか受けられないのだがなw」
とギルドマスターが苦笑いしていた。
その後、2~4期生がギルマスの安泰の為に、焦げ付き案件を大量に裁き、結果C→Sランクまで2週間で駆け上がってしまった。
後に『黒の軍団の奇跡』と呼ばれる伝説になった事は、また別の話。
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