第429話


異世界7ヵ月と10日目。


宿舎で目覚め、ベッドの上の惨状を眺める海渡。

昨夜何だかんだで、ステファニーさんとジャクリーンさんが、一緒に寝ると雪崩れ込んでしまい、押し切られてしまったのであった。


海渡は、かなり複雑な形で、雁字搦めになっていたのを、ソーッと脱出し、ソファーでこの困った状況を、朝から『クロックアップ』スキルを使って整理していたw



まだ6歳ではあるが、16~18歳・・・つまり10年前後する頃には、結婚とかって話が出るであろうと。

で、まず今の状況を鑑みるに、必然的に周囲や国民が考えるのは、この3名だろうな・・・と。


しかし、パートナーとして当初から紹介しているフェリンシア・・・実はフェンリル、そもそも人化して貰っているだけである。

幾ら美少女と言え、普通に異種族で結婚は難しいよな?


となると・・・エルフのステファニーさん・・・まあ年齢は不詳だけど、どうせ寿命も長いし、大差ないだろう。

可愛い系の美人さんだしなw 今では、フェリンシアと同列で大事なパートナーとして認識している。

ああ、勿論大好きだよ。


で、問題のこの超絶美女のジャクリーンさん。この中で唯一実年齢が近いwwww(他と比較的にね)



これ、今はまだ良いけど、後数年もすると、ヤバいよね。

寝よう(睡眠と言う意味で)と思ってても、寝た子が起きて暴れそうだよね・・・

等と考えつつ、我ながら上手い事言うなぁwと心の中で苦笑してしまう海渡だった。


まあ一度、コッソリ女神様に相談しないとな・・・。




朝の鍛錬では、ジャクリーンさんの『引き出し』を増やす事に専念し、アイテムボックスや伝心、マップのスキルを生やした。

勿論、ジャクリーンさんが大喜びしていた。


朝食後、昨日の約束通り、弟子ズは王城前の広場へと向かい、100名の兵士へのパイロットスキル講習会を開始する。

自動車と飛行機組を各50名とし、1時間半ぐらいで交代で完熟走行(飛行)までを行った。(勿論ドーピングしてやったよw)

合計3時間半程で、100名がそれぞれ自動車と飛行機の操縦を習得し、パイロットスキルはLv3まで上がった。

午後からは、民間の100名にパイロットスキル講習会(こちらはトラックやバスを想定)を行い、2時間半程で全員がLv3まで上がった。




まあ上記のパイロットスキル講習会は弟子に丸投げ・・・いや任せ、海渡達は、何をしていたかと言うと・・・


ここは、エリーゼンとエストニアの国境近くにある、とある領都の城壁の側。

一応、ここの領主はアーサーさんの話では、良い領主と言うフレーズだったので、記念すべき第一回訪問地としてチョイスしてみたのである。


「止まれ! 冒険者か? 身分証を見せてくれ!」

と門番の衛兵。


「こんにちは。はい、これです。」

と海渡、フェリンシア、ステファニーさん、ジャクリーンさんがSランクの冒険者ギルドカードを提示すると、


「え!? 全員Sランクだと!! すげーな!おいw しかも美少女美人揃いじゃねーかよww うらやましいぞ!!ww」

と驚きながらも、気の良い衛兵のおにーさん。


「おにーさん、ここの冒険者ギルドに顔を出したいんだけど、教えてくれる?」

とギルドカードを受け取りながら聞くと、


「ああ、冒険者ギルドは、この道を真っ直ぐ行けばあるぞ!」


「そっか、ありがとう! あ!ところで、これが一番重要な事なんだけど、ここの一推しの美味しい料理って何?」

と海渡が聞くと、後ろでフェリンシアとステファニーさんがウンウンと頷いている。


「うーーん、一推しと言うなら、酒かな・・・料理かぁ・・・うーーん。ジャガイモ料理とソーセージ・・・ああ、腸に肉とかハーブとかを摘めた物なんだけど、そこら辺だな♪」

と言っていた。


「なるほど、まあ酒は無理だけど、ジャガイモとソーセージか! 何処か安くて美味しい店知らない?」

と海渡が聞くと、


「ああ、それなら自信持って言える、お薦めの店あるぞ! 『幸多かれ亭』だ!」

と親指を立てながら衛兵のおにーさんが教えてくれた。

店の場所だが、冒険者ギルドに近いらしい。


「ありがとー! 後で行ってみるよ!」

と海渡らはお礼を言って、ギルド方面へと向かった。


街の中は、結構良い活気に溢れていて、某ドラーツ公爵や某エリンガ伯爵等の腐った貴族とは別物である事が判る。

「なるほど、これは雰囲気とすると、トリスターに似てる感じかな? 悪く無い雰囲気だよね?」

と屋台で買ったソーセージやフランクフルトを、頬張りながら、海渡が意見を聞くと、


「・・・ふん・・まxごくぬぃんじゃ・・なぃ・・・」


「おいおい、食べ終わってから話せよww」

とジャクリーンさんに注意する海渡w


そうそう、ジャクリーンさんを同行させるは危険だと、最初は反対していたのだが、ジャクリーンさんはギルドカードの名前を『ジャスリン』と言う名で登録していた。

これは公私を切り分けて、冒険者活動中、余計な事にならないようにと、配慮した物だったらしい。

まあ、つまりギルドカードの名前を見て、ジャクリーンさんだと気付かないから大丈夫だろうと判断し、同行を許可したのだった。



ともあれ、全員一致で、この領都の評価は良好。

何が高評価かと言うと、ソーセージやフランクフルトww もう絶品でしたw

歯を立てると、パキッと割れて中から肉汁が弾け飛ぶ。

あと、フランクフルトに掛かってる粒入りマスタード! これが美味い!!

屋台のおっちゃんに聞くと、このマスタードは普通に売っている品らしい。

但し、各屋台で売っているソーセージやフランクフルトは、大抵店独自で作っている物なんだそうな。

「へー!なるほど!! じゃあ、このソーセージやフランクフルトは、おっちゃんの店でしか食べられないって事だね?

じゃあ、取りあえず、各50本頂戴!!」

と情報料込みで大人買いしておいたww


粒入りマスタードを売ってる店を聞いて、大量に粒入りマスタードを購入し、彼方此方の屋台や露店で買い物をしたが、不思議とホットドッグの店は無かった。

「不思議だねぇ・・・これだけ美味しいソーセージあるなら、ホットドッグの店もありそうな物なのにね。」

と海渡が言うと、


「そう言えば、普通はサンドイッチとかも売ってますよね。不思議ですね。」

結構彼方此方のソーセージやフランクフルトを食べたが、やはり一番美味しかったおっちゃんの店(最初に爆買いした店)に行き、気になるので、聞いて見る事にした。


「おっちゃん!また来たよ! 取りあえず、ソーセージ4本ね!」

とまた注文する海渡。


「お、おう! また来たのかよwww 何か、すげーな、坊主w」

と若干たじろぐおっちゃん。


「色々食べ回ったんだけど、やっぱおっちゃんの店が一番美味しかったよ!」

と海渡が褒め、後ろでは女性陣が、ウンウンと頷くと、


「そ、そうか!! そうかそうかww 嬉しい事言ってくれるじゃねーかよwww」

と満面に笑みのおっちゃん。


「でもさ、不思議なんだよね。何でこれだけ美味しいソーセージを売ってる店が沢山ある中で、何処もホットドッグやサンドイッチを出さないなんてね。」

と海渡が言うと、


「ん?なんだ? そのホットドッグって? まあサンドイッチは判るんだけどな。」

とおっちゃん。


「ああ、なるほど!ホットドッグを知らないからか!!」

と海渡が納得する。


「ホットドッグってのはね・・・~」

と海渡がホットドッグ用のパンを取り出し、ナイフで切れ目を入れ、軽くおっちゃんの屋台のコンロで炙って、バターを塗り、ザワークラウトを入れ、更におっちゃんの所のソーセージを挟み、上からマスタードとケチャップを掛けた。

それを半分に切って、おっちゃんに渡し、

「これがホットドッグだよ。食べてみて!」

と言うと、


「なるほど!パンに挟んだ物か!」

と言いながら、ガブリと一口。


「っ!! 美味い!!」

とおっちゃん。


「でしょ? このキャベツのやつは、ザワークラウトって言うんだけど、まあそれじゃなくて、洗っただけのレタスでも美味しいよ。」

と海渡が言うと、


「ほう、ザワークラウトって言うのか・・・、ここらでは聞いた事ない料理だな。まあキャベツもレタスもあるけどな。でもパンはここじゃあ難しいぞ?」

とおっちゃんが言う。


「え?何で? パンが難しいと言うのは何で? あ・・・もしかして小麦が高いからとか?」

と聞くと、おっちゃんが苦い顔をしながら頷いていた。


「だから、パンの代わりにみんなジャガイモを食べてるのさ。」

とおっちゃん。


「なるほど、そう言う事か。ねえ、何で小麦が高いの? 小麦が生産しにくい感じなの?」

と聞くと、昔は小麦も作っていたらしいのだが、小麦を作っていた地域に何故か、フィールド・ドラゴン(見た目は普通にトカゲ。但しサイズがデカい)が巣くって繁殖し、村が3つ程壊滅したらしい。

フィールド・ドラゴンは、全長が4m強で、獰猛。1匹がAランク相当で、今じゃあ繁殖しまくって、そこら辺一帯の生態系が狂ってしまっているらしい。


「えー!? じゃあそうなる前に冒険者や軍を出せば良かったのにね。」

と海渡が言うと、


「いや、出したさ。出したんだけど、ここの男爵様の領軍は半壊、冒険者らも全滅や大けがして撤退だよ。今じゃあ、打つ手無しでな・・・既に500匹以上の大軍になっているって話だ・・・」

と悲しい顔をするおっちゃん。


フィールド・ドラゴンとこの領都の間には、小さい川が流れていて、そのお陰で領都側は安全が確保されているらしいのだが、最近ではドンドンとフィールド・ドラゴンのエリアが拡大して来ていて、王都や他の都市への街道近辺までフィールド・ドラゴンが出て来るらしく、やって来る商隊の数が激減しているらしい。

王宮の方へは何度も軍隊による支援要請を出しているらしいのだが、なしのつぶてだそうで。

領民想いの良い領主様だけに困り果てているらしい。


『なあ、これは良いんじゃないか? エリーゼン側から討伐支援を打診して、傘下に下って貰えば?』

と話を聞きながら全員にグループ伝心で伝える海渡。


『聞く限りやと、ええ領主様みたいやし、領民の事を考えて、こっちサイドに入ってくれるんちゃうか?』


『そうですね、このままじゃあ、どっちにしても陸の孤島になっちゃいますよね? 交渉の余地有りな気がしますねw』


『ええ、ダーリンや皆様の言う通りですわね。兄様に聞く必要ありですわ!』


と話が纏まる。


再びおっちゃんの屋台を後にして、今度は素直に冒険者ギルドへと向かったのであった。

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