第427話
訓練を終えて、午後5時から、アーサーさんらと国境の話をする事にした。
海渡は、
「2つ程、案があるんですが・・・」
と前置きし、
「まず1つ目は、防御に徹する方法。これは国境線をがっちり城壁で固め、超えて攻めようとしたら、即座に魔道具で反撃するだけにする方法。
その場合、鬱陶しいのがズーッと残り続け、下手すると、他国経由でこっちに来るとかもあるかも知れません。
2つ目は、この際、鬱陶しいのを完全に殲滅し、エストニアをこの大陸の地図から消して、自国領にしてしまう方法。
これをやるなら、一度攻めてこさせて、他国へ見せしめに出来る様に、大義名分を作って殲滅するのがお薦めです。
その後は、他国からは、一定の敬意を持って接して貰えると言うメリットと、単純に国土が2倍弱に増えると言うメリットがあります。
デメリットとしては、旧エストニアの領土も統治する必要があるので、信頼出来る配下を置いて、非占領国民の不満の出ない統治をする必要があります。
下手に反感を買ったりして、地下組織とかを作られると、面倒が増えますので、誰もが喜ぶメリットを国民の目の前にぶら下げる必要があるかと。」
と海渡が説明すると、
「うむ・・・確かに長年鬱陶しいのが続いてて、いい加減頭にはきているんだけどねぇ・・・。そうか統治までとなると結構大変だな。」
と思案顔のアーサーさん。
「まあ、どちらにしても、少し考えて決めると良いかと思います。ちなみに、国境に城壁を作る場合ですが、多分我々10名+1匹がやれば、1~2日で作れると思います。」
と言うと、
「え?1日?? いや、1年でも驚きだけどさ・・・エストニアとの国境たって、2000kmは軽くあるよ?それを1日で!?」
と突っ込んできた。
「ですよね? だから11で割ると、1人200km前後で済む訳ですよ。と言う事は、最長でも3~4時間で塀そのものは出来ると思います。
だから、城門や、仕上げで3時間程あれば、大丈夫じゃないかと。
ただ、塀作っちゃうと、滅ぼす切っ掛けが無くなる気もするし、滅ぼした後は、逆に取り壊す必要もあるし・・・で、面白みに欠けるかな?とね。」
と海渡が悪い笑みを浮かべる。
海渡は、面白い物をお見せしましょう!と、壁にガラスディスプレイを4つ並べ、国境線の映像、国境線に近いエストニアの領主の映像、エストニア王の映像、軍部の映像を映し出した。
「こ、これは!!」
とアーサーさん達が叫び、驚いた顔をしている。
「ええ、これで情報を収集しています。現在見て頂いているのは、リアルタイムな映像ですが、数時間前に面白い内容があったので。」
と巻き戻したエストニア王の映像を映し出した。
「おい、ダグラス将軍、いつになったら、エリーゼンを攻め落とせるのだ? あんな弱小国家ぐらい、どうにでもなると言っておきながら、既に何度も追い返されているぞ?
何時になったら、ワシのジャクリーンたんを食べられるんだよ!!! 今が食べ頃なのに!!!(怒
もう、道具は秘密の折檻部屋に揃ってるんだぞ!!! 早くペロペロしたり、ワイルド・ピーコックの羽でサワサワしたりしたいんじゃ!!!」
と想像してハァハァと涎を垂らしながら興奮しつつ、軍部を責めている様子。
すると、ダグラス将軍と呼ばれるオッサンが、その様子にドン引きしながらも、
「はっ! 現在魔動部に開発を急がせている、魔動兵器が完成し次第、攻め込む予定です。
陛下、今回の魔動兵器は、試作品のテストに立ち会いましたが、滅茶苦茶エグイ威力ですよ!
射程距離もテストでは100mを叩き出しました。
これで、遠方からの攻撃が一般兵でも可能になります。」
と胸を張っている。
「ほう、してどれくらいの威力があるのだ?」
と何かを想像して、グヒグヒと涎を垂らしていたオッサン(エストニア王)が、真顔になって聞くと、
「ミスリルで作られたフルアーマーがペシャンコになるほど。オークなら一発で原型が無くなります。大岩なんか、はじけ飛びましたぞwww」
と豪快に笑っている。
「なんと!それは凄いな!! 是非とも一度、試射を見て見たいな! でも、そんな凄い兵器使っちゃって、ワシのジャクリーンたんに傷とか付けちゃったら、許さないからな?
ジャクリーンたんを甚振るのは、俺なんだからな!! グヒヒw 待っててねww ジャクリーンたんw」
と不気味に笑うオッサン。
そんな映像を見て、鳥肌を立てて、
「いやぁーーーー!!」
と両腕で自分自身を抱き、絶叫するジャクリーンさん。
「うわっ! ピザデブ キモっ!!」
「うへーー、ないわぁ~~!」
「何ですか、あの油ぎっちょのハゲ!」
「最悪やなぁ・・・ジャクリーンはん、災難やなぁ・・・」
と海渡側の女性陣もドン引き。
更に映像の続きを見ると、
「じゃあ、陛下、本日の午後3時ぐらいにまた試射するので、宜しければご覧になりますか?」
と将軍。
「よし! ワシも見に行くぞ!」
と言う所で、次のシーンは射撃場? 試射会場へと画像が切り替わる。
「では、これより、魔動部の血と汗の結晶である、魔動法Ver.0.92の試射を開始します。
皆さん、対閃光防御ゴーグルの方を装着して下さい。」
会場には、100m先にミスリルのフルアーマーを付けた人形と、十字架に貼り付けられたオーク?と石を積まれた城壁擬きが置かれている。
そして、白衣を着た技術者風の10名が忙しなく動き、カーゴで運ばれた木箱に入った魔石を、大砲の横に管で繋がれた漏斗の中へと、入れる入れる入れる・・・。
ザッと見、オークLv50前後の魔石を50個程投入していた。
そして、その魔石を入れた魔道具を起動すると、「ゴゴゴゴゴゴ」と凄い音が鳴り響き、その魔道具の側面に取り付けられた針が徐々に上がって行く。
「魔動エネルギー、充填50%・・・55%・・・~(1分経過)~・・・70%・・・~(2分経過)~・・・95%・・・~(3分経過)~・・・110%・・・~(4分経過)~・・・魔動エネルギー充填120%!!
耐ショック、対閃光防御、魔動砲発射準備OK!! 魔動砲発射!!!」
「ドッコーーーン!!」
と轟音が鳴り響き、目の前の大砲から、直径50cmぐらいのファイヤーボール?がヒョロヒョロと飛び出した。
狙いはオークらしく、オークが暴れている。
「ドッカーン」
と音がして、オークに命中し、オークの体が上下部分を残し、お腹の辺りが弾け飛んだ。
これを見た、海渡達は、
「プギャーー!!!!wwwww」
と腹を抱えて笑い転げている。
ジャクリーンさんは、苦笑い。
アーサーさん達は、威力よりも、海渡達の笑い転げる姿に、ポカンとしている。
「ハァハァ、こいつらマジか!!!」
と海渡が涙目で息も絶え絶えに呟く。
「こ、これで、この威力で、あの前振りはないわぁ~~wwww」
「いや、エネルギーチャージ、遅っ!!! ありえへんってwww」
「ヒーー、兄貴、これは酷いっすよwww」
「余りの凄さに、チビリそうですwww」
と海渡以外のメンバーも正常復帰出来ない状況。
映像では、
「なんと!ここまで凄いのか!!!」
とオッサンが驚愕の顔でほざいてやがるwwww
「どうですか、陛下、これさえあれば・・・ふっふっふっふ!」
とやけに自身満々の将軍。
誇らし気な白衣の技術者。
向かい側の標的エリアでは、ミスリルのフルアーマーが「わーー!!!」と騒いで暴れている・・・人形じゃなかったらしい・・・。
「あれ、人が入ってるのかよ・・・」
とその映像で、ドン引きする海渡達。
10分経過して2発目の魔動砲が発射された。
「ドッカーン」
とヒョロい玉(弾ではなく玉)が、ミスリルのフルアーマーが潰れ、穴から、肉や血や・・・何か言葉にしにくい物体が漏れ出ていた。
「わぁ・・・ないわぁ・・・生きた人を標的かよ。」
と悲惨なシーンに呟く海渡。
そして、更に10分後、3発目の魔動砲が発射された。
石垣に当たり、1mぐらいの奥行きの石垣が50cm程えぐれていた・・・。
「奴ら、こんな魔動兵器を作っていたのか・・・」
とアーサーさん達は、微妙に顔色が悪い。
「え?こんなの驚異でも何でも無いですよ? もしかして、心配してますか?」
と海渡が聞くと、コクリと頷いている。
「うーーん、心配には及びませんよ? もし、国境に城壁を作った場合ですが、あの威力だと、全く同じ場所に100発直撃受けたとしても、傷すら入らないですよ?
しかも、これ1発毎のクールタイム長過ぎですよね? 1発/10分って事はですよ? 1時間で6発しか撃てない上に、一発にLv50のオーク魔石50個相当って、エネルギー効率が悪すぎですよw
どうしようかな? 実際に見て貰った方が、安心するかな?」
と海渡が言って、全員を連れて、ゲートで希望の岬ダンジョンの砂漠エリアへとやって来た。
「ここは?」
とアーサーさんが驚いて聞いてきた。
「ここは、うちの大陸にあるダンジョンの第4階層の砂漠エリアです。奴らの兵器が如何にショボいかを見て頂く為に影響の無い所に来ました。」
と海渡が説明した。
海渡は、弟子ズに言って、500m先に、厚さ50cmのミスリルのブロック、オークの死体、大きな岩を置いて貰い、ステファニーさんに言って、タンクガンで撃って貰う事にした。
「ええで、うちにまかしとき!」
と言って、ステファニーさんが、階段前の地面に伏せて、射撃体勢を取る。
「何時でもええで?」
とステファニーさん。
「こちらが、500m先の標的の映像です。発射の際、若干音が大きいですが、ご了承を。」
と言って、ステファニーさんに合図する。
「狙い撃つぜ!」
とステファニーさんが、宣言し、
「ズッコーン!」「ズッコーン!」「ズッコーン!」
と3連射の音が響いたと同時に
3つの標的が弾け飛んだ。
「「「「「うぉーーーーーーー!!!!」」」」」
とその威力に驚くアーサーさん達。
そして、その音に反応して、サンド・ワームがやって来た。
「「「「「サンド・ワームだと!!!」」」」」
と叫ぶアーサーさん達を尻目に、
更に「ズッコーン!」とタンクガンが火を吹くと、
サンド・ワームの頭が吹き飛んだのだった。
「なあ、この炸裂弾やと、1発でイケるなぁw」
と起き上がってニヤリと笑うステファニーさん。
対照的に、アワワと驚いているアーサーさん達。
場所を第6階層に移し、今度は20mmガトリングガンの試射を岩を的にして見せた。
「ブォーーーーーーーーーーーーー!」
と2秒ほどの連射で、崖の形が変わり、赤い溶岩状に溶けていた。
「ね? 心配吹き飛んだでしょ? まだこれって、そんなに高威力の兵器じゃないんですよ。他にももっとエグい威力の物もあるし、全然安心してて大丈夫だと思いますよ?」
と言うと、コクコクと首がモゲそうな勢いで、縦に振っていたのだった。
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