第415話


異世界7ヵ月と8日目。


久々に王宮の自分の部屋で目覚める朝。

何だかんだで、最近ではこの部屋に慣れてしまったな。

統合型の宿舎の部屋に比べ、幾分大きめで、やや豪華なこの部屋。


内装はよくあるキンキンキラキラではなく、白ベースの至ってシンプルな物にしている。

当初、君主の部屋としては質素過ぎると周囲に不評だったのだが、

「いや、キンキンキラキラだと俺が保たないから!!」

と懇願し、改造を許可しなかったww

あの時頑張った俺、GJだww


まあ、日本で言うと、ヒルズとかの様な超高層ビルの一室の様な感じかな。

住んだ事も縁もなかったので、判らないけどねw

とにかく、眺めが最高なのが気に入っている。


朝日に照らされる街並みを見下ろしながら、朝のコーヒーをまったりと飲む。

目下の目標は完了し、さて次は何をする? と。


ザインバッファ王国の店舗の方は、さえじま商会から人を送り、現地で訓練するって事になったので、お任せだし・・・。

取りあえず、ザインバッファ王国の『食ってけ屋』のおっちゃんが、お米を仕入れていると言う隣の国を観光したいと思ってはいるんだが、今は時期が悪い。

ちょっとほとぼりが冷めるのを待たないとね。


となると、思い付く事は、大陸Aから離れ、次の大陸Bを目指すか、ダンジョンだよな。


朝練と朝風呂を終え、朝食時に今日からの予定を相談する海渡。


「なあ、一応やらなきゃいけない事ってのは、終わった訳だけど、今日はどうする?」

と海渡が聞くと、


「うーーん、そやなぁ・・・中途半端なままのダンジョンか、別の大陸目指すんもええか。あ!前に『食ってけ屋』の大将が言うてた隣の国に行くっちゅうんはどない?」

とステファニーさん。


「ああ、ザインバッファ王国の隣の国ね・・・。俺もそれは考えたんだけどね、今はちょっと・・・もう少し時間置いた方が良いかなぁ?って。」

と海渡が目を逸らすと、


「「あぁ~ 確かに・・・」」

って察して苦笑いしていた。


「じゃあ、大陸Bですかね?」

とフェリンシア。


「そうだね。そうしようかねw」

と海渡が笑顔で、席を立とうとしたら、ガシッと肩を掴まれた。


「カイト様? またどちらかにお出かけのご予定でしょうか? その前に目を通して頂きたい書類ありましてね・・・。」

と若干目を血走らせている副大臣2名。


「おお? おお!!」

と目の前に置かれた書類の山(高さ約30cm)にキョドりつつ、返事をする海渡。


曰く、大臣2名が長期休み中なので、最終確認をして頂く必要があると・・・。

特に急ぎの物だけを抜粋したので、最低限、これだけは午前中、確認してサインして下さい! と言う事だった。


「ごめん、ちょっと仕事してくる・・・」

とトボトボ執務室へ向かう海渡。

両脇には副大臣2名がガッチリガードしていて、FBIに捕まった宇宙人の様な状態である。



まあ、しかし、これが常人であれば4時間ぐらい掛かる量なのだが、身体強化、身体加速、クロックアップ、多重処理Exのスキルを持つ海渡は、しっかり内容を把握し、考察する時間を掛けても30分掛からずに完了した。


「カイト様は、やれば出来る子なんですから、もうちょっと普段からちゃんと真面目に政務に取り組んで頂ければ・・・」

と頭を抱える副大臣。


「まぁまぁ、そんなに悩むとハゲるよ?」

と海渡が、椅子の上に立って、肩をトントンと叩いて慰めると、


「不吉な事、言わないで下さい!!! まだ・・・まだ大丈夫! まだ毛根に力は漲ってますからね!!」

と頻りと頭皮を刺激する過敏なお年頃の独身32歳の副大臣ロジャーさん。


その横で、「ブホッw」と咽せるもう1人の副大臣ジェームズ(25歳、独身男性)。


この2名の副大臣だが、マジ有能で、オスカーさんとヨーコさんが居なくても、安心して任せられる人材である。

「まあ、前にも言ったと思うけど、基本この国は、俺が居なくなってもちゃんと回る様になってくれるのが、俺の願いだから。」

と海渡が言うと、


「いや、それは判るんですが、居なくなられると、マジで困りますので。ほんっとうにお願いしますよ?」

とガシッと肩を掴まれて前後に振られたwww


「ドウドウ」と落ち着かせ、

「居なくはならないからww 落ち着けw しかし、あれだね・・・留守の際の、急な書類の決裁とかって確かに問題だね。

ちょっと(方法を)考えるよ・・・。」

と海渡が言うと、


「ええ、是非とも(留守にしない様に)お願いしますね?」

とロジャーさん。


書類の決裁が終わり、一度地下工房に降りた海渡は、専用のサーバーを1セット作成し、サーバールームに設置した。

これは所謂電子決裁用のサーバ。

新しく決裁書類用のスキャナーを作成し、タブレットで決裁が可能な様にプログラムした。


早速、副大臣らの執務室へ意気揚々と向かう海渡。

2人の大臣を前に、決裁書類スキャナーと印刷機と書類データ作成端末のセットを設置し、説明した。


「おお!それは凄い! ちょっと私の要望の斜め上の解決策でしたけど・・・」

と褒めながらも、苦い顔をするロジャーさん。


海渡とロジャーさんの思惑の違いを理解して、腹を抱えて笑うジェームズさん。

「じゃあ、これでもし急ぎの書類があっても、俺が書類に目を通して、決裁可能になったから、安心だねw」

と海渡が自慢気に言うと、


「ええ、まあ・・・」

と歯切れの悪いロジャーさん。


「ところでさ、ロジャーさんやジェームズさんは結婚とかはしないの?」

と海渡が聞くと、ロジャーさんだけが、何故かズドンと崩れ落ち、orz状態に。


「そ、それを私に聞きますか!!」

と顔をこちらに向けて血の涙を流している。


「あ、いや・・・なんかごめん・・・。いやさぁ、先日さ、メイド達と話しててね、お見合いパーティーを開いて欲しいって話になってさ。

もし決まった相手居なければ、誘うっかな?って思ったんだけど、悪かったよ・・・わす・・」

と言い終わる前に、ガシッと肩を掴まれ、


「是非に!!!!!」

とロジャーさんが吠えていたwwwww


ジェームズさんは、お付き合いしている女性が居るとの事で、パスするそうだ。


ロジャーさんだが、見た目は、ややポッチャリ系で、温和そうな顔・・・某カバの妖精ムー○ン系? イケメンではないけど、安らぎを与える感じ。

地位も給料も良いし、その気になれば、幾らでも相手居そうな物なのだがなぁ。

まあ、事、恋愛に関しては、自分自身も 年齢=彼女いない歴 だった事もあり、余り人事ではないのだが、今は6歳だから、まだまだ後20年近くは大丈夫!

なんか元の世界で、20歳ぐらいの頃にも同じ様に考えていた気がするが、気のせいと思うww


と言う事で、ロジャーさんに、近々に企画するから! と約束し、ガッチリ握手されて部屋を後にし、同じセットを、オスカーさんとヨーコさんの執務室に設置しておいた。


「よし、これで完了っと!」



海渡は一旦部屋に戻り、ジュリアとマチルダさんを招集。


「「お呼びでしょうか?」」


「うん、ほら先日話したお見合いパーティーの件だけどさ、近々にやる予定だから。

で、話は逸れるんだけど、副大臣のロジャーさんって居るじゃん、知ってる限りで良いんだけど、あの人が好みです!って子知らない?

ロジャーさんも、参加したいらしいんだけど、何とか相手居ればなぁってね。」

と海渡が言うと、


マチルダさんが、シャキッと手を挙げた。

「ん? 何?」

と海渡が言うと。


頬を赤らめ・・・「好みです!!」と宣言していたwwww

そんなマチルダさんを横に、「えっ!?」って顔でジュリアが見ていた。


「マジか! 居るんじゃん!!! だよなぁ~。本人モテないって言ってたけどさ、鈍いだけか!」

と海渡が言うと、マチルダさんが、深く頷いていた。


「マチルダさん、でも確かロジャーさんって32歳ぐらいじゃなかったですか? 年の差14歳っすよ?」

とジュリア。


「愛の前には、そんな14歳ぐらいの差なんて無いも等しいわ!」

と胸を張っていたwww


「ふぅ~、これでちょっと安心したーーww どうする?ロジャーさん、今呼びだそうか?」

と海渡がニンマリする。


「え?え?? 今ですか? え??」

と沈着冷静なあのマチルダ中尉が狼狽えているww

これはこれで、面白いw


そこで、海渡は、ロジャーさんに連絡し、一人で来る様にと命令する。

ジュリアは邪魔になりそうなので、下がらせた。


「え?え?? どうしよう? カイト様、ど、どうすれば?」

と真っ赤な顔でオロオロしてて、可愛い。


ドアがノックされ、ロジャーさんが入って来た。


「何でしょうか? 至急との事で。」

とロジャーさん。


「ああ、忙しい所を悪いね。 ちょっと話があって来てもらったんだ。」

とニヤリと笑う海渡。


横には真っ赤な顔でモジモジしているマチルダさん。


2人を残し、海渡はソッと部屋を後にしたのだった。

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