第413話


異世界7ヵ月と6日目。


さあ、邪教最後の日が始まったw


まずは、目覚めてコーヒー片手にソファーに座って、情報をチェックする。


こちら(ザインバッファ王国)に向かっている10師団の進行状況だが、国境まで6kmぐらいの位置に居た。

司令官と隊長らの話を聞く限りだと、今日中に国境に一番近い集落で略奪し、新鮮な食料と酒を調達するつもりらしい。


「ぐふふ、出来れば、女も欲しいなwww」

と司令官がほざいてやがった。

知れば知る程、こいつらを殲滅する事に対する、罪悪感が無くなるな。

古来より軍による進行と性被害がある。

蹂躙される側は堪ったものじゃない。

軍隊と性産業従事者の関係は否定しないが、これはダメだろ。


国境までの距離を鑑みるに、奴らの最後は、おそらく朝の10時前後となるだろう・・・。



教会本部の方だが、厨房の方にある食料を使っているのか、今朝は非常に静かである。

ちなみに、地下の幽閉施設であるが、中に居るのは、昏睡を掛けたままの衛兵だけ。

幸いな事に、新たなる犠牲者は増えていない。



コマンドスクリプトの一部を書き直して、教会本部上空に派遣するヒラメ君の到着予定を9時30分にセットし、続行ボタンをクリックした。


朝の鍛錬と朝風呂を終え、朝食の時間となる訳だが・・・

「えーっと、先にみんなに伝えて置く事がある。 今日の10時頃に邪教の教会が、この大陸から消える予定である。

一応、我々のミッションも、これで終了し、メイドやスタッフは一旦引き上げ、さえじま商会からのスタッフが入れ替わりで来る予定ではある。

何処かへ帰りたい者が居れば、朝食後に知らせてくれれば、そちらへ送り届けるので。

あと、引き続き、こちらで仕事に就きたいと言う者はそのまま居て大丈夫だから。あ、子供達もそのままで大丈夫だからなw」

と伝えた。


結局、救出組の全員がここで働く事を希望し、このまま行く事になった。



朝食後、海渡は、店舗とカフェ、ラピスの湯のセットを空きスペースに配置して、全員を案内した。

まだ商品は配置していないが、店舗やカフェ、ラピスの湯の外観や設備に、

「ああ、ここで働けるのか~♪」

と目を輝かせていた。




9時を過ぎる頃、海渡はザインバッファ王国の王様へ連絡し、

「奴らは現在4km地点まで近付いてます。 こちらで対応しますので、ご安心を!」

と簡素に伝えた。



そして9時50分、国境に先頭が到着して立ち往生しているww

「こ、これは!!! 何だこの城壁は!! こんなのがあるとは聞いてないぞ!?」

と慌てた第一師団の隊長が伝令を飛ばす。

全隊長と司令官が国境の堀の前に集まり、大騒ぎを開始した。


「どう言う事だ? これは何だ? 国境は無防備と言う話だったじゃないか!!」

と怒鳴る司令官。


「はっ! 我々もその様に聞いております。 こんな城壁があるとは聞いておりませんでした。

如何致しましょうか? あそこに何か看板がありますが・・・」

とインターフォンを指さす第一師団の隊長。


「何々? 『ご用の方は、こちらのボタンを押して下さい。』だと?? 押せば門が開くのか?」

と司令官が聞く。


全員が首を傾げる。

「よし、押してみろ!」

と司令官が指示する。


「ピンポーーン♪」


「はーーい、どちら様ですか?」

とインターフォンから声がする。


「なんと、箱が喋ったぞ?」

と驚く司令官以下10名。


「ああ、こちらは国境総合受付です。 ちゃんとそちらの声も姿も見えておりますのでご安心下さい。どちら様でごんなご用かをお知らせ下さい。」

と声色を使って応対する海渡wwww


「あーー、我々は、聖騎士団である。直ちにここを開けて通す様に。」

と隊長。


「えーっと、武装した聖騎士団の御一行様が、どう言ったご用件で我がザインバッファ王国に?」

と聞くと、


「それは神罰を下しに参ったに決まっておろう?」

と自身満々に言う隊長。

後ろで司令官や隊長達が、ウンウンと自慢気に頷いている。


「えーーっと、つまりこの国に害をなす為に、この門を開放しろと? 正気ですか? バカなんですか? 誰が邪教の頭がピーーー(←自粛)な連中を中に引き入れて、蹂躙させるんですかね?

はっはっはっはっは!!! そんなバカはこの国には居ません。 邪教の押し売りはお断りしております。」

と海渡が言うと、


「何だと!!!! 我々を・・・女神ザイリー様の軍隊を邪教と申すか!!! 何と罰当たりな・・・」

と怒鳴る隊長。

司令官も黙っておれずに、インターフォンまでやって来て、


「良いから直ぐにここを開けろ!! さもないと、タダじゃ置かないぞ!!」

と唾を飛ばしながら吠える。


「はっはっはw タダじゃ置かないってどうするんですかね? 中にさえ入れないのに?? プギャーww そんな脅しで、入れるとお思いですか?

あ、念のために言っておきますが、この城壁は、国境全域にありますので、迂回しても無駄ですよ?

あと、あんまりしつこいと、自動防衛システムが動作しますので、ご注意下さいね。ではご機嫌ようww プギャーww」

と言って大笑いの内にインターフォンの対応を切った。



「あ・・・何か声が切れちゃったみたいですね・・・」

と隊長が言うと、


「えーーい、こうなったら実力行使でこの門を破壊するぞ!!」

と司令官が吠える。


海渡がポチッとボタンを押すと、

「警告! 警告! 自動防衛システム作動! 我が国に害を及ぼす害虫は、直ちに立ち去りなさい。 警告!~~(ry」

とフェリンシアのアナウンスが鳴り響くww


ざわめく後ろの兵士達は、ジリジリと後退しているw


兵士が10m程後退した所で、

「自動防衛開始まで、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0!!!!」


カウントダウンの0と同時に、正面と左右の20mmガトリングガンが一斉に火を噴いた!


「「「ブォーーーーーー」」」

と言う音が響いた時には、地面が抉れ、そこに司令官も隊長も姿が消え、肉片さえも残って無かった。


「「「「「うぁーーーーーーーーーーーーーーーー」」」」」

とパニックになる残された兵士と、冷や汗を流す騎乗の聖騎士達。


「「「お、落ち着けーーーー!」」」

と指示を出すが、武器を放り出して、逃走する兵士達。


すると、上空から・・・音楽が聞こえて来る。


「てゅりゅるーーー♪ てゅりゅるーーー♪♪ てゅりゅるーーーーーー♪♪♪ パンパラパンパン パンパラパンパン パンパラパンパン パンパパンパパッパララーー♪・・・・~~」


『何も無い』空にいきなり現れる巨大なモニター・・・


この現象は大陸全土で起きていた。


各都市の教会の前上空で、そして教会本部のあるセントラル聖王国でも・・・そしてザイリーの寝ている部屋でも。

各地で幾つもの巨大ガラスディスプレイが出現し、音楽が鳴り止むと、


「愚かなる邪教集団 ファンテスタ神域を追放された堕天使ザイリーが率いるザイリアン教の者達よ!

心して聞くが良い。我が名はこのノバの主神、女神ジーナである。

悪戯で何個もの世界を破壊した罪で追放されたザイリーよ。罪を反省するどころか、女神と偽り、民衆を欺き、偽りの教会を作り邪教を広めた罪、許すまじ。

(ここで、ザイリーの部屋が映し出され、「あ、ああ、あわ・・・女神ジーナ様」とか呟き怯えるブタが映し出される。)

今日ここで神罰を与え、この大陸を浄化せん!!! 覚悟せよ!ザイリー!!!」


と本物の女神ジーナ様が映し出され、宣言した。


そして、一斉に各都市の全教会、教会本部に30mmガトリングガンが火を吹いた。

「「「ブォーーーーーーーー」」」


ザイリーの断末魔の悲鳴と消える教会本部が映し出された。

海渡らは、ゲートで教会本部の側に出て待機していたが、ザイリーの反応が消えたのを確認した。

そして、最後の仕上げの気化弾頭のミサイルが発射され、大陸全土の教会後地に火柱が上がったのだった。


空と大気を揺るがす青白い火柱に、各国の国民と王族や貴族は驚愕し、

「こ、これが神罰・・・」

と生唾を飲みながら震えていた。


事前に知らされていたザインバッファ王でさえ、震えてしまった程である。

「こ、これがカイト殿の力か・・・ 恐ろしい・・・」

と呟き、先日の娘と奥方の無礼を思い出して、青い顔をしていたのだった。


「我がノバに住む、全ての民よ、良く聞きなさい。堕天使ザイリーとその邪教集団を神罰により殲滅した。運良く生き残った者達よ、震えて待つが良い。次はお前達の番である。

善良なる民達よ、そなたらは、邪教に溺れる事なかれ。この後、私の使徒の少年と少女が教会の建設の為に、空より現れる事となるでしょう。ザインバッファ王国に教会本部を置き、大陸全土へ新しい教会を作ります。

私は善良なる民の繁栄と幸せを望んでいる。この大陸に幸が訪れる事を切に望んでいます。皆さん、私の使徒へのご協力、お願いしますよ?」

と女神ジーナ様のメッセージがフェードアウトし、映像が消えた。



一方、ザインバッファ王国の国境でパニックに陥っていた兵士と聖騎士達だが、本物の女神様と偽女神のザイリーの姿を見て、立ち尽くし、最後に教会が消え、火柱の映像を見て震えた。

残った聖騎士100名が集まり、話し合いを始める。


兵士達は、静かにその場から離れ巻き添いにならない様に距離を置いて行くと、集まった100名の聖騎士に上空のヒラメ君から30mmガトリングガンの掃射が3秒続いた。


「ブォーーーーーーーーーーーーー!」


地面は赤く溶けて溶岩となり、100名は全員が消えていた。


そして、やはり上空より、声が聞こえた。


「無理矢理徴兵された遠征軍の兵士達よ、聞きなさい。我は女神ジーナ様の使徒である。 邪教の旗を捨て、直ちに故郷へと戻りなさい。

戻る途中の暴挙は許しません。みなで助け合って戻るのです。そうすれば、女神ジーナ様の救いの手があるでしょう。」

とプリシラの声が鳴り響いた。


「「「「「「「「「「「「おおおおおおお」」」」」」」」」」」」

と兵士の雄叫びが上がり、やがて歓声へと変わっていったのだった。


この日、大陸A(仮)の全土の民衆が狂喜した。

長年苦しめられて来た、邪教が消えた事にお祭り騒ぎになった。

言い換えると、それ程嫌われていたのである。


この日を境に、海渡及び神王国日本の全面協力の下、大陸Aへの教会進出が始まった。

そして、3ヶ月で全土に教会と孤児院が併設され、今までの邪教との違いに感銘を受けた民衆に女神ジーナ様の教えが広がったのであった。


一方、進行して来ていた5000名の兵士達だが、クタクタになりながらも、全員で助け合いながら街道を戻っていると、白いローブを纏った子供達の集団に出会い、変な乗り物に導かれ、アッと言う間に故郷へと帰り着いたのであった。





邪教殲滅作戦の終了で、ホッとする海渡達。

「いやぁ~、みんなお疲れ様。 なんか色々心配して、対策考えた割には、アッサリと神滅を付与した弾丸だけで逝っちゃったね。」

と海渡が笑う。


「まあ、他に被害が拡大しなかったのは、幸いでしたね。」

とアン。


「だなw 最悪ザイリーとの交戦もあり得ると思っていたからな。 そうすると、どんな状況になるか、未知数だから下手すると、セントラル王国が火の海って事もあり得たし。」

と海渡も同意する。


ザインバッファ王国の宿舎へ戻り、お祝いを兼ねた昼食会を開き、全員で祝ったのだった。



海渡達は気付いて居なかったが・・・運良く? 難を逃れた聖騎士が大陸全土で8名居た。

しかし、海渡らが手を下すまでも無く、数日の内に各国の騎士団や冒険者によって殲滅されたのだった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る