第412話
異世界7ヵ月と5日目。
日の出の頃に目覚め、ザインバッファ王国へ進軍中の10師団の位置、教会本部、昨夜砂漠フィールドのオアシスに放置しておいた聖騎士団約5000人の様子を確認した。
10師団は、残り60kmまで進んでおり、予定通り1日遅れの明後日に国境到達の様子。
但し、まだ国境に強靱な城壁が出来ているとは知らないらしいww 哀れだな。 是非とも国境の壁を目にした時のショットは撮っておきたいww
教会本部は、早朝と言う事で、取り立てた動きが無いかと思いきや、食料庫が空っぽである事に気付いた調理スタッフ?が何処かに走って行った。
プププwww どうするんだろうか? 思わずワクワクしてしまう。
それとは別で、聖騎士団5000人の方を確認すると、ダンジョンの中の砂漠は既に完全に日が昇り、かなり気温が上昇中らしい。
何人かが目覚め、辺りをキョロキョロして、周りの者を起こして回っている。
聞こえて来る音声は、
「ここは一体何処なのだ? 宿舎のベッドで寝ていた筈なのだが?」
とか、
「なんだなんだ? おい、誰か! 昨夜当直だった者! 状況を説明せよ!!」
と可愛いパジャマのオッサンが凄んでいるw
「それが、見回り中に、意識を失ったらしく、目覚めるとここに・・・」
としどろもどろに答えていたり、
「朝飯はどうなるんだ?」
とか
「あーーー、暑いーーー!!! 何か飲み物ないか?」
とかもうカオスw
しかし、昨夜は気付かなかったが、あのオッサンのパジャマwwww あんな熊の刺繍入りとか反則だろ?www
と思わず声を上げて笑ってしまう海渡。
色々話を纏めると、どうやらこの熊パジャマが、この中で一番偉い奴・・・副団長と判明。
隊長クラス、副隊長クラスもパジャマ姿で帯剣しておらず、武装しているのは5000名中、100名だけ。
それも、身分的な関係で、普段からイビられてた苦労人ばかり。
「おい!何か食料を調達して来い!!」
と熊パジャマが高飛車に命令を飛ばすのだが、
「「「「「・・・・・」」」」」
と50名の反応が無い。
「おい・・・何をこの状況で偉そうに・・・俺達に命令してんだよ?」
と凄く嫌そうな顔をした50名の中の1人が叫んだ。
「え?」
って言いながら驚く熊パジャマ。
「いや、だってよぉ、この状況、靴すら履いてないお前らって、単純に足手纏い以外あり得ないよな?」
と叫んだ仲間に同意する50名の中の別の男。他の奴もウンウンと頷いている。
「何ぉ~! お前らふざけるなよ!!! 命令違反は死刑だぞ!? 判ってるのか?」
と唾を飛ばしながら吠える熊パジャマ。
「いやいや・・・お前らこそ、今の状況ちゃんと判ってるのか? 良いか? 俺らはこのだだっ広い何処とも判らない砂漠の真ん中で、一応武装しているんだよ?
方や、お前ら裸足でパジャマじゃん。 ここでお前ら殺って、砂に埋めても誰も気付かないよな?」
と言うと、押し黙る熊パジャマwwww
「いい加減、実力も無い癖に、威張り散らかして無理難題押しつけて来るの、ウンザリしてたんだよなw もうこう言う状況だし、良いかなぁ~ってなww」
と剣を抜いてジワジワ迫る50名。
熊パジャマをはじめとする、権力のありそうな奴ら(デブ)を、次々と処刑し始めた。
「あ!反乱起こしたーーwww」
と映像を見て思わず吹き出す海渡。
まあ、そらそうだよな。
どう見ても、ただ楽して威張っているだけにしか見えないもんなぁww
「しかしさぁ、そんなに沢山の血を流しつつ、騒いで良いのかな?」
と海渡が懸念していると、言った側から、
「ドッパーーーン」
と砂が舞い散り、サンド・ワームさん3匹が乱入w
ほらな! だから言わんこっちゃない。呼び寄せちゃった。
最初こそ、武装している何名かが剣を持って突撃しようとしていたが、傷一つ付ける事もなく、何名かが放つショボいファイヤーボールが跳ね返され、パジャマ姿の数人が焼けていた。
更に2匹のサンド・ワームもやって来て、ウハウハと食いまくってらっしゃる。
聖騎士達は、全く歯が立たない事を知り、絶望で崩れ落ちる者、逃げ惑う者、入り乱れて阿鼻叫喚の地獄絵図になっていた。
「あーーー・・・・終わっちゃったよ・・・5000人近く居たのに、アッと言う間に完食だよ。」
と海渡がヤレヤレと肩をすくめた。
そして教会本部のモニターの方へと視線を移す。
「司祭長様も、司祭様もお姿が無く、こんな書き置きが部屋に・・・」
と20名ぐらいの神官服姿の男性女性が集まって話し合っている。
書き置きには、
「山ごもりダイエットして来ます。食料と費用は倉庫から持って行きます。」(←司祭長の部屋)
「自分探しの旅に出ます。探さないで下さい。」
「男性同士に目覚めました。愛の逃避行です。」
とか書いてあった。
「ぐぬぬ!! 揃いも揃って・・・」
と一番偉い風の男が叫びながら、4枚の書き置きを引ったくって、丸めて床に投げつけた。
「いや~、マジで『ぐぬぬ』とか言う奴初めて見たよww」
と海渡が、また笑い転げる。
そして、件のぐぬぬ男は、
「こうなったら、今日から当面の間、私が司祭長代理を務めさせて頂く。取りあえず、聖騎士団の団長を呼んで来て貰えるか?」
と言うと、一番年下の男性が、走り去っていった。
その後ろ姿をみて、ぐぬぬ男は、ニンマリと黒く笑ったのだった。
「あのー、朝食を作るにも食料庫が空でして、如何様にすれば宜しいでしょうか?」
と食料庫から走って行った調理担当が聞いていた。
「そうか、じゃあ、いつもの様に各店から『ご寄付』と言う事で、叩き起こして回れば良いだろ?」
と言うと、その男もニンマリ笑い、
「ふふふ、了解しました。」
と言って去っていった。
流石は、腹黒い助教団ww 揃った屑も粒揃いらしい。
朝のルーチンワークを終了後、再度確認すると、食料庫に続々と運び込まれている食料と、悲しげな店主らの表情の映像を見つけた。
「朝食を取りながら、また食料庫に運び込まれたようだぞw」
「じゃあ、また後でお邪魔しちゃいましょうよww」
とノリノリの弟子ズ。
「よし、今夜再度お邪魔してラストにしようかね。」
とニヤリと笑い合った。
ちなみに、聖騎士団5000名の消失はかなり騒ぎになっていた。
非番だったりで、昨夜外出していた者等、50名程が聖騎士団の宿舎に集まって話をしていたが、早々に『誰が指揮を執るか?』で大乱闘。
そんな大乱闘中に、のこのこ教会本部から『呼び出し』の為に走って来た男に対して、
「「「「「今はそれどころじゃねーんだよ!!」」」」」
と声を揃えて怒鳴っていたww
伝令の男は、状況が判らぬまま、スゴスゴと教会本部へと戻って行ったのであった。
さて、海渡達だが、午前中は、子供らや救出組にスキル講習会を開く事にした。
手始めに、ドーピングを行って、身体強化&加速までを全員に生やし、余った時間で、希望者全員に調理スキル講習会も行った。
ついでにレシピを教え、昼食を作って貰ったのだが、それなりに美味しく出来ていた。
まあ、作った本人達は、不満らしく、
「何か、それなりには出来てるんですが、同じ材料なのに、カイト様のと全然違う・・・」
と嘆いていた。
「スキルのLvはあくまで、Lvの数字だけ。あとは経験が物を言うんだよ。どんなスキルでも使えば使う程、頭を捻り、悩んで突き詰めて行く事で進化するんだよ。
俺だって、鍛冶スキルを持ってはいるから刀とか打てるけどさ、やっぱりそれ専門でやって来たドワーフのおっちゃんの打った刀とは比べ物にならないからね。
何事もスキルのLvだけじゃない部分もあるんだよ。だから何回も何回も使う事で経験する事が重要なんだよ。」
と説明すると、更にヤル気を出していた。
午後からは、文字や計算を教えた。
希望者には、剣術や槍術等の武術を少し手解きしたのだった。
さて、ブタ(堕天使ザイリー)の様子だが、こいつ、昼過ぎに目覚め、用意された大量の飯を、本当に見たくも無い様な食いっぷりでブヒブヒと食べて、ケツをボリボリと掻きながらまた寝ちゃった。
全く感づいている様子も、警戒の『け』の字さえもない。
教会本部内での異変も、報告される事も無く、察知する事も無く、完全に餌を与えられて放置状態。
「うーーん、あの俺の苦労と警戒・・・完全に無駄じゃん。謝罪と賠償を要求する!!!」
とぼやいてしまう海渡だったw
夕食が終わり、海渡達は、仮眠を取った後、また昨夜の様に海渡の部屋に集まり、打ち合わせを行った。
本日、1日掛けて救出組から得た情報では、この中央の国・・・セントラル聖王国というらしいのだが、この国の王というのが、完全な無能な王で、完全に教会の言いなりになっているらしい。
教会を排除した後、この国の王がどうするかを確認すべきかも知れないな・・・とは言え、後は周辺国やこの国の国民が決めれば良いのかな?
また変な邪教が蔓延る前に何とかしないとダメなのかも知れない。
まあ、海渡としては、出来るだけ面倒は避けたいと思っているのだが・・・。
と言う事で、役割分担だが・・・
弟子ズには食料庫と宝物庫に別れ、本日運び込まれた分を奪取する事に。
海渡ら3名は、聖騎士団の残り50名を砂漠へ。
そして、
「じゃあ、今夜も油断無く、細心の注意を払う様に! Go!」
とゲートで各自の分担を遂行するのであった。
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