第399話


朝対応してくれたおねーさんを手前から2個目のカウンターで見つけ、その列に並ぶ海渡ら4名。

順番を待って居る間に話を聞くと、おじさんも、Bランク冒険者だった。名前はジョセフさん。


「もう歳だから、第一線は離れてな。 こうして後輩達の為にって事で、実益を兼ねて地図売りしてんだよw」

と言っていた。



やっと15分くらいで、順番が回ってきた。

「はい、どの様なご用件でしょうか? 依頼達成のご報告ですか? あら、貴方達は、今朝のSランクの方・・・カイトさん? あ、ジョセフさんもご一緒ですか?」

と不思議な組み合わせに首を傾げる受付嬢のおねーさん。


「やあ、アンリエータ、久々だな。ところで、お前さん、この坊主達を朝対応したってのは覚えているんだな?」

とジョセフさん。


「ええ、なんでも王都の支部からこちらの方にダンジョンがあると聞いて来たと。」

と答えつつ、やや不安気なアンリエータさん。


「お前さん、その時、最深階層を更新した場合の報告義務について、話をしたか?」

とジョセフさんが言うと、


「あ!・・・」

と思わず声を上げるアンリエータさん。


「お前さんが、説明義務を怠った事で、この坊主達が、最深階層更新時の義務を知らず、謂われの無い不利益を被る所だったんだが、その辺はどうするつもりだ?」

と声のトーンが大きくなるジョセフさん。


「え?今朝の話で? え??? 最深階層更新?」

と更に声が大きくなるアンリエータさん。


周りの冒険者や受付嬢も手が止まり、こちらを凝視している。

異変を察知した、上司?のおじさんが飛んで来た。


「すみません、サブギルドマスターのポースターです。うちのアンリエータが説明義務を忘れていたようで、申し訳ありません。」

と頭を下げて来た。


「つきましては、ここでは何ですから、ギルドマスター室の方に場所を移して頂けませんか?」

と。



なんか、予想と違う方向で、話が大きくなってしまって、戸惑う海渡達一行。


「この度は、うちの職員が説明義務を忘れてしまい、誠に申し訳無い。」

頭を下げる、ギルドマスターのギブソンさん。


「おう、ギブソンよ、今回俺がたまたま気付いたから良かったが、それより他の誰かに先に情報漏れてると、割を食うのは、こいつらだからな?」

とジョセフさん。


「あのー、すみません、ちょっと未だに、どう言う説明漏れがあって、どう言う事が拙いのかが、今一つ理解出来てないのですが、本来あるべき説明ってのを教えて貰えますか?」

と海渡が言うと、


そりゃあ、ご尤もと言う事で、ギルドマスターから説明が始まった。


1)ダンジョンに潜る際は、Eランク以上である事。←Sランクなので問題無し

2)ダンジョンで冒険者同士で獲物を取り合ってはいけない。但し援助を求められた

 場合を除く。

3)ダンジョンで冒険者の遺体や遺品を発見した場合は、出来るだけ、ギルドカード

 を回収し報告する事。

4)最深階層をクリアした場合、真っ先にギルドに知らせる事。

 また、その際にマッピングを行ったのであれば、ギルド以外に最初データを

 売ってはいけない。

 これを破った場合、最悪ギルド除名の上、罰金が科せられる。

5)最深階層等に関わらず、ダンジョン内での抗争や、異変を見たり感じたりした

 場合は、ギルドへ必ず報告する事。


と言う事らしい。


「え?じゃあ、それを知らずに、俺達、帰りがけ、第16階層で、『乙女の知恵袋』に最新の地図渡しちゃいましたよ? ダメだった?」

と海渡が驚くと、それは売った訳ではなく、ただで上げたので、ギリギリセーフらしい。


「あっぶねぇーwww」

と笑う海渡ら3名。


「で、何処まで潜ったんだ?」

とギブソンさんが聞くので、17階層~24階層までの地図をテーブルに並べ、


「途中で設定していた時間になったんで、24階層の途中で終わりました。」

と言うと、


「え?24階層!?? それでもう地上に居る???」

と何処かで聞いた台詞をww


「ああ、それなら、さっきジョセフさんにも説明したんですが、俺達、時空間魔法で瞬時に戻って来れるんですよ。ほらw」

とゲートで、王宮の屋上(この所、見せ場として大活躍中w)に繋いで見せると、凄く驚いていた。

ちなみに、この大陸も含めてだが、最近もう絡む奴も、利用しようとする奴も、権力を笠に無茶しようとする奴も、排除出来るので、自重はかなり忘れ去っている海渡達。


「えぇーー!? つまり、それは何処にでも行きたい所に行けるってか!?」

と言うので、


「まあ、一度行った事のある所限定ですけどね。」

と説明した。


「それにして、最深部を更新って事は、初めての場所だから、やっぱり、時間が早すぎねぇか? だって、潜ったのは今朝だよな?」

とギブソンさん。


「ふふふ、流石鋭いっすねw 俺達、空も普通に飛べるんでw」

と空中に浮いて見せる。



「えーーーー!!!!! マジか!!」

と更に驚きの声を上げるギブソンさん、ポースターさん、アンリエータさん。


「それに、あんまりこの大陸では知られてないようですけど、身体強化や身体加速と言う魔法派生のスキルあるので、通常の100倍くらいのスピードで移動は出来るんですよね。」

と言うと、ポカンとしていた。


「ああ、俺達って、隣の大陸から、冒険半分、観光半分で、やって来てまして。

昨日王都のギルドで聞いたので、今朝こちらのダンジョンに来た次第です。」

と説明した。


「隣の大陸!?」

と声を揃える皆の衆。


海渡は、タブレットを取り出して、この大陸の地図を出す。

「今この場所は、この青い点の所じゃないですか。 で、ここからズーーっと離れた海の向こうのこの大陸・・・ここが俺達の住んでる大陸なんですよ。

そして、ここがうちの国ね。」

と地図で説明した。


「・・・・何かもう、色々ありすぎて、何と言って良いか判らないが、凄いな・・・」

と脱力気味のギブソンさん。


「ああ!そうだ、17階層のグレート・サーペントの依頼!!! あれ、やって来たんですが、どうすれば良いですか?」

と聞くと、


ポンと手を打つおねーさん。


「あれ?でも手ぶらですよね?」

と不思議そうな顔の全員。


「ああ、アイテムボックスと言う何でも収納出来るスキルあるのでね。他にも、シー・サーペントとか、グレート・サーペントの上位種デュアルヘッド・サーペントとか、クラーケンとか、サンド・ワームとか、色々有りますが。ここじゃあ狭くて出せないのですが、どうしましょうか?」

と聞くと、全員が不思議そうな顔をしている。


「裏の訓練場に出して良いですかね?」

と聞くと、コクリと頷いたので、裏の訓練場へと、全員で移動する。

1階のロビーでは、先ほどの騒ぎで、ザワザワしていたが、海渡らやギルドマスターまでゾロゾロと裏の訓練場へと向かうので、他の冒険者達も着いて来た。


「じゃあ、まず、グレート・サーペント行きますね。」

と声を掛け、ポンポンと7匹のを取り出して並べる。

突然湧いて出た7体の巨体に

「「「「「「「どぇーーーーーーーーー」」」」」」」

と響めきが巻き起こる。


「続いて、シー・サーペント行きますね。」

と3人で、シー・サーペント3体を並べ、


「次はクラーケン行きます。」

と残った訓練場一杯のスペースにクラーケンが出て来た。



「ちょ、ちょっと待ったーーーーー!!!!」

とギブソンさんの待ったコールが入るwww


何か肩でゼイゼイと息をしているギブソンさん。


「判った。判ったから!!! そのクラーケンは王都支部に売って!! うちじゃあ、予算オーバーするから!!! お願い!!!」

と涙目のギブソンさんww


アンリエータさんは、完全に後ろ向きに座り込んで、ガタガタと震えている。

何かボソボソ言ってるので、耳を澄ますと。


「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい・・・・」

と繰り返している。

あ、お尻の下に水溜まりが・・・見なかった事にしよう。


ポースターさんは、跪いていた。


「じゃあ、取りあえずクラーケンは仕舞いますね。」

とクラーケンを収納すると、


ギャラリーの冒険者達から、

「「「「「「「「「おぉーーーーーーー!!!!」」」」」」」」

とまた響めきが。



「なあ、出来れば、そのシー・サーペント3体も仕舞って貰えると、助かるのだがな?」

と控え目なギブソンさん。


「えーー?これもですか・・・。」

と3体のシー・サーペントを収納する。


「じゃあ、このグレート・サーペントとデュアルヘッド・サーペントで勘弁して上げますよ!

まあ、勿論今回の一件あるんで、取引額が楽しみではありますがねwww」

と黒い笑みを浮かべる海渡と、腹を抱えて爆笑するフェリンシアとステファニーさん。


「あ、あと最深部更新の報酬もあるらしいですね。 では時間も時間なんで、早々に手続きをお願いしますね?」

とニコリと笑うと、使い物にならないアンリエータさんを置いて、ポースターさんが走り、素材買い取りと各報酬の手続きを始めた。

海渡、フェリンシア、ステファニーさんの3名はギルドカードを渡し、ジョセフも一緒に再度ギルドマスター室へと場所を移した。



「いやぁ~、坊主、スゲーなwwww どんだけ便利なんだよwww いやぁ~坊主ぐらいの実力あれば、俺ももっと上を目指せたんだろうなぁ・・・。」

とジョセフさんが笑っていた。


海渡は、カフェオレを『自分で』人数分出して、マッタリと飲み始める。

「あ・・・すまん、お茶すら出してなかったな・・・」

と気付くギブソンさん。


「いえいえ、大丈夫ですよ。慣れてますからw」

と言うと、何か落ち込んでいた。 あれ?今のはいつも自分で入れてるって意味だったんだけどなw


「ちなみに、向こうの大陸にも冒険者ギルドとかあるのか?」

と聞かれ、


「ええ、ありますよ。大体同じかな? まあ、カードの機能とかはあっちが上ですけどね。」

と答えると、


「カイト君は向こうのギルドではランクは何になるんだ?」

と聞いてきた。


「俺と、フェリンシアがSSSランクで、ステファニーさんがSSランクですね。」

と答えると、驚いていた。




暫くすると、ポースターさんが、やって来て、

「あのぉ~、今回のでお三方のランクがSSランクに上がる事になるんですが、こちらでカードお作りして良いでしょうか?」

と聞いて来た。


「なので、じゃあ、お願いします!」

と答えると、嬉しそうに戻って行った。

何でも、SSランクのギルドカードを発行出来るのは、ギルド支部にとって、栄誉な事で、箔が付くらしい。

ギブソンさんに笑顔で教えてくれたw



6時を過ぎて、やっと集計が終わって報酬金額とSSランクのギルドカードを貰えた。

買い取りは頑張ってくれたらしい。

合計で、白金貨39枚、金貨30枚になった。


そして、ギルドを出る際に、周囲の冒険者達から、口々におめでとうと言われ、気分が良かったので、金貨2枚をギブソンさんに渡して、

「じゃあ、これでみんなで飲んでくれ!!」

と言うと、更に絶好調の盛り上がりを見せた。200万円分あれば、銀座の高級クラブじゃなければ、飲めるよね?と思ったが後は知らんw



あと、世話になった、ジョセフさんに、24階層までの地図データをあげた。


「え?本当に貰って良いのか??」

と真顔で聞かれ、


「いや、ジョセフさん居なかったら、危ない所でしたし、どうせそのデータは殆ど売れませんよ?」

と海渡が言うと、


地図データをジックリ見たジョセフさんも、

「ああ、なるほどな・・・」

と苦い顔をして納得していた。



時間が6時45分を過ぎていたので、慌てて王宮へ戻ったのだった。

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