第388話


大陸変われば、ギルドも変わる? と思いつつ、冒険者ギルドの扉を開けると・・・。


うん、レイアウトは違うけど、雰囲気は同じ感じだな。

と考えながら、中に入っていくと、周りの冒険者達のザワザワが、一瞬にして静まり返った。


お揃いで色違いの出で立ちの異様な雰囲気の大人4名子供6名の集団。

しかも、男の子2名で8名がビックリする程綺麗な美少女美女揃い。

冒険者達がゴクリと唾を飲む音が聞こえる程の超ハーレムパティー。


雰囲気を察したカウンターの女性職員が出て来て、


「えっと、君達は、冒険者ギルドにどんなご用でしょうか?」

と話掛けて来た。


周りの冒険者どころか、職員も含め、フロアー中の全員が注目し、聞き耳を立てている。


海渡はちょっと苦笑しつつ、

「ああ、私達は、他の大陸から来た冒険者なんだが、こちらにも冒険者ギルドがあると言う事だったので、登録しに来たんですよ。」

と答えると、ドーーーっと笑い声が起こる。


「はっはっはっはww 何を言うかと思えば、『他の大陸』だってよwwww

しかも冒険者だってさwww」

と腹を抱えて笑い転げている。


海渡もこのパターンは初めてだった。

「新しいパターンだなw」

と海渡も笑う。


「おい、坊主ぅ~、朝の忙しい時に笑わせるんじゃねーーよw あー、腹がいてぇww」

と冒険者の1人が泣き笑いしながら言う。


「僕ぅ・・・余りそう言う嘘はいけないなぁ。 ふふふ、他の大陸だってwww」

と職員のおねーさんんも、笑っている。


「うーーん、困ったな。向こうの大陸のギルドカードならあるのだが。」

とギルドカードを見せる海渡。

全員もギルドカードを出して見せる。


「まあ、何々? お揃いで作ったの? 良く出来てるわねw」

と全く信じている様子はない。


「まあ、良いや。 で、冒険者登録は出来るの?」

と海渡が聞くと、


「冒険者には、最低限の能力テストを受けて貰って、合格すれば、その実力に応じてランクが決まるの。

能力テストに合格しなければ、幾ら作った余所の大陸とやらのギルドカードを見せても、登録は出来ないのよ?」

とおねーさん。


「ふむ。じゃあ、10名全員の登録手続きと能力テストを頼むよ。能力テストってのは、模擬戦闘とかと言う認識で良いのかな?」

と言うと、


「ふふふ、しょうがない子ね。そう、能力テストは、こちらの指定する冒険者と模擬戦闘をして、どれ位の実力があるかを確認するの。だから、ちゃんと能力テストで落ちたら、諦めて帰るのよ?」

と言いながら、登録申請書を10枚渡して来た。



登録申請書には、名前、性別、年齢、出身地、ジョブ、得意な武器、魔法、魔物討伐経験、備考その他 の欄があった。


「自分で字は書ける? 有料だけど、代筆も出来るわよ?」

とおねーさんが聞いて来た。


「ああ、大丈夫。こっちも文字は同じみたいだから。全員自分で書けますよ。」

と言って、各自自由に書かせる。


「あ、おねーさん、ちょっと質問。このジョブって何?」

と聞くと、


「ぶぶーーwww ジョブも知らないんだってよwww 良いか、坊主、ジョブってのはよ、剣士、斥候、タンク、支援系・・・まあ後は殆ど居ないけど、魔法師、治癒師があってよ、そう言う意味のジョブだよ。」

と教えてくれた。


「なるほど、ありがとうございます。ふむーー。しかしそれは困ったな・・・。ここに居る全員殆ど全部こなせるんですがね? その場合は? オールマイティとでも書けば良いのかな?」

と海渡が言うと、また全員が大爆笑している。


「あ、あと最後の魔物討伐経験ってのは、全部書く必要は無いんでしょ? 抜粋で良いかな?」

と聞くと、


「うんうん、全部じゃなくて良いわよw でも嘘はダメだからね? どうせ能力テストでバレるから。」

と笑いながら、おねーさんが答えてくれた。



まあ、良いか・・・とスルーして海渡が書き上げる。

海渡が書いた登録申請書はこんな感じ。


--------------------------------------------------------

氏名:カイト・サエジマ

性別:男

年齢:6歳

出身地 日本

ジョブ:オールマイティ(全部)

得意な武器:剣術、槍術、忍術、体術

魔法:火 水 風 土 光 闇 聖 時空間

魔物討伐経験:ヒュドラ ブラック・ワイバーン ワイバーン

       タンカー・ホエール サンド・ワーム ガチコンブ コカトリス

       その他

備考その他:従魔(クィーン・ベヒモス)

--------------------------------------------------------


そして、おねーさんに提出した。

他のみんなが提出した登録申請書も、概ね似たり寄ったりの内容である。


受け取って確認しているおねーさんの顔が引き攣っている。

「もう、嘘はダメだってあれだけ言ってるのに、おねーさん、知らないからね?」

と半ば怒ってらっしゃる。


「何この魔法・・・これ全属性じゃない。こんな人居ませんからね!!

それに、何この魔物討伐経験・・・ヒュドラ? ブラック・ワイバーン? ワイバーンに、タンカー・ホエールwww サンド・ワーム、ガチコンブ コカトリス!!!!www」

と笑い転げている。


「いや・・・、至って真剣なんだがな・・・。」

と海渡が言うと、全員ウンウンと頷いている。


「あと、従魔は登録しなくて良いのかな? 一応備考その他に書いたんだけど。」

と言うと、


「プププ・・・従魔が、クィーン・ベヒモスってwwww」

とおねーさんがヒィヒィとお腹を押さえて居る。



「おい、坊主、いい加減にしないと、職員のおねーさんも困ってるだろ? あまり度を超すと、笑えねぇからな。」

と険悪な雰囲気になってきた。


「うん、こっちもね、子供だからって見くびられるのは、あまり良い気がしないんだよね。

まあ、こんな形してるから、そりゃあ、判らないではないだがな。

いい加減にして貰わないと、こっちの我慢にも限界あるからねぇ。

サッサと能力テストってのをやって貰えますかね?」

と海渡のトーンが段々と険悪な物に変わって行く。

海渡の漏れる殺気にちょっとおねーさんの顔色が変わる。



周りの冒険者も、絶対に敵わない様な魔物に、対峙した時の様な、ピリピリとした緊張感を感じ始めて、ザワザワとし始めた。


「あ、あ、あの・・・能力テストは裏の く、訓練場で、直ぐに始めますので、裏に行って貰えますか?」

と脂汗を掻きながら、辿々しく伝えて来た。


「そうですか。判りました。 あと、従魔の登録が必要なら、申請用紙を後でお願いしますね。」

と言って席を立ち、裏へと向かった。

受付嬢のおねーさんも、周りの冒険者達も、海渡が席を立つ瞬間に、凄く凄く黒い笑みを浮かべていた事には全く気付かなかった・・・いや、そんな余裕すら無かったのである。


黒い笑みは海渡だけでは無かった。

残りの9名も全員が怒っていた。


自分の大好きな家族同然の海渡、自分が生涯を共にすると心に決めている海渡、自分を死の縁から助けてくれた師であり兄貴である海渡、希望の光を与えてくれた敬愛する師である海渡、自分と自分の仲間を助け力を授けてくれた師であり愛する群れの雄である海渡、群れの一員に迎え入れてくれた愛する雄である海渡・・・

そんな海渡をバカにされて、笑い物にされた事で、静かに怒りMaxな9名だった。



海渡らが去った後のロビーは一斉に全員が一斉に

「「「「「プハァーーー」」」」」

とため息をついて、おでこの油汗を拭っていた。


そして、

「「「「「まさかね(な)・・・?」」」」」

と呟いていた。




そして、誰からともなく、この油汗の原因を確かめるべく、能力テストの見学に、裏の訓練場へと赴くのであった。

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