第387話


異世界6ヵ月と27日目。


ザインバッファ王国の王宮前広場のヒラメ君0号の中で目覚める。


一人でやる事も無いので、取りあえずキャンピングカーから出て、広場にコッソリと厨房セットを出して、朝ご飯の準備を始めた。

昨夜の食堂で、元の世界の居酒屋を思い出してしまい、どうしても食べたくなった物・・・そう鶏の唐揚げである。

あれを作ろうと思い立った。


まあ本来なら、朝から揚げ物!? って話だが、6歳のこの体だと割と平気www

ホットドックや、チキンフィレバーガーとかなら違和感無く食べられるんじゃないかと。


先日ダンジョンで狩ったランナー・バードを朝日が見え始めた広場で解体を始める海渡。

血抜きを終えて、羽を毟り、解体を完了すると、肉のブロックを程よい大きさに切り、スパイス等を混ぜた衣を付けて・・・ジュワァーっと油で揚げて行く。

竜田揚げ、普通の唐揚げ、ケンタおじさん風等4種類ぐらいを上げまくった。

油を切った後は、冷めない様にアイテムボックスに即収納。

更に、フライドポテトやオニオンリングも大量に揚げた。


アイテムボックに確保してあるバンズに、レタスとランナー・バードのフィレ部分の竜田揚げを挟み、上からマスタードとマヨネーズ、玉葱のみじん切りなどを混ぜたピリ辛ソースを掛け、皿に盛り付けて行く。


あとは、キャベツでザワークラウトを大量に作り、茹でた後、表面をパリッと焼いたウィンナーも用意した。

柔らかいホットドック用のパンに切れ目を入れて、溶かしたバターを切れ目に薄く塗り、軽くトースターで焼き色を付けた。

皿にそのパンにザワークラウトを入れてウィンナーを載せ、ケチャップとマスタードを一筋掛ける。

これを大量に着くってアイテムボックスに格納して行く。

ついでに、チリソースを載せたチリドックも作り、アイテムボックスにストックして行った。


ここまで行くと、勢いが付いてしまい、揚げ物ついでに、オークカツを大量に作り、オークカツサンドもストックして行く。


今度は突き合わせのスープを作り始める。コーンスープ、ミネストローネ、クラムチャウダー、オニオンスープを寸胴3つ分ずつ大量に煮込む。

まあ、時短調理器を使うので、煮込み時間は一瞬なのだがww


パンと言えば・・・と思い出して、海渡力作のカモフラージュ・カウのコンビーフと、海渡作の鉄製ホットサンドメーカーを取り出して、ホットサンドも作成した。

具は、コンビーフと水に晒したオニオンスライス、マスタードとチーズ。

「ホットサンドはきつね色がキモだよねw♪」と鼻歌交じりに魔動コンロの上のホットサンドメーカーをひっくり返す。

出来上がった物はドンドン収納して行く。


「よしっと、こんな所かなぁww」

と作業を終えて、ハッと気付くと、衛兵10名程が、ポカンと口を開け、若干涎を垂らしつつ見て居た・・・。


どうやら、匂いに釣られてしまったらしいwww


「味見で少し食べる?」

と聞くと、


「あ・・・いえ・・・勤務中なので・・・ でも、お誘いありがとうございます。」

とお礼を言いつつも断られた。


フェリンシアと、弟子ズが起きて来たので、キッチンを片付けて収納し、朝の鍛錬を始める。


弟子達が型の稽古をする横で、海渡はフェリンシアと実戦モードの稽古を始める。


朝の広場に鳴り響く木刀と木刀の連続した打撃音、「ダダダダダダダダ・・・」と一般には目に見えない攻防が10分程続く。


弟子ズも総当たりで10分程の組み稽古を行い、最後には、戦闘シミュレータによる訓練を開始する。

いつの間にか、近衛騎士団の隊長、昨日は居なかった団長も見学していて、唖然としていた。

「いつもそんな稽古をしているんですか?」と。


「ああ、おはようございます。今朝は出先だから軽めですよ。」


朝練が終わる頃、オスカーさんとステファニーさんも起きて来たので、テーブルと椅子を出して、先ほど作ったチキンフィレバーガーや、ホットドック、チリドック、スープ等を並べて行く海渡。


「スープはコーンスープで良いか? ミネストローネやクラムチャウダー、オニオンスープも作ったぞ?」

と言うと、4人がコーンスープ、残りがミネストローネを希望したので、注いだカップを廻して行く。


あとは、マリネサラダを皿に人数分取り分ける。


「あ、良かったら、軽く食べて行かれます?」

と聞くと、ウンウンと頷く隊長と団長。


椅子を2脚出して、座らせて、皿を用意して・・・全員で いただきます。



海渡は、今回初めて作ったチキンフィレバーガーから食べる。


「っ!!! ランナー・バードのチキンフィレバーガー、うっめーーーー!!」

と喜ぶ海渡。


「兄貴! これ美味いっす!! ブラック・バードとどっちが美味いんすかね?」

と話ながらもガツガツと食べる。


団長と隊長もランナー・バードのチキンフィレバーガーを見よう見まねでガブリと一口。


「「!!!!!!!」」


それから、全種類を制覇した団長と隊長が、我に返りボソリと話し始める。


「これらの料理、先ほど衛兵から聞くと、海渡様が早朝からお一人でお作りになったと聞いておりますが、いつも元首自らがお作りになっているんですか!? しかも給仕まで・・・」

と驚きを隠せない様子。


「ん? そう言えばそうだね・・・ 外に出てる時って、今でも結構作ってるねww まあ、自分が食べたい料理を作るだけだしね。勿論、作り置きを出す事もあるよ。」

と答える。


「カイト君の料理は最高やからなぁ~。うちなんか、もう胃袋掴まれてもうて、メロメロやもんw」

とステファニーさん。


「普通は逆なんですけどね?」

と海渡が言うとみんな爆笑しつつも、


「いや、だってボスの料理って、本当に食べた事も無い様な物で、しかもどれも絶品ですからね。誰だって胃袋掴まれますってwww」


「だって、今、さえじま商会の従業員食堂も、レストランも、王宮も、全部、元はボスの作ったレシピでしょ? あのご飯食べるだけど、毎日頑張れる気になりますもんね。」

と弟子ズが言う。


オスカーさんも、

「そう言えば、6ヶ月前、最初に商会を立ち上げる頃も、カイト様の作った料理を毎食頂いてましたねwww 言われてみれば、カイト様、王様ですもんねwww」

と大笑い。


「でも、私も3回ぐらい朝食作った事ありますよ? まあ海渡が作った方が断然美味しいんですけどねw」


「まあでもさ、こうやって気心知れた仲間と食べられるって良いよねw 調理も給仕も、誰がやっても良いんだよ。こないだの焼き鳥なんてさ、みんなで串刺してたしw」

と言うと、

一人だけ食べてないオスカーさんが、

「カイト様!!! その焼き鳥って何ですか? 私食べてないんですがね?」

と朝食後と言うのにねだるので、BBQセットを出して、人数分、各種1本焼き始める海渡。

辺りに漂う鶏肉と油の焦げる匂いに、向こうから衛兵がガン見www


可哀想なので、手招きすると10名程が寄って来たので、皿に10人前追加で焼く。

タレの焼ける匂いも香ばしく、堪らないご様子。


焼けた物を弟子ズに廻させて、配布して行く。

そして、また追加で焼いて行く。


「「「「「「「「「「「「うっめーー!」」」」」」」」」」」」

と団長以下11名が叫ぶ。


「これは、何の肉なんですか?」

と聞くので、


「これはブラック・バードですね。 さっきのチキンフィレバーガーはランナー・バードですよ。」

と言うと、ドン引きしていた。


「え??何か拙かったですか?」

と聞くと、


「いや、普通に討伐不可能とされている幻の魔物ですからね・・・。」

と説明された。


「え?そうなの? こっちの大陸だとそうなんだね・・・」

とスルーしておいた。


「じゃあ、好奇心で聞きたいのだけど、タンカー・ホエールとか、ワイバーンとか、ミノタウロスとか、カモフラージュ・カウとかってこっちの大陸ではどうなの?」

と聞くと、


「いや、何で全部討伐不可能とか神話級とか災害級が混じってるんですか? カモフラージュ・カウを食べた人なんて聞いた事ないですし。」

と団長が力説してたので、


「いや、食べたじゃん、さっき。ホットサンドの中身、カモフラージュ・カウのお肉だし。」

と海渡が言うと、絶句していた。


「じゃあさ、話のネタついでに、タンカー・ホエールの肉食ってみる?」

と聞くと、12名がガバッとと目を見開き、ウンウンと頷いている。


なので、早速鉄板の上にバターをひいて、タンカー・ホエールのステーキを焼き始める。

付け合わせは・・・面倒だから、さっきのフライポテトと茹でたニンジンにした。

12枚をミディアムで焼き上げ、特性のステーキソースを掛けて皿を出してやる。


椅子に全員座らせて、恐る恐る肉を切って口にいれれ一噛みすると、

「「「「「「「「「うぉーーーーーーー!!!!」」」」」」」」

と全員が叫んで、一気に食べ尽くしていた。


「あ・・・、そうそう、ステータスが上がってる筈だから、見てみてww」

と海渡が言うと、


「「「「「「「「「うぉーーーーーーー!!!!」」」」」」」」

とまた更に叫んでいたwwww


「あとは、サンド・ワームとかもあるけど、それってどうなの?」

と聞くと、


「それも討伐不可能とされてる魔物です。もしかし、あるんですか!!」

と聞いてくるので、コクンと頷く。


「と言う事は、先ほどのワイバーンやミノタウロスなんかも?」

と聞くので、またコクンと頷く。


「あーー、何か聞いていた以上の事態に、頭が着いて行きません・・・

俺、暫く休暇貰って旅に出ようかな・・・」

と団長が遠い目をして空を西の空を眺めていた。


「団長! その時はお供致します!」

と隊長も現実逃避モードに。


「そうか、大陸が違うと、色々常識も違うだなぁ。まあ交流出来る距離じゃないもな。なるほど。実に興味深い。」

と海渡が言って居るが、ミノタウロスはともかく、そもそもワイバーンもタンカー・ホエールもどちらの大陸でも、普通は討伐出来ない魔物である。


カモフラージュ・カウに至っては、発見する事が不可能と言う意味である。



「さてっと、朝食も終わったし、街にでも繰り出すかw」

と片付けをして、広場を後にするのであった。


オスカーさんは、先にゲートで、戻ると言っていたので、別れたのだった。

ふふふ、早く渡したいんだよねwww




団長達から聞いた話では、この大陸にも冒険者ギルドがあるらしい。

なので、身分証代わりに登録しておこうかと現在冒険者ギルドの方へ向かっている所。

途中の屋台での買い食いは欠かせないと言う事で、大所帯での移動中。


そうそう、ここで、面白い屋台を発見した。

これは、完全にケバブだよなw

味も美味しくて、元の世界で食べたケバブを思い出してしまった。


食料品や調味料の店にも寄ったが、コレと言って新しい物は見つけられなかった。

酒屋では、お土産用のお酒を大量に樽ごと購入して、収納したら驚かれた。


オスカーさんの言っていた食器類の店に寄ると、ボーンチャイナ的な真っ白の皿に色々な絵柄が描かれたティーセットや、ソーサーセットがあった。


「ほう、これは良いね。」

と海渡が呟きつつ見て回る。


ティーセット1個で銀貨1枚くらい。ウエッジウッドなんかに比べて見ても妥当な金額? いや少し安いのか? と比較しながら見て廻る。


「あのー、すいません。ここにあるのって、在庫はどれ位ある物なんでしょうかね? ある程度数が欲しいんですが。」

と店の人に声を掛けると、


「あ、はい。いらっしゃい。どちらの物でしょうか?大体20セットずつは在庫あったと想います。」

との事だった。


「例えばですが、その在庫分全部買っちゃうと、お店として困りますか?」

と聞くと、


「え?全部!? いや、売れるのは嬉しいので、困りませんよ?www」

と冗談と受け取った感じの対応だった。


「じゃあ、今から指定した物を在庫全部でお願いします。

えっと、これ、これ、これと、これ、ああ、これも良いね。あとこれも。こっちの柄で、この形もあるなら欲しいんだけどなぁ・・。

あとこれね。

これらって、同じ物の追加オーダー掛けられますか? 追加オーダー出来るなら、200セットづつ欲しいんだけど。」

と言うと、


「もう、子供がそんな悪戯はダメですよ? これ1つで幾らすると想ってるんですか! おねーさん、怒りますよ?」

とプンスカしてた。


海渡はオーダーした物の20セット分を計算し、金貨3枚を出してカウンターの上に置いた。


「200セットは前金は半額で良い?」

と白金貨3枚をその金貨3枚の横に置く。



「・・・・・」


「あのーー、こっちの世界に、戻って来て貰えますか? もしもーしww」

と目の前で手を振ると、ハッとして復活した。


「え?え? 白金貨!? ああ、はい。200セット、了解です。ご注文ありがとうございます。」


そこで海渡はハッと思い付く!


「おねーさん、ちょっと相談なんだけどさ、このティーセットあるじゃない、これの柄の色、ピンクと青を1セットって作れたりする?

今度さ、世話になっている人が結婚するだよね。その時のお祝いにペアであげたいなぁーって思ったんだけど、どう?」

と聞くと、焼く為の時間、冷ます時間が掛かるので、1週間以上掛かるそうで・・・。


「そうか・・・1週間か・・・。結婚は4日後だから間に合わないか・・・」

としょげる海渡。


「まあ、しょうがないか。でも一応、それもオーダーで! 幾ら払えば良い?」

と聞くと、1セット銀貨1枚と大銅貨50枚との事。


じゃあと、銀貨3枚 そして、白金貨3枚をカウンターに置いて、


「出来た頃に取りに来るんで。面倒だから、全額先に払っておきますね。」

と言った。


「えええーー、全額先払い!? 何これ? 何かの罠??」

とパニくるおねーさん。


後ろで腹を抱えるフェリンシア。


すると、ステファニーさんが、

「おねーさん、この子の買い物っていっつもこんなんや。気にしたら負けやで? 罠ちゃうから安心しw」

とフォローしてくれていた。




暫くして、落ち着いたおねーさんが、


「じゃあ、今から大急ぎで在庫分全部、お包み致しますので、どちらにお持ちすれば良いでしょうか?」

と聞いて来た。


「どれくらい掛かりそう?」

と聞くと、出来れば2時間程欲しいとの事。


「じゃあ、今から、冒険者ギルドに寄って、ブラブラ観光してから帰りに寄るよ。3~4時間ぐらいあれば、余裕でしょ?」

と言うと、


「ああ、それだけあれば、助かります。でも、かなりの荷物になるけど、良いんですか?」

と聞いて来たので、


「ああ、そこら辺は大丈夫ですよw ご心配無く。」

と言って店を出た。


「ふっふっふ、相変わらず無茶な買い方やなw」

とステファニーさんが、笑っていた。



そして、色々な店も見て廻り、やっと冒険者ギルドに辿り着いたのだった。

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