第380話

異世界6ヵ月と26日目。


朝のルーチンワークを済ませ、食堂へと向かうと、ヨーコさんが待ち構えていた。


「あのぉ~カイト様・・・」

とモジモジしながら頬を赤らめている。


すると、横からオスカーさんが、

「あのぉ、昨夜話合ったのですが、出来ましたら、5日後の4月23日の火曜に結婚式をやりたいと思いまして。」

と言う事らしい。


「おっけー! じゃあ、招待する人のリストと連絡は?」

と言うと、リストを出して来た。ほう!115名か・・・中々派手になりそうだなwww

とニヤける海渡。


そんな海渡のニヤけ顔を見て、ちょっと嫌な予感がして、若干退き気味の2人。


「なるほど、トリスターのスタッフや、親戚とかを呼びたい訳だね。了解了解。じゃあ、ヒラメ君1機で足りそうかな?」

と海渡が言うと、


「そうですね。長く・・・と言っても最長で3ヶ月ぐらいですが、特に色々世話になった人も居ますし、火曜なら定休日だからと思いまして。」


「じゃあ、あとはこっちで仕切るから、安心して任せてよww」

と微笑む海渡。


「あの・・・呉々も、やり過ぎないで下さいね?」

とヨーコさんが、少し引き攣りながら、釘を刺された。


「大丈夫だよ。そこら辺は俺も成長したから、自重の出来る男だしw」

と言うと、更に疑わしい目を向けられてしまった・・・ 納得いかんな。


朝食を終え、マチルダさんを部屋に呼んだ。


リストを渡しつつ、

「マチルダ中尉! 例の作戦決行日は4月23日に決定した。 直ちにリストに載っている者全員への参加要請と出欠の確認をされたし。

尚、A班はそのまま作戦決行日まで、訓練を続行。 B班は、決戦会場の準備開始、C班は料理の手配開始。 D班の進捗状況はどうだ?」


「はっ! 了解であります! C班ですが、達成率85%、目下最終段階に突入と先ほど報告が上がっております。棟梁・・・D班の隊長からは、『ガハハ、このまま行きゃぁ、4月20日には完成だぜww 相変わらず面白れぇ仕事廻してきやがるぜw』との伝言がありました。」

とマチルダさんが敬礼しつつ、報告をする。


「そうか、了解だ。良いか、この極秘作戦は、如何に潜伏して気付かれる事無く当日を迎えられるか?に掛かっている。その事を忘れ無い様に、隊員達に通達を忘れぬ様に。」


「イエス・サー」

と再度敬礼して、部屋を出て行った。

海渡の後ろのソファーでは、フェリンシアとステファニーさんが、腹を抱えて笑い転げていた。


「いやぁ~、スタッフ増えたから、色々やりやすくなったなww 俺の方の準備は、もう完成してるから、全然OKだしw」

と海渡がニンマリと微笑む。


「ところで、今日はこれからどないするん?」


「うーん、作戦発動しちゃったから、俺の方はもう取り立ててやっとく事ないんだよね。」


「うちの方も、花火は既に仕込んであるし、問題ないで?」


「それなら、また何処か行きたいですねw」

とフェリンシアが提案。


ふむ・・・と頭の中で考えを巡らせ、

「ダンジョン?」

と海渡が無難そうな所を言うと、首を傾げるフェリンシア。


「うーーん・・・じゃあ、島でも行ってみる? こないだ地形探査ドローンが発見した所。それか別の大陸かな。」

と海渡が言うと、


「「おお!!それだ(や)!!」

と2人の声がハモるw


「最悪1泊2日ぐらいでも、ええんやろ? なら大陸行かへん? うち、他の大陸の文化とかどないなっとるんか、興味あるんやけどなぁ。」

とステファニーさんが、涎を垂らす。

なるほど、食文化だなww


「ふむ、事実に興味深い。」

とフェリンシアも涎を手の甲で拭く。


あんたら、本当にブレないねww


と言う事で、コッソリやって来ました、屋上の飛行場。


「ねぇ、なんでコッソリなん?」

とステファニーさんが聞いて来るが、


「そこは大人の事情って奴ですよ」

と海渡が言って、


ヒラメ君0号機を取り出し、中に乗り込むと、ハッチを閉めて光学迷彩をONにして、サイレントモードで離陸する。


そのままジワジワと上昇して、高度300mで、サイレントモードをOFFにした。

サイレントモードとは、重力制御を強くして、微風程度で上昇したりホバリングしたり出来るモードである。

光学迷彩とサイレントモードの組み合わせだと、ほぼ気付かれる事は無いのだ。

但し、その分、高機動が出来ないのがデメリットではあるのだが。



そしてヒラメ君0号機は、一気に1400mに上昇して、最寄りの島へとゲートで向かった。

島の上空300mの室内から、モニターと床に映し出される島の様子を見る海渡ら3名。


「なるほど、これが我々の大陸に一番近い島か。」

と無人島?を見下ろし、見て居ると・・・


「あれ?煙上がってる所あるね・・・あれ? 無人島だった筈じゃなかったっけ?」


見ると、森の奥の崖の辺りから煙りが一筋上っている。


「お? 人がおるんかな? ご飯の準備とか?」

とステファニーさん。


と言う事で、取りあえず、島の海岸に着陸しました。


「なんか、川口浩探検隊みたいでワクワクすっぞw」

と海渡が意味不明な事を口走る。

「えー、今、私は、前人未踏の島へと上陸致しました。・・・ププッwww」

と1人で喋ってウケているww


「おやぁ? 隊長!!あれは何でしょうか? 煙が見えます。」

とフェリンシア隊員が報告。


「では、我々は、あの煙の正体を確かめるべく、この前人未踏の森へと突き進んで行きます!」

と海渡が言う。


「隊長!この際、飛んで行った方が早いんちゃいますかね?」

とステファニー隊員の進言。


「では、煙のある内に飛んで行きたいと思いますw」

と言って、3人は空を飛び煙りの発生源のある崖の方へと向かった。


この島には、それなりに魔物が住んでいる様で、赤い点の反応がそれなりにある。

もっとも、弱い魔物ばかりで、食料には困らないぐらいかな。


水は、崖から300m程西に向かった所に小さい川が見える。

もしかすると、他にもあるかも知れない。


島のサイズは、歪な形であるが、ザックリ縦最長7km×横最長5kmぐらいの菱形っぽい感じ。

砂浜は1箇所で、残りは落差のある崖や岩肌となっていた。


ザッと上から見た感じ、船や筏は無さそうだから、漁業は釣りぐらいかな?




頭の中で、思いを巡らせている内に、煙の向こうの崖に洞穴が見えて来て、人の生活の気配がした。

何より驚いたのは、横に飛行船?気球?の残骸の様な物が落ちていた事。


「ありゃりゃ? もしかして遭難者か?」

と海渡が言うと、ステファニーさんが、


「え?遭難者? 何でそう思うん?」

と海渡に聞く。


「ほら、そこに飛行船だか気球だかの残骸みたいなのがあるでしょ?

あれで空を飛んで来たけど、墜落って線が濃厚かな? ってね。」


近付くとマップに人っぽい反応が出たが、3名の内、2名はかなり反応が弱い。

「3人中、2人怪我してるのかもしれないな。」

と呟きつつ、洞窟の前に着地した。



「おーーい、こんにちはーー! 誰か居ますかかーー?」

と大きな声で話掛けると、


中から、木の棒の先に金属の破片の様な物を取り付けた髭もじゃの男の人・・・20代後半?? がボロボロの身なりで出て来た。


「人・・・だと? 幻聴か? 幻か?」

と呟きながら、海渡達3名を見て、しきりと目を擦ったりしている。


「幻聴でも、幻でもないですよ。こんにちは、通りがかりの者ですが、何かお困りのようで。奥の2人は怪我か病気ですか?」

と応えると、


いきなり、「うぉーーーーーーーーー!!!」

と天を仰ぎ見て、跪き両手を上に上げながら泣いていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る