第381話


「回復魔法とか使えるので、チャッチャと治療しちゃって良いですかね?」

と言うと、


「本当か!! た、頼む!!!」

案内された。


海渡達は、男の案内で洞窟の奥の部屋へと通された。

中には、女性20代後半?と女の子は海渡と同じくらいか?


『智恵子さん、この2人はどんな感じ? 添え木がしてあるって事は、骨折?からの感染症とかかな?』


『はい、骨折と、内臓がかなりダメージ受けてますね。 弱って居る所への感染と敗血症でかなり拙い状態です。大人の女性の方は、背骨の圧縮骨折もありますね。

生きているのが不思議な状態です。後ろの男性も気丈にしてますが、肋骨を骨折してます。』


との事だった。


ヤバいじゃん。


海渡は3人と洞窟にクリーンをかけ、更にばい菌やウィルスを殺し、骨折箇所や神経、筋肉、血管、内臓等の部位を再生し、脳細胞のダメージも回復するイメージを作り、『ヒール』


3人の体が激しく光り、「うぉ?」と男性が驚きの声を漏らす。


光りが収まった後には、床に寝かされた女性と女の子の息も整い、顔色も少しずつ良くなって来た。


「危ない所でしたね。もう骨折箇所も全て回復してます。 まずは、これをお飲み下さい。」

と3杯のハチミツ水のコップを取り出して、男性に1つ渡し、フェリンシアとステファニーさんに彼女らに少しずつスプーンで飲ませる様にスプーンを入れて渡した。


フェリンシアは、女の子を、ステファニーさんが女性の上体を抱き起こし、口を開かせて、少しずつスプーンで掬い口へと流し込む。

見る見る血色が良くなり、暫くすると、女性が目を開ける。


「あれ? ここは? あ、あの子は? 私のキャサリンは、どうなったの? と辺りを見回して、スプーンでハチミツ水を飲まされている女の子を見つけ、この子は?」

と動揺していた。


「あ、目が覚めましたか? お二人とももう大丈夫ですよ。全て回復してます。 その添え木も要らないですよ。骨折も治ってますよ。あなたも足の感覚が戻ってるでしょ?

動かせる筈です。足の指から少しずつ動かしてみてください。」

と海渡が言うと、


「ああ、足の感覚がある。指も動きます。じゃあ、キャサリンも大丈夫なんですね!?」


「ええ、ご安心下さい。3名共骨折も全て治ってますよ。感染症や敗血症も治療してます。切れた神経も繋がってます。大丈夫です。女の子は直に目が覚めますから。」

と海渡が再度説明する。


「ありがどうございまずーー!」と女性が号泣・・・。


「本当にありがとう! 何とお礼を言って良いか・・・お礼に渡す物も何も残ってなくて・・・もし、この俺の体で良ければ、奴隷として売るなりなんなり・・・」

と男性も泣きながらお礼を言って来た。


「いえいえ、困った時は、お互い様って事で。しかし、骨折の具合と表の飛行船か気球らしき物の残骸から見て、墜落ですか?」

と海渡が聞くと、


「え!? 気球を知ってるのか!!!」

と男性が海渡に食いついて来た。


「ええ、この大気の中の軽い種類の空気や、熱した空気を入れて、その浮力で浮く風船って所ですね。」

と海渡が言うと、驚いていた。


「ん?そう言えば、さっき、『通りがかりの者』とかって言ってたよな? こんな離れ小島に? 船か? でも海には魔物が沢山いるし、何処か近くに人の住む陸地でもあるのか?」

と聞いて来たので、


「ああ、後でお見せしますが、飛行機と言う空を飛ぶ魔道具で飛んで来ました。」

と応えると、


「うぉーーーー!!!」

と男性がまた吠えたwwww

その様子を見た女性が片手で頭を抱えて苦笑いしている。



「もしかして皆さんはご家族ですか?」

と聞くと、


「ああ、すまない・・・自己紹介が遅れてしまった。 私は魔道具技師のサンチェス、そっちが妻のベーパー、そこの子、キャサリンは私達の娘だ。」

と。


「あれ?私どうなったの? 足痛くないよ?」

と目を覚ましたキャサリンが、キョトンとしていた。


「「キャサリン!!!!」」

と両親がキャサリンに駆け寄り抱きしめていた・・・フェリンシアごとwww


フェリンシアは抜群の反射神経で、コップとスプーンを両手に持って万歳していたw


「パパ、ママ、良かった、みんな無事だったんだね。」

とキャサリンも涙ぐんでいた。




一頻り、回復の感動を満喫した頃、

「ところで、このおねーちゃんと、男の子は誰?」

と不思議そうに聞いて来た。


「ああ、申し遅れました。 私は海渡。そこに皆さんと一緒に抱きつかれているのは、フェリンシア、こっちはステファニーと申します。」

とお辞儀をすると、


「カイト君って言うんだ、私キャサリン宜しくね。あとフェリンシアさんもステファニーさんも、助けてくれてありがとう!」

と無邪気な笑顔でお礼を言った。


「そうそう、足のギブス外して、歩いてごらん?」

と言うと、まだ余韻醒めやらぬ両親を手で押しのけ、自分でギブスを外しに掛かる。


ペーパーさんが、手伝って、やっと外れた添え木の下から、真っ白で傷1つ無い綺麗な足が出て来る。


ムクッと立ち上がるものの、少しよろけた。


海渡は一瞬で5mの距離を移動し、体を支えてやると、驚きつつも、


「ありがと・・・」と頬を染めていた。


手をソッと離すと、ジワジワ歩きだして、

「大丈夫w ちょっとフラフラするけど、歩けるわ!!」

と喜んでいた。



3人にコップのハチミツ水を継ぎ足して、飲んで貰いつつ、

「あのぉ~、お腹減ってるんじゃないですか?」

と聞いてみると、3人がコクコクと頷く。


「じゃあ、まずは消化の良い雑炊かなぁ?」

とテーブルと椅子を出して、雑炊を入れたお椀とスプーンをテーブルの上に置き・・・ツンツンとされるので、3人分追加して置いて、

「さあ、食べましょう!」

と、6名全員が席に着いた。

何故か3人はポカンとしている。


「ん? 食べないんですか?」

と聞くと、


「て、テーブル・・・椅子? 何処から?」

といきなり出て来たテーブルと椅子で、固まっていたらしい。


「ああ、アイテムボックスと言うスキルですよ。生物以外は出し入れ出来るんで。」

と雑な説明をすると、

「へ? そんなスキルあるの?」

ってビックリしていた。

そうか、もしかして違う大陸から来たんだろうなぁ?


「まあ、後でユックリ話をしましょう。今は先に食べて栄養を付けて下さい。良く噛んで食べるんですよ?」

と話を切り上げた。



最後に食べて4日間程、たっていたらしく、3人は黙々と食べて、食べ終わる前に、今度はサンドイッチを皿に盛って出し、冷たいミルクを出してやった。


今度はサンドイッチをムシャムシャと食べながらミルクを飲む。

「あまり一気に食べると、お腹がビックリしちゃうから、続きはまた後にしましょう。」

と海渡が皿のサンドイッチが無くなる頃に言うと、ちょっと悲しそうな顔をしていたwww


食後の紅茶を出してやり、話を聞くと・・・

やはり海渡らとは別の大陸・・・今日海渡が行こうとしていた大陸から、自分で作った気球に乗って、逃げて来たそうだ。


何やったの?って聞くと、

空飛ぶ魔道具ってのが宗教的な禁忌に当たると言う事で、聖騎士に捕まる所を寸前で、空に逃げたそうで。

碌な準備時間が無くて、着の身着のままで、動力の魔石も途中で切れて、最後は運良くこの島に不時着?墜落だったらしい。


海渡が、タブレットで、現在位置と一番近い大陸の地図を見せると、これまた凄く驚いていた。


「なるほど、この大陸ですか・・・ これですか?逃げ出した都市ってのは?」

と緑の点を指さすと、


「えっと、これがあの街道だから・・・そうですね。ここがザインバッファ王国の王都となります。」


ほう、ザインバッファ王国って言うのか。

で、このザインバッファ王国の王様は、非常に賢王で、国民の信も厚く、良い国だそうだ。

ただ、この大陸全土を牛耳っているザイリアン教で、女神ザイリー様を主神と仰ぎ、少しでも自分らの意に添わない事をすると、聖敵として聖騎士団が動き、神への反逆者として討ち取ってしまうそうだ。

ここ100年だけで、3つの国がそれで滅んでいると・・・。


「へーー、ザイリアン教で、女神ザイリー様ねぇ。可笑しいね、ここノバの主神って女神ジーナ様だよね?」

と海渡が言うと、ウンウンとフェリンシアとステファニーさんが頷く。


『ねえ、智恵子さん、女神ザイリー様なんて神様は居るの?』

と聞くと、


『ああ、堕天使ザイリーですね。それ、好き勝手やらかして、何個か星や文明を滅ぼした為、女神ジーナ様や他の神々からの怒りを買ってファンテスタ神域を追放された、神ではなく、ただの天使ですよ。

今じゃあ、邪神ですね。見かけたら、真っ先に討伐すべし って司令でてますよww』

との事。


「あーー、その女神ザイリーって女神でもなんでもないよ、滅茶苦茶やってファンテスタ神域を追放されたタダの堕天使だってよ。つまり、邪神なんだって。本当のこの世界の女神様が怒ってるらしいよー。」

と海渡が言うと、

「え!? 女神ジーナ様・・・あ!500年位前の資料でその名前に聞き覚えあります! そう言えば400年ちょっと前に宗教戦争?があった様な資料を読んだ事もあります。なるほど、何となく納得いく話ですね。」

とサンチェスが顎に手を当てながら考え込んでいた。


「まあ、ともかくさ、ずっとこの島に居たい訳じゃないんでしょ?」

と聞くと、


「ええ、風で流されて来ただけなんで・・・しかし、あの大陸には帰る所はもう・・・」

と親子3人が暗い顔をする。


「うん、じゃあさ、俺達の国においでよ。邪神が消えるまででも良いし、面白い魔道具とか沢山あるよ?」

と言うと、即決だったw


海渡は、通信機を取り出し、メイドのマチルダさんに、スピーカーモードで連絡を入れる。

1コールで、繋がった。


「こちらエクスプローラ0の海渡。マチルダ中尉、応答されたし! オーバー」


「はっ!こちらはマチルダであります。オーバー」


「今から約1時間で、ベースへと帰還予定。尚、要救助者3名を確保。繰り返す要救助者3名を確保。

男性1名、身長推定187cm 体型スリム W73 靴サイズ27.5cm、女性1名、身長推定170cm、体型B84C W58 H86 靴25cm、 女の子1名 推定6歳 身長137cm 体型スリム W38 靴18.5cm。

至急 要救助者3名の衣服一式とゲストルームの用意をされたし。待遇AFとなる。オーバー。」


「マチルダ了解。至急作戦行動に入ります。オーバー」

と言う事で通信を切る。


ポカンとしてる3名に、

「ああ、これですか? これは通信機ですね。どれだけ離れていても、特定の相手に連絡が取れるんですよ。」

と説明すると、


「そ、それも魔道具ですよね!? うーん、どれだけカイト様の大陸は進んでるんだ・・・」

と驚きを通り越して、愕然としていた。


「ふふふ・・・魔道具を作る者やったら、これとかこれから載る飛行機ちゅうんが、どれだけ非常識な物か判るで? 全部カイト君の作品なんやでww」

とステファニーさんが、誇らし気に胸を張る。


「カイト君凄いです!」

とキャサリンちゃんも目をキラキラさせていた。

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