第369話


南門をくぐり抜け、平和なトリスターの屋台で買い食いしつつ、宿舎へと戻ると、オスカーさんとヨーコさんが海渡を見つけ、

「「お帰りなさい、カイト様、フェリンシア様、そしてお疲れ様でした、ステファニーさん。」」

と笑顔で迎えてくれた。


「ども!何か早く終わっちゃったんで、帰って来ましたw」

と海渡。


「いやぁ~、見ましたよ? 派手でしたねぇ~」

とオスカーさん。


「まあ、あれくらいやれば、変な気は起こさないかな?ってね。」

と言うと、ハハハハと渇いた笑いを出していた。



その後、宮殿の映像を見せて、全員で大いに笑った。

「ちょっ・・・何やってるんすかwwww」

「あーーー!リンゴの芯ーーーwwww」

「あーーー!バナナの皮ーーーwwww」

とか色々で、笑い転げる2人。


「ちょっ・・・笑い死ぬーーーwww」


結果、涙を流しながら、ハァハァ肩で息をするオスカーさんと、ヨーコさんだった。


で、明日アルマーさんの領主館で、両国王との会談に参加する事になったと告げると、少し曇り顔になっていた。




昼食後、弟子ズと逢って、先日のお礼を言うと、


「少しでもお役に立てて良かったです!」

と言ってくれた。


その後、希望の岬に寄って、アルバイン君ら189名と面会した。


「どう? 少しは落ち着けたかな?」

と海渡が尋ねると、


「「「「「救って頂き、本当にありがとうございました。」」」」」

と全員が声を揃えてお礼を言って来た。


「ははは、まあ昨日にお礼は頂いてるから、大丈夫だよ。」

と言うと、それだけでなく、あの忌まわしい国を潰してくれた事も含めての事だそうだ。




「何か、足り無い物とかあれば、用意するし、質問あれば答えられる範囲で答えるよ?」

とおやつのシュークリームや、ケーキや、パイ等を出して、1人1個とカフェオレや紅茶などを用意して全員に食べさせながら言うと、


「カイト様! このとんでもなく美味しい物はカイト様の所の商品なんですか?」

と一人の少女が、顔をトロンとさせながら、質問してきた。


「ああ、それは、ショートケーキだね。 そうだよ。うちの店舗で、カフェって言うのがあってね、そう言う甘いお菓子をスイーツって言うんだけど、それを専門に売っているんだよ。

まだ他にも種類が沢山あってね。そのうち機会あれば、また持って来るからね。」

と言うと、嬉し気にしていた。


「昨日、弟子のお方にお聞きしたんですが、昨日から頂いている食事は、カイト様の所では、普通に従業員に出ている食事とお聞きしたんですが、本当ですか?」

と別の少年が聞いて来た。


「そうです。ワンスロットのトリスターに本店があり、そことあと幾つかの厨房で全店舗の食堂の分を纏めて作ってまして、全員何処の支店でも同じ物を提供しています。」

と答えると、「「「「「おおおーー」」」」」と唸っていた。


「こちらの凄い施設ですが、これが従業員宿舎だとお聞きしたんですが、本当にこんな凄い所を全従業員に与えているんですか?」

と別の少女が質問する。


「実は、この従業員宿舎は、旧タイプでして。今はもっと凄い総合型の施設になってます。~~(ry」

と孤児支援プログラムの事や、託児ルームや、シングル家庭用支援の事等等。


「マジですかーー・・・・」

と全員が驚いていた。


「あのー、海渡様は冒険者でもあるとお聞きしたんですが、SSSランクと言うのは?」

と別の少年が質問。


「ええ、俺とフェリンシアはSSSランクです。こちらのステファニーさんはSランクですね。弟子達は1名以外はBランクだったかな? まあ、7名共多分Sランク近い実力があると思いますが。」

と言うと、更に驚いていた。


「あの・・・、これからあの旧帝国はどうなって行くんでしょうかね?」

と別の少年が質問する。


「うーーん・・・。それは俺が何とかする話ではなく、ワンスロット王とコーデリア王が2分割で領土を分けるのか、それとも誰か代理統治させる人物を送り込んで一括統治させるのか・・・。

俺にも判らないんですよね。一応、明日の昼にトリスターで両国王と話す事になってますが。ただ、今までの統治が余りにも酷すぎた。そしてその期間が長すぎて、大人達に染みついてしまってますからねぇ。

新しく、コーデリアやワンスロットの様な、常識ある統治をしようとしても、難しいんじゃないかと、私は思います。今は、辛うじて、恐怖で治安維持してるだけですからね。

これのタガが外れたら、一気に略奪や強姦、殺人等が横行すると思いますよ。」

と言うと、「だよな・・・」と呟き少し暗い顔をしていた。


「あのー、カイト様が統治されれば良い国になるんじゃないでしょうか?」

と別の少女が言う。


「あーー、それは無理かなぁ。俺って支配者とかには向かないですし、統治能力なんてないですよ? 今の商会だって、スタッフに支えられて運営して貰っているぐらいですからww

それにね、もしそう言う話があったとしても、決定的に人員が足り無いんですよ。今、うちの従業員全員で約4000人弱ですが、その半分を一気に統治に廻しても、足り無いですよね。」

と言うと、シュンとしていた。


「まあ、明日の話し合いでどう言う事になるか、決まると思うので、決まったらまたお知らせしますよ。」

と言うと、頷いていた。



他にも、コーデリアってどんな国?とか、ワンスロットってどんな所?とか、エルフや獣人も弟子にいたけど、差別とか揉め事とかって無いの?とか色々な質問をされた。


「逆に帝国がどんな国だったか、知らないんだけど、どうだった? 差別とか・・・ あとエルフや獣人とかって帝国に居たの?」

と聞くと、基本人族であっても差別だらけ。人族以外は最悪の環境にあるとの事。


彼らは獣人もエルフも昨日初めて見たらしい。帝都には居ないのかも・・・。


「つまり要約すると、帝国の常識では、自分より立場の弱い物を見つけたら、取りあえず虐めておけ! 優位性を誇示しとけ! 強い者が弱みを見せたら、すかさず引き釣り降ろせ! ってのがあるので間違いない?」

と言うと、全員がウンウンと頷いていた。



暫く話をして、また来るよ! と帝都上空の0号機にやって来た海渡達。


「ねえ、もしかして、エルフやドワーフ、獣人達ってどっかの都市に連れて来られてる可能性無い? 居たら助け出したいよね?」

とステファニーさんに聞いてみると、頷いていた。


『智恵子さん、攫われて来ているエルフ、ドワーフ、獣人って何処かに居る?』

と聞くと、2つの都市に集中している事が判明した。

その数、278名・・・。


内訳は、エルフ族102名、ドワーフ族82名、獣人22名だそうだ。

「げげ・・・多いな。」


どちらもコーデリアの国境近くの都市である。


海渡は、弟子ズを0号機に呼んで、合流した後、0号機ごとその都市に向かう事とした。



ゲートでショットカットし、光学迷彩をOFFにした状態で、赤く煮えたぎっている領主館跡地の上でホバリングさせる。風魔法と水魔法と時空間魔法を合わせ、地表の熱を奪うイメージで急速に溶岩の大地を冷やして行く。

そして冷え切った地面に滑走路を作成し、着地した。


この都市の住民は驚きながら、その光景を家の窓や、路地裏に隠れて見ている。


後部ハッチから、獣人、4名、子供2名、大人のエルフ1名が出て来た事に更に驚く。


海渡らは、獣人の固まっているエリアへと空を飛んで去って行った。

ここか・・・見ると、収容所の様な場所で、煙突も沢山ある事から、鍛冶仕事もさせているらしい。

海渡がその塀の高い施設の中庭に降りると、いきなり、兵の様な奴らが飛び出して来た。


「お前ら何処から来た!? 何で空を飛んでる?」

と剣を構えている。


海渡が、

「おい、武装放棄する様に命じたよな?」

と言うと、


「そ、その声は・・・」

と言って、いきなり剣や槍を手放した。


「ここに居る、不法に連れて来られた人々を連れ戻しに来た。

全員をここに今すぐ連れて来い。」

と言うと、2名が走って建物へと消えて行った。


5分ぐらい過ぎると、エルフ、ドワーフ、それに人族等続々とやって来た。

全員やつれ、部位欠損がある者も多く居た。


全員漏れが無い事を確かめ、一気に全員に損傷部位まで生えるイメージでヒールを発動する。

全員の体が激しく光り、損傷部位や欠損部位が無くなり、痩せ細っては居るものの、五体満足な人々が現れた。

ここでの数は、エルフ55名、ドワーフ28名、人族22名だった。

人族の22名は、近隣から攫われて無理矢理働かせられていた子供らだった。

泣いて喜ぶ全員を宥め、リモートで0号機を呼び、全員を後部ハッチから、中に入れた。


そして、ハチミツ水を与え、一時的に『希望の岬』へと送り込んだ。


この都市のもう1箇所にエルフの反応がある。

海渡らは、自ら飛んで行く。


すると、そこは、娼館であった・・・。

15名のエルフの女性が隷属の首輪で繋がれていた。

人族の少女や女性も同様。


どうやら、そう言う悪質な娼館らしい。

海渡らが、入って行くと、従業員らしい、所謂チンピラが出て来て、脅しをかけて来た。

「おら、小僧共、何しに勝手に入って来やがった? ここは誰のシマだと思ってやがる?」

とナイフをちらつかせいる。


サクッと、電撃を放ち、麻痺状態にすると、奥の監禁部屋から、あられもない姿の達を全員救出したのだった。

更に智恵子さん情報によると、ここら一帯の娼館は全部拉致された女性で構成されている事が判明し、ダニを一掃しつつ、全員を救出し、隷属の首輪を外した。

全員を心も体も癒やし、性病や純潔も癒やすイメージでヒールを掛けた。


そして、聞き出したこの街のマフィアのアジトと構成員全員を処分して消した。


エルフ15名と人族の女性72名は、悩んだあげく、別荘の横に別の宿舎を建てて、一時収容する事にした。

多分、暫く男性の側には居たくないのでは無いかと言う配慮である。


「本当に胸くそ悪い国だな!!!!」

とやり場の無い怒りを漏らす海渡。



そして次の都市へと向かい、同様に エルフ32名、ドワーフ54名、獣人22名、人族68名を救出。

全員にヒールを掛けて、娼館から救出したエルフ20名、獣人22名、人族60名はやはり別荘の横に宿舎を出して一時収容した。


更にこの街でも地下に潜ってるマフィアや犯罪組織を一掃し綺麗に消去したのだった。

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