第346話
空港を飛び立って、30分で、現地の待ち合わせポイントへ到着する。
街というか、集落からゾロゾロとエルフがやって来た。
代表のエルフに海渡達を紹介するドロスさん。
「初めまして。さえじま商会のカイトと申します。この度は、無理なお願いを聞いて頂き、ありがとうございます。
宜しくお願い致しますね。」
と海渡が頭を下げる。
「どうも、ダンケと申します。一応、このグループのリーダー的な纏め役になってます。
この度は、本当に良い話を頂けて、助かりました。感謝しております。」
と頭を下げて来た。
おや? 助かった??? どう言う事??
と思っていたら、3連続の水害でやられてしまって、畑も田んぼも全滅してしまったそうな。
なので、集落を解体して、銘々何処かの集落や、王都とかで働くなり、と言う事に決まった所に、王宮の方から話が来たそうだ。
「わぁ・・・それは本当に災難でしたね。 え?集落の解体と言う事は、他にも行き先の決まって無い方とか居るじゃないんですか?」
と聞くと、残り半数がまだ具体的な事が決まってないそうだ。
「えーー。それはキツいですね。ちょっとここに全員呼べませんかね? ご提案したい事がありまして。多分悪い話ではないと思いますが。」
と海渡が言うと、早速1人に指示して、10分ぐらいで、集落全員が集合した。
「あ、はじめまして。私はさえじま商会をやっております、海渡と申します。こちらはパートナーのフェリンシア、そしてこちらが、当方の商会の開発チーフのステファニー・ヨハンソンさん。
コーデリアではあまり馴染みの無い商会名だと思いますが、ワンスロット王国の方では、結構手広くやっております。」
と言うと、
ゴソゴソと「おい、ステファニー・ヨハンソンってあの魔道具の天才のステファニーさんか!」とか囁き合っている。
すると、ドロスさんが援護射撃。
「ああ、そのステファニーで合ってるぞ! このカイト君の魔道具に惚れ込んで、彼女が押しかけていったんだぞwww」
と微妙な・・・
「それにな、この乗って来た飛行機も彼の開発した魔道具だ。」
と説明した。
住民、更にワイワイ、ガヤガヤ。
「えーー、話は元に戻りますが、行き先が決まって居ないと言う話を聞きまして、私が大好きなコーデリア料理の元を作って下さっている皆さんに、少しでもお力になれないかと、考えました。
1)当方の商会で働く。 これは様々な店舗や職種があります。
コーデリアの王都でも明日オープンします。まだ人員は募集中です。
生産部門はワンスロットのトリスターにあります。生産部門をご希望の場合は、
トリスターに移転して貰う事になります。
何処の支店でもですが、希望者には、全員従業員宿舎を用意しております。
3食食事も出ますし、お風呂もあります。
2)これからダンケさんが向かう、テリラス領のジャックさんに掛け合って、
全員を受け入れて貰う。
まあ、ジャックさんは非常に領民思いの方で、自分のご家族が重病でギリギリの
所でも、領民を優先される様なお方なので、間違い無く受け入れて貰えると
思います。
ただ、ダンケさんらの住宅は用意されてるのですが、全員となると、住宅が足り
ない可能性もあります。
テリラス領は、農業がメインとなる所でして、そこで出来る野菜は、おそらく
食べて頂くと判りますが、最高の野菜を産出しています。
住民も良い方が多いと思います。
当方と提携してコーヒー農園もやっている所です。
稲作にも適した場所なので、おそらく、初年度から豊作だと思います。
3)私なのですが、ワンストット王家から、何処でも未開発の場所を開発して良いと
許可を頂いております。
なので、私が密かに開発しようかと思っている場所があるので、そこを一気に
開発して、田畑を作って頂いて、今までの様に暮らして頂く事も可能です。
ダンケさん達も、テリラス領での稲作等の講習期間が終われば、そこに合流して
頂いて、同様の生活をして頂けます。
この場合の、メリットですが、当方の別荘ぐらいしか無い所なので、皆様の今の
家をそのまま持って行く事が可能です。
勿論、生活必需品や、必要な物資等、次の収穫までの食料も全て、私の方で準備
させて頂きます。
と言う3通りなんですが、如何でしょうか?」
と一気に説明すると、1人のエルフが手を挙げた。
「はい、質問ですね? どうぞ!」
「あー、幾つか質問してぇんだ。2つ目だが、その領の住民って人族だべ? オラ達の様なエルフが来たら、嫌がらせとかされねーべか?」
「あーー、なるほど、差別や虐め等ですね。断言は出来ないですが、トリスターにも何人かエルフの方がいます。ステファニーさんもそうですし、
他にもドロスさんの妹さんサンドラ・フォスティニアさんや、当方の生産部門のチーフのダスティン・サインツさん等です。
しかし、トリスターで、そう言う事は聞きませんね。 どうですか?ステファニーさん。」
と話を振ると、
「ああ、うちもサンドラも、街のみんなには良くしてもろうとるよ? 差別も虐めも経験はないなぁ。」
「と言う事なので、おそらく同じ様にテリラス領も特に何かは無いと思います。まあ、絶対とは言えないのですが、それは人と人が複数いれば、中には良く無い奴も紛れるので、種族云々とは別かと思いますね。」
と答えると、「なるほど。」と納得してくれた。
更に別の人が手を挙げ、
「あのー、2つ目の場合なんだが、おら達にも土地をくれるだか? それとも小作農的に使われるだけかや?」
「あー、なるほど。くれると言うよりは、多分、ご自分で開拓する事になると思います。」
と言うと、肩を落としていた。
また別の人が手を挙げた。
「あのぉー、3つ目だが、その土地は農作物に適した土地かや?」
と聞いて来た。
あ、そう言えばそうだな。全然確かめて無かったな。
『智恵子さん、ごめん、あの最南端のダンジョンの上の土地って、農作に向いてるのかな?』
と聞くと、
『ええ、ダンジョンがある場所なんで、魔素が多く含まれた土地です。だから美味しい農作物が育ちますよ。稲作も可能ですし、何より、海渡さんにはラピスの泉の水があるじゃないですか。
それに、ユグドラシルの種を粉末にして蒔けば、肥沃な土地で豊作間違い無しです。』
と。
「ああ、畑も田んぼも、両方美味しい物が出来るぞ! それは保証するぞ!!」
と答えると、
「じゃあ、その土地には魔物とかはでねぇか?」
と言うので、
「ああ、海の側なんだが、森も近くにある事はある。 森にはそんなに強い魔物は居なかったと思う。 しかし、魔物が入って来れない様に、住むならばデッカい城壁を作るぞ?」
と答えると、「「「「おーーー!!」」」」と声が上がった。
「すまん、カイト君、俺ちょっとこの後の用事あるから、長そうだし、任せて良いかな?」
とドロスさん・・・ おいおい、あんたの所の国民だろうに・・・とは思ったが、移住も絡めた話なので、ニッコリ了承した。
その笑顔に少しビビりつつ、ドロスさん達が帰って行った。
「なあ、重要な話だし、立ち話もなんだから、ここらで、軽く飯でも食いながら、座って話さないか?」
と海渡が提案する。
そう、さっきから、彼方此方でお腹空いた子供とか見え隠れしてるんだよね。
海渡は、巨大なテーブルを2つ用意し、椅子も人数分用意した。
BBQセットを出して、黙々とサンド・ワームのブロックから切り出した、ステーキを焼き始める。
ジューっと言う音と共に、肉の焼ける良い匂いが漂って来る。
「さあ、立ってないで、座った座った! もしかして、食料尽き掛けてたんじゃないの? ちゃんとお腹いっぱいにしないと、正しい判断出来ないよ?」
と全員を座らせる。
ダンケさんら10家族、28名と、残り12家族33名分のステーキをドンドン並べて行く海渡。
あれれ? ステーキ足りない? 28+33=61だよな・・・何で2枚足りない?
と思ったら、ちゃっかり、フェリンシアとステファニーさんまで座ってやがる。
涎拭けよ! 手伝えよ!!!
と心の中で、怒鳴る海渡だった。
しょうがないので、更に4枚焼いて、スープやパン、マツタケご飯のお握り、ポテトサラダ等をドンドン出して行く。
一足先に食べたエルフは、「「「「うっめーーー!!!」」」」と叫んでいた。
「そら、伝説のグルメ魔物、サンド・ワームのステーキやからな、美味いんは当然や。更に調理界の貴公子と呼ばれるカイト君の料理やで? 美味くない訳が無いわww」
とうちの食いしん坊エルフが言うと、隣で肉を頬張る美少女がウンウンと頷いていた。
「いつから貴公子なんて呼ばれてるのか、何処界隈の話なのかは、全く理解出来ないですが。」
と言うと、笑っていた。
全員ステーキを食べきったが、まだまだ行けそうな感じだったので、今度はタンカー・ホエールの肉ブロックを出して、ステーキを焼いて出すと、
「「「「なんじゃこりゃー! マジうめーー」」」」
とまた叫び声がw
「そら、お伽噺の中の魔物、タンカー・ホエールのステーキやからな、美味いんは当然や。更に調理界の貴公子と呼ばれるカイト君の料理やで? 美味くない訳が無いわww」
と軽くデジャブな台詞を吐くステファニーさん。
隣で肉を頬張る美少女がウンウンと頷いている。
「君ら、相変わらずブレが無いね。」
と呆れる海渡に、61名のエルフが爆笑していた。
「ところで、あんた、さっきからポンポン出してきてるようだが、それはもしかして、お伽噺に出て来るアイテムボックスちゅうスキルだか?」
と1人のエルフが、今更ながらに聞いて来た。
「ええ、お陰様で、アイテムボックスのスキル持ってます。 だから、さっき3つ目のプランの場合、家ごと運べると言ったと思いますが、そう言う訳ですよ。」
と説明すると、「「「「「うぉーーーーー!!!」」」」」と唸り声を上げていた。
結局なのだが、全員が選んだのは3番のプラン。
ダンケさんが、
「なあ、何で、俺達にそこまでしてくれるんだ?」
と不安気に聞いて来た。
「ふっふっふ、それは俺にもメリットがあるからですよ。
俺は、美味しいお米と美味しいお味噌汁、美味しい醤油で刺身を食べたからですよ。
お米が尽き掛けるあの恐怖・・・ああ、恐ろしかった。
もうあんな思いはしたくない! と言う訳です。」
と胸を張って言うと、全員が大笑いしていた。
「いや、皆さん、笑いますが、どうせまたお米が手に入ると思っているからですよ?
俺が、お米をあげた時のサンドラさんも、ダスティンさんも、号泣してましたからね?
あれは、一度完全に失った物じゃないと判らないですよ。」
と真剣に言うと、また笑われた。
「カイト君で良いか? 君も変わってるねぇ。 エルフなら判るけど、人族だよね? 何でそんなにコーデリア料理に詳しいの?」
と不思議そうにしていた。
そのダンケさんらだが、稲作等の講習期間が終われば、みんなと合流する事になった。
持ち物の事もあるので、マジックバックを全家庭に1つ、更にはマジックポーチを全員に渡した。
ダンケさんらは、持ち運べる物だけを持って、後は残念だがおいて行く予定だったそうだ。
なので、もう一回家に行って、荷物を詰め直すらしい。
お腹も膨れ、希望に輝く目に戻ったエルフ達が、一斉に動き出した。
海渡は、食べ終わった皿等を片付け、収納して行く。デカいテーブルと椅子を収納し、最後にBBQセットを収納した。
エルフ達が、駆け回る集落の側まで来て、飛行機を取り出して置いた。
乗員が多いので、フェリンシアの機体も出して貰う。
椅子とテーブルを出して、ゆっくりと食後のコーヒーを3人で飲む。
「カイト君、うちの同胞を救ってくれてありがとな!」
とステファニーさんが、お礼を言ってきた。
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