第347話


荷物の整理が終わった、エルフの家を土台ごと切り離し、ポンポン収納して行く海渡ら3人。


しかし、ここで大きな問題が出た。

家畜である。


「あ・・・家畜か・・・」

と思わず、海渡の手が止まる。


小さい集落とは言え、農家で他の集落からもかなりの距離があるので、結構な数の家畜が居る。

牛の様なのが約90頭、馬が約40頭、鶏の様なのが約200匹。


アイテムボックスには死骸なら入るのだが、生き物はダメ。

つまり家畜は別手段で運搬する必要がある訳だ。


「さて、どうするか。」

と唸っていると、フェリンシアがナイスな提案。


「ねえ、海渡、あのドローン・・・ヒラメ君? 使えば?」

と。


「おお!その手があったか。 1機は持ち歩いてるけど、3機ぐらいあれば、住民込みで一気に運べるよな。」

と言う事で、コッソリ家の裏から秘密基地の格納庫へ飛び、3機を収納して戻って来た。


牛の様なの約90頭を1機にドンドンと運んで貰う。

うん、何とか1機に収まったね。

次に馬と鶏の様なのを1機に積む。

犬や猫も悪いけど、同じ機体に詰め込んだ。


そして、フェリンシアには、ヘルプ要員として、弟子ズ7名を連れてきて貰う事にした。

海渡から、ラルク少年に連絡し、

「悪いんだけど、2泊ぐらいの感じで、ちょっと手伝って!」

と言うと、大喜びしていた。南門の飛行場に7名で来る様にお願いしておいた。



残り1機に、全員を乗せた。残りの2機は、この機と編隊を組んで追従する様にセットしてある。

初めて乗る新型機にワクワクのステファニーさんが横で五月蠅いwww

(一応、ゲルハルト帝国戦で使う最新兵器である事は伝えてある)


巨大なスカイブルーのデジタルカモフラージュのヒラメ君が3機、ユックリと飛び上がり、上空の彼方へと上がって行った。


高度1000mから更に上昇を続け、最南端の方に機首を向けた。


このまま飛ぶと、どうしてもゲルハルト帝国の上空を飛ぶ事になってしまう。

なので、このままゲートで岬近くまでショートカットする事にした。

3機編隊飛行のまま、上空に出来た巨大な黒いゲートを潜り、最南端の岬へ到着する。


そして別荘の前に3機が着陸した。


「えー、みなさん、お待たせしました。到着です!」

と海渡がコクピットから出て言うと、


「「「「「えーーーー!?」」」」」

と驚きの叫び声が機内に響いた。


半信半疑な住民達の先頭に立ち、リヤハッチから降りて住民に見せると、

「「「「「おおおお!!!」」」」」

と歓声が巻き起こった。まずは、どんな場所かを見せる為、バスに乗り込んで貰って領地観光を行う事にした。

初めて見るバスに戸惑いながら、全員が乗り込み、


「では出発します!」

とバスが走り出す。開けた草原を走るバスが1kmぐらいで、海渡が作ったサトウキビとお花畑が見えて来る。


「ああ、この軟竹は2,3日前に刈ったばかりなんですが、また生えそろってますね。花の方は種を蒔いたのが、1~2週間前後ですかね。」

と説明すると、驚いていた。


そう、軟竹こと、サトウキビは3ヶ月ぐらいで生えそろう、元々成長の早い物ではあるが、2,3日でここまで伸びる物ではない。


「どういう事だべ!?」

と海渡に聞いて来るので、


「実はちょっとしたコツがありましてね。その成果がこれですよ。これは、軟竹と言われてますが、当方ではサトウキビと呼んでます。

一般に知られてないのですが、これを使い、当方では上質な上白糖と言う砂糖を精製しています。」

と解説する。


「スゲー良い所だな。ただ一つ気がかりなんが、水源はどうなってるべ? 稲作には水源が必要だべさ。」

と1人のエルフが言うと、他のエルフも頷く。


「ふふふ、水源はありますよ。 あっちの方に綺麗な川がありまして、水量も十分です。 なので、稲作をする為に、水路で引っ張ってくる事も可能です。

まあ、それ以外でも枯れない水源は用意出来るんですがねw」

と海渡がニヤリと笑う。



30分ぐらいでかなりの領域を周り、住民達の意見を求めると、全員が水さえ持ってこれるなら、ここで良いと言う事になった。

あまり海渡の別荘付近で騒ぐのも、気が引けるし、更に海の側だと塩による塩害が気になるとの事だった。


海渡は、この周域の地図を大きな紙に転写し、現在位置を中心に川からの水路や、農地の区画、家の配置等を全員の意見をまとめつつ、地図に書き込んで行く。

結果、綺麗に区画整備された、とても驚きの・・・集落と呼べない程の設計図が出来上がる。


更に先々までの事を考えて、平野部分ほぼ全域を城壁で囲むような線を入れてみた。

岬を中心に半径約10km。集落の中心はやや岬寄りになる。

また、川のある森から支流を作って水路を延ばし、田んぼや畑にまで行き渡る感じ。


で、集落の中心地には、ラピスの泉と、温泉施設、さえじま商会用のスペースを空けて置いた。


「これが、本当に実現するだか?」

と余りにも壮大な計画に、ゴクリと唾を飲み込むエルフ達。


「ああ、結構早々には出来ると思いますよ。何日か頂ければ・・・」

と海渡が言うと、驚いていた。


いや、驚くと言うより、この人族の少年の優しさだと思っていた。

彼らに希望を失わさない為の優しい嘘・・・そう思っていたのだった。




『海渡、今どこですか? 別荘に着きましたけど。』

とフェリンシアの伝心が来たので、こっちに合流して貰った。


降りたった飛行機から、弟子ズ7名が飛び出してくる。


ザッと海渡の前に片膝を地面に付けて屈み、

「「「「「「「ボス(兄貴)参上致しました。」」」」」」」

と声を揃える・・・ 誰だこんなネタを仕込んだのは!!


あ、後ろのエルフがドン退きしてるし。


後から降りて来たフェリンシアが腹抱えてるし、お前か!!



「まあ、良いや・・・ 今から一斉にここの開発を行う。 詳しくはこの図面の通りにするので、各自で手分けして手伝って欲しい。

ラルクら少年少女隊はこちらの森のこのエリアを伐採してくれ。根っこも引き抜いて置いて、後でここら辺に纏めて置いて置く様に。

ケモ耳ズ4名は、こっち側の森のここら辺を伐採な。同じく根っこも引き抜いて、ここに集めるて出してくれ。

俺は、まず、川の支流と堤防を作る。

フェリンシアとステファニーさんは、この道路をメインストリートから作ってくれ。仕様は滑走路と同じ感じ。雨が降っても滑らない感じで頼む。」

と言うと、

「「「「「「「「「イエス・サー」」」」」」」」」

と全員が敬礼して、瞬時に散って行った。


ポカンとするエルフを余所に、海渡も川の支流を作りに空を飛んで行く。


海渡が川下から低空を飛んで、地面を土魔法で地面に大きな溝を掘って行く。

10分ぐらいで、支流が完成して最後に川と繋がった。

更に支流と本流の結合部分には遠隔操作型の水門が付いて居るので、水量はある程度調節出来る様になっている。

川の本流には、自然堤防の補強板を作って、水害対策もばっちりである。


次に水路の作成に取りかかる海渡は、日本にあった様な農業用水路をガチガチに固めた壁や床部分で作成して行く。


「何という事でしょう・・・僅か30分で立派な支流と水路が完成したではありませんか。 これぞ匠の業w」

と海渡が1人でブツブツ言いながら笑っている。


次に、家畜小屋を所定の位置に設置して行き、ヒラメ君をリモートで呼ぶ。

エルフ達に指示して、着地したヒラメ君から家畜を家畜小屋に運び込む。

そして、各家庭の家を図面通りに設置していく。

主要道路を敷き終えたフェリンシアとステファニーさんも合流し、自分らが回収したエルフの家を設置していった。

丁度、伐採の終わった弟子ズが合流し、伐採した木々をドンドンと積み上げて行く。横に根っこも積み上がっている。


「「「「「「「ボス(兄貴)完了致しました。」」」」」」」

とまた海渡の前に片膝を地面に付けて屈む弟子ズ。


「じゃあ、弟子達は、手分けして、畑の区画を作ってくれ。 ちゃんとあぜ道を作って、畑の土は綺麗に粉々にするんだぞ! 畑の区画は図面を見て間違わない様に頼むな。

あと、フェリンシアとステファニーさんと・・・ちょっと怖いがレイアは、この城壁を頼むな。 俺は水田の方をやる。よし、掛かれ!」

と、段々可笑しくなって、海渡も小芝居にガッツリ乗っかる事にしたw


「「「「「「「「「イエス・サー」」」」」」」」」

と全員が敬礼して、瞬時に散って行った。



海渡は記憶にある日本の水田を思い出して、生えてる草を一層し、綺麗にフラットな田んぼを水路脇にドンドン作って行く。

魔法で岩や石を取り除き、深く耕し、フンワリとした土に換えて行く。


田んぼが終わると、用水路や支流の要所要所にガッチリした橋を架け、インフラもOKとなった。



街の真ん中に、大きめのラピスの泉を作成した。


そして街の一角に、ラピスの湯を作成し、宿代わりの宿舎も2軒設置した。

倉庫代わりの小屋を置き、そこを時空間共有倉庫を作った。


畑を作り終えた弟子ズが戻って来たので、海渡とエフル御一行様が出来映えを確認して回った。


「どうですかね? こんな感じで?」

と海渡が聞くと、


「・・・ええ・・・素晴らしいとしか言いようがありません。あの一瞬で畝まで作って頂いて・・・」

と呆然としながら答えるエルフ御一行様。


更に海渡は、今まで消費したユグドラシルの種の粉末をラピスの泉の水に溶いた水溶液を作り、それを畑や田んぼに万遍無く蒔いた。


「あのー、カイト君、今のは?」

と聞くエルフ御一行様。


「ああ、今のは良く育つ様にする為の肥料と言うかおまじないですw」

とニコリと笑って答えた。


城壁を作っていた2名と1匹が戻って来た。

城門をどうするか判らなかったから、全部そのまま城壁にしちゃってるらしい。


海渡は、彼らに渡すタブレットを1つ取り出し、メニューで水門の開閉をクリックし、水門を開けた。


最初はチョロチョロと、次第にジョロジョロと、そして最後に川のせせらぎの音に変わり、水が支流を流れて行く。

そして、更に用水路に水が入って行った。


ここで、エルフのテンションが爆発!

「おい、おめーら、早速種蒔くぞーー!!」

「「「「「「おーー!!!」」」」」」

と声を揃えて一斉に動き出すエルフ達。



エルフが始動したので、海渡は温泉でラピスを召喚。

いつもの様にお願いして、温泉とラピスの泉を作って貰った。

お礼のスイーツを献上し、ラピスが帰っていった。


「ちなみに、たまには辛い物とかどう?」

って聞いたら、


「え?辛い物? 嫌よ!!!」

と言って消えていったwwww


なるほど、甘さ命なんすねw

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