第343話


異世界3ヵ月と13日目。


日の出前に、颯爽と起き上がり、地下工房で、撮影機材の点検や、絵コンテの確認と必要な物がアイテムボックスにあるかをチェックする。

棟梁の所を確認すると、なんと、海渡用のキャンピングカーは9割方終わっていた。


「すげーな、棟梁。益々磨き掛かってるよな。」

と驚く海渡。


海渡も負けじと、朝の訓練までにショールームを5つ作成した。




そして、朝の訓練後の朝食時、フェリンシアとステファニーさんに、午前中ちょっとダンジョンに付き合って貰う事をお願いした。



朝食後、ステファニーさんに海渡がプレゼントした上下に着替えて貰って、地下工房に集合。

面倒だったので、地下工房から直接昨日荒らした第4階層の階段の前に出る事にしたのだ。



「え?ここ何処のダンジョンなん?」

と砂漠を目の前にして驚くステファニーさん。


「へへへ。ここは俺とフェリンシアとステファニーさんしか知らない、未発見のダンジョンですよ。

多分、ここが他の人に発見される事は無いですね。場所が場所なので。」

と説明すると、その1人に自分が含まれた事で、デレっとするステファニーさん。


しかし、砂漠を見て・・・

「あ! あのサンド・ワームって、もしかしてここから?」

と察する。


早速、フェリンシアの真っ赤な車の助手席に乗り込んで貰い、フェリンシアに走行シーンをレクチャーする。


撮影用ドローンを20台飛ばし、準備OK。


『スタート!』

と伝心で指示を飛ばし、海渡は上空から、見守る。


砂漠を物ともせず、ガンガン飛ばすフェリンシアwwww


時には尾根から尾根へと谷を渡り、縦横無尽に走破する。


『オッケー! じゃあ、次は車を一旦止めて、降りるシーンな!』


『よし、また乗車しようか。』


と次々に指示を飛ばす。


そして、ウマウマとやって来たサンド・ワームさんww


『次は、あのサンド・ワームが頭を砂から出したら、避ける感じで運転してーー』



ドシャーと砂を跳ね上げ巨大なサンド・ワームのが正面に現れる。

フェリンシアが華麗にドリフトしながら、サンド・ワームの攻撃を避け、自動車を止めて、華麗に斬撃を加え、上半身がズドンと砂地に落ちる。


『オッケーー! カット!』


海渡は合流して、トラックを出す。

血抜きの終わったサンドワームの上半身を少し切り縮めて、ステファニーさんに、時空間魔法で浮かせて貰ってトラックの荷台に載せるシーンも撮影。


今度は、ステファニーさんのドライブのトラックで、砂漠を走って貰う。


『オッケーー! カット! お疲れさん。』


「どないやった? こんなんで良いか?」

と海渡に聞くステファニーさん。


「どれも、バッチリ良い感じで撮れたと思うよ!」

と2人の労を労う海渡。


「しかし、ここのダンジョン、広いなぁ~。」

とステファニーさん。

直径400kmのフィールドだと教えると、更に驚いていた。

既に発見されているダンジョンは、そこまで広い物が無いらしい。


更に、この砂漠の砂の成分を教えると、

「わぁ~、宝の宝庫やんww」

と海渡と同じ反応を示していたのだった。



今度は、棟梁達にお願いし、トラック2台を進呈すると言うと、即決でOKが貰えた。

南門から出て適当な森で撮影を開始し、パイロットスキルと取った棟梁他3名で丸太を積んで運転して行く風景を撮影した。



更に、孤児院に行って、園長さんと孤児達にアルバイトをお願いし、喜んでバスに乗るシーンと走り出すシーン、車内のシーンを撮影したのだった。



11時までに全ての撮影が終わり、地下工房で、編集を始める海渡。

カイト印のロゴや、さえじま商会の社名を入れたり、静止画に性能や特徴のテロップを入れたり、走破シーンのスローを入れたりして、約3分の動画を作成した。


店舗に飾る用のガラスディスプレイで、再生して確認すると、中々良い感じ。

早速、両方のショールームの水晶記憶体に遠隔で接続してコピーし、映像を流し始めたのだった。


店舗用のガラスディスプレイを量産して、各店舗に連絡して貰い、ショーウィンドーに展示する様に通達し、午前の仕事を完了した。


大食堂にも、大型のガラスディスプレイを壁に付けて、流してみた。


昼食で大食堂に集まった従業員達が、一時固まってしまうと言う、弊害が起きたのだが、この世界では考えも及ばなかった映像による広告は、従業員にもインパクトが大きかった様だ。


「しかし、カイト様は、毎回毎回、面白い事考えますよねぇwww」

とオスカーさんが、クックックと笑いながら褒めてくる?


「各店舗を通じ、既存の乗合馬車や運搬業の方へはリースの話を進めてますので、それも近々に引き渡す事になると思います。増産の方大丈夫でしょうか?」

と聞かれ、


「現在、各種類、1日約288台作ってるけど、どう?」

と聞くと、


「うーん、どうですかね?一応念のため、可能なら、倍に増やした方が良いかもしれませんね。」

と言う事だった。


「判った、後でラインを増やしておくよ。」




昼食後、オスカーさんの『指示』で、イソイソと各車両の生産ラインを増やす海渡。

全ての生産ラインを完成し、ホッとした頃に、海渡の通信機が鳴る。



「はい、海渡です。」


「あ、カイト様、ヨーコです。今さっき、コーデリアの拠点の方にスタッフを引き連れて来たのですが、少々困った事がありまして・・・。

申し訳無いのですが、直ぐにこちらに来て頂けますでしょうか?」

と珍しく、焦った調子のヨーコさん。


直ぐに、フェリンシアとステファニーさんを連れて、南門を出て、ゲートでコーデリアの南門横に出て、宿舎の方へと急いだ。



門を潜る際に、連絡していたので、ラピスの湯の前でヨーコさんが困った顔で待っていた。


「お待たせ。どうしたの、困った事って?」

と海渡が言うと、


「ちょっと、ラピスの湯の店内をみて頂けますか?」

と言われ、ハッとする海渡。


「もしかして・・・」

と呟きながら中に入ると、


「「「・・・・」」」


驚愕の状況に言葉を失う海渡、フェリンシア、ステファニーさん。


いち早く復帰した海渡が叫ぶ。


「ゴラーー! 責任者出て来いやーーーー!!!!」


それまで、ザワザワとしていた店内が、シーンとして、


海渡が目にしたのは、30人ぐらいのエルフがガヤガヤと荒らされた店内を彷徨き、談笑している正にスラム化した店内。

エルフは全く知らない奴ばかり。



「え? え??」

と王様が2階から顔を出した。



主犯はお前か!!! と愕然とする海渡。


「王様、何やっちゃってくれているんですか!!!!! これ、うちに対する嫌がらせ? え? 新手の宣戦布告ですか!!」

と青筋を立てる海渡。


アイテムボックスから、刀を出して、殺気全開で身構える海渡。


いきなり、人外な殺気に晒され、ガクブルのエルフ達・・・。

半数以上が、腰を抜かして、倒れ込んでいる。



すると、スッと横からステファニーさんが、耳打ちする。


「カイト君・・・これ、うちの知る限り、全員貴族や。」

と。


ふむ・・・貴族か。

海渡は、コッソリと、撮影用ドローンを飛ばし、撮影を開始していた。


「全員降りて来て、ここに正座! 隠れてた奴は、全員滅ぼす!!」

と冷たい声で怒鳴る海渡。



結果、現在目の前に54名のエルフが大人しく青い顔で正座中。


「コラッ。人の所をこんなに荒らして回って、無事に済むと思ってないよな?」

と6歳児に怒られる、ダメエルフ達。


「つまり、人にやるって事は、自分らの城や領地も、同じ目に遭って良いと言う決意表明と解釈して良いんだな?」

と海渡が凄むと、アウアウと口をパクパクするだけで、首を横に凄い勢いで振っている。


「ん?つまり何か? 自分は人にするけど、人からされるのはダメって言うのか? 俺の知ってる言葉でな、人に受けた恩は2倍返し。

人に受けた仇は100倍返しって大好きな言葉があるんだがな。」


と言うと、数名失禁していた。


そこへ、ガラッと扉を開けて、ドロスさんが、飛び込んで来た。

どうやら、状況を聞きつけて、慌ててやって来たらしい。


「親父! だから止めとけって言ったろ? カイト君と戦争になるぞ!って・・・」

とドロスさん。


そこで、爽やかな笑顔でドロスさんの方を向いて、海渡が言う。

「ああ、ドロスさん、良い所に。 ちょっとお聞きしたいんですが、こいつらの屋敷や領地って、何処ですかね?

ちょっと暴れ足りないので、ゲルハルト帝国滅ぼす前の予行演習して来ますわwwww」

とタブレットを取り出す。


そこで、ステファニーさんが、口を開く。

「あんたらなぁ~、うち最近、近くで見てるから判るねんけど、カイト君ちょっとだけ本気だしたら、コーデリアの地形変わるで?

10分ぐらいで、大陸続きやったんが、分断されて、湖だらけになるで? 人が住めんような所に変わるんやで? それでええのんか?」

と追撃wwww



ドロスさんも、海渡の怒り具合に、ガクブルしている。


「「「「「申し訳ありませんでした!!!!」」」」」

とダメエルフが一斉に頭を下げる。


それから、懇々と小一時間、正座のまま説教を続け、その後、全員にピカピカになるまで掃除させた。

勿論風呂場も。


そして、各自賠償金黒金貨1枚、又は同等額の名産品で手を打つ事にしたのだった。

全員にちゃっかり証文を書かせ、

「おい、2度目は無いからな。契約不履行あったら、従魔のベヒモスと遊びに行くからなww」

と更に追い込みを掛けておいた。



そして、

「ふぅ~、一時はどうなるかと思ったぞw いやぁ~、建国以来の滅亡の危機じゃったww」

と何故か、普通にケロッとしている王様を見て、思わず床に崩れ落ちorzとなる海渡だった。


「ああ、王族ってこれくらい面の皮厚くないとダメなんだな・・・」

と呟く海渡だった。


二度と来るな! と全員を追い出した後、最初から撮影していた映像を見る海渡。


「ふふふ、上手く撮れてるなw 何かあったら、全世界に流してやろうっと。」

と黒く微笑む。


「カイト君、本当にこの度は申し訳無かった。

かなり必死に止めたんだがな・・・」

と頭を下げるドロスさん。


「いえいえ、ドロスさんのせいじゃないですよ。 コーデリアの地形が変わるのはww」

と黒い笑みをチラチラ見せる海渡。


後ろで声無く腹を抱えるフェリンシアとステファニーさん。そして苦笑するヨーコさん。



「それはそうと、お願いあるんですが、空港の側にショールーム立てて良いですかね?」

とドロスさんに聞くと、即答でOKを貰えた。


うん、話が早くて良いねwww


海渡は、2階の休憩ルームに大型のディスプレイを設置し、CMを流し出した。


そのまま一旦、空港まで行って、その横にショールームを設置し、自動車達を展示した。

早々にCMを流し始めると、多くの通行人が眺めてザワザワと話していた。


サチーさんにも連絡し、ショールームに来て貰い、トラックやバスを見せ、こちらの販売もお願いしておいた。


CMを食い入るように視るサチーさんの要望で、サチーさんの店にもガラスディスプレイを置いて流す事となった。


あと、念のため、コーデリアのゲストキーは無効にしておいた。

ドロスさんとサチーさんには、この事を教え、仮に無効となったキーで侵入を図られた場合、即座に海渡に連絡が来るので、その場合は、宣戦布告と認識しますので、ご注意を! と伝えると、

ドロスさんはガクブル、サチーさんは苦笑していた。

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