第331話
ギルドを出て、そのままダンジョンへの道を歩いていると、屋台や露店が、最後の一稼ぎと言う様に、ビッシリと道の両脇に並んでおり、武器や薬や携行食、飲み水入りの水筒、ライトの魔道具、そしてダンジョンの地図等、本当に様々な物を売っている。
中でも笑ったのは、明らかに怪しげな、お守り や 縁起担ぎグッズ。
「なあ、店主、質問なのだが、この怪しげな物は 売れてるのか?」
と思わず、真顔で聞いてしまい、店主が苦笑いしていた。
地図売りだが、どうやらそれぞれが特色を出していて、その地図に加筆し、出現する魔物の種類や、罠等に関する注意事項を書いてあったり、様々である。
中でも一番良さそうな所を選び、買って見る事にした。
「おう、坊主、ハーレムパーティーでダンジョンデートか? 良いなぁww」
と冒険者風の地図売りが冷やかしつつ、
「そんな坊主には、是非ともうちの地図をお勧めするぞ! なんたって、セーフエリアの情報から、魔物の出る確率の高い所を色分けしているし、出て来る魔物の種類も書いてある。
あと、罠のある箇所には、ちゃんとドクロマークと解除方法、更に階層ボスの確認位置情報まで記載されているぞ。自慢じゃないが、ここらで売ってる地図の中では一番出来が良いと思う。
まあ・・・なんだ・・・その分、ちょっと高いんだがな。」
と冒険者風の店主。
「なるほど、それは最深到達階層は25層まで揃っているのか?」
と聞くと、大人は居る(ステファニーさん)ものの、子供メインのハーレムパーティがいきなり最深到達階層までを要求するのに驚いて、忠告してきた。
「なあ、坊主。悪い事は言わねーから、間違っても25層まで行こうなんて思うなよ? 幾ら地図があっても、あくまで目安だ。ダンジョンは生き物だ。日々変わる。それに深く潜れば潜る程、出て来るのは強い魔物だ。
1匹1匹なら何とか対処出来たとしても、一気に20匹に取り囲まれて命を無くす実力派のベテランパーティも少なくない。命は大事にしろよ?」
と。
「ああ、お前、良い奴だなw 心配してくれてありがとう。 こう見えて、一応、高位のランク者なんだよw まあ油断はしないから大丈夫。で、地図は何階層まであるんだ? あるだけ、1枚ずつ買うぞ。」
と言うと、
「そうか、高位のランクなのか。てっきり新米の癖にお金に物を言わせて護衛を雇った口かと思ったが・・・それは失礼した。地図は24階層までが揃っていて、1階層、銀貨1枚。
24階層まで全部買ってくれるなら、銀貨20枚におまけしてやるぞ?」
と言うので、海渡は銀貨20枚を渡した。
24階層分の地図を受け取り、ザッと第一階層の地図に目を通し、他のメンバーへも回す。
第一階層は、ゴブリン程度で、ほぼ罠のマークは無い。
しかし、階段の位置まではかなり入り組んでいて、最短コースを通っても、5~7km程ありそうだった。
更に残りの23枚全てに目を通し、頭に入れて、他の地図もメンバーに回した。
罠と言われているのは、落とし穴の様な所や、崖崩れが起きやすい所、水溜まりと思って踏んだら底なし沼とか、小さい穴に手を突っ込むと中に居る毒を持つ昆虫型の魔物に刺されるとか、色々。
イン○ィー・ジョーンズに出て来る様な球が転がって来る罠や、天井や床が迫って来る罠は無いらしいwww
「さあ、午後3時を目安に、何処まで潜れるかな? ところで、このメンバーの中でこのダンジョンに潜った事のある人は居るの?」
とケモ耳ズ4名に目を向けると、首を横に振っていた。
「じゃあ、他でも良いがダンジョンそのものに入った事のある人は?」
と聞くと、誰も居なかった。
ふむ。今朝、軽く1層だけ廻った俺だけか。
「じゃあ、取りあえず、身体強化、身体加速、クロックアップは発動しておいて、油断無く、怪我しないように行こう。」
と言って、ダンジョンの中へと入って行くのだった。
『智恵子さん、何か面白い物とか危険等がありそうだったら、積極的に教えてね!』
とお願いしつつ入った第1階層・・・
そりゃそうだよな。中に入った奴が全員通るんだもの。そうそう魔物が湧いて出る事も無く、5分で第二階層への階段まで来ちゃった。
「うーーん、ビックリする程、魔物居ないねwww 下手な街道よりも安全なw」
と笑いながら第2階層へ突入~~(ry
そして、ゴブリン3匹程度に遭遇した程度で第6階層を通過し、第7階層に突入した。
第7階層では、魔物の出現頻度は多くなり、また場所場所で智恵子さんによる鉱物資源の報告が上がっている。
もっとも、鉄や銅などの鉱石なので、特に掘る事はしていない。
不思議と前を行く冒険者に追いつくまでに魔物が現れたりするので、ゲームの様に、リポップしているのだと思われる。
これについては、智恵子さんに聞いてしまうと、楽しみが減るので、推理小説を読む前に犯人を人から聞く様な真似はしていないw
第7層では、ウルフ系の魔物がチョコチョコ出て来ている。
また所々に大きなホール(半径50mぐらいのドーム状)があり、別れ道が多数繋がっていたりする。
ここに時々、ウルフ系の魔物が何処からともなく、現れたりしている。
海渡達は、最深部へ向かう事を優先しているので、全ての枝道は捜索していないので、魔物の遭遇率が悪いのだとは思うが、こんなに少ない物なのだろうか?
と首を捻っていた。
そして、早くも第9階層が終わり、次はボスの居る?第10階層である。
と言っても、前にボスを倒されてから、新しいボスの目撃報告は無いらしいので、ボスの有無は不明。
あ、ちなみにだが、危険度が上がるまで、海渡は地図屋から地図だけを頼りにし、捜索をしている。
所謂、舐めPや縛りPと言った所か。
マップで赤い点とかを確認してしまうと、難易度が激下がりで、楽しみが減るからである。
第10階層に入ると、直ぐにオークが10匹程やってくる。
ケモ耳ズが瞬殺し、次々と収納して先へと進む。
ちなみに、ここまでケモ耳ズ4名以外が全く戦っていない。
ミケ、パトリシア、キャスの3名曰く、
「これなら、絶界の森の方が1000倍面白いです。もっと深い階層に期待しましょう!」
と嘆いていた。
それを聞いたプリシラはドン引きしていたが・・・。
第10階層は、これまで以上に広く、冒険者が多く居る様ではあるが、魔物の出現頻度はかなり多い。
海渡一行の進行速度はプリシラの速度に合わせ、一般冒険者の長距離疾走より少し早い程度にしている。
なので、すぐに前を行く冒険者達に出会うのだが、軽く挨拶をしつつ通り過ぎている。
かれこれ60匹以上のオークを仕留め、大きめのホールに出た時、オークの集団22匹に取り囲まれる5名のパーティーに出くわした。
5匹は仕留めた様で、死体が転がっているが、5名の内、1名は肩から血を流しており、更に片腕は骨折しているらしく、変な方向に向いていた。
と言う事で、事実上4名で防戦している状態。
「おーい、大丈夫か? 手助け要るか?」
と一応ルール上、他人の獲物を横取りする行為は厳禁なので、聞く海渡。
「っ! 子供か!? 助力頼めるか? もし無理なら、誰か他の冒険者を呼んで来てくれ!! お礼はするから!」
とパーティリーダーらしき虎族の男。
「おう! 大丈夫だぞ!!」
と答え、ケモ耳ズにGoを掛ける。
3人がスキル全開で先行し、出遅れるプリシラ。
プギャー とか グギャー とかオークの断末魔の叫びが木霊し、1分掛からずに22匹のオークが屍に変わる。
「あ、ありがとう! 本当に助かったよ。 しかし・・・お嬢ちゃん達、つえーな!」
と虎族のリーダーが感心している。
「怪我人は1人だけですか?」
と聞くと、
「ああ、大怪我は、こいつだけだな。あとは切り傷程度だ。」
との事。
なので、海渡が全員をロックして、骨が正しい位置で繋がり、血管や神経、筋肉が再生し、ばい菌や感染を無くすイメージで一気にヒールを掛けた。
大なり小なりの負傷を負っていた5名が激しく光り、骨折も肩の深い傷も全て消えた。
「「「「「お!!!」」」」」
と一瞬の事に叫び声を上げる5名。
「ん。これで大丈夫ですね。 オークはこちらで倒した22匹だけ貰って行きますが、宜しいですかね?」
と海渡が聞くと、
「お、おう・・・・」
とポカンとしているリーダーが答える。
海渡はケモ耳ズの指示して22匹を収納し、
「じゃあ、お気を付けて!」
と手を上げて、そのまま走り去った。
ホールに取り残される5名のパーティは白昼夢でも見たかの様に、暫くフリーズしていたのであった。
そのまま、階段のある方向へ進んでいると、徐々にオークからワー・ウルフが混じって来るようになった。
階段のある場所へ近付く程に、ワー・ウルフが増えて行く。
そして、階段の手前のホールに着くと、一際大きいブラック・ワー・ウルフ1匹(全長約4.3m)の指揮するワー・ウルフ(全長約2.3m)73匹の群れと戦う、17名が居た。
既に、殆ど全員が大なり小なり負傷しており、3名程、倒れている者も居る。 同ひいき目に見ても壊滅寸前。
どうやら、ブラック・ワー・ウルフがこの階層のボスの様で、戦闘力も指揮力も高いようだ。
「おーーい、助けは要るか?」
と海渡が大声で叫ぶと、こちらに気付いた一際体格の良い熊族の男が、
「こ、子供? 馬鹿な・・・ おい、早く逃げろ!! もう支えきれない。 俺達が全滅する前に、早く逃げるんだ!」
と叫んでいる。
その間に又一人、ワー・ウルフによって、吹き飛ばされ、他の冒険者2人を巻き添いにして倒れた。
「申し訳無いが、劣勢の様なので、介入させて貰います。」
と宣言し、ケモ耳ズやウズウズしているフェリンシアにもGoを掛ける。
チラリとステファニーさんを確認すると、既にアイスアローを20発程用意していたwww
「他の人に当てないでね?」
と言うと、
「まかせとき!」
と言うと、弓なりに放ちワー・ウルフの頭上からザクザクと20匹に当たった。
海渡は真ん中に要る17名の冒険者の廻りに光魔法のシールドを張り、これ以上の負傷が無い様にした。
(本音は海渡達による攻撃の余波によるダメージを与えない為)
海渡は、一足飛びに張ったシールドの中に入り、驚く冒険者達をロックして、一気にヒールを掛けた。
全員の体が激しく光り、全員の傷が消え、肋骨を骨折して、肺に刺さり、空気が漏れて、チアノーゼ状態になっていた冒険者までも、完全に正常状態に戻っていた。
とはいえ、一度流した血や失った体力までは戻らないので、ハチミツ水をコップに入れ、全員に飲ませる。
外の喧噪を余所に、平和なシールドの中で、ポカンとしている17名。
全員がハチミツ水のコップを飲み干す頃には、ボスを含め、74匹の討伐が完了しており、その死体の姿も無くなっていた。
シールドを解除した海渡は、
「一応、こちらが倒した分だけ、頂いて行きますね。では、お気を付けて!」
と片手を上げて、階段を降りて行ったのだった。
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