第332話


第11階層に入ると、そこは森林。


そろそろ、舐めPは危険だと思い、マップを確認すると、思った通りに、無数の赤い点の反応がある。

昆虫系や、スネーク系、ウルフ系、モンキー系、トレント等、様々な反応があった。


『海渡さん、ここには、あの『みんな大好き』マンゴーの木がありますよw フルーツ・キャタピラも居ますけどw』

と智恵子さんが、マンゴーの木の箇所に▲マークを表示してくれた。



「おお!ここには、マンゴーの木があるぞ!!!」

とこのダンジョンに来て、初めて大喜びする海渡。


フェリンシアも「あれですか!」と涎を垂らしながら、踊ってる。


マップによると、この階層は広く、そして天井も高い。


「よし、マンゴー狩りに行くぞw」

とマンゴーの木の所まで、一気に先頭を駆ける海渡とフェリンシア。


途中に出て来る魔物を蹴散らし、後ろから追っかけるメンバーがドン引きしながらも回収してくれている。

途中邪魔なトレントも刀でサックリ根元から切るわ、ダーク・スパイダーは巣ごと凍らせるわ、散々な状態。


そして、5分くらいすると、マンゴーの木の手前に付いた海渡は、3Dマッピングでフルーツ・キャタピラをロックし、アイスアローを100発発射。

フェリンシアも同じ手順で100発発射~(ry


全滅したフルーツ・キャタピラを回収し、今度は見事に実ったマンゴーを全てロックし、闇魔法の触手でドンドンと食べ頃のマンゴーを採取して行く。

少年と美少女の背中から黒い触手が無数に生え、2人で馬鹿笑いしている様は・・・ ホラー映画もビックリな光景。


後ろで呆気に取れる残りのメンバー5名。


「よし、大漁大漁ww マンゴー採ったどーーw」

大喜びの海渡。


『ねえ、智恵子さん、マンゴーの木があるという事は、もしかして、フォレスト・ビーとか居る?』

と聞くと、


『ええ、ご察しの通り、居る様ですね。まあ、絶界の森に居る程強くはないですが、大きな巣がありますね。』

と巣の場所に▲マークを表示してくれた。


「よし、つぎはフォレスト・ビーの巣に行くぞー!!」

260m離れた崖にぶら下がる巨大な蜂の巣へと突き進む海渡。


海渡とフェリンシア以外のメンバーは、初めて見る巨大な巣とブンブンと飛ぶ巨大なフォレスト・ビーの姿に身震いしている。

気配を殺しつつ近寄っているので、まだフォレスト・ビーには発見されていない。


「ボス! なんですか!あの巨大な蜂の巣は! 恐ろしいサイズじゃないですか。」

と小声でプリシラが抗議している。


「ふふふ。あの蜂さんはエライんだぞー! 働き者で、せっせと美味しいハチミツを俺達の為に集めてくれてるんだからなw」

と小声でフォレスト・ビーを賞賛する海渡。


「全部採ると可哀想だから、1/3程は残すか。」

と光シールドを巣の周りに展開し、フォレスト・ビーを封じ込め、闇魔法で昏睡を掛ける。一気に飛んでいた蜂が地面へと落下する。


シールドを解き、巣の中へ闇魔法の触手のチューブを無数に突っ込み、チューチューとハチミツを採取する海渡。


天敵のグレート・グリズリー等が居ないお陰か、ドラム缶にして、370本相当のハチミツをGetした海渡は大喜びでその場を後にした。


「しかし、不思議だね。11階層程度なら、結構冒険者がマンゴーとか取りに来てても良さそうなものだけどなぁ。

なんで、あんなに残ってたんだろうか? 売ると1個で相当な金額だと思うのだが?」

と首を捻っていると、


「あーー、いやボス、気付いてないようですが、11階層のマップにも、トレントのエリアから内側は空白になってますよ?

大体、トレントをあんなに綺麗にスッパリ切れる冒険者なんて居ませんからね。 だからトレントの城壁の内側は誰も知らないんですよ。」

とプリシラが解説していた。


「なるほど!! それは美味しいエリアだなwww」

と海渡とフェリンシアが納得とばかりに、ポンと手を打つ。



「さあ、美味しいハチミツも手に入れた事だし、ちょっと早いけど、ここらで昼食にするか! 紅茶にハチミツも美味しいぞ!」

と言うと、全員大賛成。


テーブルと椅子を出し、その上にテーブルクロスを敷き、軽くオークカツサンドやその他のサンドイッチ類と暖かいレモネードや紅茶、サラダを出して、みんなで 頂きます!


ケモ耳ズにとっては、初めて食べるオークカツサンド。

パクリと一口食べると、「何これ美味しい!!!」とパクパク行く行くw


フェリンシアやステファニーさんも負けじとガッツく・・・。


アッと言う間に綺麗に食べ終わり、探索を再開した。



特に筆頭すべき強い魔物も無く、同じく森林ステージだった第12階層(残念ながらマンゴーはなかったがアップルやピーチは頂いた)を終え、

順調に深い階層へと進む海渡一行。


第16層は沼地のあるアマゾン風のエリアで、レッサー・リザードマンが居たが、上位種のリザードマンでもないので、ケモ耳ズ4名でサクサクやっつけていた。

ちなみに、アイテムボックスが使えないのが、自分だけと知ったプリシラが愕然としていたので、後日教えてやると約束して宥めた。


第17階層は、草原?やゴツゴツした岩のあるステージで、グレート・ボアやスイート・ボア、スイート・ラビット等が多く、少しだけだがカモフラージュ・カウの群れや、コンバット・イーグルと言う鳥の魔物も出てきた。


ケモ耳ズは、空を飛ぶコンバット・イーグルの対応に最初こそ苦戦していたが、海渡のアドバイスによって、ホーミング型のアイスアローを習得し、サクッとやっつけていた。


第18階層は、完全に岩岩したフィールドに変わり、トカゲっぽい形状のバジリスクや、空から攻撃して来るコカトリスが数多く襲来して来た。

こいつらが、厄介だったのは、石化の毒を吹きかけたり、状態異常を引き起こすブレス攻撃や、鋭い毒爪による攻撃だったが、当たりさえしなければ、なんの問題も無い。


空飛ぶコカトリスには、ホーミング型のアイスアローによる集中砲火と、バジリスクには、相手の攻撃レンジ外からの集中砲火で、サクサクと倒していた。




そして、バジリスクの巣で、石化した冒険者23名を見つけ、海渡が石化を解くイメージでヒールを掛けると、激しく光った後、元の人の姿へと戻った。


一応、生きては居る様で、呼吸をしているのを確認した。

意識が戻る前に、念のため再度、脳障害や内蔵の機能回復のイメージでヒールを掛けるた。


更に石化して倒れた際に、足や手が折れてしまっている5体の冒険者に、石化を解き、脳障害や内蔵の機能回復と失った手や足が生えるイメージも込め、ヒールを発動した。

激しく5体が光った後、部位欠損部分に新しい手足が生えた5人の冒険者が居た。

彼らもちゃんと息をしていたので、ハチミツ水を手分けして、スプーンで少しずつ飲ませ、徐々に覚醒するのを待った。


10分ぐらいすると、ハチミツ水を飲ませた順番に目覚めて行く冒険者達。


「あれ?ここは?」

とか、


「あれ?俺生きてる!?」

とか、


「あ、あたいの手が元通りになってる!」

とか、彼方此方で自分の無事を確認した後、仲間を探し、無事を喜んでいる。


「なんとか、全員大丈夫そうだな。」

と海渡が安堵していると、その中の1人が海渡らを見つけ、


「もしかして、君らが俺達を助けてくれたのか?」

と聞いて来た。


「ええ、丁度通りがかりのバジリスクの巣を殲滅したら、石化したあなた方を見つけ、回復魔法が使えたので、ダメ元でやってみました。

みなさん、体は普通に動かせますか? お腹は減ってませんでしょうか?」

と言うと、「「グキューー」」 と大きなお腹の音が、真横から聞こえてきた。


チラリと音のした方を見ると、お腹に手を当てた、フェリンシアやステファニーさん。


「おいおい、あんたら、さっき食ったよね?」

とジト目で睨むと、テヘッって笑ってる。

ケモ耳ズは、大爆笑している。


助けた28名もお腹が減っているらしく、「「「「「ググーー」」」」」と鳴らしていたので、取りあえず、ハチミツ水をもう1杯ずつ飲ませた後、消化の良さそうな雑炊を全員に配った。

更に、胃が慣れた頃合いにサンドイッチを配り、最後に首都で買った肉串を1人2本ずつ与えた。


時刻は午後2時半、本当なら、3時過ぎまで潜り、その後ゲートで出るつもりだったのだが、流石に殆ど武器も物資も揃ってない彼ら28名を置いて行く事も出来ないので、全員を連れて地上に戻る事にしたのだった。


だが、ここからが大変で、実際に戻り始めると、全然ペースが上がらず、部位欠損で新しく生えた足の筋力が保たない状態だったりで、直ぐに一時停止した。


「なあ、流石にこの状態で18層上がるのは無理じゃないか?」

と海渡がステファニーさんに相談すると、


「うちもそう思うわ。このペースやったら、おそらく要らない魔物の襲撃にも対応せなあかんし、下手したら5日ぐらい掛かるんとちゃうか?」

と海渡と同じぐらいの見立てとなった。


そこで、海渡、フェリンシア、ステファニーさんの3人で作戦会議。

ちょっと離れた所に居る28人の冒険者達は、置いて行かれるのではないかと、不安気な表情をしている。


「なあ、相談なんだが、もうさ、一気に全員ゲートで第一階層まで移動しちゃった方が良くないか? 絶対にゲートの件は漏らさない様に約束させてさ。どう思う?」

と聞くと、


「それが一番現実的な方法でしょうね。せっかく助けたのに、途中で魔物に殺られると、意味ないですもんね。」

とフェリンシア。

ステファニーさんもウンウンと同意している。


「よし、判った。」

と海渡が言って、全員を近くに集めた。


「あーー、ここは第18階層で、病み上がりの諸君らと、現在のペース戻る場合、5日間程の工程となる事が予想される。

で、だよ、現実的な所、このまま進むのは無理があると思うので、ここから一気に第一階層まで秘密の魔法でショートカットしようと思うのだが、

これは極秘の魔法なので、諸君らには、絶対に誰にも話さないと約束して貰わないといけない。もし誰か1人が漏らしたら、全員を抹殺しないといけなくなる。

ここまでは理解してくれたか?」

と海渡が全員を見回すと、どうやら置いて行く気が無いと知り、目を輝かせ、ウンウンと頷いている。


「約束する自信の無い者は、今すぐこの輪から離れてくれ。 残念だが、その者は置いて、見えなくなった所で約束してくれた者だけを連れて帰る。」

と言うと、全員が口々に


「俺は死んでも漏らさねぇぞ!」

とか、

「約束は守るぞ!!」

とか叫んでいる。


「じゃあ、命を掛けた全員連帯の約束と言う事で、良いな? 今から使う魔法に付いては一切俺らにも聞いたり詮索しない事を約束してくれ。」

と念を押し、全員が頷くのを見て、海渡がゲートを繋ぐ。


黒いゲートが現れ、その向こうに第一階層の部屋が洞窟の部屋が見える。

「「「「「おおーー!!!」」」」」と響めく28名(+プリシラ)


「じゃあ、みんな俺に続いて向こう側に出てくれ。最後尾はフェリンシア、頼むね!」

と言って、第一階層の行き止まりの部屋へと出た。

幸い、他の冒険者の気配も無い。



海渡に続き、続々と冒険者達がこちらにやって来て、最後にフェリンシアが通ったのを確認し、ゲートを閉じた。


「全員居るな? じゃあ、出口までノンビリ行くぞ!!」

と海渡を先頭に、最短コースを40分掛けて出口へとやって来た。


ダンジョンの入り口付近では、早めに上がった冒険者らが数人居たが、海渡を先頭にボロボロの冒険者が出て来たので、ギョッとして見ている。

すると、1人の冒険者が大きな声で叫んだ。


「おい! お前サンチェスじゃないのか!?」と。


名を呼ばれた冒険者が、ハッとして

「ああ、サンチェスだ。誰だ? え?少し老けたが、ドドンガか?」

と名前を呼び合っている。


「お前、生きてたのか!! 3年・・・いや、4年前か、ダンジョンに潜った切り、戻って来なかったから・・・」

と涙を流して無事を喜んでいた。


え?4年前なのか・・・ つまり石化した状態で、コールドスリープ的な感じになってるの?

と若干背中に冷たい汗を掻く海渡だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る