第330話
コルテッサの街には、特に門番等は居なくて、そのままスルー出来る。
街は結構な人で賑わっており、色んな出店や屋台が所狭しと並んでいる。
「ほう、これはこれで、活気に溢れているね。 あっちの露天は良い匂いだしてるな!」
と感心しつつ、彼方此方の屋台等を制覇して、気に入ると爆買いする不振な7名と1匹。
「ボス・・・相変わらず、ブレが無いっすねw」
と笑うプリシラ。
「やっぱ、これはお約束だからなww」
と海渡が言うと、フェリンシアとステファニーさんが、ウンウンと肉串を両手に持ち頷く。
「いやだってさ、こう言う楽しみしか無いんだよ? 俺。 別にお酒飲む訳でもないし、飲み屋の女の人にお金掛ける訳でもないし、欲しい物も特に無いし・・・。
逆に他の人ってどうなんだろうね? 何か趣味あったりするのかな?」
と聞くと、
「そう言われてみると、難しいっすね。趣味ですか? うーーん・・・」
とみんな唸って居る。
「だろ? まあ冒険者なら武器とか防具とかってお金掛けるんだろうけど、俺の場合は、自分で作っちゃったし・・・」
と海渡が言う。
「まあボスの場合、そう考えると、お金使うのって、本当に無いですねwwww」
と新生ケモ耳ズ(4人ユニット)がウケていた。
やっと冒険者ギルドのコルテッサ支部にやって来た。
ここで、事前にダンジョンの情報を入手する予定だ。
もう、今回は余計なフラグなんか要らないからな!
ギルドの扉を開けて、中に入ると、既に朝のピークが過ぎた頃合いなので、それ程混んではいない。
手前の飲食コーナーを兼ねたテーブル席に、3パーティーと、中程のカウンターに2パーティー程が受付嬢と話していて、残りは数名が依頼ボードの前で依頼書を眺めているだけだった。
ちょっとホッとして、中に入ると、海渡達7名+1匹(フェリンシアの頭の上で睡眠中)を見て、急にザワザワとし出す。
一番手前のカウンターが空いていたので、そこへ行くと、
「こんにちは、初めましてかな? 本日はどのようなご用件でしょうか?」
と美人の犬族のおねーさんが、話掛けて来た。
「あー、こんにちは。カイトと申します。今日はダンジョンの情報を知りたくて寄りました。」
と要件を述べる海渡。
「えっと、カイト君、ダンジョンはEランク以上の冒険者・・・つまりFランクの冒険者は入れないのね。
で、ランクは冒険者登録をする時にランク判定の魔道具を使って判定するんだよ。
だからダンジョンに入るには、まず冒険者になって、Eランク以上を目指すのが先かな。
幾ら護衛の冒険者が付いていても、入れないんだよね。」
と何か冒険者登録前の少年に諭す感じで喋って来る。
廻りの冒険者は、クックックと笑う奴や、生暖かい目で見ている奴が多い。
「あー、何かちょっと誤解があるようですね。既に冒険者には登録してますよ。これがギルドカードです。」
と言って海渡がカードを見せた。
おねーさんは、「え?」って顔をして不思議そうに海渡の出した冒険者ギルドカードを眺め、
ププゥっと笑った。
「カイト君、ダメだよ? 変なカード作って来ちゃww 何このSSSランクってww」
と久々の偽造カードネタで攻めて来られた。
「あー、残念ながら、これは本物だよ。おねーさん、もしかして新人? もう大分前にコーデリアの本部から通達来てる筈なんだけどなぁ?
ここに居るフェリンシアと俺はSSSランク、後ろのエルフのステファニーさんはSランク、その後ろの3名がBランクで、もう1人はEランクだね。」
と海渡が一気に説明し、全員がギルドカードを提示した。
「またまたぁ~、そんな事でおねーさん、騙されないぞ?」
とおねーちゃん属性を拗らせた様な、面倒くさい返答が来た。
「はぁ~。面倒だな。」
とため息を吐き、
大声で
「すいませーーん、ちゃんとしたギルド職員の方は居ませんか? ギルドマスターでも構わないですが。」
と叫んで見た。
すると、奥から、熊族の男性がやって来た。
「ん?君かい、今大声で叫んだのは?」
「ええ、ちょっとこのおねーさん、新人の様で、話が進まないので、まともなギルド職員の方にダンジョンの情報を頂きたいんですがね。
ああ、おねーさんにもギルドカードを見せたんですが、偽造カード扱いされちゃいましてね。」
と再度ギルドカードを見せる海渡とフェリンシア。
「サブギルドマスター、すいませんね。ちょっと困った子が来ちゃいまして・・・」
と自分のせいでは無いと言う雰囲気のおねーさん。
「え!これって史上初のSSSランクのカードじゃん! じゃあ、君がカイト君で、そちらがフェリンシアさんか!!」
と目を剥いて驚くサブギルドマスター。
「え?? えっと、これ偽物では?」
と明らかに動揺するおねーさんw
「アホタレ! あれほど毎日、ギルド報告書に目を通せと言っているだろ? 先月辺りに本部から緊急回覧が回って来ただろ? SSSランクが新設されて、
5歳の人族の男の子と、10歳の人族の女の子が、史上初のSSSランクになったって。」
と大声で怒鳴っている。
おねーさんは、アワアワとしている。
「まあまあ、叱るのは、後でジックリ何日も掛けて骨身に浸みるまでやって頂くとして、先にこちらの欲しい情報を頂けますでしょうか? あ、ちなみに、今は6歳になりました!!」
とサブギルドマスターにお願いする海渡。
その海渡の言い様に、横でクックックと腹を抱えるフェリンシアと、
「あーあ、雉も鳴かずば打たれまい やな。」
と呟くステファニーさん。
えーー!? その言い回し、こっちの世界にもあるのか!!!
と内心驚く海渡。
「あ、申し訳ありませんでした。ここでは何なので、奥の会議室で情報をお知らせします。どうぞこちらの方へ。」
とサブギルドマスターが、案内を買って出る。
会議室に入り、席に着くと、
「えっと、正式なダンジョンは初めて入るので、ダンジョンの事をザッと教えて頂ければと思っています。」
と海渡がお願いすると、
「先ほどはうちの職員が申し訳ありませんでした。 ダンジョンの情報との事ですので、私の方から、お知らせします。
ダンジョンですが、現在の所、54箇所確認されておりまして、その多くは、ここコルテッサと同じ、地下に向かって行く階層型となっています。
で、このコルテッサのダンジョンでは、入り口から入ってすぐの階層を第1階層、更に奥の階段を抜けると第2階層となっております。
階層が深くなるにつれ、徐々に又は急激に出て来る魔物が強くなって行きます。
そして、ある一定の階層毎にボスが存在して居ます。
ここでは、10階層毎にボスが居ると推定されておりますが、今のところ、最深到達階層は25層で止まってまして、果たして何階層まであるのかは不明です。
ここまでで、何かご質問はありますか?」
と聞かれ、
「えっと、ボスが存在する場合ですが、それは下の階層へ進む階段のある所を守ってたりとかするんですか?」
とラノベの設定を思い出して聞いてみた。
すると、
「うーーん、それは微妙ですね。ボスもチョロチョロ同一階層内を彷徨いたりしてる可能性があり、何処で遭遇するかはケースバイケースの様です。」
との事。
「じゃあ、仮にボスを討伐した場合なんですが、その後はその階層にボスは居なくなるのですかね?」
と聞くと、
「それも微妙なんですが、確かにボスとおぼしき魔物を殺すと、それから暫くはボスが出て来る事はないですが、ある程度日数が経過すると、また新しいボスが出るようですね。」
「ふむ・・・つまり、別の個体がボスへ進化すると言う事なんですかね?」
と聞くと、
「しかし、例えばオークが、オーク・ソルジャーとかに進化するのは判るのですが、ゴブリンしか居ないのに、突然オーク・ソルジャーがボスとして君臨する事もあるんです。
だから一概に同一種の中から進化する とは言い切れないようです。」
との事。
ちなみに、過去に10階層のボスとして討伐されたのは、ゴブリン・キング、オーク・ソルジャー、シャドー・スネイク等等。
実際、本当にボスだったのかは不明だが、明らかに周囲の魔物より強く、何故か連携を取るので、ボスと認定されるらしい。
ふむ・・・割と不思議設定ではあるな。
「では、続けますね。 第20階層のボスとして討伐されたのが、オーク・キング、ミノタウロスとなります。現在最深到達階層の25階層では、主にシャドー・ウルフが出て来るようです。
あと、各階層ですが、前の階層が洞窟型でも、次の階層はいきなり草原ステージであったり、森林ステージであったり、色々と不思議な事になってます。地下なのに、太陽があったり、夜になったり。」
だそうで。
「倒した魔物ですが、みんな持って上がるんですか? それとも放置したりするんでしょうか?」
と聞くと、
「ああ、倒して直ぐに解体すれば、持ち帰る事は可能ですが、そのまま放置すると、いつの間にか消えてしまったりするみたいです。
まあ、普通はなかなか全部を持ち帰るだけのマジックバッグ何かは持ってませんからね。 その場合は、討伐部位や、高値で取引される素材だけを持ち帰ったりします。」
との事。
「例えばオークですが、地上に居るオークと、ダンジョンに出て来るオークとの違いとかってあるんですか? 例えば、味が違うとか不味いとか。」
と聞くと、
「基本的に味や素材の善し悪しは、地上と違いは無いと言われてます。魔石も特に変わらないみたいですね。」
「まあ、ここはまだ最下層が何層なのかは判ってませんが、通常ダンジョンの最下層って何があるんでしょうか?」
ダンジョンコアとかあるのかな? と。
「過去の他のダンジョンの事例といしての話ですが、最下層には、最終のボスが守る部屋?に大きな魔石とでも言うのか、色が違う、四角い薄いピンク色の石が置いてあるらしいです。
その石を取り外すと、ダンジョンは機能を停止すると言われています。なので、その石はダンジョン・コアと呼ばれています。」
なるほど、大まかにはラノベの設定通りに近い感じなのか。
「では、ギルドや国としては、最下層に辿り着いた場合、ダンジョン・コアを取って、ダンジョンを終わらせた方が良いのか、それともそのままにした方が良いのか、どっちを推奨しているんだ?」
「希に起きるダンジョンからのスタンピードで街や国が滅びないとも限らないのですが、ダンジョンからの素材等の恩恵も大きいので、基本的にはコアはそのままにするようにお願いしています。」
「なるほど。判った。ちなみに、未発見のダンジョンもそうなのか?」
と聞くと、未発見=管轄外なので判断不能との事だった。
「色々教えてくれてありがとう。非常に助かったよw」
とサブギルドマスターにお礼を言って、会議室を出た。
騒然とするギルドのロビーを後にし、海渡ら一行は、ダンジョンの入り口へと向かうのだった。
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