第329話


異世界3ヵ月と10日目。この世界の暦では1月2日。


昨夜はあまりにも早めに眠った為、まだ午前4時台だと言うのに目が覚めてしまった。


ヤル事が無いので、ちょっと気晴らしに別荘までやって来た。

夜明け前だが、月明かりで遠くまで良く見える。

空を飛んで、先日試射を行った所に行って見ると、それは見事な程に甦っていた。

片方はサトウキビが生えそろい、片方はお花畑になっている。

せっかくなので、サトウキビを収穫し、さらに全域にラピスの泉の水を薄く蒔いておいた。


そう言えばダンジョンがあるんだったな・・・。

下手に飛ばされた最古の古墳ダンジョンの嫌な思い出はあるが、智恵子さん曰く、ここはラノベの定番ダンジョンらしいから、大丈夫だよな?

と思い、ちょっと崖の中腹にあるという入り口を探してみた。


割とポッカリと空いた穴が忍び返しの様に抉れた崖の中腹に存在した。


「ここが入り口か。」

中は、ラノベの定番通りで壁や天井が微妙に発光していて歩くのに問題は無い。


スキルのマップを確認すると、流石は万能なマップスキルだけあり、一応通路は表示されていた。

魔物の反応も赤い点で表示されている。


200mぐらい先の赤い点は、ゴブリンらしい・・・ なんだよ、ショボいな。

身体強化、身体加速、クロックアップを全開にして、サクサクと赤い点を潰して行く海渡。


10分も掛からずにこの階層?の赤い点は全部消えた。


「ふむ。これがダンジョンって物なのか。」


しかし、判った事は、ラノベの様に、『ダンジョン内で殺した魔物の死体は吸収されて消える』と言う事はなく、残りっぱなしだった。

一応、ダンジョン内でゲートが使えるかのテストも兼ねて、別荘へと戻ってみると、特に問題なく戻れた。


よし、後でダンジョンについて調べてから、今度、フェリンシア潜ってみるかな。



5時を過ぎたので、一度部屋へと戻り、目覚めたフェリンシアと宿舎横の空き地へと朝練に向かう。


「フェリンシア、ダンジョンってどう言う物か知ってたりする?」

と本気の戦闘訓練を行いながら、海渡が聞くと、


「うーーん、単純に魔物が湧いてくる魔素の濃度の高い場所と言うぐらいしか知りませね。」

と応戦しながらフェリンシアが答えた。


「あの別荘の地下のダンジョンに少し潜ってみたんだけどさ、1層にはゴブリンだけだったよ。

普通にマップも使えるし、ゲートも使えるみたいだから、今度潜ってみない?」


「それは面白そうですね。深い所だと、どんなのが出て来るんでしょうかね? 楽しみですね。」

と最近、どこぞの戦闘民族の様に戦闘大好きなフェリンシアが答えた。


ケモ耳ズと、何とプリシラがやって来たので、2人での訓練を止め、昨日同様のメニューを行った。

プリシラだが、武術は短剣術Lv3と剣術Lv3を持って居るらしい。

と言う事で、本人の希望でフェリンシアと同じ二刀流をやらせてみる事にした。


プリシラにも戦闘シミュレータをやらせてみると、これが滅茶ハマった。

「ボス! これとても面白いです!!」(←さらに呼び名がいつの間にか ボスになっていた・・・)


「お、おう! そうか良かったなw」

と答えつつ、朝の訓練を終えたのだった。





朝食が終わり、食後のお茶を飲みながら、本日の予定を話し合う。


「なあ、この近くで、景色が良いとか、強い魔物が居るとか、ダンジョンがあるとか、美味しい物があるとか、何か情報無い?」

とケモ耳ズ+1に聞いてみると、


「美味しい物と言っても、先日王宮で食べた物と、ボスが作った物が最高ぐらいで、後は屋台と同じ様な食べ物しかないですね。

景色か・・・観光と言う事だと、そうですねぇ・・・ジュモンの滝って200mぐらいの谷に落ちる滝があるんですが、それくらいかな?

ダンジョンは首都の近くには無いですね。一番近いダンジョンは、コルテッサのダンジョンですが、ここから馬車で2日ぐらいの距離かな。

ここら辺の魔物は、一番強いのが、何だろう、スナイプ・モンキー、グレート・コング、フォレスト・ウルフ、オーク、希にミノタウロスぐらいです。」

とプリシラ情報。


「なるほど、馬車で2日と言う事は、コルテッサのダンジョンまで、約600kmと言う感じかな?」

と推測して言うと、実際の直線距離はもっと短いのだが、地形と道が悪く、迂回してるので、時間が掛かるらしい。


「つまり、話を纏めると、飛行機で行けば、片道1時間掛からないって事だな?」

と海渡が言うと、ハッとした表情で、


「ああ、そうか、ボスには飛行機ありましたねw そうですね。多分近いと思いますww」

とプリシラが目を輝かせる。


「ところで、そのコルテッサのダンジョンって誰でも入れるの?」

と聞くと、Eランク以上の冒険者であれば、入れるらしい。


「そうか、じゃあ、観光がてらにダンジョン行ってみる?」

とみんなに提案してみると、戦闘民族でないステファニーさん以外は、大乗り気w


「まあ、みんなが行く言うなら、うちかて行くけどな。」

と言っていた。

何だかんだで『神の実』食べた後、スペック上がったから、以前よりは体力も筋力も俊敏も上がっているし、大丈夫だろう。


ちなみに、プリシラもEランク冒険者のカードを持っているらしい。


「そうか・・・じゃあ、残念だが連れて行くしかないか・・・」

と海渡が冗談で言うと、膨れていたww


プリシラは、実家から装備も持って来ているらしい。



新スタッフに、ちょっと出かけるので、ゴンザレスさんが荷物を持って来たら、受け取って貰うように頼んだ。

常時誰か1~2名はお留守番をしてくれる様だ。


「じゃあ、夜までには戻るからね! もし間に合わなかったら、適当に食事のストックから食べてね。」

とお願いして、2台の自動車に乗って、飛行場を目指した。



2号機に乗り込んで、首都を迂回しつつ上昇し、高度800mで西南西方向へと飛ぶ。

ダンジョンの手前にコルテッサと言う街があるので、その街を目指し、オートパイロットをセット。

飛行時間、約20分で街が見えてきた。


「近っ!!www」

と海渡が笑うと、プリシラは唖然としていた。

「馬車で2日掛かるのって何だったんでしょうか?」と。


街の手前で着陸して、飛行機から降りると、響めきが岩陰に隠れた人達から湧き起こる。


「あーー、驚かせたようで、申し訳無い。これは飛行機と言う、空を飛ぶ魔道具だから、安心してね。」

と大声で言うと、岩陰や木の陰から続々と出て来た。


そして、ゾロゾロと見学にやってきた。

「おい、坊主、これ飛行機って言うのか? 何処から来たんだ?」

と一人の冒険者風の男が聞いてきた。


「そうです、飛行機ですね。今朝は30分ぐらい前に首都から飛んでやって来ました。」

と言うと、周囲が滅茶滅茶驚いていた。


「マジか! 俺なんか徒歩で4日掛かりでやって来たと言うのに・・・」

と崩れ落ちていた。


「何だと、30分で首都からここまで来れるものなのか!」

とか、

「なんだなんだ? このハーレムパーティは!」

とか、色々と・・・。


「まあ、飛行機は個人が買うのは価格的に厳しいかと思います。高いので。先日、獣王様の所にも数機納めましたので、そのうち段々と普及するんじゃないでしょうかね?」

とあくまで他人事の様に言う海渡。


だって、ワンスロット王国以外までの空路は今のところ、手に負えないしなw


「あ、でも個人でも、稼ぎの良い冒険者なら、こっちの魔動自動車なら手が出るかと思いますよ?」

と自動車を空いたスペースに出してみた。


「「「「「おーー!!」」」」」

と突然出て来た自動車に驚く観衆。


「おい、坊主・・・もしかして伝説のアイテムボックススキル持ちか!」

と別の冒険者が叫ぶ。


「はい、お陰様で。」

と肯定しつつ、


「これは魔動自動車と言って、馬が要らない馬車の様な乗り物です。これは道にもよりますが、1時間で最高200kmまで進みます。悪路だとスピードは落とさないと危ないですがね。」

と説明する。


「坊主、これは幾らぐらいで買える物なのか?」

と更に別の冒険者が聞くので、


「白金貨60枚ですね。」

と答えると、


「「「「「そんな金額の物、買えるかーー!!!」」」」」

と声が揃った。


「えー? ガチコンブ1体で白金貨2枚だから、ガチコンブ30体分だから・・・ちょっと面倒ではあるか。」

と呟く海渡。


「いやいやいや、坊主!ガチコンブとか、討伐不可能な物を対象にしてんだよ? 普通に無理だからね?」

と言う冒険者。


「そうか、海の中だから、結構面倒ではありますよね。あとは、ワイバーンとかも結構良い値段になりますよ? ワイバーンなら、綺麗に殺せば、白金貨70枚ぐらいになるかも・・・」

と海渡が言うと、


「だから、さっきから、何で災害級とか恐ろしいのばかりノミネートしてんだよ!」

と怒られちゃった。


「まあ、もしご購入の際には、首都に今度オープンする さえじま商会 までお越し下さい。他にも冒険者向けの便利魔道具や、超神話級の防具等も取り扱ってますので。」

と頭をさげ、飛行機と自動車を収納して、ソソクサとその場を去ったのだった。

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