第324話


異世界3ヵ月と9日目。この世界の暦では1月1日で元旦!


ひゃっはーー! あはっぴーにゅーいやーだよ!!


いつも通り、日の出前に目が覚めたので、1人で朝のモーニングコーヒーを入れて飲んでいると、コーヒーの香りでフェリンシアが目覚める。

「おはよう、フェリンシア。そして、新年明けましておめでとう! だよw」


「何それ?」

とフェリンシアが不思議そうに言うので、日本の風習を教えてやった。


そして、せっかくだからとステファニーさんも叩き起こして、屋上で初日の出を拝む事にする。


「ふぁ~~」

と大きな欠伸をするステファニーさん。


「つまり、1月1日の朝日にお参りするって事なんやね?」

とステファニーさんが聞いてきた。


「そう、つまり1年の最初の日の出・・・初日の出を拝み、去年一年ありがとうございました。と感謝し、今年一年宜しくお願い致します と言うお願いをする訳です。まあ気持ちの問題と言うか縁起担ぎですよ。」

と日本の風習を軽く説明する。


「ふーん、変わった風習やなぁ。でも、当たり前の様にある物にでも、何にでも感謝の心を持てと言う意味なんやろ? 確かに良い事かも知れんなぁ~」

と頷くステファニーさん。



「あ、御来光だ!」


東の地平線の向こうが薄ぼんやりと輝き出して、ジワリと眩しい朝日が目に飛び込んで来た。


この世界には神社はないので、御来光に、二礼二拍手一礼をする海渡は心の中で、女神ジーナへと去年のお礼を述べる。

子供の体にはなってしまったものの、お陰様で、十分過ぎる程の力と、何でも作れる知識や能力を貰えた事、そして多くの仲間と呼べる人や、居る場所を作れた事に感謝をしたのだった。


「あ!ボス、おはようございます。ここでしたか!」

とケモ耳ズがやって来た。


「おう! 新年開けましておめでとう! 今年も宜しくな!」

とケモ耳ズに新年のご挨拶。


「「「ん??」」」と、おめでとう の意味が判らない3名に、再度説明を繰り返す海渡だった・・・。



ステファニーさんは、「お先にユッタリ初風呂やw」と大浴場へと消え、海渡、フェリンシア、ケモ耳ズの5名は、宿舎横の岩のある空き地スペースで朝練を行う。

まずは3人に型の訓練を行い、次は3vs2で団体実戦稽古、次は個別に1対1で実戦稽古し、最後は各自戦闘シミュレータで2プレイさせた。

その間、海渡とフェリンシアで、フルでの実戦稽古を行い、昨日の鬱憤を晴らしたww


「いやぁ~、やっぱフェリンシアとの実戦稽古は良い運動になるなぁww」

と海渡が言うと、大の字になって寝てるフェリンシアが、


「うーー・・・全然差が詰まりません。今年こそは追いつくぞーーー!」

と悔しがっていた。



朝風呂に入る途中で、寝てるレイアを掴み、風呂場へと連れて来た。

寝てるレイアにお湯をジャバーっと掛けていきなりブラシに石鹸を付けて、ゴシゴシと洗うと、


「あ、親分、おはようございます・・・って言うか今どう言う状況??」

と泡だらけで良く分かってないらしい。


そのままジャバーっとお湯を掛け、「アババ」とか呻いていたが、


「よし、去年1年の垢を落としてやったぞーww」

と言うと、


「あ、ありがとうございます!」

と言って、プヨプヨと湯船へと飛んで行った。


海渡も自分の頭と体を綺麗に洗い、湯船にユックリと入って行く。


「ああ、何かの予定に追われる事が無いって素晴らしい♪」

とご機嫌の海渡。


「いやぁ~ 本当にユッタリしてて、温泉って良いっすねぇw」

とご機嫌のレイア。


とそこへ、昨日合流した20名のケモ耳ガイがやって来た。


「あ、カイト様おはようございます。いやぁ~、この温泉っての、本当に凄いですね! もう最高ですよw」

と一発で温泉にハマった模様w


「だろ? 逃げなくて良かったなw」

とニヤリと笑いながら言うと、


「ハハハ、本当ですよねww」

と全員笑っていた。


湯船にマッタリ浸かりながら、

「カイト様、ところで、今日から我々って何をどうすれば良いんでしょうか?」

と聞いて来た。


「ああ、言ってなかったっけ? うちの商会は、年に2回大型連休・・・って言ってもたった4連休なんだけど、12月28日~1月3日までお休みなんだよ。

だから、自由行動になるね。 もっとも、1月3日には、トリスターに全員で移動するから、完全に自由なのは今日明日だけになるか。

で、トリスターに行ってからは、多分2週間ぐらい研修を受けて、仕事に慣れて貰ったら、こっちに戻って店をやって貰う感じかな。」

と言うと、


「「「「え!? 自由行動!?」」」」

と余りの緩さにビックリしていた。



風呂から上がって、大食堂に集まり、朝食を用意して行く海渡。

全員が集まった中で、朝食前に再度全員に1月3日までお休みだが、1月3日が移動日となるので、朝出発までは自由に過ごして良いと伝える。

そして、夕食は出せるけど、昼食は適当に食事ストック用の倉庫から出すか、各自で食べる様にと伝え、お年玉として銀貨5枚を全員に渡した。


朝食後、ケモ耳ズ3名にも今日明日は自由に故郷を楽しむ様に言い、何かあったら遠慮無く連絡するようにと厳命しておいた。





と言う事で、やって来ましたサルド共和国首都の教会。


珍しく、ステファニーさんも新年なのでお参りするらしい。

ちょっと心配したのだが、早朝なので、他の参拝者も居なくて、安心して祭壇前で『女神様』とご挨拶。



「いらっしゃい、海渡さん、フェリンシアさん、そして初めましてステファニーさん。」

と女神様。


「えーーー!! ステファニーさんも来ちゃったの?」

と海渡が驚くと、もっとパニくっている人が隣に居ました。


「え?え?? どう言う事? うち今何処に居るん?? え?女神様??」

とステファニーさんがオロオロしている。


「ええ、私がジーナですよ? 海渡さんから頂いた神の実を食べられたでしょ?

なので、神界へと魂が接続出来る様にパスが通ったのですよ。」

と女神様が説明した。


「なるほど、神の実ってそんな効果もあったのか! これはオスカーさんとヨーコさんにはなかなか言えないなぁ・・・」

と納得する反面、ヤバいなと背中に汗を掻く海渡。


「それはそうと、海渡さん、神の実の効果は如何でしたか? 気に入って頂けたでしょうか?」

と言われ、


「いやぁ~、流石にあれは反則ですよねw カンストしちゃって、便利な反面、何かコツコツ上げる楽しみが無くなってしまいましたよwww

まあ、色々な事が出来るので、それはそれで、楽しませて頂いて感謝しております。(けどね・・・)

それで、弟子達に食べさせるのは取りあえず延期しました。チート過ぎると、努力しなくなりますし、色んなノウハウが蓄積しなくなりますからね。」

と言うと、


「なるほど! そう言う考え方もあるのですね。勉強になります。」

と女神様も納得していた。


「そうそう、女神様! 一つお聞きしたかったのですが、この世界ってこれが初めてって訳じゃないのですね? 何度かメイク・アンド・トライされたのですか?」

と聞くと、


「えっ!? 何でそれを?」

と見るからに狼狽している。


「いや、別に良いんですが、有史以前の話と、実際のこの世界の状態が、辻褄合わないので、もしかすると? と思っただけです。前時代の遺跡とかってあるんですかね?

ほら、元が考古学者なので、血が騒ぐと言うか・・・ まあ禁忌になるなら、止めるんですが。」

と説明すると、


「良かった・・・怒られるかと、ちょっと心配しました。 いえ、別に禁忌って事じゃないですが、この大陸には遺跡は地表には残ってませんね。

殆ど地下に沈んでます。過去の文明は、地球と同じ様に発展したんですが、ゲルハルト帝国の様な国があって、海渡さんがご存知の様なあの兵器で一度滅びました。今の世界は3度目の世界となります。

なので、上手く発展して行って欲しいと願っているんですよ。だからこそ、ゲルハルト帝国をのさばらせてはダメなのです。」

と女神様が拳を胸元で握りながら力説してた。


「なるほど。理解しました。奴らの予定は今のところ、変更無しですかね?」

と聞くと、


「はい、1月14日の夜に両方の国境に到着し、そのまま日の出と共に突っ込んで来るらしいです。」

との事。


「あ、そうそう、新作作ったので、時間切れになる前にお渡ししておきますね。」

と海渡は急いで用意していたアップルパイとピーチパイを50個づつ取り出して、お渡しした。


「各50個で足りますでしょうか?」

と聞くと、


「あーー、108個あれば尚良いかと。」

との事だったので、更に100個づつをお渡ししておいた。


「ありがとうございます。あとここの孤児院にも良い子が居ますので、宜しくおねがい・・・・」

と途中で声が切れ、祭壇の前に戻って来た。


「あ、途中で切れちゃった・・・。まあ了解です。」

と海渡が笑いながら、隣を見ると、ステファニーさんがオロオロと泣いている。


「ん?どうしたのステファニーさん」

と海渡が聞くと、泣く程驚いたらしい。

更に、戻った途端に、女神様の加護が付いて、種族がエルフからハイエルフに変わってしまったらしい。


「あーーー、何か色々ごめんね・・・」

と海渡が謝ると、


「いや、寧ろ感謝しとるで? だってハイエルフやで? 女神様の加護やで? あとなんや良く分からんけど、女神の知恵Exなんてスキルも生えたで?

なんや、チートっぽい響きやでwww」

と一転して笑っている。 流石に逞しいなw



礼拝堂から出ながら、『女神の知恵Ex』の智恵子さんの事を教え、更に伝心スキルとネットリンクスキルを教えたのだった。

流石は女神様の加護持ち、アッと言う間にスキルも生え、智恵子さんの便利さに驚喜していたのだった。

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