第322話


奴隷商を出た海渡は、プリシラの案内で、冒険者ギルドへと向かった。


「主な目的は、ギルドカードからこの国のお金で引き出す事だけど・・・。明日、何も用事が無ければ、1日で出来そうな依頼を受けても良いし、他の国のギルドも見てみたいよねw」

と海渡とワクワクして喋っている。


「そうですか? 何かギルドで騒動有りそうな予感と言うか悪寒しかしないんですが?」

と不安気に案内するプリシラ。



すると、目を輝かせワクワクするフェリンシア、ステファニーさん。

「え? また騒動ですか? じゃあ、お金引き出さなくても済むんじゃないですか?」

と目を$マークにしてる。


「え? ボス!またやるんですか?www」

と爆笑するケモ耳ズ。


「いや、やらないよ? そんな期待する目で見るのは止しなさいw」

と窘めるが・・・




「こらガキ!! ここは人族のガキが女連れてチャラチャラする場所じゃねーんだよ!!!(怒」

と現在絶賛絡まれ中の海渡@冒険者ギルド首都支部。


このイキっておられる冒険者はやはり虎族の推定20歳ぐらい?

更に、そのパーティーメンバーらしき、熊族1名、犬族1名・・・。



うーん・・・誰だフラグ立てたのは? と思いつつ海渡は瞬間的に身体強化と身体加速を使ってスルリとすり抜け、受付嬢の所へと並んでいた。


「あれ?ガキが消えた?」

と後ろでキョロキョロしている間抜けな3名。


「あ、居やがった!!! てめぇー何シカトこいて、シレっと並んでるんだよ?」

と、1人が海渡の肩を掴み、こっちへ向ける。


はぁ・・・めんどくせーーー!!!!


掴んでる手をテシッと撥ね除け、

「邪魔しないでくれますかね? おじさん方。小さい子を虐めて楽しいですか?」

と睨み返す海渡。


軽く撥ね除けたつもりが、何故か1名痛がってる。

大袈裟な・・・。


「てめー!人が優しく言ってやってるのに、何しやがる? 今ならそこの女共と有り金全部を置いて行けば許してやるぞ?」

と熊がイキってる。


あれ?ギルド職員は何も言わないんだね。

職員の方を見ると、サッと目を逸らされたよ・・・。


フェリンシアの方をチラッと見ると、悪い笑みをして、シュッシュとパンチを繰り出すポーズをしてる・・・ヤレ!と。

ステファニーさんは、目を$マークにしてニヤニヤしてる。

ケモ耳ズとプリシラは、キラキラ&ワクワクの目。



「はぁ~。そこまで言うなら、掛け勝負でもしますか? 良いですよ? ちゃんと見合う物を出せるんでしょうね?」

と海渡が吐き捨てる言うと、


「ケッケッケ。おう!良いぞww で幾ら掛けるんだ?」

と虎が言う。


「じゃあ、こちらのお金は無いので、ワンスロットの金貨になりますが、金貨100枚。」

と金貨の入った袋を懐(に見せたがアイテムボックスから出している)から見せ、中身もジャラジャラと見せつける。


「ほう、ガキの癖に持ってやがるなぁw 良いぞ!その勝負乗ったwww

おい、誰が戦う? 俺にやらせろよ!!!その代わり、一番最初に俺に女2人選ばせろよ!」

とか言ってやがる。


「あ、いや、雑魚が幾ら集まっても所詮ゴミですから、3名纏めてで良いですよ? それより、そっちも金貨100枚持ってるんでしょうね?」

と海渡が燃料を投下すると、


「糞ガギが生意気に・・・良いだろう、こっちは3人で相手してやるw 金?そんな物、足りなければ借金奴隷になってでも金貨100枚作ってやるぜw まあ勝てたらなw」

とwww


ふふふ、ちゃんとドローンで撮影してるんだよねww 言質頂きました!!!


海渡が悪い笑みをして、風魔法の拡声を使い、

「あー、ギルドの皆様、今この3名のゴロツキ冒険者から掛け勝負を挑まれました。

ゴミ3匹 対、私1名での勝負をこれからギルドの訓練場で行います。

ゴミ3匹の末路を楽しんで下さい。」

と宣言した。(これ、実はギルドの外にも拡声してるんだよねw)


「せっかくだから、ギャラリー居た方が楽しいですからねw」

と海渡が言うと、激憤してらっしゃる。


海渡はゴミ3匹と一緒に、ギルド裏の訓練場へとやってきた。

訓練場では、何組か訓練していた様だが、先ほどの拡声が聞こえていたらしく、手を止めてこちらを見ている。



いつの間にか、フェリンシアが今朝の机を出して、伊達眼鏡を掛け、キリリとしている。

机の上には、

「人族少年」 と 「ゴミ3匹」の紙が下がっており、隣に陣取るステファニーさんが、風魔法の拡声を使い、


「さーさー!お立ち会いお立ち会い! 暇な方も、夕飯の準備で忙しい方も、暫しお付き合いを!

ゴミ3匹に絡まれた、哀れな人族の少年・・・なんと無謀にも掛け試合を提案し、この勝負に金貨100枚を掛けるそうです。

何処の坊ちゃんだか知らない人族の少年vsゴロツキ冒険者 パーティー名はゴミズですかね? さあ、この勝負に掛ける方は居ませんか?

さあ、掛けた掛けた!! 今夜のご飯が、サンドイッチからステーキに変わるかも知れませんよ!!」

と標準語で喋ってるしww


そこで、

「あーー! 俺、自分に掛けるわ! 白金貨2枚と金貨50枚な!」

とわざとらしく、白金貨2枚と金貨50枚をドンと机に置いた。


すると、ステファニーさんが風魔法の拡声で、更に煽る煽る。

「おーーー!人族の少年は全財産でしょうか? それともお遣いのお金でしょうか? 自分の運命に掛けるようです。その額なんと、白金貨2枚と金貨50枚・・・驚きですね!!

さー、これは面白くなってきましたね!」

と言うと、ドヤドヤと冒険者が集まり、ゴミへと掛けて行く。


フェリンシアは手慣れた物で、ドンドンと受け取った金額を書いたメモを渡して行く。

海渡はかなり大根な演技で、ガーーーンって表情をして、地面に体操座りをしている。


ゴミズは

「ダハハ! だーれもお前に掛けねぇじゃねーか。バカだな・・・まあ半殺しで許してやるさwww その後、女の事は安心しろw 俺らが壊さない程度に可愛がってやるからなw」

とかほざいてやがる。


「おい、お前すぐ壊しちゃう常習犯だろ! 今回のは上玉揃いだから、ちゃんと大事に壊せよwwww」

とか犬が笑いながら言っていた。


熊は熊で、

「俺、あの小さい人族の子が良いなw 堪んねぇぜww」

とかかなりアウトなゴミ共だった。


こいつら、野放しにするとダメだな。


時々、ステファニーさんが、拡声使って、ギャラリーを呼び集めてる・・・。

15分ぐらいして、掛けを〆切り、親指を立てて来た。


海渡は立ち上がり、

「で、ルールはどうする? 一応、一般的な感じで、殺しはNG、怪我はOKで良いか? 気絶したりして戦闘不能になるか、降参したら負けで良いか?」

と聞くと了承された。


海渡が頷くと、ステファニーさんが拡声でルールをギャラリーに伝え、開始までのカウントダウンを始めた。


「3、2、1 ファイト!!」


海渡は号令と共に、身体強化、身体加速、クロックアップを掛けて、20m離れた一気に熊の懐へと入り込み、盾を構えた熊を盾の上から思いっきり蹴飛ばした。


「ドッカーーーン」と凄まじい音がして、熊が盾ごと吹き飛び、更に25m程後ろの壁に張り付いて戦線離脱。


ヤベーー!やり過ぎたか? と心配したが、骨は折れているが、生きては居たww


あっけに取られるゴミ2匹とギャラリー。


更に、虎が構える剣を横からポキリと折り、虎の股間を蹴り上げた。

「グジャ」と何か大切な物が潰れる音と、その感触が海渡のブーツ越し伝わって来た。


気持ち悪っ!!! 面倒なので、犬は雷撃一発を股間にお見舞いする。


「バッシーーーン」

と轟音が響き、観客が壁に張り付いた熊から視線を戻すと、呻き声を上げて股間を押さえのたうち回る虎と、股間から煙りを出してピクピクと痙攣する犬の姿が、そこにあった。


開始後、僅か2秒も掛からずに完全圧勝である。


「「「「「「「・・・・」」」」」」」


「あーー、この勝負ゴミ3匹の戦闘不能により、人族の少年・・・SSSランクのカイト君の勝利です!

人族だから、少年だからと相手の実力も判断出来ずに、無闇に絡むのは止めましょうねw」

とステファニーさんが、宣言した。


「「「「「「「えーーーーーー!!」」」」」」」

と言う響めきが訓練場に鳴り響いた。

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