第321話


そして、総合型施設の5階の大浴場にて、ラピスを召喚。


「ラピス先生! 出番です!!」

と海渡が新作のアップルパイや、ピーチパイ、ぜんざいを出して言うと、


「もう、最近メッキリ呼ばないじゃない!!!」

とお怒りモードの大先生も、ぜんざいに溺れ、アップルパイでデレ、ピーチパイで蕩けて居た。


で、お決まりの大浴場→屋上の泉→ラピスの湯 コースで作業を完了し、最後にユグドラシルの実を1つ献上してお礼を言うと、


「まぁ!これユグドラシルの実じゃない! そうか500年目だったのね。 忘れてたわ。

間隔が長いから、ついつい忘れちゃうのよね~。ありがとう。これでやっと8個目だわw」

と言っていた。


「え?8個って事は、忘れた回数を例えば2回とすると、5000年??」

と聞く海渡。


「うーーん、私は既に7000年以上前に生まれてるし、私で4代目だからなぁ・・・。

まあユグドラシルの木って今の世界の前の前の世界にはあったからね。」

と面白い情報を頂いた。


マジっすか! 今の人類の有史前ってのがあったのか!

もしかして、何かあって、一度作り直しってのが2回程あったって事かな?

とか考え込んでいたら、


「じゃあ、また頻繁に呼びなさいよ!」

とラピス先生が去っていった。


ポカンとラピスを眺めていたプリシラが再起動した。


「カイト!! 今のって精霊?」

と言うので、


「ああ、ラピスって、ああ見えて大精霊王なんだよw」

と褒めておいた。


「ああ・・・たった数時間で驚きすぎて、なんか一生分の驚きを使い切った気がします。」

とプリシラがゲッソリしていた。


「ははは、プリシラちゃん、若いなぁw そんなんやったら、カイト君の側におられへんで? こんなん可愛いもんやで?」

と余計な燃料を投下するステファニーさん。


「ちょっ!! 人聞きの悪い事を!!」

と海渡が抗議するが、全員に却下されたorz



一休みした後、海渡、フェリンシア、ステファニーさんの3名で、敷地に高さ3mの塀を作って、宿舎への通路と門を作った。


門をロックした後、ギャラリーを掻き分けて脱出し、散策しながら、プリシラの案内で、スパイスの店等を買い漁る。


そして、やって来たのは、奴隷商の店。


「いらっしゃいませ。どんな奴隷をお捜しでしょうか? あ、これはプリシラ様、お久しぶりです。」

と狐族の店主?がお辞儀をする。


「今日は私じゃなくて、こちらのさえじま商会の会長、カイトの用事なの。 宜しくね!」

とウインクしていた。


「なるほど、人族の方ですか!?」

と怪訝そうな目で見る店主。


「初めまして、さえじま商会をやっているカイトと申します。今日は店で働いてくれそうな、借金奴隷を探しに来ました。」

と説明する。


「なるほど。 失礼ですが、奴隷を買う方のルールはご存知ですかね? 色々法律とかで決まっているのですが。」

と聞いて来た。


すると、ケモ耳3名が、

「おじさん、私達も、怪我の治療費で借金奴隷になったんですが、カイト様の所で買って頂いて、その場で解放して頂き、怪我まで治療して貰いました。

おじさんが心配する様な事は、決して無いと、私達が保証しますよ!」

と援護射撃してくれた。


「なんと、その場で解放しちゃったんですか!!! いやぁ~長年奴隷商やってますが、初めて聞きました。」

と驚いていた。


「では、安心してご紹介出来そうですね。」

と笑顔になった。



別室に通され、

「どんな感じの能力をご希望でしょうか?」

と聞くので、


「取りあえず、こちらの借金奴隷って何名ぐらい居ますでしょうか? 特に能力はどうでも良いですよ? 歳も問いませんし、読み書きや計算が出来なくても大丈夫です。

こちらで教えますから。真面目でヤル気さえあれば大丈夫です。」

と答えた。


店主は、従業員に伝え、暫くすると、27名のケモ耳達を連れてやって来た。


コーデリアの時と同じで、商会と仕事内容、待遇等を説明し、ヤル気のある人を問う。

すると、27名全員が手を上げた。


「では、全員購入と言う事で。 あと、病人と怪我をしている借金奴隷も居たら、そちらも引き取りますが、如何ですか?12名程居るようですが?」

と智恵子さん情報を基に聞いてみると、


「え?何でご存知なんですか! ・・・まあ良いでしょう。

実は伝染病に掛かっている者が7名おりまして。地下に隔離しております。

後は、腕や足や指を無くした借金奴隷になります。

とてもあの状態では、まともに働けませんよ? 私どもも対応に困っておりましてね。」

と店主が言う。


「判りました。じゃあその12名も購入と言う事で手続きを進めて下さい。」

とお願いすると、


「12名も良いのですか? 合計で39名になり、相当な金額となりますが?」

と言うので、


「ああ、こちらの国の貨幣は手持ちが少ないのですが、ギルドカードで支払うか、ワンスロットかコーデリアの貨幣で良ければ、現金でも大丈夫です。」


「では、商業ギルドか冒険者ギルドのカードでお支払いをお願い致します。」


暫く計算した後、

「合計で、白金貨5枚に金貨59枚と銀貨12枚になります。 大丈夫でしょうか?」


との事で、海渡が冒険者ギルドのカードを取り出した。

海渡のSSSランクのカードを見て、固まる奴隷商。


「え!? もしかして貴方が史上初のSSSランクの冒険者ですか!」

と驚いている。


そして、プリシラの方を向いて、

「プリシラ様、これは本当に面白い方をご紹介頂き、ありがとうございますw

いや、最初は人族の少年で、聞いた事の無い商会名だったので、借金奴隷とはいえ、同胞に悪さをする輩ではないかと、心配しておりました。

大変失礼しました。」

と深々と頭を下げられた。


「ははは、いや、確かに誰でも6歳のガキが何言ってやがるって気持ちになるのは当然なんで、大丈夫ですよ。

まあ、懸念も晴れたようですし、チャッチャと解放しちゃって下さい。

その間に、その隔離された奴隷と、怪我してる奴隷の所へ案内して頂けますか?」

とお願いし、従業員から地下の隔離病棟?に案内された。


「あのぉ・・・ここではマスクして完全防備しないと、感染しちゃいます。くれぐれもご注意下さい。」

とマスクや白い衣装を手渡して来た。


12名の病名は、元の世界の結核である。

海渡は、マスクや白衣を遠慮して、中には入らず、扉の外から、全員をマップでロックし、結核菌や他のウィルスや菌を殺し、損傷した肺や内臓が修復されるイメージを込めて『ヒール』を発動した。

扉の向こうで、7名の体が激しく光り、咳や吐血を繰り返しゼイゼイしていたのが嘘の様に静かになる。

更に、病室全体にクリーンを掛け、完全に除菌した。


「もう全員大丈夫ですよ! 完全に病原菌は居なくなりました。」

と従業員に言って、病室に入り、ハチミツ水を配って廻る。


今までの苦しみが嘘の様に消え、普通に息が出来る様になって、ポカンとする12名が、ハチミツ水を渡されるがままに飲み干し、顔色に赤みが差してきた。

「あー、みなさん、私はカイトと言いまして、さえじま商会と言う商会をやっております。みなさんに当方の商会で働いて頂きたいと思っております。

と言うか、既にみなさんの意思を聞かずに、購入しちゃったんですが・・・如何でしょうか?」

と先ほど同様に内容の説明をした。


結果、全員が、喜んで!! と同意してくれた。


更に怪我人の所でも、部位欠損患者を含む5名を治療し、働く事に同意して貰った。



完全に復活した12名を従え、先ほどの部屋へと戻り、12名も解放して貰った。


「いやぁ~w 本当に驚きです。部位欠損まで完治ですか!! 同胞を助けて頂き、ありがとうございました。」

と笑いながら、目に涙を溜めていた。


結果、男20名、女19名、合計39名のスタッフを得た訳だ。


新年早々に、一度研修でトリスターに数週間行って貰う事を伝えた。

更に各人に銀貨20枚を渡し、必要となる着替えや日用品を買いに行かせ、新しいさえじま商会の門の所に集まる様に伝えた。


「え??? 銀貨20枚持って、私らが逃げるとか思わないんですか?」

と元奴隷の1人が驚いて聞いてきた。

奴隷商も横から見ていて、驚いていた。


「え?逃げるの?? いや・・・働きたくないなら、まあしょうが無いけど、たった銀貨20枚あったって、何も出来ないよ? これからその何十倍も年間稼げるのに、自分が損するだけじゃん。」

とあっけらかんと答えた。


全員が驚いていた。 損するのは海渡ではなく、逃げた奴だと言い切る事に。


「確かに、損するのは逃げた奴ですねwww」

「ええ、一度あの待遇を知っちゃうと、逃げるのがどんなにアホらしい事か判りますよねw」

「最高の食事に、凄いお風呂、清潔なお部屋に、寛げるベッド、素晴らしい訓練施設、目にする者が驚く商品、高いお給料と毎週1回の定休日・・・どれを取っても規格外な所ですからね。」

とケモ耳ズが爆笑している。


「あー、ほんまやw コーデリア王国を探したって、あんなに楽しくて良い商会はあらへんでw 美味しい食事が毎日3回食べ放題やで? そんなとこ、ないないw」

とステファニーさんも爆笑していた。


「まあ、ステファニーさんは、食い過ぎですけどね? しかし、損するのは逃げた人って事は伝わったかと。 そんな訳で、全然心配はしてないのですよ。」

と海渡が締め括った。


39名は最初ポカンとしていたが、次第にクスクスと笑い出し、何か希望を見つけた様な明るい笑顔になった。

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