第317話


駄々を捏ねる獣王様の押しに屈した海渡ら、2台の自動車に分乗し、無事城門を通過。

王宮まで送らされるハメになってしまった。


まあ、スパイスやコーヒーの取引の件もあるので、甘んじている状況。

最初こそ「坊主!」や「少年!」と呼ばれていたのが、いつの間にか、「カイ坊」呼ばわりに変化を遂げ、なんか懐かれている。


「なぁ、カイ坊や、俺ん所に泊まっていかねぇか?」

と現在絶賛勧誘中なのである。


「お気持ちは嬉しいのですが、そうすると、せっかく観光もしたいのに、中々外に出して貰えない様な気がするので。」

とお断りする海渡。


既にこの会話は5度目である。


後ろの席に座るフェリンシアが、クックックと笑ってる。



「おう、そこの門から入ってくれ!」

とタクシーの運転手に絡む酔っ払いの様な、言い草の獣王様。


「えー!? 中入るんですか? ちゃんと帰してくださいよ?」

と怪訝そうに言うも、それ程嫌ではない。


だって、門からして、ワンスロットともコーデリアとも違う、アフリカンな雰囲気。

何か、トーテムポール的な物とかも建ってるし、そして何よりも驚きなのは、門番が槍を立てかけて、横になって寝てるよwwww


「何、このユルユルのガバガバなセキュリティwww 良いんすか?こんなんで?」

と海渡が思わず聞くと、


「ダハハ、王宮に攻め入ろうとする命知らずは、年に10人ぐらいしかいねぇ~からなwww」

と獣王様が笑い飛ばす。


「いや、年に10人も居るじゃないかww」

と思わず突っ込む海渡。


「いや、門番起きてても、余り役に立たねぇし。入る気になりゃ、別に塀を越えて入って来れるからなww」

と指さす方を見ると、塀がVの字に壊れていた。


「えーーー!! 壊れたそのまんま?」


「いやだってよ、カイ坊、また暴れると壊しちゃうし、じゃあそのまんまで良いんじゃねーか?ってなるだろ?」

とあり得ない回答だった。



「あーー、何かサルド共和国って国の空気が判った気がします・・・」



門を通過し、南国風の木が両脇生える石畳を通過し、玄関ホールのロータリーで車を止めると、

「おう、カイ坊!せっかくここまで来たんだから、観光がてらチョロッと中を見学して、サルド名産のコーヒーでも飲んでいけやw」

と思わず頷いてしまいそうな、魅惑のお誘い。



うむ。中の見学ぐらいなら・・・


「そうですか、そこまでお誘いを受けて断るのも大人気ないですよね。では、お言葉に甘えて、1杯だけw」

と返事をした海渡であるが、そもそも子供の海渡が言う台詞ではないな。


車を降りて収納し、後続車のステファニーさんらも、海渡らに合流する。


「いやぁ~、門番の厳重な警戒っぷりに、ビックリしたでwww」

と降りるなり、爆笑中のステファニーさん。



出て来た羊・・・いや執事の羊族の老人?に

「おう、客人だ、応接室にコーヒーを頼む。」

と獣王様が指示する。


「あ、じゃあせっかくだから、茶菓子はこちらから出させて頂きますね。ワンスロットで大人気のをw」

と海渡が言うと、羊・・・いや執事が恭しく一礼して、メイドのウサちゃんや、猫ちゃんに指示を飛ばしていた。



王宮の建物だが、1階しかない平屋作りである。

城というより、豪華な屋敷と言う方がシックリくる感じ。


案内されるまま、廊下を歩いていると、


「とうしゃま、おかえりー♪」

と5歳ぐらい?のウサ耳の女の子が飛びついて来た。


「か、可愛いww」

と思わず呟くと、


「おう、俺の末娘だw 可愛いだろ!!」

と衝撃のお言葉。


「え? ライオンでなく、ウサ??」

と混乱していると、新事実を教えてくれた。


両方又は片方が獣人でホニャララをして子供を授かる場合なのだが、母親がウサならウサになるらしい。


へー!不思議だw


海渡が説明を受けていると、獣王様に抱き上げられたウサっ子がキョトンとして耳をピコピコしていた。


思わす、そのウサ耳を凝視してしまう海渡。


「ふふふ、ちょっとウサ耳触ってみるか?」

と獣王様が言うので、手を伸ばし・・・




「あ、あっぶねぇ~ーーーー!!!! 思わず触りそうになったよ!!!!」

と寸前で手を引っ込める海渡。

----獣人のタブー----

・異性の耳や尻尾を触ったら、責任を取らなければならない。 ←これこれ!!

--------------------





「チッ・・・」

と獣王様が舌打ちしてやがる!


「今、何か企みましたよね? チョイチョイ変な罠を忍ばせるの止めてくれませんかね?」

と海渡がジト目でにらみ返す。


「でも、可愛いだろ? 歳も3歳だし、カイ坊と丁度良い歳の差ぐらいだろ? 3番目の嫁辺りにどうかなぁ?ってよww」

と獣王・・・もう、『様』は要らねぇな。


「なんちゅう事を。しかもそこは3番目なんだwww」

とちょっと不思議に思う海渡だったのだが、


「だってよ、カイ坊の第一夫人はフェリンシアちゃんだろ? 第二夫人はステファニーさんなんだろ? そしたら、フェスは3番目になっちゃうだろw」

と獣王。


あ、ちなみに末娘のウサちゃんは、フェスちゃんと言うらしい。

更に5歳ぐらいの大きさだが、3歳らしい・・・獣人の成長恐るべしだ。




応接室のソファーに全員が座り、前に座る獣王の横には、チョコンとフェスちゃんが座っている。


「しかし、本当に獣人の成長って判らないですね。 エルフもそうだけど、人族以外は全然歳が判らないですよ。」

と正直な感想を漏らすと、


「獣人は戦闘に適した体になるのが早く、それが長いのが特徴だからなw」

とどぞの戦闘民族の様な回答。



そこへ羊とメイドがコーヒーを持って来た。

「あ、茶菓子でしたね。 色々あるので、食べて見てください。」

と海渡がカフェで出している、シュークリームや、ショートケーキ、チョコレートケーキ、ベリータルト、フルーツタルト、チーズケーキ、パンケーキ、プリン等を並べて行く。


フェスちゃんと、メイドの目が出て来るスイーツに釘付けになってるww


とそこへ、

「あなた、何か凄く甘い匂いが漂って来ているんですが?」

と猫?いやライオン族のダイナマイトボディの女性、スレンダーボディの狐族の女性、やや小柄で可愛いウサ耳の女性が乱入して来た。



で、今、獣王に並んで座って、フェリンシアやステファニーさんと競う様にスイーツをバカ食いしているこの女性ら3名だが、獣王の奥様らしい。


「ハウ! これは堪りません!」

とか、

「あぁ~ いっちゃいそ~❤」

とか、

「うぅ~ 蕩けそうです♪」

とか、

「とーしゃま、フェスはカイ兄しゃまのお嫁しゃんになります❤」

とか、プルプルしながら、又は悶えながら、恍惚の表情で食べてらっしゃる。




「ところでカイ坊、ちょっと気になっているんだが、さっきまでフェリンシアちゃんの頭の上に装着されてた飾りと思った、亀が飛んで降りて来て、しきりと食っているんだが、それは何?」

と獣王。



すると、

「あ、ご挨拶が遅れまして申し訳ありやせん。あっしは親分の舎弟で、レイアっす!」

と挨拶。


「「「「「亀が喋った-」」」」」

といつものお約束頂きました。


「あ、あっしは亀じゃないっす。こう見えてもシルバー・ベヒモスっす。親分のお陰で進化したっすよw」

と自慢気なレイア。


「シルバー・ベヒモスだぁ!? つまりカイ坊の従魔って事か!」

と驚愕の獣王。


「いや、森・・・ああ絶界の森でしたっけ? あそこで寝てたら、魔物らに叩き起こされて、八つ当たりに食ってたんすけど、親分と姐さんがやって来て、ヒュドラをサクッとやっつけるのを見て、命の危険感じたっす。

で、必死でお願いして、舎弟にして貰ったっすよw いやぁ~、何度考えてもあの時の自分の判断を褒めてやりたいっすね。」

とレイアが遠い目をしてしみじみと語っている。


おいおい、ぬいぐるみの様なデフォルメ形状で、表情豊かだな。


「いやまぁ、SSSランクだし、強い強いとは薄々感じてはいたが、お前ら、化け物だなwww」

と酷い言い様の獣王。


「いや、化け物はないでしょ? こんな小さい子を捕まえて。泣いちゃいますよ?」

と海渡が抗議すると、爆笑されちゃった。

確かに人外の領域にドップリ浸かっている自覚はあるんだがなw



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すみません・・・アップ時のミスで、2話分入ってました。

317話と318話に分けました。


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