第316話
「あー、じゃあ何方か、開始の号令お願い出来ますか?」
と海渡が言うと、
「おう!お前ら、面白そうな事やってんなwww その勝負の審判、俺がやるぞ!!」
と一人の身なりの良い、頑強な体つきのケモ耳おっさんが、出て来た。百獣の王だけにライオン族??
「え?陛下!!!」
とガルーダ副隊長がビビってらっしゃる。
後ろのケモ耳3名を見ると、ウンウンと頷いている。
「なるほど、サルド共和国の獣王様(←事前情報でこう呼ぶと聞いている)でいらっしゃいますか!
で、獣王様は、ご自分の部下には、お掛けにならないので?」
と海渡が聞くと、
「そうだなぁ・・・じゃあ、人族の少年、お前が勝ったら、1つ出来る範囲で願いを叶えてやるぜw」
との事。
「約束ですよ?ww」
と海渡がニヤリと悪い笑みを浮かべる。
海渡の当初の予想では、隊長かその上の団長辺りが出て来るのではないかと思っていたが、予想以上に大物が釣れたようだw
さて、上着を脱いで、袖をまくり、手になにも隠してない事を見せつけつつ、中央で2m近い大男のガルーダ副隊長と対峙する海渡(現在身長1m20cm程度)。
「よし、両者心の準備は良いか? 相手を殺したら負け。死なない程度の怪我ぐらいはOK。勝敗は、戦闘不能になるか、降参するまで。
レディーー、ファイト!」
号令と共に、ガルーダ副隊長が突進して来て、殴りかかって来た。
うん、遅いな・・・。首を捻って軽く避ける。
そう、海渡はまだスキルすら使っていない。
ここは少し盛り上げた方が良いかな? 等と余計な事に気を回している。
続いて、左の拳が飛んで来るが、これもヒョイと軽く避ける。
段々と当たらないパンチにイライラしたのか、パンチの連打が始まる。
「「「「おおおーー!!」」」」
と観衆が盛り上がる。
しかし、それが3分も続くと、「あれ? これおかしくないか?」とギャラリーがザワザワしだす。
幾ら体の小さい・・・つまり的の小さい子供相手といえ、ここまで当たらず、掴めず、擦りすらしないのは、異常である。
見た所、ガルーダ副隊長のパンチや蹴りは、大人もビビる程のスピードと威力に見える。
「おいおい、ガルーダ副隊長さんよーー! そろそろ本気見せてくれよーー!」
「おーい、6歳児相手に遊んでるんじゃねーよ!!」
と周りからヤジが飛んでくる。
今度は体を低くして、ベアハッグを決めて動きを封じようとするが、更に2分、擦りもし無い状況が続く。
「おい、あのガキよく見ると、最初の位置から2mの範囲しか動いてねーぞ!」
とギャラリーの1人が騒ぎ出す。
ふむ・・・そろそろ良い頃合いかな?
「さあ、そろそろ体は温まりましたかね? じゃあ少し本気出しますね~」
と海渡が宣言し、ガルーダ副隊長から繰り出された右腕を取り、綺麗な一本背負いを決める。
「ズドーーーン」
と軽く地響きを立てて、受け身すら取れず、痛さと肺から空気が絞り出され、悶絶するガルーダ副隊長。
唖然とする、ギャラリー。
一瞬間を置き、「「「「うぉーーーーー」」」」と大歓声が起こるが、海渡は追撃せずに、観衆に手を振っている。
やっとの思いで立ち上がった、ガルーダ副隊長は平気で背を向けている海渡に、渾身のスピードでタックルを仕掛ける。
勿論海渡は気配察知で動きを見ている。
ヒョイと目にも止まらないスピードで、後ろに回り込んで、軽く回し蹴りを入れる海渡。
急な腰への蹴りに、顔から地面にダイブするガルーダ副隊長。
「「「「あーーーーー」」」」
とギャラリーから痛そうな悲鳴が漏れる。
擦り傷だらけのガルーダ副隊長が、懲りもせずに再び突進して来ると、今度は、真正面から海渡も懐に入り突き破らない程度にボディーブローを入れる。
ギャラリーには海渡の動きが見えず、気が付くと、『く』の字の状態で吹き飛ぶガルーダ副隊長だけが見えた。
ガルーダ副隊長は5m程吹き飛んだ後、後転しながらバウンドして、ピクリとも動かなくなった。
「ん?やり過ぎた?」
と一瞬冷や汗を掻くが、
「戦闘不能と判断し、勝者人族の少年!!」
と審判からの勝利宣言が出た。
「「「「「うおーーーーーーーーー!!!」」」」」
と響めく約200名のギャラリー。
両手を挙げ手を振る海渡は、最後に恭しく、片手をおの前に置いて一礼し、ガルーダ副隊長の所へ行き、ヒールを掛けた。
ガルーダ副隊長は、内蔵の損傷も無く、擦り傷程度であったが、それも既に消えている。
「「「「おおおおー」」」」
と響めくギャラリー。
「ガハハ、おい、少年! お前面白いなwww いやぁ~、今日は朝から面白い物を見せて貰ったw」
と満面の笑みの獣王様。
「ははは、いやぁ、ちょっと大人気ない事をしてしまいました。と言うか、私は子供でしたねww」
と海渡も馬鹿笑い。
「お前達、面白い組み合わせだな? 人族に、エルフに、同胞である獣人か。何処から来たんだっけ?」
と改めて質問される。
海渡は、フェリンシア達の居る机の側にテーブルと椅子2つを出して、2杯のアイスカフェオレを出して、獣王に勧める。
「まあ、立ち話もなんなので、どうぞ冷たい物でも如何ですか?」
と。
海渡があり得ないサイズの物をポンポンと出して来るのを見て、響めくギャラリー。
「お、おまっ! それはお伽噺に出て来るアイテムボックスのスキルか!!」
と獣王様が叫ぶ。
「ええ、そうです。 あ、申し遅れました、私、ワンスロット王国のSSSランク冒険者でカイトと申します。こちらはパートナーのフェリンシア、同じくSSSランクです。
ワンスロット王国で、さえじま商会と言う商会もやっておりまして、ちなみに、こちらのエルフは、当方にスタッフにして、Sランク冒険者のステファニー・ヨハンソンさん、
更に後ろの3名の御同胞は、私とフェリンシアの弟子で、Bランク冒険者のミケ、パトリシア、キャスです。」
とギルドカードを見せつつ自己紹介をした。
すると、
「ああ、お前か!!!!! SSSランクの話は聞いているぞ! そうか、お前らかwwww」
と納得する獣王様。
「で、その後ろの奇妙な物は何だ? お!これ美味しいな!コーヒーか?」
とアイスカフェオレを美味そうに飲み干す。
「ああ、これは馬の要らない馬車の様な魔道具の乗り物で、魔動自動車と言いまして、先日当方で発売しました。 あとこれとは別に、空を飛ぶ飛行機と言う物もありまして、それに乗って『今朝』ワンスロット王国のトリスターを出発しました。」
と説明(プロモーション)をする海渡。
上手いっ! とステファニーさんが心の中でGJを贈るw
「流石はボス! 獣王様相手でも堂々とされてる。」
と自慢気なケモ耳ズ。
「おい、ちょっと待てよ? ステファニー・ヨハンソンってあの魔道具の天災?天才?と言われたステファニー・ヨハンソンか!」
と遅まきながらそこにも反応する獣王様。
「なあ、そんな事よりさぁ、その自動車に乗せてくれよ! 飛行機にも乗せてくれよーー!」
と豪快な外見から、駄々っ子モードに反転する百獣の王。
「そのかわりに、ちゃんと場内に入れてくれますか? あと、気が向いたら、拠点か支店を置く事も検討しているので、その際には許可が欲しいです。
あと、このカフェオレは、ワンスロットの方で取れたコーヒー豆なんですが、こちらの名産のコーヒー豆も味わいたいのですよ。
なので、こちらでも当方のコーヒー豆の販売許可とそちらのコーヒー豆の輸入許可が欲しいです。
そうそう、一番重要なのは、スパイス! そう、スパイスを購入したいと思っているんですよ。
そのご許可もお願いします。」
と一気に言いたい事を言う海渡ww
「お、おう! 良いぞ!!」
と獣王様が承諾。
と言う事で、まずは、魔動自動車の試乗会となる。
助手席に乗せて、出発!
10分ぐらいの走行で最高時速200kmまで引っ張った。
「これ、欲しい!!!!!!」
と降りるや否や、海渡を離さない百獣の王。
「まあまあ、落ち着いて。 次は飛行機出しますね。」
と言って、ケモ耳ズに十分なスペースを空けさせる。
「ホイッと。」
いや、掛け声は要らないんだけどね、雰囲気でw
海渡の出した巨大な飛行機に、
「「「「「「おおおおおお」」」」」」
と響めきが巻き起こる。
本来なら入場する為に並んでいたギャラリー達も、その場から離れないで、遠巻きに自動車や飛行機を眺めてヒソヒソしている。
海渡は、後部ハッチを開けて、獣王様を手招きし、シートに座らせる。
「なあ、坊主! 俺も乗せてくれないか?」
と気絶状態で放置されていたガルーダ副隊長が、ワクワク顔でお願いしてきた。
「あ、フルチン逆立ちの人だ! もう復活しましたかw」
と言うと、頭を掻いている。
ふふふ、まあ今回の立役者だからなw
「ええ、良いですよ。」
と答えると、それを聞いた他の衛兵共が、我も我もと群がった・・・orz
「いや、良いんだけど、仕事は良いんですかね?」
と海渡が苦言を呈すると、
「ああ、うちはそこら辺、割と適当だからなwww」
と獣王様。
結局衛兵と、その他一部のギャラリーを乗せ、20分程の遊覧飛行をする事になった。
ギャラリーの見守るなかで、飛行機が離陸し、高度200mまで上がって首都の外周を1周し、そのまま雲の上まで上昇して、時速1000kmで東へと向かう。
10分ぐらいで、雲の下に降下して、現在の位置を確認させると、
「飛行機とやらは、こんなにも速いのか!!!!」
と全員が驚いていた。
そして、Uターンしながら、雲の下を時速900kmぐらいで首都へ向かう。
凄い勢いで通り過ぎる地面の風景に、
「す、すげー!」
と獣王様が唸る。
城門が見えて来たので、自動車の横にオートランディング。
そして降りるなり、
「これも欲しいーーー!!!!」
と叫んでいたのだった。
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