第300話


コーデリアの王都に入った海渡は、テンション高く、マジックバッグを預けてあるお店や屋台を全部廻り、次の寸胴やお金を支払って行く。

餅米も大量に仕入れ、お漬物も補充した。


他にも年末年始の休みに提供できそうな食料を買い込み、久しぶりのコーデリアの拠点へと戻って来た。


そして愕然とした・・・。


「えーーっと、何でここに居るの?」

とラピスの湯の2階で寛ぐ、ドロスさんとサチーさん、そして王様に問う海渡。


「いやぁ~、ここ凄くてさぁ。」

とほら、判るでしょ?みたいなゼスチャーを混ぜてくる。


「しかも、なんか住んでる様な形跡あるんだけど??」

とこめかみをヒクヒクさせながら問い詰めると、


「いやいや、流石に住んではないって、3日1回はちゃんと帰ってるからね?」


「いやいや、それを世間では、『住んでる』と言うんだよ!!!!(怒」

ダメだ・・・このエルフ達。


怒る海渡の後ろで、声を出さずにフェリンシアとステファニーさんが腹を抱えて笑っている。


するとそこへ、誰かが入り口から入って来る音がし、


「あなた~、ただいまーー❤」

と声がした。


「ただいまって・・・やっぱり住んでるじゃん!!!!」


「あら、あなた、お客様?」

と美人エルフさん登場。


怒りの余り、

「いや、ここのオーナーなのだが?」

と海渡が青筋を立てながら言うと、


「あらあら、まあまあ、初めまして、いつも主人がお世話になっております。」

と頭を下げる美人さん。


「えっと、どなたの奥方ですか? ドロスさん?」

とドロスさんに聞くと顔の前で、ブンブンと手を横に振り、王様を指さす。


「えーー!?王妃様?」

と海渡が驚くと、


「どうじゃ、美人じゃろ?」

とドヤ顔の王様。


「いや、それはともかく、何ここで親子+サチーさんで、生活してるの? 今どう言う局面か判ってますよね? ゲルハルト帝国の事、忘れてませんかね?」

と言うと、


「それは大丈夫じゃ! うちの大臣と将軍共がやっておる。」

と胸を張る王様。


ドロスさんは、ゲルハルト帝国の事を思い出し、ちょっと拙かったなって顔をしている。


海渡は頭を抱えてしまった。



「ところで、今日は急にどうしたんだ? 何かこっちに用事でもあったの?」

とサチーさん。


「いや、こっちの開店準備と食料の買い出しと、サチーさんに見せようと思った新製品をね・・・」

と海渡が忘れていた本来の目的を説明する。


「お!何かまた作ったの? 何々? 見せて見せて!!」

と食いつくサチーさん。


すると、ステファニーさんが胸を張り、

「うちのダーリンはまた凄い物を作ったんやで? そりゃもう、楽しい物やで?」

とドヤ顔を決める。


「えっと、主目的は楽しい物ではなく、便利で早い物なんですがねw」

と海渡。


ここでは出せないので、屋敷の庭スペースに場所を移動する。

そして、魔動自動車を取り出した。


「何これーー!?」

とサチーさん。

ドロスさん、王様も目をクワッと見開いている。


「カイト君、これもしかして、馬が要らない馬車的な物?」

とドロスさん。


「おお、流石ですね。そうです。魔動自動車と言います。」


「おお! 買うぞ!!」

と食い気味に即決する王様。


「カイト君、これ幾らなの?」

とサチーさん。


「これは1台市販価格が白金貨60枚となります。(サチーさんへはいつも通り業販価格で卸しますから)」

と後半は耳打ちする。


ニヤリと笑うサチーさん。


「それはそうと、お願いしておいた刀鍛冶のご紹介の件、どうなりましたでしょうか?」

と王様に尋ねると、


「あっ!」って顔をしやがった。


「まさか、忘れてはいないですよね? 計画が早まって、15日に来るらしいので、早急に入手したいと思っているんですが、全然ご連絡が無かったのでねぇ・・・」

と言うと、拙い!って顔をしている。


「そうですか・・・せっかくこちらは、入手したタンカー・ホエールの肉までお土産で持参したんですが、残念です・・・」

と顔を伏せてチラッと見ると、


「「「「タンカー・ホエール!!」」」」

と4人が絶叫。


「しょうがないよ、ダーリン。持って帰って、うちらで食べよ?」

と絶妙なアシストのステファニーさん。

4人には見えない角度で、悪い顔をしているしw


「カイト君、刀の件は大丈夫だよ? どうせ打てる刀鍛冶なんて、ほぼ選択肢が無いから。ちゃんと紹介状は用意してあるよね? 親父!」

と何とか場を立て直そうとするドロスさんwww


「だから、な!? な?」

と懇願する様な顔をするドロスさんw




段々面倒になってきたので、ちゃんとスル事を約束させて、肉を分け与える事にした。

勿論、4人には後で温泉を全部自分らで掃除させたwww


後日、何故かコーデリアの大臣と将軍と執事長から、直々に海渡へお礼の連絡が掛かって来たのだったwww

執事長は、「これからも時々定期的にお願いします!」と懇願された。



さて、一段落付いた所で、2台で自動車の試乗をさせて、南門の外を爆走して見せ、大絶賛を受ける。

面倒なので、販売はサチーさん経由でお願いし、王家100台+サチーさんの仕入れ分100台の合計200台を注文された。

既に200台分のストックはあるので、格納庫経由で、納品した。


コーデリア王国側のパイロットを10名呼んで貰い、その場で運転を教え、以降は彼らに教えて貰う事にして貰った。

パイロットスキルを持っているので、彼らへは軽く教えるだけで、10分も掛からずに、運転出来る様になった。

すると、それを見て色気を出した王様、ドロスさん、サチーさんが、私らにも教えろ!!! と迫って来た。


「彼らがスムーズに運転出来たのは、パイロットスキルがあったからですからね? パイロットスキルが無い人は、ゼロからスキルを生やさないといけないので、時間掛かりますよ?」

と言うが、そこを何とか! と言うので、結局、海渡、フェリンシアとステファニーさんの3人で手分けして教習をするハメに。

どうしようかと、少し考えたけど、面倒なので、ドーピングを使う事にした。


結果、サチーさんもドロスさんも、10分でスキルが生えたが、最後の王様は30分掛かりでやっとスキルが生えたのだった。


海渡はゲンナリしながら、

「王様、スキル生えるの遅すぎですよ? 普通ドーピングしたら、遅くても15分ぐらいでスキル生えるのに・・・」

と嘆くと、


「ほっほw もう成長期は400年以上前に過ぎとるからのぉ~。逆にスキルが生えた事の方が驚きじゃw」

とエルフの不思議な時間感覚を披露していた。


え?そんなに? 女神様曰く、『エルフに近い成長スピードで寿命はエルフより長い』って言っていたけど、俺もこんな感じになるんだろうか? と知りたくない現実を垣間見て『うへー』な気分になる海渡。



そして、王様は、

「おい、ワシの車を先に納品してくれ!」

と切望する。


サチーさんと、ドロスさんを見ると、ヤレヤレと言う表情で『しょうがないから、回してやって』と目で言っている。

1台取り出して渡すと、


「なあ、これ色は変えられるのか?」

と王様が言うので、

「ちなみに、どんな色が良いんですか?」

と聞くと、


「目の覚める様な新緑のグリーンじゃ! エルフだけにな?」

と言うので、

「ん?森の木々をイメージする迷彩色ってのもありますが、グリーンで良いんですか?」

と聞くと、

「ほう?迷彩色と言うのは?」


と聞くので、その1台を迷彩色に着色してみせた。

「おおおおおお! これは! 森に溶け込むカラーか!! これでOKじゃ!」

と車に抱きついていた。


そして、王妃様に向かって、


「ヘイ、そこのマブい彼女! ちょっと夜明けの草原を見ながらドンペリでもどうだい?」

とナンパしていた。


「あら、私はそんな安い女じゃなくってよ? でも良いわ、今日は特別なんだからね?」

と、助手席に乗り込み、


唖然とする海渡達は、ただ颯爽と走り去る迷彩色の車を眺めていたのだった。


「なんだったんだ、あの昭和時代の三文芝居は・・・」

とorz状態の海渡。


するとサチーさんが、

「いや、ほらさぁ、エルフって人族に比べて長寿でしょ? だから中盤過ぎると人生に飽きちゃってさぁ、新しい事に飢えてるんだよね。」

と苦笑していた。

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