第301話


「さて、やっと本来の目的に戻れそうだ・・・」

と気を取り直し、再度屋敷の前に戻った海渡は、再度屋敷の敷地全体と、庭のサイズを確認する。


「ふむ・・・一応、両方のケースを考えたけど、やっぱり建物は勿体ないから残して、庭にカフェを置くか。」

と門の位置を土魔法の力業で、ブロックパズルのピースを動かすかの如く、温泉寄りに移動し通路を確保した。

更に邪魔な塀を消し、土台をガッチリと作り、その上にカフェを設置した。


次に、屋敷に入り、地下室を大幅に大変更し、巨大な空間を作成した。

その中に従業員宿舎のフロアを2つ分作成して融合した。1階と地下の宿舎部分はエレベータを結合した。


この特設フロアユニットは狭小敷地でも、十分な従業員宿舎を確保出来るようにと、海渡が考案した物である。

またより自然な景色を楽しめる様に、窓の外の地下室の壁一面に超巨大なガラスディスプレイを設置してある。


つまり、擬似的に建物の3階4階に居る様な情景を見る事が出来る様になっている。

そして、そのディスプレイに映される映像は、屋敷の屋根に延長したシャフトの上にある魔動カメラからのライブ映像となる。


カメラからの映像をリンクしてディスプレイを起動し、各部屋に入ってみたが、構想通り、遜色無い事が判り、ホッとする。


それまで、黙って見ていたドロスさんとサチーさんだが、

「ほえーー! まるで地下とは思えないな。」

と驚いていた。



「よし、これでコーデリア王都支店の準備はOKだな。」

とホッとする海渡。


「凄いですね、これなら地下室に居る気持ちにならず、楽しい気分になれそうですね。」

とフェリンシア。


「なるほどなぁ、こう言う使い方もあるんやな。」

と感心するステファニーさん。



「さて、一仕事終えたので、夕食でも食べに行きましょうか! ドロスさん!!w」

とニヤリと黒い笑みを浮かべる海渡。


「お、ええなぁ! ゴチになるで? ドロス!!」

とニヤリと黒い笑みを浮かべるステファニーさん。


「ああ、今日は何時まででも食べれそうですw」

と素直に微笑むフェリンシア。


「そうか、悪いな、ドロス♪ 今日は何にする?」

と鼻歌交じりのサチーさん。


ドロスさんが、崩れ落ち、orz状態で愕然としていたのだった。


海渡は首を捻りながら、食べたい物を考える。

「うーん、そうだなぁ・・・久々に刺身とかも食べたいなぁ。 舟盛りとかあるのかな?」

と海渡が言うと、ドロスさんがブルブル震えている。


「あ、あるんですね?ww」

とドロスさんの様子を見て察する海渡。(しかもおそらく高い?)


サチーさんは、ウンウンと頷いていて、颯爽と懐から通信機を取り出して、予約していた。



逃げようとするドロスさんをサチーさんが、ガッチリホールドしつつ、店へと案内してくれた。


板張りの座敷?で掘り炬燵の様な席(部屋)へと案内される。


「さぁ、今日は食って食って食いまくるでー! フェリンシアちゃん、今日は何隻(舟盛りだけに?)食べれるか、挑戦やでw」

と張り切るステファニーさん。


「うふふ、競争・・・競艇?ですね?(舟盛りだけに?)」

とフェリンシア。


再度青い顔で逃げようとするドロスさん。


サチーさんが、初っぱなから3隻注文し、後は適当にお願いしている。

そして、最後にドロスさんをチラッと見ながら店員に、

「今日はドロス『王子様』からのご招待なので、『王子様』がご馳走してくれる事になっております。良い所をお願いしますね!」

とドロスさんにとっては、死刑宣告をしていた。


「さあ、これで問題なく心置きなくご飯が食べられるよww」

と晴れやかな笑顔を見せているサチーさんと対照的にドンヨリしているドロスさんだった。



さて、料理だが、刺身も焼き魚も煮魚も、どれも素晴らしい料理の数々で、ご飯が進む進む。

伊勢エビ入りの海鮮味噌汁も美味しくて、ついつい2杯お替わりする程に美味い。

小さい頃から大好きだった茶碗蒸しも、とても美味しかった。

小鉢の酢の物も海渡にとっては久々の酢の物で、

「久々の酢の物だw」

と喜んで食べていた。

しかし、ここでフェリンシアの意外な弱点が発覚。酢飯の酢は全然OKなのだが、酢が強いとダメらしい。

嗅覚が刺激されすぎる感じなんだとか。


へー・・・と思ったが、よくよく考えると普通の美少女じゃなくて、フェンリルだったね。 なるほど。


結局、最初の3隻(フェリンシア1隻、ステファニーさん1隻、残りで1隻)+フェリンシア3隻+ステファニーさん3隻+残りで1隻の合計10隻を撃破した。


最後の締めに、優しい味の卵雑炊を食べ、全員満腹。



お腹も満腹で一休みしている所で、主にドロスさんへ話を始める海渡。


「明日ですが、早朝から出発し、絶界の森の残りの約7000匹を始末して来ます。

そうすれば、新年早々の魔物の襲撃も無くなり、ユックリできますし。

で、既に報告したように、15日に国境を越えて来るらしいので、超えて来たら、見える所で飛行機で兵を出撃させて、陣地を作らせて足止めして下さい。

私の方では、敵軍の頭上に大型のディスプレイを装備したドローンを飛ばします。

このディスプレイに帝国の宮殿、各都市の領主館が壊滅する様を見せつけます。

それでも降伏しないようであれば、ドローンから一斉攻撃を仕掛けます。

余りにもエグイ威力なので、余り使いたくはないんですがね・・・。」

と言うと、


「そのエグイ威力って、どれほど?」

とドロスさんが恐る恐る聞いて来る。


「えっとね、テストだと、小さい方は真っ赤な溶岩で血の池地獄、大きい方は地形が変わって噴火口みたいな感じですね?」

と思い出してキャッキャと笑いながら語るフェリンシアの表現を聞いて、周りはドン引き。



「で、話は変わりますが、ご紹介頂ける刀鍛冶が居る所って、どの辺りなんでしょうか?」

とタブレットのコーデリア王国の地図を出す海渡。


「え?これってうちの国? 何この詳細な地図は!? うちが持ってるのより、滅茶苦茶正確じゃない?」

と驚くドロスさん。


「ああ、これあの自動車にも入ってますよ? この大陸の全データが入ってます。」

と言うと、唖然としていた。


「ワンスロットの王様にも言ったのですが、どうせゲルハルト帝国が無くなれば、敵は居なくなり、寧ろ詳細な地図があった方が交易とかで栄えますからね。」

と説明した。


で、刀鍛冶が居る場所と名前が判明した。

王都から約3400km離れた山間部のドワーフの都市ドライコ。そのドライコに居るカネミツと言う伝説級の名工らしい。


ドロスさん曰く、

「紹介状は書いたが、実際の所、役に立たないんだよね。カネミツさんって、気に入った相手の刀しか打たないから、こっちも悩んでいたところだったんだよ。

領主でも王様でも、気に入らないと絶対に仕事受けないからねぇ~」

と言っていた。


「なるほど、それは面白いですねww イメージ通りで安心しました。了解です。後はこちらで何とかしますよw」

と海渡が言うと、ホッとした表情をしていた。


「まあ、ダメだったらダメだったで、自分で打つ事も出来ますし・・・」

と言うと、

「え?カイト君、刀打てるの?」

と驚いていたので、


「ええ、こう見えても、一応鍛冶スキルも持ってますし、三流の刀なら打てますよ。久しく打ってないので、自分で打つとなると、少し勘を戻さないとですけどね。」

と答える。


「いやぁ~、驚きの多才っぷりだな。」


「ははは、昔は泣きながら打ってましたけどね・・・」

と遠い目をする6歳児。



海渡は頭の中でスケジュールを考えていた。

出来れば、少年少女の訓練に間を開けたくないしなぁ・・・。


でも刀は早めに欲しい。

年明け早々にでも行ってみるかな?

その前に少年少女用の武器を作っておくか・・・。



料亭を出て、屋敷まで戻って来ると、

「親分!! 酷いっす! またあっしを置いてきぼりですかい! 目覚めたら、テーブルの上にポッツーーンですよ!」

とジタバタとレイアが飛んで来た。


結局泊まるつもりで着いて来たドロスさんとサチーさんが、


「「亀がしゃべったーー しかも飛んでる!?」」

と驚いている。


「あれ? 紹介してませんでしたっけ? 従魔のレイアです。」

と海渡が言うと、


「喋る亀が従魔??」

と不思議そうにしている。


「あ、初めまして、親分の舎弟になったレイアっす。こう見えて、あっしは、シルバー・ベヒモスなんす。」

と自己紹介。


「ベヒモスの亜種??」

と驚愕の2人。


「ほら、先日2万匹ぐらい絶界の森に魔物が進軍してたのを間引いたじゃないですか、あの時に拾ったんですよ。」

と説明したら、ドロスさんはドン引きしていた。


サチーさんは、

「いやぁ~、本当にカイト君と知り合ってからは、退屈しないなぁww あ、良い意味でなw これからも頼むよ!!www」

と期待する目で見ていたのだった。


どう考えても、悪い意味にしか思えないのだが・・・。

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