第278話
異世界3ヵ月と1日目。
早いもので、異世界ライフも3ヶ月となった。
流石にあの時間から寝た海渡は、普段より、1時間遅く目覚めた。
睡眠時間は短いが、ある程度の達成感もあり、目覚めは爽やか。
フェリンシアは疲れているのか、目覚める気配が無いので、1人で屋上に行き、朝の鍛錬を行う。
10分ぐらい1人で型をやっていると、ラルク少年がやって来た。
「あ!兄貴、おはようございます!」
「おお!ラルク!! おはよう。 そうか稽古の約束してたなw 今日は1人だったから、丁度良かった。
よし、軽く準備運動して体をほぐしたら、模擬戦やるかw」
と言って、軽く準備運動で素振りをやらせたりした。
「よし、体も温まっただろうから、掛かって来なさい!」
と、正眼に木刀を構える海渡。
「兄貴、宜しくお願いします!」
と海渡に対峙するラルク少年。
「とりゃー!」
と掛け声と共に、ラルク少年が踏み込んで木刀を振り抜く。
海渡はサラリと躱して、2m程距離を取る。
更にラルクが斬りかかる。
今度は、木刀で受けて、弾き返し、身体強化も身体加速も無い素の力のみで踏み込み、かなりの手加減をしながら、頭上へ木刀を振る。
ラルクは咄嗟に身体強化を行い、4歳児とは思えないスピードで海渡の一撃の前に自分の木刀を割り込ませる。
カンと小気味良い音で防がれるが、その弾かれた反動を利用して、続けて胴を狙い木刀を横に斬り付ける。
直ぐに身体強化のまま、崩れた体制を立て直しバックステップで避ける。
海渡は尚も、踏み込み今度は肩口を狙って斬り掛かる。
しかし、バックステップで避けたラルクは、今度は踏み込み、海渡の木刀が振り抜けない程に近付き体当たりを仕掛ける。
「ほう! そこで踏み込んで来るか!! お前、凄いな!!」
と感心しながら木刀と木刀で弾き返して、間を取る。
幾度か打ち込んだり、受けたりを繰り返し、ラルク少年の実力を確認し、最後は海渡の寸止めで終わった。
「親父さんから、教わってたらしいけど、ラルク、4歳にしてその腕前は良いな!! 鍛えがいがあるな! せっかく親父さんから頂いた才能を無駄にしない為にも、これからちょくちょく訓練しようぜ!」
と海渡が言うと、親父さんの事を思い出したのか、少し目に涙を溜めながら、
「はい!ありがとうございます!!」
と泣き笑いしていた。
海渡は、ラルク少年に、アドバイスをしつつ、身体強化と共に、可能な限り素早く動く事、魔力操作で身体のスピードを上げるイメージで魔力を回す事を教える。
30分程コツを教えてながら、模擬戦を繰り返していると、
「あ!兄貴!!! 身体加速ってスキルが生えました!! 身体強化もLv2になりました!!!」
と喜び叫んでいた。
「そうか!良かったじゃないか! じゃあ、今朝はここまでにしよう。 こっちに来て、ラピスの泉の水を飲むぞ!」
とコップ2つを出して、水を汲み、1つを差し出した。
「この水、本当に凄いですよね。何か疲れや小傷や魔力が少し回復する感じします。」
と絶賛していた。
「そりゃあ、水の精霊王が作った泉だもん。凄いんだよw ちなみに、うちの大浴場も温泉も同じだぞw」
と言うと、目をキラキラさせながら、
「ああ、おいら、兄貴に会えて良かったっす!」
と言っていた。
それから、一度部屋に戻り、寝ぼけるフェリンシアを起こして、朝風呂に入る。
風呂から上がって、大食堂に降りて暫くすると、アホ毛を盛大に立てたステファニーさんがボケボケでやって来た。
「おはよう。何か今朝は酷い有様ですね。」
とステファニーさんに言うと、
「うち、昨日の夜からタンカー・ホエールの肉が楽しみでな、寝られへんかってん。どないしてくれる? カイト君のせいやで?」
と酷い言い掛かり様w
「いやいや、そこは子供じゃないんだから、寝ましょうよw」
と言うと、何やらブツブツ言いながら、朝食を3人前お替わりしていたww
「その代わり、地下工房で、目の覚める様な物を見せてあげますよw」
と海渡が言うと、フェリンシアもニヤリ。
「え?え? 何? こうしてられへん! はよいくで!!」
と一番最後まで食べていたステファニーさんに急き立てられる様に、大食堂から地下工房へと連れ込まれた。
昨夜の事もあり、フェリンシアも付いて来ている。
「さあ、何? 勿体つけんと、はよ見せてーや!!」
とステファニーさん。
そこで、海渡が自動車を取り出した。
取り出したら、昨夜の走行のままで土まみれだったので、一度クリーンを掛けたw
「魔動自動車です!」
と改めて紹介する。
「え? 車輪? これ馬無しで動く乗り物とかいな?」
とステファニーさん。
「おお、凄いですね。流石一発で当てましたね。」
と海渡が言うと、
「うっひゃーーー!」
と面白い雄叫びを上げていた。
ステファニーさんは、ブツブツ呟きながら、彼方此方を覗き込んでいる。
その間に海渡は、昨夜発覚したサイドブレーキと、シフトのパーキングモードを作成し、魔動CPUのプログラムを改造した。
更に、前進のFモードにF2モードを追加し、より最高速が出る過激モードを作った。まあギアがある訳ではないので、ソフト的な改良だけど。
ちなににシフトは、
F(スタンダードな前進で最高速は時速200km)
F2(前進でやや過激なモードで最高速は時速350km)
N(ニュートラル)
R(バックで最高速度は時速200km)
P(パーキング)
の5モードとなる。
FモードからF2モードへの切り替えは、ロックを外さないと出来ない様にした。
あと、危ないので、各シートにシートベルトを装着した。
頭打ちたくないしねw
「よし、改造完了!」
と言う事で、3人で試乗に行く事にした。
時刻は午前8時半。
航空部門のパイロット達も9時にはトリスターに集結する予定なので、一足先に飛行場へ行く事をヨーコさん達に伝えておいた。
ヨーコさん、オスカーさんも9時には準備をして、飛行場に来る事になっている。
202名のパイロット養成講座・・・大変そうだな。
もっとも、海渡が担当するのは、最初の座学のみで、後は既存のパイロット達に同乗して貰い、次々にスキルを習得させる予定である。
よって、海渡が大変なのは、最初の1時間程度の筈であった。
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