第277話


「長かったーー」

と、片腕を目に当てて、泣き真似の小芝居をするが、実際の所、半日で作り上げた訳で、確かに素材を集めるの右往左往したが、時間は短いww


出来上がったら、すぐに試乗したいのが、人情である。

ハッと思い出し、時間を見ると、既に25時・・・いや午前1時である。


取りあえず、部屋にゲートで戻ると、なんとフェリンシアが起きて待っていてくれた!


「あれ?待っててくれたの? ごめんね、遅くなって。」

と素直に謝ると、


「どうしたんですか? 何か凄くニコニコしてるけど、まさか1人でタンカー・ホエールの肉を食べた訳じゃないですよね?」

と微笑みながら聞いて来るけど、目が怖いっす。


「いやいや、食べてないからね? ちょっと遅い時間だけど、作ってた物が完成したので、試乗しようかと思って・・・

フェリンシアが起きたら、誘おうと思ったんだよ。」

と言うと、


「何作ったんですか? 試乗って事は、乗り物ですよね? あ!前に言ってたアレですか?」

と察しの良いフェリンシア。


「そうそうw 出来たよついに!」

と親指を立てる海渡。


フェリンシアはスクッと立ち上がり、1分で着替えを終え、

「さ!行きましょう!!」

と海渡の手を取った。


海渡は最南端の別荘前にゲートで出て、自動車を取り出した。


月明かりに照らされる、モスグリーンの車体。(←つや消しのモスグリーンに着色した)


「どうっすか? これが自動車です。」

と手を広げて見せる。


「馬車より厳つい感じだけど、格好いいですね!」

となかなか良い印象。


「じゃあ、ここに乗って。」

と助手席のドアを開けて、シートに座らせる。


海渡も運転席に座り、メインキーをON。

ヘッドライトをつけ、シフトレバーをFに入れ、アクセルをユックリ踏み込むと・・・

じわり・・・ではなく、真後ろから蹴飛ばされたかの様な、とてつもない瞬発力でダッシュし始めた。

慌てて、アクセルを離し、ブレーキを踏むと、「ザシューー」と音を立てながら、急停止。


フェリンシアがダッシュボードで頭を打ち、ゴンって音を鳴らしていた。


「ああ、ごめん、大丈夫だった? ちょっと過敏過ぎるセッティングになっちゃってるね。魔導効率が良いって事で、タンカー・ホエールの素材使ったんだけど、それが仇となったかも。

ちょっと待ってね、今セッティングを変えるから。」

と言いながら、ダッシュボード下に潜り、魔動CPUに付けた水晶記憶体のセッティングを変更した。


「これで、前より大丈夫になった筈だけど、慎重にやるから。」

と再びメインキーをONにして、ジワリとアクセルを踏むと、スムーズに一般人の走る速度ぐらいまで加速した。


「おお、良い感じw ちょっとハンドルの切れ角とか試すから、左右に振られるよ。構えてね!」

と言って、左右に車体を振る。


「うん、ハンドルは良いね! ブレーキを試すよ!前に行かないように踏ん張ってね。」

と言って、ジワリとブレーキを踏むと、今度は大丈夫。

踏みしろに比例する制動具合も丁度良い。


ヘッドライトのロービームとハイビームも問題無い。


「今度は少しスピードあげるね。」

とアクセルを踏み込み、ダッシュする。

ハンドルから伝わる、路面のフィードバック加減も丁度良い。


「ヒャッハーー!良い感じ、良い感じww」

とご機嫌の海渡。


最初こそ痛い思いをしたフェリンシアも、ノリノリで、凄い凄いを連発しているww


そこで、一度停止して・・・


「あ!サイドブレーキ付け忘れた!!!」

と坂道で停車して唖然とする海渡。


「え? 何?付け忘れ?? 大丈夫ですか?」

と途端に青い顔になるフェリンシア。


「あ・・・いや、た、大した事は無いんだけど、停車した時に坂道だと、降りられないね。車が勝手に下っちゃうから。うーん・・・盲点だった。明日にでも付けておくよ。完全になったら、運転教えるね。」

と言うと、フェリンシアも安心してニッコリ笑っていた。


「さて、相当せっかくの丘を荒らしちゃったけど、別荘の前まで行けば、平坦だし良いか。」

と言いながら、別荘前まで戻って来て、自動車から降りて、急いで収納した。


「あ、そうそう、フェリンシアにも見せようと思ってたんだけど、ここに別荘建てたんだよね。」

と別荘を指さした。


「ここからの景色最高だから、今度昼間に来ようよ。」

と約束して、部屋へともどったのだった。


時刻は既に午前3時。


明日の予定に差し支えそうなので、早々にベッドに入って寝る2人だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る