第264話


食事が終わり、海渡は飛行機の残りを作成しに地下工房へと降りて行く。

フェリンシアとレイアは、一足先に部屋へと戻って行った。


すると、何故かステファニーさんが着いて来て、

「なぁなぁ、地下工房で飛行機作るんやったら、うちも見学してええか?」

と・・・。


うーーん・・・どうしようか・・・ま、良いか!?

「えー、まあ良いですが、そんなに面白い物でも無いですし、3~4時間掛かっちゃいますので、飽きたら戻っちゃって下さいね。ちょっと集中しますんで。」

と海渡が答えると、ニヘラっと笑いデレデレとしながら地下工房まで着いて来た。



地下工房に辿り着くと、

「じゃあ、これから普段通りに組み立てを開始しますね!」

と身体強化、身体加速、クロックアップを発動する。


パーツを機体に組み込んでいき、魔動リンクを繋いだり、後部ハッチを付けたり。

組み上がった機体を収納し、新しい機体とパーツを出して~~(ry



完全に訳が分からない状態で、ポカンと口を開けてみているステファニーさん。

それもそのはずで、実際海渡が何をやっているのか、全く見えて居ない・・・と言うか、そもそも殆ど海渡の姿が見えない。


ただ、もの凄い魔力の反応が彼方此方に移動しているのは何となく判るのだが、機体が突然現れ、パーツもその横に出て来たと思ったら、

それが超高速早回しでガンガン組み上がって行く様な、残像だらけの映像しか見えていないからである。


そして、2時間ポカンと見て居た訳だが、突然海渡が目の前に現れた。


「やっと、100機全部完成しました。 ズッと見ていたんですね。退屈じゃなかったですか?」

と海渡が聞くと。


やっと我に返ったステファニーさんが、

「あ・・・、うち、夢見てたんかなぁ? もの凄いスピードで飛行機出来て来る無限ループの夢やった。」

と呟く。


「ああ、それ夢じゃないですよw 俺普段物を作る時とかは、身体強化、身体加速、クロックアップのスキルを使ってやっているんですよ。

あ、クロックアップってのは、うーん・・・言い換えると『思考加速』とかかな。 つまり動作のスピードが上がっても、思考の速度が追いつかないと意味ないので、頭の中も加速させるんです。

更に『多重処理』ってスキルも常時併用してます。これは1つの事だけでなく、複数の事を同時に頭で考えられ、処理出来るスキルですね。

簡単に言うと・・・右手と左手で同時に別々の付与を付ける様な事が出来るって感じかな。

まあ、今日レベルも上がって、俊敏とかもかなり数値が上がったので、普通の速度のザッと20倍ぐらいで動いてる感じですかね。

普通に組み立てたりするより、時間掛からないのと、訓練にもなるので、一石二鳥ですよww」

と説明した。


「ほぇ~~!!! なるほどなぁ! だからカイト君の物作りは早いんやぁ! 理解したでぇ。」

と感心していた。



更に、棟梁の仕事場である建築物を見て回り、完成した物を収納して、新しい建物を建築して回った。

ニョキニョキと建って行く建物の様子を見て、ステファニーさんは唯々驚いていたのだった。



一通りの作業を終えた後、ついでに、海渡はステファニーさんに魔道具に使う、海渡独自の素材(ステンレスやTFG)の特性等を教えていった。

特に魔動効率の良いTFGへの食い付きが凄く、そのベースとなるガチコンブの名を聞いて愕然としていたwww


「なるほどなぁ、やっと通信機があれでも高いって言った意味が判ったでw つまりガチコンブ狩れるんがカイト君だけやし、その討伐でも依頼料もろうてるさかい、2重取りって訳やねw」

とちょっと違う方向で納得しつつ、


「実際の所、TFGって夢の素材を作れるんは、カイト君だけやなぁ。どれも高難易度の素材やし、トドメが聖水やなんてw エグイわぁ~ww」

と苦笑していた。


「しかも、TFG素材無いと、実質問題飛行機作っても燃費悪いですからね。 ちなみに、最初のプロトタイプ作った際ですが、全部トレントだけで機体作ったんですよ。まあ、軽量に作ったので飛んだんですが、機体の強度はTFGと比べ物にならなかったですね。」

と言いつつ、懐かしの真っ赤な機体を出して見せた。


「これのエンジン部分はミスリル製なんですが、ミスリルからTFGに変える事で魔動効率は10倍以上に上がりますからね。あと付与スキルのLvが上がったのも魔動効率に大きく関係してるみたいです。」

と補足した。


「え?付与スキルのLvが付与魔方陣に影響するん?」

とステファニーさんが驚きながら質問する。


「ええ、私も調べてみて知ったんですが、同じ魔方陣でも、Lv3で付与したよりLv7で付与した方が何故か高効率でした。なので、付与魔方陣を付ける為の魔法陣刻印ハンコは付与スキルのLvアップ時には作り直したりしてます。」

と答えたのであった。(調べた方法は、智恵子さん情報だったりするけどw)


「ふーん・・・、ほんまかぁ。ほな、うちもまだまだ先があるって事やなぁ? ここ数日が生まれてからこのかた、一番濃い日々やわぁ~♪」

と新しい知識を仕入れて、上機嫌だった。


ステファニーが上機嫌だった理由は、単純に新しい知識のせいだけではなかった。


300年前、魔道具界隈では、変わり者として扱われ、仲間と付与魔法に関する論議や研究成果の報告なんかした事が無く、また同じ様な気持ちで魔道具に接している者も周りにおらず、いつも孤立した存在として色眼鏡で見られていた。

周りに寄ってくるのは、自分の利益の為にネームバリューを利用しようとしたり、研究成果を盗もうとしたり・・・散々な状態で、益々孤立。

その結果、嫌気がさして田舎へと引っ込んだのであった。

そしてそのまま枯れていくと思い込んでいた彼女の耳に届いた、

そして、今、話が通じ、更にその一歩も二歩も先を行く少年と出会い、仲間と一緒に食事をして、色んな事を惜しみなく教えてくれる存在(海渡)に出会い、魂が震えた。

心の底から幸せを噛み締めていたからである。





海渡が部屋に戻ると、フェリンシアとレイアが嬉し気に出迎えてくれた。

「おかえりーー♪ ステファニーさんどうでしたか?」

「あ、親分、お疲れっす!」


「ただいま。うん、結構楽しそうにしてたよw」


「そうですか、それなら安心ですねw」

とニコニコ顔のフェリンシア。


「フェリンシアはレイアと遊んでいたの?」

と聞くと、


「そうなんですよ! ちょっと海渡も見てみてください! さ、レイア!本番ですよ!!」

とレイアに合図を送ると、


「レイア、いきまーーーす!」

とレイアが宣言して、プカプカと飛びながら、エイト・ポイント・ロールを始めた。


続いて、インメルマン・ターンの後、キューバンエイト、そして、錐揉みスピンで、そのままホバリングして着地。


遣りきった感を出しながらレイアが、ドヤ顔でこっちを熱い眼差しで見ている。

フェリンシアも、自信満々の顔で、こちらを見ている。


「す、凄いね。 いつの間にそんなのを練習したの?」

と一応褒めると、


「夕食後~、さっきまで猛特訓しました(しやした)w」

とお二人さん。


うん、有意義に過ごしたんだねwww


ちなみに、「錐揉みスピン」だが、海渡は昔の亀の怪獣映画のガ○ラを思い出していたのだった。

まあ、このネタが判るこっちの世界の人は居ないだろうけどねw


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いつもお読み頂き、また沢山の応援を頂き、ありがとうございます。m(__)m

大変励みになっております。


最近、AtoKの学習機能が馴れて来て、誤字率が減ったかな?とは思っております。


書き溜め分をアップし終わったので、今後のアップは若干ペースが落ちる可能性があります。

今後も引き続き、宜しくお願い致します。

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