第250話


サチーさんの店で、餅米を5トン程売って貰って、屋敷へと戻って来た。

何故か、サチーさんも、ドロスさんも一緒に・・・。


4人に待って貰って、地下室に行くふりをして、トリスターの地下工房へと戻り、杵と臼、蒸籠を作成し、戻って来る。


そして、庭で竈を作って釜に水を張り、薪を入れて火をつけた。

精米して、水に浸していた餅米を蒸籠に布を敷いた上に均一に撒く。

2倍以上に膨らむ事を考慮して、2cmぐらいの厚みにしておいた。

蒸籠を3段重ね、木蓋を置いて、作ったばかりのトレント製木臼と杵を水にさらしておく。


「ねえ、カイト君、何かサラッと出して来たけど、これってトレント製じゃない?」

とサチーさん。


「ええ。取りあえず、適当な手持ちの素材で、今作ってきました。」

と言うと、苦笑していた。


「トレントは、加工し易いし、割に丈夫で軽いから、沢山使うんですよ。だから、ちょくちょく絶界の森に採取に行くんですよねw

幾ら採取しても、すぐに増えるから、本当に助かりますよねww」

と言うと、エルフ3人がドン引きしていた。


「いや、アレって、確かに丈夫ではあるけど、結構堅くて加工しにくいから、大変ってのが一般だよ?」

とサチーさん。


「ああ、うちの建物や空港の格納庫とか管制タワーとかは全部トレントの柱使ってますよ?」

と言うと、驚いていた。


「もしかして、あの格納庫って、王宮より安全かもしれないな・・・」

とドロスさんが呟いていた。


「トリスターやワンスロット王国の王都にある、うちの建物は、少なくとも他のどの建物よりも確実に丈夫ですね。軍隊やそこらの魔物・・・ワイバーンぐらいなら耐えられると思いますよ。」

とサラリと言うと、


「何かあったら、カイト君の作った建物に逃げ込もうww」

とサチーさんとドロスさんが言って笑ってた。


話している間に、一番下の段の蒸籠の餅米が蒸かし終わり、新しい段を一番上に置いた。


取りあえず、蒸かし立ての『おこわ』を少し摘まんで味見すると、日本で食べた餅米より、数段美味い『おこわ』になっていた。


「うほっ!絶品!!」

と海渡が軽く絶叫。


4人も恐る恐る食べてみて・・・

「「「「ほんとだ! 美味い!!!」」」」

と絶叫。


「で、これをどうするの?」

とドロスさん。


海渡は、ドロスさんに杵を1本渡し、

臼の水を流して軽く拭いて、おこわを布ごと持ち上げて、臼の上に出した。


「ちょっと最初は、僕の真似して同じ様にして貰えますか?」

と杵を使ってギュウギュウと押す感じで捏ねる。


ドロスさんも、反対側に立って、捏ね始める。


「そろそろ良さそうだから、今から2人で交互に突きます。 このお米の部分を杵で突いて下さい。同じテンポで交互に突くので。」

と言って、一回杵の先を水で濡らし、

ペッタン、と突く。


杵をあげると、ドロスさんもペッタン。

徐々にペースを上げて・・・ペッタン、ペッタン、ペッタン・・・(ry


何故か、お餅ではなく、ステファニーさんが軽くダメージを受けている様だが、気のせいだろう。


「よし、じゃあ、今度は、ドロスさん、1人で最初はゆっくり徐々に早く突いて下さい。突く場所は臼の真ん中です。」

と先に杵の先端を濡らし、ペッタン・・・「あらよ!」とかけ声を掛けつつ、濡らした手を突っ込む、餅の角度を変える。


ペッタン・・・「あらよ!」、ペッタン・・・「あらよ!」、ペッタン・・・「あらよ!」~~(ry


「よし、完成です!」


と庭に出したテーブルにクリーンをかけて、片栗粉を撒く。


手に水を付け、出来上がった餅をテーブルの上に置くと、全員の手にクリーンを掛けて、餅を丸めるのを手伝わせる。


女性陣が上手く出来る様になったのを見計らい、海渡とドロスさんは、餅つきに回る。


これを3回繰り返し、ドロスさん、ゼイゼイと肩で息をしながら、腕をダランとしてて、

「もう無理!」

と言っていた。


しょうがないので、ヒールを腕に掛けてやり、海渡は大根おろしと、きな粉を取り出し、人数分のお皿に、おろし餅ときな粉餅を作って、お箸を添えて配った。


「あ、一気に口に入れると、喉に詰まったりするので、ちゃんと少しずつ、噛んでで食べて下さいよ?」

と注意しつつ、きな粉餅からパクりと一口。


「おお!!なつかしーーー!きな粉餅だーーー! 滅茶うまーーー」

と絶叫する海渡。


他の全員がパクりと一口食べると

「「「「(うぉーーー!)おいひい!!」」」」

と雄叫びを上げていた。


「凄いよ!カイト君!!!! まさか、餅米にこんな使い方があるとは!!!」

とサチーさんが大絶賛。


「ふっふっふ、お餅の使い方はこれだけじゃないんですよ? 今度カフェで新作出そうっとww」

と海渡が言うと、サチーさんが、


「いつ行けば良い?」

と来る気になってらっしゃった。


「ちなみに、お餅って、突きたては、柔らかいんですが、時間が経過すると、表面も中身も水分抜けて、堅くなるんですよ。しかし!これを炭火で焼いて食べると、これがまた美味いんですよね。」

と海渡が説明すると、凄く食いついて来た。


サチーさんと、ドロスさんに、餅を分けてやると、大喜びしていた。


と言う事で、残った餅を収納し、庭の片付けをして、屋敷に戻ると、サチーさんと、ドロスさんがイソイソと、肩にタオルを掛けて、風呂場に行こうとして、どっちが先に行くかで揉めているwww


温泉入る気満々じゃねーかwww

「あ・・・笑っている間にステファニーさんとフェリンシアが先に入っちゃった・・・」

と海渡が言うと、ドロスさんが愕然としていた。


サチーさんは、勝ち誇った様に、

「おっほほほほ」

と笑い声を残しつつ、風呂場へ消えて行ったのだった。

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