第240話


昼の1時を過ぎたので、一度サチーさんの所に寄る。


すぐに通され、

「昨日はお世話になりました。」

と2人で頭を下げると、


「いやいや、こっちも、面白い物を見させてもらったからw しかし、なんかあの屋敷の前に人集りが出来てたけど、よく無事に出てこられたねw」

とサチーさん。


「え?まだ居るんですか? 何か面倒そうだったので、コッソリ脱出してきたんですが。」

と言うと、


「いや、私も今朝、何か騒ぎになっていると聞いて、何度か店の者を見に行かせてるんだけど、まだ収まってないらしいぞ!www そりゃあ、前日まで腐りかけた様なボロボロが一晩たったら、新築に変われば、驚くさw

しかもさぁ、うちの国って、良くも悪くも変化に乏しいからさぁ、尚更だよねw」

と大笑いするサチーさん。


「いやぁ~・・・、やっぱりそれが原因ですか。トリスターやあっちの王都とかだと、全然みんな慣れちゃってスルーしてくれるので、油断してしまいました。」

と言うと、一層大笑いされた。


「それはそうと、昨日新商品を3つ紹介し忘れたんですが・・・これ、洗浄機です。もう1つがこれ、魔動チェンソーです。後は雨具なんですが、ポンチョとマントです。」

と出してみて、それぞれを説明し、販売価格を教えると、これも購入すると言う事だった。


「いやぁ・・・毎回ながら、君の作る魔道具は面白いよ!!! 私の古い友人で、ステファニー・ヨハンソンと言う男が居るんだが、今度そいつに合ってみないか?」

と言われた。


「すみません、聞き覚えのない方なんですが、有名な方なのですか?」

と聞くと、


「え? カイト君、ステファニー・ヨハンソンを知らないの? 結構魔道具界隈では有名人なんだけどね。」

と言う事で、知らぬ人は居ないレベルの人なんだって。


「あー、すみません。山奥から出て、魔道具歴もこの世界もまだ3ヶ月たってないので、一般の人が知っている常識が、あまり把握出来てないのです。」

とごめんなさいした。


「ああ、そうか。そうだったな。そう考えると理解は出来るんだが、魔道具歴が浅い割に、とてつもない発明するよねwww すっかり発明品の凄さで、忘れてしまってたよ。」

と苦笑いされた。


「でね、そのステファニー・ヨハンソンから先日250年ぶりに手紙が来たのさ。そこに書いてあったのが、君の事でね。何でも最近SSSランクになった冒険者が居るって話しと、

何か面白い魔道具をバンバン世に出してる子供が居ると言う話を聞いたんだけど、何かしってる?って内容だったんだよね。

それ、どちらも君らじゃんwww

だからさ、すぐに返事を書いたのよ。

通信機を一緒に同封して、使い方も書いてさ。

ここから1週間ぐらい掛かる奥地に住んでるんだけど、届いたと同時に通信機に連絡来てさぁ、250年ぶりの第一声が、何だったと思う?」

と悪戯っぽい顔をするサチーさん。


「さあ?」

と海渡が答えると、


「『今すぐ行くから、合わせろや!!!!』だよ。」

と大笑い。


「えーっと、正直何処にオチがあったのか、あまり理解出来てないのですが?」

と言うと、


「ああ、そうか。ステファニー・ヨハンソンの為人を知らないんだったな。あいつは結構研究馬鹿でね、300年前にあのギルドのランク判定用の魔道具と、ネット網を1人で開発して築いた奴でね。それ以降、燃える物がない・・・と250年前に突然、『暫く引っ込むわ。』って人の居ない奥地へ引っ込んでね。

以来、誰が呼んでも出てこないで250年引き篭もりしてたって訳だよ。

そのステファニー・ヨハンソンが君に会いたいと言う理由だけで、250年ぶりに王都に出て来る。これだけでみんな驚く所なんだよ?」

と説明された。


「なるほど、何となく言いたい事が判りました。あ、でも僕ら、明日の多分午後には向こうに戻っちゃいますよ?」

と言うと、


「それがさ、その連絡を受けたのが、丁度10日前なんだよね。だから、すぐにこちらに向かったのなら、そろそろここに到着する頃合いなんだよ。」

とサチーさん。


「なるほどね。しかし、そのステファニーさんって、250年も引き篭もってたんですよね? 謂わばヒッキーのプロじゃないですか!ここまで来る体力あるんでしょうか?」

と心配する海渡。


すると、サチーさんも、一瞬でハッとした表情になり、

「あ、あいつ滅茶滅茶方向音痴だったんだ。大丈夫かな? そこら辺で変死体になってたりしないかな?」

と言い出した。


すると、ドアがガッと開き、

「こら!誰が別嬪さんで方向音痴の変死体やねん!!!!」

と鋭い突っ込みが入った。


「あ、プロのヒッキーが来た!!」

とサチーさんが叫ぶ。


海渡が振り返ると、そこには儚げな滅茶滅茶美人のエルフが居た。

海渡が思わず、

「お!美人さんのエルフ、キター!!」

と叫ぶと、


「おう!少年、判ってるやんww」

と外見と喋り口調にもの凄い違和感がある人だった。 何か色々台無しである。


「おう、サチー250年ぶり!! 美人さん、来たでーw」


「何か、外見と凄いギャップwww」

と海渡が吹き出す。


大人しく隣で茶菓子を食べていたフェリンシアも吹く。


「なんや、可愛い人族の少年、なんかゴッツい加護持っとるなぁ? で、サチー!例の奴は何処に居るん? 今から行くで!!」

と残念な別嬪さんが言うと、


「ほれ、そこの少年!」

とサチーさんがニヤリと笑いながら指をさす。


「え? ええっ???」

と海渡を見て、固まる別嬪さん。


「あー、初めまして、カイトと申します。こちらはパートナーのフェリンシアです。」

と頭を下げる。


別嬪さん復活!

「え? 少年が、あの通信機を作ったんか? そしてSSSランクの冒険者?」

と聞く。


海渡が頷くと、

ガバッと抱きついて来て、強制的に膝の上に座らされて、ホールドされた。

しかし、背中にはなんの主張も感じる事は無かった・・・ペッタンさんだ。


「会いたかったんや! 少年がその噂の少年やったんかい!! ん?何か少年、今失礼な事考えんかった?」


「いえ、何も・・・」

と口を噤む海渡。


そこで、サチーさんが、海渡との出会い~今までの事を掻い摘まんで説明した。

そして、海渡が発明した魔道具の数々を説明。

勿論、昨日ここに設置した時空間倉庫と連動するレジスターの話や、飛行機の話もした。

更に、海渡自身が山奥から出てきて、魔道具を作り出して3ヶ月たって無い事も説明する。


すると、

「カイト君、ほんまに天才的やなぁ。いやぁ~、うち、あんたの所の商会に入るわ! よろしくな!」

と決められちゃったよ。


「え?マジですか?」


「マジ!マジ! 大マジや!!」


「じゃあ、これから宜しくお願い致します。ちなみに、開発拠点は隣のトリスターになりますが、大丈夫ですか?」

と聞くと、


「ああ、そんなのは何処でもかまへんよ?」

とアッサリと承諾。


サチーさんは、驚いていた。

「じゃあ、明日こっちを発つので、それまでは自由にしていて下さい。私はちょっとフェリンシアと王城にとある物を届けに行かないといけないので。」

と言うと、


「え?王城行くん? 何持って行くの? 魔道具? ねえ、魔道具やろ? 見せてーー見せてー!!!」

と駄々をこねられた。


「うーーん・・・見せちゃって良いのかなぁ? まあ、うちのスタッフになるから、良い事にしちゃうか?」

と、端末を出した。


すると、ステファニーさんが、クワッっと目を見開き、

「こ、これは! もしかして?・・・何?」

と。

軽くずっこけて、ドローンを取り出して、説明をする。


すると、

「うぉーー!カイト君、ほんま天才やわぁ~ あーヤバい。惚れてまうーー!」

と絶叫していた。

海渡もフェリンシアも、長年の友人のサチーさんさえも、苦笑する。


「サチーさん、何かドンドンとエルフのイメージが音を立てて壊れていってます。何とも個性的な方ですねwww 言葉も関西弁??」

と思わず漏らす。


「まぁ、ええわ。うちも久しぶりやし、ドロスの顔を見に行くわw」

とソファーから不意に立て、そのまま海渡を抱っこしたまま立ち上がった。


えーー!? 俺このままなの? どんな羞恥プレイだよwww


そのまま部屋を出ようとするので、慌てて、

「ステファニーさん、流石にこのままは勘弁して下さい。自分で歩きますからw」

とお願いすると、

「ちっ」

と舌打ちされたw おいおい、こいつ大丈夫かよ?


この時、ステファニーさんを雇う事にしたのを、少し後悔する海渡だった。

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