第225話


大聖堂に戻った2人を、教会本部の司祭長のセイジさんらが、待ち構えていた。


「使徒様・・・いえ、カイト様。ご無沙汰しております。」

と頭を下げるセイジさんとシスター達。


「あ、お久しぶりです、お元気そうで何よりです。しかし、そう畏まられると苦しいので、普通でお願いしますw」

と海渡がお願いする。


「了解しました。色々と各地の教会や孤児院でご尽力して頂いてる事、大変感謝しております。」


「いえいえ、もっと早くこちらに来たかったのですが、なかなか時間が取れず、申し訳ありません。

早速ですが、前回お渡しした寄付が少なすぎたようで、この国の孤児院全体に回すと足りなかった事を痛感しまして・・・。

で、今回は十分に回るように、こちらをお納め頂ければと。」

と海渡は、白金貨100枚が入った袋を5袋取り出し、手渡した。


袋を受け取り、中身を見たセイジさんが、

「こ、こんな大金を・・・本当に頂いて宜しいのでしょうか?」

と驚きながら聞いてきた。


「今回、各地の孤児院を回ったのですが、何軒かは、完全に資金が枯渇し、食料も枯渇してしまって、数日食べ物が無かった所もあったのです。

統治されてる領主様によって、その領地ので物価が違い、同じ金額で同じ量の物が買える訳ではない事が原因でした。

そこのシスター達は、自分らの食料を殆ど子供達に回してガリガリに痩せていて、それは本当に胸が締め付けられる様な状況だったのです。

だから、二度とこんな事が起きないように、少し余分に分配して頂ければと思いまして。」

と海渡が12都市遠征での悲惨さを思い出しつつ、話した。



「ありがとうございます。では、喜んで受け取らせて頂きます。なるほど、物価ですか・・・。今まで一律で分配してましたが、確かに領地によって物の値段が違う事は容易に想像出来ますね。

これは、私の配慮が足りなかったせいでもあります。ご指摘の件は、今後に役立てる様に致します。」

とセイジさん。


「本当に、資金が足りない時は、遠慮せずに連絡してくださいね! 今では、支店も73都市に増え、いつでも動かせますので。これは女神様の願いでもありますから。

あと、ここの孤児院の卒業生が出る際は、子供らが希望したら、うちの商会で働ける様にしてありますから、それもお忘れ無く。」

と念を押した。



その後、海渡は食料や、新しい計算の教本などを多めに渡し、娯楽品のリバーシやトランプも渡した。


最後は、

「また来てね!! 今度はゆっくり遊ぼうね!!」

と孤児院の子供らに見送られ、教会本部を後にしたのだった。



「さあ、これで王都でやり残した事は無いかな?」

とフェリンシアに問いかける海渡。


「うーーん、あまりまだ屋台とか回ってないですよ?」

とフェリンシアw


「じゃあ、いっぱい回ろうかねw」

と彼方此方の屋台を爆買いして回る海渡とフェリンシア。


「お!坊主達はいつぞやの!?」

と覚えている店主も多く、色々おまけしてもらったりしたのだった。



辺りが暗くなり、午後6時過ぎに宿舎に着いたのだった。


宿舎に着くと、スタッフの1人が待ち構えており、大食堂へと連れていかれた。


大食堂には、何故か大勢が集まっており、海渡とフェリンシアを見た事が無い新しいスタッフや、孤児就業プログラムの子供達、シングル支援施設の親子らに紹介されて、お礼と拍手で迎えられた。

突然の事で、驚いている海渡とフェリンシア。


立案者曰く、

「カイト様はお忙しいから、この機会を逃すと、次はいつになるか分かりませんからねwww」

と笑っていた。


「じゃあ、せっかくだから、みんなでパーッとパーティーするっかーww」

と海渡が提案し、みんなが大盛り上がりw


大食堂は宴会に突入し、色んな料理を取り出したり、フルーツを出したりして、盛り上がったのだった。



海渡とフェリンシアは一足先に宴会を脱出し、温泉でゆったりした後、部屋に戻った。


火照った体を休めた後、海渡はトリスターの地下工房へと向かい、出来上がった建物を収納し、新しい物を建設する。


更に、今日のアルマーさんからの城壁の依頼の件を思い出し、今後必要となるであろう、チェンソーの魔道具を思いつき、開発を開始する。


色々テストした結果、普通の木材はカット出来るのだが、流石にトレント素材は、高額なミスリルだったり魔石の消費が激しかったりするので止めた。

もっとも、トレントを倒す事が一般的には厳しいので、普通の木材用のチェンソーと言う事で、良しとする事にした。


ちなみに、このチェンソーだが、実際にはチェーンはついて無い。

金属製のチェーンの代わりに高速回転する空気の刃がチェーン形状で、木を抉り取る感じとなる。

「名付けて『魔動チェンソー』。木こりの人、喜ぶかなぁ?」


早速生産ラインを20台作成し、工場に設置して、ダスティンさんへの指示書を置いておき、王都の部屋へと戻ったのだった。

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