第224話

 パーティーがお開きになってから、海渡とフェリンシアは居残りとなり、ゲルハルト帝国関連の話をする事となった。



「すまんな。色々と・・・。」と王様。


「いえ、これは私が持って来た情報がそもそもですし、乗り掛かった舟って奴ですからw」

とわざと軽く流しながら、。


「で、まずは、コーデリア王国への特使の件ですが、早々に動かないと、準備期間もあるでしょうし、ここ2日以内に出たいと思っておりますが、そちらは如何でしょうか?」

と聞くと、


「うむ。こっちは、大臣のワリスと、軍事方面のトップと言う事で近衛騎士団の団長アーメイド・フォン・ガリスを出す事にした。

 既に通達は終わっているので、明日でも明後日でも、そちらの都合に合わせるぞ?」

との事だった。


「じゃあ、早い方が良いので、明日の朝出発と言う事で、宜しいでしょうか? あ、事前に何か先方に伝えるならば、ロデム商会のサチー・ロデムさんかドロス・フォスティニアさん辺りに連絡する事は可能ですが、如何致しましょうか?」

と言うと、


「ふむ!カイト君は、ドロス・フォスティニア殿をご存知なのか!」

と驚く王様。

 え? ドロスさんって、有名なの???


「えっと・・・逆にドロスさんをご存知なのが、ちょっとビックリなんですが? 有名な方なんですか?」

と海渡。


「おや? 知らなんだかwww コーデリア王国の王太子様じゃぞww」

と王様。


「えーーーーーー!!!!! マジですか! いやぁ~ビックリです。

 確かに、初対面の時から、何か偉いコネがありそうだな?とは思ってたんですが、まさか王太子様とはw

 じゃあ、今から、チョコっと連絡した方がスムーズですよね?」

と通信機を取り出す。


「うむ。ちょっと連絡してみて貰えるか?」

と王様。


 頷き、ダイヤルし・・・


「はい、ドロスですが?」

とドロスさん。


「あ、お久しぶりです、カイトです。ご無沙汰してます。今ちょっと話しても大丈夫でしょうか?」

と聞くと、


「おお!カイト君か!! 久々だな。元気そうな声を聴いて安心したよ。今、大丈夫だよ。」



 と言う事で、海渡がゲルハルト帝国の件を話し、それでこちらから特使を連れて行くので、そちらの王様と話す場を作って欲しい事を伝える。


「なんと・・・また奴ら(ゲルハルト帝国)は、やって来る気なのか・・・。うむ。こちらとしても、特使の件は、願ったり叶ったりだ。内容的に早い方が良いが、いつ来る?」

との事だったので、


「確かに早い方が良いので、明日の午前中に・・・10時ぐらいに、そちらの北門の空港へ着く感じで宜しいでしょうか?」

と言うと、了解との事だった。


 海渡は指でOKマークを出すと、王様が『代れ』とゼスチャーするので、


「ちょっと、陛下に代りますので、お待ちください。」

とチェンジして、何かゴニョゴニョ向う側で話し、


 ・・・・


「じゃあ、そういう事で宜しく頼むぞ!」

と通信を切り、通信機を返された。


「じゃあ、そう言う事で、明日の朝6時15分に空港に集合と言う事で宜しいでしょうか?」

と海渡が言うと、


「うむ・・・朝早いなw まあ、了解じゃ。ふっふっふ」

と王様が頷いた。



 海渡とフェリンシアはやっと解放されて、王都支店の新宿舎の海渡とフェリンシア専用部屋へと戻って来た。


 ちなみに、トリスターと同様の新しい総合型の宿舎は、王都でも多くスラムの子らや、幼い子供を抱えたシングル親子達に住む場所と働く場所、働くための基礎教育を提供している。


 当初は「トリスターに専用の部屋があるから・・・」と辞退していたのだが、スタッフ達から全力で、

「いえいえ、これだけの施設なのに、オーナーの部屋が無いとか、それはダメです!!」

と当てがわれた5階の部屋となる。


 この建物だが、最初の設計時は4階建てのつもりだったのだが、トリスターの5階建てを作った際に、同様のレイアウトで、寸法だけを変えた物となっている。


「ふぅ~ 色々と疲れたよ・・・ 全く、あの2人(王様とアルマーさん)がつるむと、本当に碌な事をしないなぁ・・・。」

と呟く。


「ふふふ、でも料理は美味しかったですよ?」

とフェリンシア。


 そこでハッとする海渡。


「ガーーン・・・せっかくの初王宮料理を味わい損ねた・・・。あ、なんかお腹すいてきた。」

と愕然とするのだった。


 時刻は既に午後2時半。完全に昼食を取り忘れてしまったw

 取り合えず、簡単に済ませる為に、オークカツサンドを2つ取り出して、1つをフェリンシアに渡し、1つは自分のお腹へと仕舞った。


「そうだ!取り合えず、時間のある内に、教会行っておこうか。」

とフェリンシアと宿舎を後にし、久々の王都の街を散策しながら歩く。

 やはり、王都の町は以前より活気に溢れ、行き交う人の表情も生き生きとしている。


 教会本部に辿り着き、大聖堂へと入る。

「ここも久々だなw」

と呟き、祭壇の前に跪く。


『女神様・・・』



「なかなか、忙しそうですねw 海渡さん、フェリンシアさん、いらっしゃい!」

と女神様。


「どうも、久々に教会本部へとやってきました。 お陰様で、12都市も無事に完遂出来ました。」

とお礼を言う海渡。


「いえいえ、こちらも多くの人を救ってくれて、本当にありがとうございました。」

と女神様。


「全ては無理ですが、縁あって救える者には、手を差し伸べただけです。まあ自己満足かもですが。フェリンシアが手伝ってくれたので、本当に助かりました。」

と海渡。


「そうですね、フェリンシアさんも、本当にお疲れ様でしたね。また来年は色々と面倒な事がありますけど、しっかり海渡さんを支えてあげてくださいね。」

と来年のゲルハルト帝国の件を匂わせる。


「ゲルハルト帝国の宮殿を壊滅させた後って、何処が引き継ぐんでしょうね?」

と何気ない疑問を呟くと、


「まず、あの国で権力を持っている者は全て腐ってます。

 利己的で、自分の利益しか考えません。

 またそれを見て育った国民も完全にそれが正しいと刷り込まれてますから、上が潰れると、次は自分が好き勝手やる番だ ぐらいの気持ちしか持ち合わせてないのです。

 更に国民の約70%以上が文盲です。これは学問を学ばせず、支配しやすくする為の政策ですね。

 まあ、あの国に何か救いの要素があるとしたら、幼い子供らですね。

 彼らにちゃんとしたモラルを叩き込めば、或いは・・・と言うレベルだと思ってください。」

と以前にも聞いた身も蓋もない事実を女神様が再度告げてきた。


 更に女神様は

「ちなみに、これは私の設定ではないですからね? 私自身も直接は手を出せないので何ともしようがなかったのです。

 以前は、権力者の中にまともな人も居たのですが、あの国では、まともな人は、全て蹴落とされ、権力を失います。

 悪意しか無い相手に、話し合いでどうにかなる訳が無いのに・・・。」

と女神様がため息をつく。


「だったら、前に女神様が言われた様に、私が支配しちゃっても、無駄じゃないですか?」

と聞くと、


「そこが女神の加護の美味しい所ですよww」

と胸を張る女神様。


「え?どういうことですか? 私が支配すれば、加護の恩恵で、みな良心に目覚める的な?」

と聞くと、


「まあ、それだけではないですがね。相乗効果で皆の意識改革が進みますよ。」

と女神様。


「うーーーん、そう聞いても、ヤル気は無いです。誰かが統治するとして、私が関与したり手助けする程度では、効果無いですか?」

と聞くと、


「そうなると、多少は効果ありますが、海渡さん自らが統治した場合に比べ、浸透が遅く、効果も薄いでしょうね。」

との事。


「まあでも基本、貴方が好きな様に生きて、好きなように変えて行って構わない世界ですから、そこはあまり気にする必要は無いですよ。ただでさえ、忙しく色々やってくださってるのですからね。」

と締めくくった。


「分かりました。あまり統治に関しては、お力になれないと思いますが・・・とりあえず、色々やりたい事をやらせて頂きます。」

と海渡。


「そうですね、まあまた近い内に・・・少なくともゲルハルト帝国の件の前には、必ず来てくださいね! では、また・・・」

と言う女神様の言葉とともに、海渡とフェリンシアは大聖堂に戻って来ていたのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る