第222話
「義務教育制度です。今、おそらく国民の識字率は全体の人口に対して60%ぐらいありますでしょうか?
スラムや生活困窮者や孤児院に入れなかった孤児達は殆ど文字を知りません。一般家庭だと親が知っていれば教える様なので、かなり識字率は高いと思いますが、
この全国民の識字率と計算能力を底上げし、全体的な国民の知識レベルを上げるのですよ。
幸い、この国の腐った連中は減ったと思いますので、邪魔な要素はかなり軽減出来たのではないでしょうか?
国民の知識レベルが上がれば、次の世代が、より良い国へと発展させてくれる筈。まずはその夢を見れる環境を整える事が大事かと思います。
但し、これは未来への先行投資となるので、数年レベルでは、目に見えた成果が判りにくい可能性がありますが・・・。
まあその為には色々財源や各領主様の方もご苦労があるのですが、問題は貧困家庭やスラムの今日食べる物が無い様な子供らや、子供が労働力の一端を担っている家庭では、難しいと言うのが難点なんですよね。」
と海渡が続ける。
「でも、これで識字率や計算が出来る子らが増えると、将来スラムに落ちる人が減る筈だと思ってます。
実際に、うちの商会では、スラム出身者でも、ちゃんと文字と計算を教えれば、きちんと真面目に孫癪無く働いてくれています。
根っからの悪はどうしようもないですし、助ける気は無いですが、ちょっとした切っ掛けで、人生が好転する事もあるので、何とかしたいなぁとは思ってます。」
と説明すると、王様は
「なるほどのぅ、義務教育か。それは今までに無かった発想じゃったわい。
うむ・・・色々検討する余地があるな。ちなみに、その子らはどれくらいの期間で、文字や計算を習得したのかの?」
と言うので、海渡はアイテムボックスから、文字カードと、計算の教本を取り出し、
「これをご覧下さい。個人差はあると思いますし、教え手の問題もあるから、一概に言えないのですが、当方ではこれらの教材を使って、教えております。
この文字カードは、表に絵、裏にその文字が書いてありまして、自分で文字を覚え、友達同士とかで、文字を見せて読ませ合ったりして覚える物ですが、これを使ったスラム出身の子は、1日で文字を覚えました。
またこの計算の本を読んで、1週間程で理解したようです。ヤル気がある子らだったので、早かったようですね。
だから、2ヵ月もあれば、大体習得出来るんじゃないでしょうかね? 文字2週間、計算5週間とか。」
と言うと、
「何、そんなに早く覚えられるか!! 余なんか、3か月ぐらい掛かった記憶が・・・」
と『ガーーン』って顔の王様。
更に王様は計算の教本を手に取り、ペラペラと捲りながら、掛け算と九九表に食いついた。
「カイト君、これは何だね? 初めて見るが?」
と王様。
「これは、掛け算と言うものです。 例えば、1人2個の卵を持っている人が2人居ると、全部で卵は何個になりますか?」
と聞くと、
「4個じゃな。」
と王様。
「じゃあ、4人では?」
と聞くと
「・・・・・8個じゃ!」
と暫く時間を掛けてから答える。
「今、王様は、頭の中で、2+2+2+2と、4回『2』を足し算しましたよね?」
と言うと、頷く王様。
「では、この九九表とをご覧ください。横の列の上に、1~9までありますが、この1人2個持ってる訳なので、『2』の所の行を見ます。
そして、縦にも1~9ある所で、4人と言う事なので、『4』の所を横に見ると、縦と横が重なった部分は『8』となります。
式を書くと 2×4となります。じゃあ、9人居た場合は、同じように・・・~(ry」
と説明すると、
「何じゃこれは!凄い発見じゃないか!!! この教本には、それらが説明されているのか!!」
と驚く。
「はい。例えばですが、1人前用の料理のレシピを与えられたとしても、5人前となると、1人用のレシピから5人前に必要な分量を正確に計算出来ないと、仕事になりませんよね?
計算が早ければ、色々な仕事が捗ったりするのですよ。そうして、1人1人の仕事が早くなると、どうなりますか? 例えば料理が早く出て来て、食べたお客さんが帰り、次のお客さんが座れる事になる。そうすると、店のお客さんの回転率が良くなって、1日に100人しか捌けなかった店が150人捌けるようになり、店は儲かる。
店が儲かると、店を大きくしたり、給料を上げたり、新しく店員を雇ったりする、経済効果が生まれます。
露店では、1人のお客さんの接客の時間が短縮されるので、ドンドン新しい客の相手が出来るようになる・・・ お店が儲かると、税収も上がる・・・何か国全体の経済が今より回る気がしませんか?」
と悪い笑みを浮かべ聞く海渡。
「確かに、今日やって明日効果が出るわけではないが、5年10年後には、かなり期待出来るじゃないか!!! カイト君、凄いぞ! これ売ってくれ!!」
と王様。
「こちらのワンセットは献上いたします。これは、新しく作った、計算の教本の続きで、こちらが魔法の手引書です。
詳しくは、オスカーの方と話し合って頂ければと思います。」
と渡したら、すぐに大臣のワリスさんを呼び、パーティーそっちのけで、話し込んでいた。
「カイト様、悪い笑みがww」
と笑うヨーコさん。
「わぁ・・・また忙しくなりそうな予感が。」
と頭を掻くオスカーさん。
「まあでも、学校を作って、この教本とかを配ると言うなら、計算の2冊は、1冊大銅貨1枚ぐらいで出したいな。王国への協力って事で。どう?それでも大丈夫だよね?」
とオスカーさんに言うと、
「まあ、ラインを増やして貰う必要がありますが、大丈夫だと思いますよ。」
「じゃあ、早速ラインを後で増やしておくよ。多分、かなりの確率で何らかの学校が出来る筈だからねw」
とニヤリと笑う海渡だった。
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