第221話
そこには、玉座へと続く通路を囲む様に、多くの貴族が並んでいた。
『わぁ・・・ハメられた---!!!』
と伝心で嘆く海渡。
『わぁ・・・一杯いますね。』
とフェリンシア。
前へ出るようにと、案内役の人から言われ、前にアルマーさんから教えられた通り、真ん中辺りで、跪いて頭を下げる。
続く4人も同じく・・・。
「今日は急な呼び出しにも拘わらず、よく王城まで来てくれた。構わぬ。表を上げてもっと前へ進むのじゃ!」
と王様。
「ははっ!」
と立ち上がり、前へ進みながら見ると、王様が悪い笑顔をしてニヤニヤしている。
前の方に居るアルマーさんも、悪い笑みでニタリとしている。
海渡は、小声で、「図られたw」と漏らす。
「さて、よう来たのぅ、カイト君。フェリンシアちゃん。」
と王様。
続けて、
「この度の救援活動、本当にご苦労じゃった。また多くの国民が救われた事、改めて礼を言う。ありがとう。」
と頭を下げた。
通常王族は頭を下げたり・・・ましてや多くの貴族の前で、こう言う事はしない。
海渡は驚いて、
「そんな滅相な。頭をお上げ下さい。こちらこそ、陛下が兵を派遣してくださり、円滑に進められた事を感謝しております。」
と海渡も慌てて、頭を下げる。 背中には嫌な汗をかいている。
「で、そちへの褒美じゃが・・・前に爵位も領地も断られておるしのぉ・・・、何であれば受けてくれるかと、頭を痛めておったのじゃが、余は良い事を思いついたのじゃww」
とニヤリと笑い、
「そちらに、お主らの為に作った、特別な勲章と我が王国での権利を与える事にしたのじゃ。」
と続け、大臣のワリスさんが、微笑みながら豪華なトレイに乗せた勲章を運んで来た。
王様は勲章を手に取りつつ、続ける。
「その名も、『ワンスロット英友勲章』と言い、これを授与されし者には、公爵と同じ身分や発言権と、例えワシや王族相手でも不敬罪を問わない。
但し、その身分に対しての義務は一切発生しないものとし、君らの自由を奪ったり、強制する事は無いとする。
更に王国全ての場所で開発する権利を有する物とし、協力を求められた場合は、王族貴族を問わず、皆が出来うる限りの協力を持って恩に報いる事とする。
勿論、未開拓の場所を勝手に開拓して、領土とするのも構わん。お主らの善意を信じ、この勲章を渡す物とする。さあ、カイト君、フェリンシアちゃんももっと近くに来るのじゃ。」(英雄ではなく英友)
と王様がニタニタ笑いながら、『こっちゃこい』と手招きしている。
海渡は完全に諦め、顔を引き攣らせながら、壇上へと上がり、片膝を着く。
フェリンシアもその横に続く。
王様が、海渡とフェリンシアにしか聞こえない小声で、
「ふっふっふ・・・どうじゃw これなら受けざるをえないじゃろ?」
と囁きつつ、舌をペロリと出した。
「さあ、ここに新しい時代の英雄が、王国の友、ワシの友が出来た事を、皆で祝おう!」
と宣言したのだった。
貴族達は、
「「「「新しい英雄万歳!王国の友万歳!」」」」
と・・・まるで皆でリハーサルでもしたかの様に、揃って万歳をした後、拍手をしていた。
「さて、カイト君、何か一言挨拶でもw」
と王様が無茶振りしてきた。
マジかーー! と心の中で叫びつつ・・・
「王様そして貴族の皆様・・・、この度はこの様な過分な勲章を頂き、誠にありがとうございました。
皆さまの信頼を裏切る事無く、王国のそしてこの世界の発展に微力ながら、尽くせればと思います。
まだ、如何せん、先日6歳になったばかりですので、あまり過度な期待はしないで頂けると幸いです。
本日は、ありがとうございました。」
と締め括り、頭を下げた。フェリンシアも。
そして、海渡の上着の背中は、完全に汗でビッチョリとなっていたのだった。
「さあ、王都をパレードでもするかの?」
と王様が悪い顔をする。
「あー、出来ればそう言うのは、本当にご勘弁頂きたいのですが・・・。」
と海渡が慌ててお願いすると、
「ふっふっふ、冗談じゃよwww」
と大笑いしていた。
そして、場を移し、大広間での立食パーティーとなった。
「さあ、この場は無礼講と言う事で、皆で楽しもうではないか! 新しい友にかんぱーーーい!」
と王様が乾杯の音頭を取り、みなでグラスを上げて乾杯し、その後は、ワイワイと皆で美味しい食事をつつく。
「いやぁ~ ビックリしましたねw」
とオスカーさん。
「ふふふ、まんまとヤラれましたねw」
とヨーコさん。
「カイト様、凄いですぅーー! 私緊張で手が真っ白になっちゃいましたよw」
とヨーコさんの部下。
「海渡、これ美味しいですよ!」
とフェリンシアw
「王様が近寄ってきて、どうじゃ、あれだったら、お主を縛り付ける物も無く、如何なくお主の手腕を発揮出来るじゃろ?
そうすれば、わが国も、国民も、益々平和に栄えるだろうてww どうじゃ? 良い話じゃろ? これを決定するのに、何日もアルマーと話し合ったんじゃぞ!」
と王様が誇らしげに語ってくれた。
「なるほど、やはりアルマー様も一枚噛んでいたのですねw そんな感じしておりました。
まあ、私もフェリンシアも変に権利を行使する事は無いので、ご安心下さい。
しかし、国を発展させたい、と言う事であれば、一つ確実に良い方法がありますよ。」
と海渡が言うと、
「ほう!それはどんな方法じゃ?」
と王様が前のめりに食いつく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます