第218話
「いやぁ~、孤児院かなり危ない状態だったみたいだね。間に合って良かったよ。」
と海渡が安堵しながら呟く。
「そうですね。で、この後はどうするんですか? 私も昨日廻ってて何名か子供を抱えたお母さんとかを見つけておいたんですが。」
とフェリンシア。
「流石だね! 俺も昨日、スラム?だか貧民街?だかで、何名か子供だけのグループを治療して、その子らと会う約束してるんだよね。
じゃあ、その子らをピックアップしたら、フェリンシアの方も廻ろうかね。」
と昨日子供らと約束した場所へと向かう。
そこには、7歳~15歳ぐらいの身なりがボロボロの少年少女が20名居た。
「ああ、お待たせしちゃって、ごめんなさい。 こちらはフェリンシア。朝食はどうした? 何か先に少し食べようか!」
とカップに入れたコーンスープとカツサンド(オークカツサンド)を人数分出して手渡す。
「ああ、ありがてぇ~。昨日から色々ありがとうな!
もしかしたら、今日気が変わって来てくれないんじゃないかと、気が気ではなかったんだよ。」
と最年長者15歳のガンツ君。
「そんな訳ないよ。ちゃんと約束は守るから、安心して。それ食べ終わったら、出発するから、店の場所判るよね?」
と聞くと、
「ああ、アレスター商会の店舗の跡地だろ? さっきちょっと見て来たw 本当にあんな凄い所で働けるのか?」
とガンツ君。
「最初は文字とか計算とかも覚えて貰ったり、接客も覚えて貰うけど、大丈夫。驚く程直ぐに覚えちゃうからw」
と海渡が事もな気に言う。
「本当か?俺ら、本当に文字の『も』の字さえ知らないけど・・・」
「うん、あとで教えるけど、簡単に覚えられる、教材・・・道具あるから、安心して。 うーん、そんなに心配するなら、これ食べておく?」
とマツタケご飯を出してみた。
「これ、頭良くなるよ?」と。
「「「「食べるーーー!」」」」
と全員一致で、御茶碗一杯食べてました。
「さあ、これで安心だよw じゃあ、ガンツ君達に、マジックバッグとお金を渡して置くから、そのお金で全員の着替え・・・洋服上下3着以上、下着類は5着以上、靴やタオル等を買い揃えて、店の裏の従業員宿舎に来てね。
ヨーコさんと言う女の人に、ちゃんと伝えてあるから。俺は、もう一か所寄る所あるから。」
ガンツ君らにお金、銀貨200枚(金貨2枚相当)とマジックバッグを2つ渡して、じゃあ!と去って行こうとする海渡を慌てて止めるガンツ君。
「おーい!!! ちょっと待ってくれよ・・・下さい。こんな大金渡されても・・・俺らが逃げるとかおもわねーの?」
と困り顔のガンツ君。
「え?全然思わないけど? なんで?」
と不思議そうな海渡。
そして、
「第一、確かにそれは大金ではあるけど一人当たり、銀貨10枚だよ。君らは僕の商会でちゃんと働き始めたら、もっと沢山のお金が毎月稼げて、楽しく暮らせる未来も築けるのに、一瞬の銀貨10枚で棒に振る様な人間とは、僕は全く思ってないのさ。
だって君らは真面目に仕事して、未来の見える、未来の夢が見られる生活を目指してると思うんだ。
だから、そんな心配は全くしてないよ。
うーん、大金で不安と言う意味では、確かに良くない連中に目を付けられると、困るから・・・じゃあ、僕とフェリンシアが男の子チームと女の子チームに分かれて、サクッと買い物済ませちゃおうかね。それだったら、安心でしょ?」
と提案すると、ホッとした顔をされた。
確かに、今のこの恰好で店に大金持って入ると、下手に疑われても面白くないだろうし。
と言う事で、予定変更して、全員でお買い物となりました。
既に、彼らにはクリーンを掛けてあるので、店の人に嫌な顔をされる謂れは無い筈。
22人でワイワイと数少ない開いてる店で、着替えをドンドンと購入し、20人共に全部揃ったので、
「じゃあ、先に店の裏の宿舎に行ってヨーコさんを訪ねてね! 部屋割りとかしてくれるから。」
と手を振って別れる。
昨日フェリンシアが担当した、裕福で無い人が住むエリアへと到着し、フェリンシアの言う5名の子連れの女性と面談した。
勿論、彼女らも採用した。
住み込み希望との事だったので、準備金とマジックバッグを渡し、宿舎に来る様に伝えた。
彼女らと別れると、直ぐに宿舎へ戻り、海渡は空いたスペースに、親子宿泊型の託児ルームの建物を設置した。
宿舎の食堂に入ると、早速ヨーコさんらから、文字カードで文字の学習をしているガンツ君達が居たw
「カイトさん、この文字カードってのは凄いっすね! なんか嘘の様に文字がドンドン頭に入って来るよ!!!」
と喜んで新しい知識を吸い取っていた。
そんな彼らの努力する姿勢や、喜んでいる姿を見て、嬉しくなる海渡だった。
時刻は12時。
昼食を時空間倉庫から出して、みんなでお昼ごはん。
ガンツ君達が涙ながらに食べていました。
毎回ストリートチルドレンに近い彼らの様な境遇の子らを雇い、こう言うシーンを見ると思うのだが・・・、実際27歳の自分ではなく、彼らと正真正銘同じ年齢で、なんのチート(女神様の加護やチートスキルや知識)が無ければ、果たして生きてこれただろうか?と考えてしまう。
ましてや、あの森から抜け出せただろうか? と自分の昔と照らし合わせて考えると、やはり難しかっただろうと言う結論しか出てこない。
ふふ・・・人生って面白い物だな。一つの歯車、一つの考え方、一つの選択で色々と変わって行く。
食事が終わり、海渡は計算の教本(『すぐに役立つ、計算の進め方』)のPart2を作ろうかと、現在執筆中。
内容としては、銅貨ベースでの桁の考え方、割り算、分数、小数点についてとした。
銅貨ベースの桁の考え方だが、そもそも3桁以上と言う概念が、距離等は何故かcmやmやkmが使えるのだが、何故かお金となると、あやふやな感じになり、計算速度が鈍る傾向がある。
よって、銅貨ベースに換算する際に 元の世界では3桁毎に『,』を付けていたが、この世界では、2桁毎に『,』を付けてやる事でどの硬貨を表すか判り易く出来ると考えたのだ。
そして、割り算と来れば・・・当然分数、分数とくれば小数点・・・と言う感じで教える事とした。
出来上がった原稿は、かなり念入りに図等も入れたので、ページ数が増えてしまい、練習問題も含めて、全68ページとなった。
データを水晶記憶体へと入れ、トリスターの地下工房で、新たな製本ラインを20機作成して、工場へ移し、製本を開始したのだった。
そして午後4時を過ぎた頃、ラステンの宿舎へと戻ると、フェリンシアが発見して雇った母子5組が、合流していた。
彼女らが落ち着いた頃を見計らい、希望者に調理スキル講習会を行うと、女性陣全員と男性陣もかなりの数が参加していた。
どうらや、海渡の料理を食べて、触発されたらしいwww
「いやぁ~ 男が調理とかって以前は思ってたんですが、カイトさんの料理食べて、目から鱗っすよw」
と笑っていた。
1時間も掛からず、全員にスキルが生え、無事に講習会を終了。
その後、作った料理も含め、歓迎会を兼ねた宴会に突入した。
まあ、5歳児である海渡や10歳のフェリンシアはお酒は飲まないのだけどね。
宴会終了後、宿舎の風呂で入り方のマナーを教えつつ、湯船でゆったりした後、これからの遠征デスマーチにウンザリとしつつ眠りについた。
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