第193話
「さて、このままだと、かなり時間ロスしたままだから、ズルしようかね。」
とトリスターのかなり手前にゲートで移動する。
「ああ、なるほど、この手がありましたか!」
とヨーコさん。
「ふふふ、こっからサルバドルまでだと、30分前後だしww 時間短縮で有効利用ですw」
と海渡。
2号機を出して、智恵子さんの指示する方向へ機体を向けて発進する。
20分掛からずに城壁が見えてきた。王都寄りの西門の近所にホバリングしてオートランディングをする。
一応、機体には駐機用の結界を張って、西門へと3人で向かう。
西門の衛兵に、ギルドカードを見せ、
「こんにちは! トリスターからやってきました。塩と砂糖の販売の件で陛下より全権委任されております、カイトと申します。サルバドル伯爵様に面会をお願いしたいのですが。」
と書類を片手に決まり文句を告げる。
書類を確認した衛兵が、
「畏まりました。少々中の詰め所でお待ち頂けますでしょうか?」
と詰め所の待合室に通された。
30分ぐらい待たされた後、
「大変お待たせしました。領主館へご案内致しますので、こちらの馬車にお乗りください。」
と馬車で都市サルバドルの街中を移動する。
見た所、テリラス領程の悲惨さはなさそうだ。
ちなみに、サルバドル支店の店長はランカスターさんが就任する事になっている。
今回も店舗の状況を見てからと言う事になっている。
馬車の中で、ふと重要な事を思い出して、
「あ、ヨーコさん、明日の定休日で思い出したんだけど、明日じゃん、王都組とトリスター組の入れ替え・・・」
と言うと、
ヨーコさんも
「あああ・・・バタバタと予定が変わって、うっかりしてました。申し訳ありません。どうしますかね?」
と。
「もう、この際、ゲートで一気に入れ替えちゃうか。それなら、一瞬だしwwww」
と合計7時間も律儀に移動するのが、バカらしくなってぶっちゃけてみる。
「ふふふ、良いんじゃないですかね? じゃあ、その方向で両方に連絡しておきますね。明日の朝、8時半ぐらに移動しますかね。集合場所は空港の格納庫で良いですかね?」
「うん、それで良いよ。宜しくね。」
やはり、伯爵領だけあって、領都はテリラスに比べ、遥かに広い様だ。
「もう30分ぐらい馬車に乗ってる気がするけど、王都並に広いのかな?まだ着かないね。」
ヨーコさんが、
「そうです。王都より若干小さいぐらいの面積があるようですよ。」
と。
「うーん、じゃあ町を見た感じ、あまり悲惨な状況は見受けられないけど、これはメインストリートだからって事かな?」
と推測を呟く。
「もしかすると、そうかも知れませんね・・・」
『その通りですね。この1本裏の通りになると、テリラス程ではないですが、かなり悲惨な状況になってますね。』
と智恵子さん情報。
『と言う事は、調子崩した人かなり多いの?』
と聞くと、
『ザっとチェックした範囲ですと、5000人以上が軽度より重い感じです。』
との事。
ああ・・・またグルグル廻らなきゃダメじゃんと・・・と覚悟を決める。
「あー・・・テリラス程じゃないけど、中度の患者は5000人以上居るみたいだな。またフェリンシアと手分けしないとダメっぽい。
ここ、広いから、かなり集めて貰ってドンドンやらなと、1日では終わらないかもね。」
と情報を共有する。
馬車が領主館に到着し、応接室へと通された。
部屋の中には、40代後半くらいのラーメン屋の屋台のおっちゃんエルフとアルマーさんを足して2で割った様な豪快系のおじさんと、知的な20代中盤のオスカーさんタイプで細身のお兄さん(海渡の実年齢よりも年下?)が居た。
開口一番、
「わしが、ここサルバドルの領主、ゲルグ・フォン・サルバドル伯爵で、こいつは、息子で次期当主のサイラスだ。
お主が噂に聞くカイト君か。で、そっちのお嬢ちゃんが、フェリンシアちゃんで、そっちの知的美女がヨーコさん・・・で合っとるかな?」
「おお、噂と言う点は非常に気になりますが、合っております。初めまして、カイトです。一応こちらが陛下から頂いた書類となりまして、領主様には4つ程ご協力頂きたい事がございます。」
と切り出した。
書類にチラリと目を通して返して来た。
「ほう、どんな事じゃ?」
「まず第一に、塩不足で重篤患者は居ない様でしたが、中程度に体調を崩している住民がザっと5000人以上。なので、地域地域である程度の人数集めて頂き、私とフェリンシアで手分けして治療をして廻りたいと思っております。
その為に、こちらの家臣の方に住民を集める事と、その集合場所へ効率よく私とフェリンシアを案内して欲しいと言う事です。
第二に現在の塩の備蓄状況と住民への配給具合を教えて下さい。
これは、店舗をこちらで開始するにしても、ある程度時間が必要なので、その目安として考えております。一応、緊急時の事を考え、事前に塩と砂糖を持ち歩いてはおります。
第三は、空港の建設の件です。空港をこちらの西門の外に建設させて頂きたいので、その場所の許可を頂きたいと。
第四は、治療が完了してからですが、こちらにあるアレスター商会の店舗、屋敷、敷地にご案内頂ければ・・・と。
この4点になります。」
と伝えた。
「なるほど、その歳にして、噂通りの人物じゃなww
領主様などと固っ苦しいのは抜きでゲルグで良い。
まず1点目、了解した。すぐに地域地域に集合させて、こちらの兵に案内させよう。
2点目の備蓄じゃが、既にこの館も倉庫も空にして住民へ配った。そちらが、緊急時に持ち歩いている分を、売っては貰えぬかのぅ?
3点目の空港の件、了承した。何処でも好きに作って良いぞ。
4点目も後で兵に案内させよう。色々と住民の事までご配慮・・・ありがとう。」
とゲルグさんとサイラスさんが頭をさげた。
「ふふふ、では、ゲルグ様と呼ばせて頂きます。実に話が早くて助かります。塩ですがどの程度あれば宜しいでしょうか?」
「出来れば20トン欲しいが、どうじゃ?」
「はい、それなら今すぐにこの場でもお渡し出来ます。倉庫に出せば良いでしょうか?」
「そうか!じゃあ、倉庫へ案内させるので、そちらにお願いする。あと砂糖もあるとの事なので、30トンあればそれも欲しい。」
「了解しました。では、塩20トン、砂糖30トンを倉庫に入れたら、フェリンシアと私は、そのまま治療の方に走ります。代金等に関しては、こちらのヨーコと詰めて頂ければと。では宜しくお願いします。」
と早々に倉庫へ塩と砂糖を置いて、フェリンシアと別々の方向へ出て行く。
先行した兵が集めた不調者へ、ヒールを掛け、更に岩塩入りハチミツ水を与える。
これを繰り返し続け、夜の7時40分頃になって、やっと全域の不調者を回復終了。
海渡7:フェリンシア3の割合で完遂したのであった。
「お疲れ様でした。どうぞ、領主館に食事のご用意と宿泊の用意が出来ておりますので、お越しください。」
と一緒に廻った兵のお兄さんに言われ、着いて行く。
領主館に戻ると、ゲルグさんをはじめ、ご家族全員とヨーコさんが迎えてくれて、どうやら食事は待っていてくれたらしい。
先に食べててくれて構わなかったのにと言うと、
「ガハハ、そんな助けてくれてる人に対して不義理な事出来るかww」
と笑っていた。
食後、宿泊する部屋に案内されて、少しヨーコさんとも話をしたのだが、塩と砂糖の金額交渉の際、救援に対しての謝礼と言う事で、こちらの提示額の2倍近くの金額を払おうとしてきたらしい。
「え? まさかそれを受け取ってないよね?」
と聞くと、
「はい、伯爵様には、そんな人の足元を見て金額を釣り上げる様な真似をすると、カイト様に叱られるので と断りましたw」
と笑っていた。
「流石ヨーコさん、判ってらっしゃるw」
とこちらの意図を察して動いてくれた事を褒めておいた。
更にヨーコさんは、
「あと、ここには、アレスター商会の店舗と屋敷がありました。時間が余ったので、先行して少し確認してきました。若干位置のズレはありますが、店舗と屋敷は背中合わせになっておりました。
おおよそですが、サイズとしてはトリスターと同じくらいかと思います。」
と言う事だった。
「統合して1つの敷地として使えるのは、ありがたいなww」
と喜ぶ海渡だった。
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