第192話


「フェリンシア、最後にエリンガに行くじゃん? その時なんだけど、王都から飛行機で、騎士団をエリンガまで運んでくれる?」

と聞くと、目を輝かせて、


「任せて下さい!」

と胸を叩いてた。


「ふむ、フェリンシアにも、マップや知恵子さんやアイテムボックススキルが生えないかな? 俺が教えると、習得し易いって言う話なんだけど、どうやって教えるかな?」

とどうやって教えるか?を思案しつつ、


「フェリンシア、試しにアイテムボックスの事を教えるね。

アイテムボックスのスキルはね、頭の中で『アイテムボックス』と念じると、目の裏と言うか頭の中にアイテムボックスのパネルみたいなのが浮かんで来るの。

それで、そこに収納いる物の一覧が表示されるんだよね。」

と紙にその様子を書いて教える。


「で、ここの所で、フィルターと言って、条件で絞り込んで・・・例えば食べ物だけのリストにしてみたり、魔物の死骸だけのリストにしてみたりするんだよ。

アイテムボックスに収納する時は、その物に手で触れて頭の中で、『収納』と念じるの。

取り出す時は、出したい『物』を念じれば、外に出せるようになるんだよ。

試しに何かに触って、頭の中で収納って念じて見てごらん?

収納出来たら、アイテムボックススキルが生えてる筈だから。

時空間魔法が使えるんだから、何となく出来る気がするんだよね。」

と言って、目の前のテーブルに、フェリンシアの好きなプリンを出して、練習させてみる。


お!フェリンシアさんが集中してる!!

「収納」とか呟いたり、「うーん・・・」とか唸ったりしている。


15分ぐらい、頑張っているけど、まだスキル生えないね・・・。



「あ!消えた!?」

と叫ぶフェリンシア。


「あ、スキル生えた!!!! ああ、なるほどこんな感じなんですね!? これは便利ですね。」

と早速出したり、居れたりしている。


「凄いじゃん、フェリンシア!!! 本当にアイテムボックススキルが生えるとはwww

じゃあ、3号機をフェリンシアに渡しておくよ。」

と、宿舎の外に出て、空いたスペースに3号機を出す。


フェリンシアが手に触れ心で念じると、3号機が消えた。

「うん、ちゃんと入りました!」

と良い笑顔をしていた。



ついでに、ゲートを教える事にする。

「じゃあ、今度は時空間魔法のゲートを教えるね。」

紙とペンを出し、●を一つ書いて、


「ここが、今居るテリラスのこの場所とする。ここがトリスターの格納庫の裏だとするよね。」

離れた場所に●を書く。


「ゲートの魔法ってね、頭の中で今居る場所とこっちの場所を引っ付けるイメージなんだよ。

と紙を曲げて、●を重ねる。

「すると、今まで離れていた距離が、ほら、ぴったり同じ場所に引っ付いたでしょ?」

と見せる。


「ああ、なるほど!!そういう考え方なんですね? 判りやすいです。」


「だから、ゲート自身は門と言うかドアの様な感覚だね。

こっちの面とこっちのトリスターの格納庫の裏をひっつけた扉を開いて、隣に移る感じだね。」

と補足すると、

頭の中でイメージしながら『ゲート』を発動・・・したらしく、目の前に黒い空間が現れ、その格納庫が見えた。


「お!出来たじゃん。 おめでとう! 凄いね、一発だったね。」

と一回で成功した事を褒めた。


「えへへ、上手く行きました!!」

とフェリンシアも喜んだ。


「じゃあ、今度は王都の空港の辺りをイメージして繋げてみてくれる?」

と今回の作戦で一番重要な王都の空港へ繋げるかを確認した。

勿論これも一発でOK。


念のため、一度向うへ行って、イメージを固定させ、再度こちらへゲートで戻って来て貰った。


「おかえりー! 無事往復出来たね。 良かった、これでエリンガの時に2人で作戦行動にゆとりが出来るね。ありがとう!」

とお礼を言うと、フェリンシアが照れていたw



さっきの子連れの女性と別れて、約1時間。

「そう言えば、名前聞いてなかったな・・・」

と今更ながらに反省中。


「ソロソロ頃合いだと思うのだが、まだ来ないね。まあみんな子供居るから、そうそう簡単に動けないかな?」

と心配していると、ヨーコさんとドッチさんが、戻って来た。


「お疲れ様! どうだった?」

とヨーコさんに聞くと、親指を立てて、


「バッチリですよ! と言うか、既に海渡様とジャック様とで、ほぼ内容を決めてくれていたから、その確認程度でした。

今朝、ジャック様自ら畑を確認に行かれた様で、凄く感動と興奮されてましたよww」

とヨーコさん。


あと、2人には一昨日治療した女性が子供を連れて仕事を探し回って途方に暮れていたので、その女性の知り合いの子連れのも一緒に雇う事にした事を伝えた。


「棟梁へメモを残したので、優先順位上げて、仕上げてくれていると思うから、下手すると、明後日には『ガハハ!』とか笑いながら、完成してるかもしれないw」

と海渡が笑いながら言うと、


「うん、あの棟梁なら、ありそうですねw」

と2人とも笑っていた。



海渡が心配しながら待っていると、午前11時45分を過ぎた頃、店員の1人が件の女性とその知人らを連れて、やって来た。


「遅くなり申し訳ございません。」

と女性らが頭を下げる。


「いえいえ、色々準備があったでしょうから、そこは大丈夫ですよ。

あらためて、私はカイト。こちらは冒険者のパートナーでフェリンシア。

こちらが、当方の『さえじま商会』のNo.2のヨーコさん、こちらが、ここテリラス支店の店長のドッチさんです。

そしてここが、話をしていた従業員宿舎です。1階はこの食堂とキッチン、向うに風呂がありまして、上が従業員用の部屋になります。

この建物の横の空間に新しく託児ルーム付きの親子向け宿舎を持って来ますので、それまでは申し訳無いですが、ここの空いた部屋をそれぞれ使って頂く感じになります。

あと、その向こう側に、温泉がありますから、是非後で入って下さい。きっと驚きますよ?」

と説明した。


「あのぉ、温泉って何でしょうか?」

と聞かれたので、いつもの様に説明した。


風呂付きってだけでも珍しいというか、ほぼあり得ないのに、温泉付きでしかも効能を聞いて、かなりテンションが上がってらっしゃる4名。


「あ、すみません、私ったら、嬉しさのあまり、名前を言っておりませんでした。私はテスラ、そして娘のキャスです。

こちらが、お話ししていた、同じ境遇の知人で、ローラ、そして娘さんのクララ。

こちらが、キスカ、そして息子さんのクレイドと娘さんのキッカ。

こちらが、アルルメーダ、息子さんのアルティです。」


「「「宜しくお願い致します。」」」

と3人の女性が頭を下げる。


子供達は抱っこされていたり、お母さんの足にしがみ付き、後ろから顔を出している。可愛いwww(あまり俺と背格好変わらないんだけどねwww)

3人の女性を見ると、みんな若い20代だったが、少し窶れていて、生活の苦労が伺えた。

しかし、全員、優しそうに見えて悪い人では無さそうである。

子供は3歳~5歳くらいだな。


「では、全員採用という事で、これから宜しくお願い致しますね。まずは、こちらのヨーコさんから、給料面や労働条件、その他の質問事項等をお互いに擦り合わせして貰って、そちらに問題無ければ、契約と言う事で宜しいでしょうか?

そのあとは、ここで昼食を食べて貰って、温泉にでも入ってリフレッシュして貰う感じで。

もし、みなさんの中で調理スキルとかお持ちでしたら、お知らせください。無くてもこの後、私が講習を開けば、すぐに調理スキル取れますので、ご安心を。」

とヨーコさんに丸投げ。



「どうしようか、2時ぐらいに出発を延期して、調理スキルを希望者に生やしてから行くかな。」

とフェリンシアに相談していると、店員達が、昼飯に合流してきた。


「お疲れ様ー。あとで、新しく雇った人達と一緒に食べよ。もうちょっと待ってね。」

とお願いする。


15分ぐらいでヨーコさんの説明が終わり、OKサインを送って来たので、食事を時空共有倉庫から出して貰って、新規の親子の為にハチミツ水を配り、いただきます! と食事開始。

あまり食べて無かったのか、涙を流しながら食べるお母さん達の姿に、胸が痛かった。

まだ食べられそうだったので、希望者にはお好み焼きとか出して、配った。



食後希望者を募ると、女性陣全員と男性数名が

「調理スキル欲しいです!!」

となり、1時間弱調理スキル講習を行い、参加者全員にスキルを生やしたおいた。


今回の女性陣には、調理スタッフをやって貰う予定にして、子供は順番に彼女らの1人がローテーションで当面面倒を見る事にした。


子供用の文字カードや計算の教科書、魔法の手引書を全員に配布し、トランプやリバーシを娯楽用に置いて、

「じゃあ、ソロソロ遅くなったけど、出発するよ。次は近々に託児所の建物を持って来るからね! では皆さん、店の方、宜しくお願いします。」

と頭を下げ、フェリンシアとヨーコさんの3人で、テリラス領を後にした。

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