第181話


暫くすると、治療を終えたフェリンシアも戻ってきて、北門の山積みになった岩塩の袋の前で、合流した。


「これで、領都の全員の治療が終わりました。もう大丈夫ですよ。」

と報告すると、


「ああ、本当にありがとう。何とお礼を言えば良いか・・・。

あと非常に言いにくいのだが、うちの家内と息子、娘が調子を崩していてな・・・屋敷の家臣達もなのだが、診ては貰えぬだろうか?」

とジャックさん。


「あ、すみません、本当に1,2を争う程に重篤だったので、勝手に領主館に入り、勝手に治療してしまいました。

本当にギリギリの状態だったので、ご報告出来ず申し訳ないです。

現在、意識も取り戻され、領主館の皆様も全員回復しております。

最後が領主様の治療でした。」

と頭を下げる。


すると、ジャックさん、男泣き・・・

「そうか、回復したのか!! 本当にありがとう!」

と両手を固く握り、顔をクシャクシャにして、お礼を言って来た。



「是非領主館に戻られて、確認してください。

ご家族とお話ししてください。

お嬢様が一番危なかったですが、既に会話出来ますので。

あ、あと砂糖は足りてますか? 不足しているなら持って来ていますが。」

と言うと、


「うむ・・・実は枯渇しているが、今は砂糖より、塩の優先順位が高いので・・・。

すまぬが、それ程資金に余裕が無いのだよ。」

とジャックさん。


ヨーコさんを見つけ、

「塩の料金とかどうなった?」と聞くと

「当店の通常通りで購入して頂けると聞いてますが、状況的に厳しそうだったので、更に安くしております。

ただ、欲しいが砂糖までは手が回らないとの事でした。」


「じゃあ、この塩と同じだけ、支援物資で出しちゃって良いかな?」

と聞くと、


「ええ、勿論構わないですよw

カイト様がオーナーなんですからww

それに他でも十分に儲けが出てますからw」

との事だったので、


ジャックさんの所に戻り、

「えっと、砂糖なんですが、当商会からの救援物資と言う事で、今回は無料で提供させてください。」

と、7トン塩の横に出した。


「こんなに良いのか?」

とジャックさん。


「ええ、十分に他でも利益が出てますし、状況が状況ですから、お気になさらず。近々に店舗の方も開店させますので。

あ!そうだ!!空港の件、建設しちゃって大丈夫でしょうか?

あと、旧アレスター商会の店舗や屋敷や敷地があれば、早々に準備したいので、ご案内頂けると、助かるのですが・・・」

と聞いてみると、


「ああ、空港の件は、勿論城壁の外に好きに作ってくれて構わない。

あ、街道を塞がないようにはしてくれよ? あと、家臣に、これからアレスター商会の跡地を案内させるよ。」

とジャックさん。


「あ、あともう1点。えっと、これをご存知でしょうか?」

と通信機を出し、内容と使い方を説明をする。


「で、これがあると、連絡が取りやすいし、情報交換もしやすいので、こちらを上納させて頂きますから、お使いいただけますか?」

と1台差し出し、


「何かあった際は、私の番号やヨーコの番号をお知らせしておきますので、双方でやり取り出来ますし、こちらも助かりますので。」

と追加説明。


「ほう!こんな物が出来たのか! 凄いな!

これまでは、早馬や伝書バトぐらいしか、通信手段がなかったのだが、これがあれば、瞬時に連絡が取れるな!」

とジャックさん。


試しに海渡が、ジャックさんにかけてみると、呼び出し音がなり、ジャックさんが電話に出る。


「もしもし、聞こえますか?」


「おお、聞こえるなwww これは凄いな!」

と大はしゃぎのジャックさん。


ついでに、せっかくご家族が回復したので・・・と、トランプと、冊子を1つプレゼントした。


「ほう! こんな娯楽品もあるのか! 凄いな君の商会は!」

と褒めるジャックさん。


「まあ、他にもリバーシと言う2名でやるボードゲームもありますが・・・」

それを聞き、更に興奮気味に褒めるジャックさん。



一しきり褒められ、むず痒くなったので、フェリンシアとヨーコさんとを従え、案内の衛兵にお願いして、その場を後にしたのだった。



既に午後3時40分。

「2人ともお疲れ様。そう言えば、バタバタしちゃって、昼飯食いそびれてしまったね?」

と後ろを振り返ると、

フェリンシアもヨーコさんも肉串(フェリンシアの常備品)を食べてましたwww



思わず苦笑いの海渡も、肉串を出して食べつつ、衛兵のお兄さんにも1本渡した。

衛兵のお兄さんも、苦笑いしつつ、

「まあ今日は見られても、怒られないでしょうw」

と食べていたのだった。

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