第180話


どうやら、聖Lv3になった事で、範囲も威力もかなり上がったらしい。


先ほどは半径10mが精いっぱいだったのだが、現在は半径30mを治療しつつ、移動している。


こうして、5か所程の重篤患者の集まる拠点と、動けない患者の居る家50件を廻り、今度は比較的にまだ動ける軽微な患者の所へ向かう。


20か所ある軽微な患者の集合場所で、サクサク治療し、全員に樽に入れて置いてある、岩塩入りハチミツ氏を飲ませ、家族や近所に配る様に伝える。


飲み終わった患者は、それまでが嘘の様に俊敏に動き、各地へと、水筒や小さい樽に入れて廻る。


増える協力者のお陰で、都市テリラスから、重篤患者も軽微な不調者も消えていった。

この領地は、領主様の影響か、領民の団結と言うか、助け合う気持ちが伝わって来る。


フェリンシアも海渡と反対側で同じ様にしているらしく、フェリンシア側もドンドン▲マークが消えて正常に戻っていっている様子。



今の所、取り残しはなさそうなのだが、問題は、都市テリラスの中心である領主館にかなり危険なマークが出ている事。


衛兵を呼び止め、

「何故一番重篤患者が居る、領主館に行かないのですか?」

と聞くと、


衛兵は驚き、そして悲しい顔をして、

「領主様から、まずは領民が先だと、命じられておりまして。」

と切なさそうに答えた。


「もう、こちら半分は廻ってしまい、後はフェリンシアが担当した側も90%完了してますね。

彼方側に残ってる重篤患者は居ません。

それよりも、領主館に居る重篤患者が、今までの中で、1,2を争う程、危険な状態ですよ? さあ、今度は領主館の方を見る番です。

1秒でも早く、全速力で走って下さい! 時間がありません。」

と急かした。


マーク表示だと、さっきのガン患者より、更に危険な表示になっている。


幸い、今いる場所は、かなり領主館の正門に近い。

衛兵は全速力で走り、海渡はその後を、軽いジョギングの雰囲気で付いて行く。


領主館の門番も中のスタッフも、先ほどの軽微な住民よりも、重い状態であった。


門番にヒールと岩塩入りハチミツ水を飲ませ、復活させて、スタッフに協力させて、全員に岩塩入りハチミツ水を配らせる。


そして、最大の重篤患者は、何とジャックさんの娘さん、4歳でした。


傍に付いている、お母さんも倒れ込んでもおかしくない程の状態。

お母さんの方も、既に意識レベルが落ちている様子で、こちらに反応を示さない。


『智恵子さん、この子とお母さんの状態は?』


『子供は、塩分不足による意識障害と、脳細胞にも少し障害が出てるみたいです。脱水症状と脳からの伝達が上手く行ってないので、内臓の彼方此方が障害を起こしてます。本当に何時心臓が止まっても、おかしくない状態です。

お母さんの方は、同じく塩分不足と、脱水症状、呼吸器系の障害が出ている様です。熱も高いです。ギリギリで意識を保っている状態ですね。』


そうか、じゃあまずは女の子だな。


脳の傷んだ細胞を回復させ、更に意識障害を取り除き、内臓各所の症状も障害も取り除き、損傷や炎症個所を回復させ、不要な細菌やウィルスを取り除くイメージで・・・『ヒール』!


女の子の体が激しく光り、3秒ぐらいで、収束していく。


更にお母さんの方も、同じ様に・・・

脳の傷んだ細胞を回復させ、更に意識障害を取り除き、内臓各所の症状も障害も取り除き、損傷や炎症個所を回復させ、不要な細菌やウィルスを取り除くイメージで・・・『ヒール』!


お母さんの方も体が激しく光り、3秒ぐらいで、収束していく。


メイドにコップを渡し、お母さんに直ぐに飲ませるように指示し、海渡は女の子の体を起こし、スプーンで掬った岩塩入りハチミツ水を少し口に含ませる。


先ほどと違い、女の子の顔色も呼吸も落ち着いていて、少しずつ少しずつ、岩塩入りハチミツ水を口に含ませる。


少しずつ浸透していくのか、飲み込む力が戻ってきて、ゴクリと喉が鳴った。

スプーンからちゃんと飲みだす。


何回か繰り返すと、目をゆっくり開けて、

「あ、あなたは?」

と声を発した。


「はぁ~・・・危機を脱したか。

初めまして。私はカイトです。

今あなたの治療をし、栄養のあるこの岩塩入りハチミツ水を飲ませました。

ユックリで良いので、これを飲んで頂けますか?」

と言うと、


「はい」

と呟き、コップから少しずつ、飲み始める。


お母さんの方も、回復し始め、覚醒しだした様だ。


『智恵子さん、この2人はもう大丈夫かな?』

と聞くと、


『はい、完全に回復しました。

あとは、適量な岩塩入りハチミツ水を取れば大丈夫でしょう。』

との事だった。


「時間掛けても良いから、あと1杯ぐらい、これを飲んでね? もう体は回復してるからね。じゃあ、次に行きます!」

と次に重篤な患者の元へと向かう。


もう1人は、先ほどのお母さん程ではないが、それなりにマズイ状況。


部屋に入ると、12歳ぐらいの男の子が、ベッドに寝ていた。


『智恵子さん、この子の症状は?』


『塩分不足と、脱水症状、免疫力の低下でウィルスに感染している様です。』

さっきと同じで大丈夫そうだな。


細胞を回復させ、内臓各所の症状も障害も取り除き、損傷や炎症個所を回復させ、不要な細菌やウィルスを取り除くイメージで・・・『ヒール』!


少年の体も3秒程激しく光り、収束していく。


岩塩入りハチミツ水をコップに入れ、メイドに渡して、少しずつ飲ませる。


顔色も戻り、意識も戻る。


『この子は大丈夫そう?』


『はい、回復OKです』


『了解!』


あとは、割と軽微だな、ここから行けるかな?

残った領主館の▲マークをロックして、『ヒール』!


≪ピロリン♪ スキル:3DロックオンLv2を取得しました。≫

≪ピロリン♪ 魔法:聖Lv4を取得しました。≫


領主館の人に、全員必ず、岩塩入りハチミツ水を飲む様に伝え、全員治療した領主館を後にする。


フェリンシア側に出て、まだ残ってる軽微な不調者をサクサクロックして、ヒールを掛けていく。


街の人を集め、岩塩入りハチミツ水の樽を出し、飲んでない人にはみんなで手分けして飲ませる様に指示を出す。



結果、残るは領主様と、北門の衛兵のみとなった。

急いで、北門の方へ向かい、遠方からロックして、ヒールを掛ける。


衛兵とジャックさんに、岩塩入りハチミツ水の樽を出し、飲んでない人に飲ませる様に伝える。

勿論、ジャックさん本人にも。


≪ピロリン♪ 新しい称号:テリラスの救世主 を取得しました。≫


これで、海渡とフェリンシアのヒール無双は終了。

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