第162話


そして、孤児院の方へ向かい、園長のナスターシャやセーラさんとご挨拶。


「どうも、ご無沙汰しております。 皆さん、御変わりありませんか?」

と聞くと、


「ええ、お陰様でみんな元気に過ごしております。何かカイトさんの方は随分お忙しいみたいですね。」

とナスターシャさん。


「はい、お陰様で、昨日は王都支店がオープンし、今日はやっとカフェの方もオープン出来まして、スタッフが一番大変なのですがね。何とか人材も増やせそうなので、ちょっとホッとしてます。」


「そうですか、それは良かったですね。」

とナスターシャさん。


「あ、今後、孤児院の子達がこちらを出て行く際、働き口が見つからないようでしたら、是非お知らせくださいね! こちらもドンドン新しい都市とかに支店出さなきゃいけないので、万年人員不足なんですよ。」

とお願いする。


「まぁ、それは子供達には嬉しいニュースですね。みんな、12,3歳が近づくにつれて、悲壮な顔になって行くので、希望の光があると、違いますからね。本当に全員宜しいのでしょうか?」

と甘えて良いのかを聞くナスターシャさん。


「ええ、是非に!! あ、それと話は変わりますが、今日は子供達にお土産を持ってきました。みんなに逢えますかね?」

と聞くと、


「勿論、どうぞ逢ってやってください。」

とナスターシャさんに連れられて、子供達(と言っても大半は海渡より年上なのだが・・・)の所へと向かう。


比較的広い部屋で、10歳ぐらいの子が、何人かづつのグループに文字なんかを教えている所だった。


おお!何と都合の良い事だww


「こんにちは。今日は新しく作った物をお土産に持ってきました。」

と文字カードを20箱だした。

B級メモ帳は人数分、リバーシは20セット。


何々?と子供らが目をキラキラさせながら、やって来る。


文字カードを1箱開けて、床の上に出し、絵を見せる。


「これは何の絵かな?」

と聞くと、


みんなが「「「「りんご」」」」と答える。


「そう、りんごですね、じゃあこのカードを裏返すと・・・この文字が りんご となります。 じゃあ、これは何の絵かな?」


「「「「パン!」」」」


「そう、パンですね。 で、これを裏返すと・・・これが ぱん と言う字になります。」

と教材の使い方を説明。


「文字は1つで1つの音になっているから、2文字の言葉は 2つの文字が書かれています。絵をみながら、文字を覚えれば、簡単に覚える事が出来る・・・と言う勉強用の道具ですね。

文字をある程度覚えたら、今度は絵ではなく、文字を上にしておいて、友達同士で、問題を出し合って、誰が一番早く文字を見つけるか? を競って遊んだりもできます。」

と言うと、みんな大喜び。


「あと、こちらは、ボードゲームのリバーシと言う遊び道具ですね。これも頭を使います。1対1で対戦して遊ぶ物です。・・・」

と簡単にルールや遊び方を説明する。


「わぁ・・・これは面白そうだな!」

とこれも子供らの食いつきが良い。


「最後のこれは、メモ帳と言う物で、紙でできた物です。覚えて置きたい事や、やらなきゃいけない事なんかを紙に書いて持ち歩いたりします。人数分あるので1人1冊で使って下さい。」

と説明。


みんな真っ白な紙で、罫線まで引いてある綺麗なメモ帳に大喜び。


園長には、何かに使えるだろうと、上白紙の束を5束出して渡した。


真っ白な紙にナスターシャさんもセーラさんもビックリしていた。


「あと、園長さんにもお話ししたけど、大きくなって、仕事を探す際、良ければうちの商会に来て下さい。是非一緒に働きましょう。お待ちしてますね!」

と言うと、本当にみんな大喜び。

特に10歳以上の子は嬉し気に涙を流していた。


「うちの商会は今、王国全土に向けて支店を増やさないといけなくて、人材が足りてません。

やりたいお店や新しい分野を開拓してますが、どれも人材不足で進みが遅れてます。

もし、別の仕事を目指すならそれはしょうがないですが、そうでなければ、是非うちに来て下さいね。文字を読み書き出来て、計算も出来る君らは優秀な原石なんですから。」

と付け加えた。


そして、子供らを別れ、ナスターシャさん達に食料等を渡し、最後に白金貨1枚を寄付して教会を後にした。



最後に、アレスター商会跡地へ行き、見えない店内から、完全に土台と建物を切り離した。外に出てサクッと収納した。余り誰も注目してなかったので、多分目立ってないと思う・・・。


そして、土魔法でいつもの様に土台ガチガチに固め、規定の位置に柱の穴を開け、サクッと銭湯を設置する。土台と建物を完全に密着させた。


地下に浴室から地下へ降りられる場所の地下へ向け、穴をあけて階段を作る。


鏡面仕上げにはせず、濡れても滑らない様に、わざとステップの表面をザラザラにして固める。


穴をドンドンと掘って行き、4m地下に巨大な洞穴のホールを作成する。幾つか柱も作り、完璧な強度を出した。


洞穴の壁はわざと、岩の削り出し風にして、魔道具の間接照明を埋めて行く。

岩で出来た大き目の浴槽を作り、壁には、お湯の出る蛇口を設置する。


床面は階段のステップと同じ滑り防止の表面加工した物で、排水溝には浄化の魔道具(排水浄化機)を付け地中深くへと返すようにした。


空気清浄機を取り付け、大人数がいても二酸化炭素過多による窒息が無いようにする。


これと同じ物を女湯の方にも作り、浴室周りは終了。


ロッカー用のロック魔道具(マジックロッカー)設置済みだし、あとはラピスの温泉を出して貰う事で、この銭湯は使える様になる。


ラピスの温泉は1階の湯船2つ、地下の湯船2つの合計4つを均等に満たさないといけないので、湯溜まりを作ってある。


さてっと、ラピスを呼び出してお願いしよう。


「ラピス!」


「来てやったわよ!!」

とラピス登場。


「ラピス、こんなのを作ってみたんだ。ラピスの温泉を期待してw」

と湯船とかを見せた。


更に、

「見て見て! こんな感じの洞窟風呂も作ったんだよ? どう、雰囲気あるでしょ?」

と地下にも連れて行った。


「と言う事で、ラピス様、温泉宜しくお願いします!温度は一応43℃でお願いします。」

と湯溜まりの部分をジャジャーンと手を広げ示す。


「ふむ、洞窟風呂、面白いわね!43℃で良いのね? あれだけの湯船4つだと、結構吐出量が要るわね・・・ヨイショっと。」

と言うと、ラピスの泉ホットバージョンが湧いた。


と言うより、吹いた!! 


「おお!勢いあるねwww じゃあ、ちょっと、上を加工してっと・・・」

と土魔法で固めたドーム型の傘をつけて、飛び散らないようにした。湯溜まりは、アッと言う間に満杯。


溢れる前に4つの湯船に向けてドンドン流れる。


「おお!!良い感じだ!!」


「ねえ、ラピス! この排水だけど、浄化して地中に戻してるんだけど、溢れないかな?」

と聞くと。


「しょうがないわね、そっちも面倒見るわよ。」

と男女4か所の排水溝から浄化した水を排水溝から吸収する(何処に吸収したのかは不明)様にしてくれた。


「おお!これで完璧だね!! ありがとう!ラピス!! 流石だね。 お礼にハチミツだけじゃなくて、たまにはホットケーキとか食べない? メイプルシロップ掛けると美味しいよ?」

と言うと、


「え?何?ホットケーキって? メイプルシロップ??」

と興味深々。


浴室から出て、事務所スペースに移り、テーブルの上にホットケーキを出して、メイプルシロップをかけてやると、


「わぁーー!これ良い匂い!!!」

とホットケーキに飛び込んだww


自分の体より巨大なホットケーキをバクバクと恍惚な表情で食べる食べるww

10分で完食っすよ。


フェリンシアの食欲も大概だが、ラピスは、自分の体のサイズの10倍以上を完食。


いやぁ~流石にスケールが違うねw


「満足したわ。このメイプルシロップも美味しいわよねw また食べに来るわ!」と帰って行った。


その後、まだ夕方前だけど、フェリンシアと一番風呂を堪能して帰りには、店の外に、

『ラピスの湯 回復効果、美肌効果』とカイト印を付けた看板を設置し、

戸締りをして屋敷へと戻ったのだった。

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