第152話
開口一番、
「久々に顔を見たなw」
とアルマーさんから笑われた。
「いや、本当にマジで忙し過ぎて・・・ もっと自由に優雅に楽しむ予定が・・・」
と苦笑いする海渡。
まあでも忙しいが、色々楽しくもある。
「で、王都支店はどうなんだ?」
との聞かれたので、オスカーさんと決めた日程通り、明後日オープンする事を報告した。
すると、
「おお! じゃあまた式典とかやるの?」
と行く気満々で聞かれたのだが、
「いや、流石に王都だと場所も無いし、今回はそのままオープンとなります。」
と答えた。ちょっと残念そうだったw
なのでお土産代わりに、アルマーさんにもカツサンドを1箱上げると、大いに喜んでくれた。
料理スタッフだが、アルマーさんが2名見つけてくれたらしい。
人柄もアルマーさんのお墨付きとの事なので、明日店舗の方に来て貰えるように、お願いしておいた。
これで、王都支店はほぼ問題無し!・・・だよね?
バタバタで、忘れていたが、陛下より頂いたアレスター商会(デニッチ)の王都の屋敷が店舗の近くにあるので、そこの活用方法を考えないといけない。
話によると、かなり広いらしいので、活用し甲斐がありそうだ。
ついでに、アルマーさんに、今回のスラムで知り合った子供らを雇い入れた事を話し、王都とトリスターのスラムについてを聞いてみた。
すると、まあ予想通りではあるが、孤児達に対する世間の目は冷たく、就職口が少ない事が原因で、運良く孤児院に入れた子供でも、最終的にスラムへと流れる子が
多いらしい。
あとは、シングルマザーで子供を抱えて育てられなくなった母親が、捨てるケースもあるとか。
何か悲しいね・・・。
またスラムに流れる大人の多くは、元々犯罪者か、怪我をして冒険者が出来なくなった元冒険者も多いらしい。
一度、悪事に手を染め、安易にお金を入手出来てしまうと、後は歯止めが利かなくなり、もうダメらしい・・・。だよなぁ・・・。
大人は最終的に自己責任が原則だが、子供は何とかしたいな。
シングルマザーでも、ちゃんと働ける環境さえ整えば、捨て子は減るし、スラムの子供も減るのか。ふむ・・・となると、やっぱり託児所か。
「王都とトリスターに、託児所と子供が暮らせ、お手伝い程度で働ける場所を作ろうかなぁ・・・」
と呟く海渡。
ついでに、預かっている子供に文字や計算を教えれば、底上げにもなるだろうし。
今のペースで利益が出続ければ、1日に白金貨1~2枚ぐらいを目途に地域に還元しても、全然問題はないだろう。
託児所は赤字部門になるだろうけど、一つぐらい、赤字上等の部門あっても良いんじゃないかな? と海渡は思う。
まあ、そこら辺はヨーコさんにでも相談してみよう。
まずはアレスター商会(デニッチ)の屋敷と敷地の確認をしてからだな。
などと、頭の中で思案していると、アルマーさんが、
「それはそうと、そろそろ、こっちも片付いたので、明日ぐらいにはトリスターへ戻りたいのだが、そちらの都合はどうだ?」
と聞いてきた。
「ええ、今の所、問題無いので、明日お送りしますよ。」
と答えた。
「じゃあ、明日の朝に出発と言う感じでお願いしたい。」
と言う事で、明日の午後にまたトリスターへと戻る事になりました。
少しは、マッタリしたかったんだけどなぁ・・・。
明日はトリスター往復、明後日は店舗のオープンと忙しくなるから、先にアレスター商会(デニッチ)の屋敷の確認と、女神様への挨拶をしておかないとだな。
と言う事で、気忙しくアルマー別邸を出て、アレスター商会(デニッチ)の屋敷へとやってきました。
して、その屋敷は・・・と言うと
「よくぞ、これだけの土地をこの王都の一等商業地近辺で持てたなぁ・・・」
と思わず呟いてしまう程の広さだった。
なんの事はなく、店舗の裏側ですよ、裏側!!
しかも敷地が滅茶滅茶広い!
住所的には別ブロック扱いらしいのだが、横幅120m×奥行70mかな。
屋敷も無駄に豪勢だった。
『海渡さん、この屋敷に面白い部屋を発見しました。』
と智恵子さん。
『お!なになに?』
『隠し部屋と金庫です。どうやら、家宅捜索では発見されなかったらしいですね。』
『ほう、場所に案内して!!』
と言う事で屋敷を探検してます。
屋敷の外観は凄いけれど、中は既に荒らされていて、調度類等は全て取り除かれ、残骸とかが散乱している状態でした。
で、問題の部屋は、どうやらデニッチの寝室だった部屋の様で、壊れた無駄にデカイベッドフレームの残骸が落ちてました。
この部屋には暖炉があるのですが、なんと、この暖炉の横のレンガを一つ押すと、暖炉が回転し、隠し部屋へと入れるらしい。
なんかイン〇ィー・ジョーンズの映画のワンシーンであったなぁ、こんな仕掛けw
思えば、あの映画の影響で、イン〇ィーの様に冒険したくて、考古学に進んだのだが、本当に冒険らしい冒険って、あの最古の古墳ダンジョン以外は、地味だったなww
小学校の頃、映画を見た後に、鞭を使わなきゃ!と思って、皮のベルトを繋いで、ビシッっとやったら、怪我しちゃってなw ああ、これはダメだと気付いて、剣道を!と思ったら、普通の道場じゃなくて、色々大変だったけど、結局全部が役立ってるなぁ。
と心の中で回想シーンを思い出して、クスクス笑う海渡であった。
隠し部屋の中には据え付けの金庫、書類棚と机が置いてあって、机の上には、書類と手持ちの小さい金庫が置いてありました。
金庫は魔法で扉を壊して、開けてみると、宝石や魔石、大量の金貨や白金貨や、なんと黒金貨までありました。
まあ、くれた屋敷にあったんだから、所有権は『俺』で良いだろうと、全部頂きました。
驚いた事に、アイテムボックスに収納して枚数を確認すると、
黒金貨・・・21枚
白金貨・・・727枚
金貨・・・・7021枚
も、ありましたwwwww
まあ、これを有効に活用させて貰う事にしよう。
屋敷から出て、従業員宿舎の裏に接する塀を取り壊し、店舗側と屋敷をそのまま行き来出来るようにしたのだった。
店舗に居たヨーコさんを塀のあった場所まで連れて来ると、
「え??? ここと店舗って引っ付いていたんですか! 住所も違ったから接していないと勘違いしてました。」
と驚いていた。
うん、そうだよね。知ってたら最初に教えてくれるもんねw
俺も、マップで確認してなかったら判らなっかったよw
更に、屋敷の隠し部屋の資金の話をすると、余りの金額に驚いてました。
そこで昨日考えた『シングルマザーとかが利用出来る託児所と、孤児らが住める部屋と大衆浴場のザックリとした計画』を話してみました。
「多分、赤字覚悟の部門にはなるが、収益を循環させる意味でもあるし、どうだろう?」
と意見を聞いてみた。
すると、
「現在、トリスター支店だけの収益ですが、税金、魔導士ギルトへの上納金、商業ギルドへの上納金を差し引いたとしても、大幅な黒字は確定です。
更に、今日から3年間売り上げが無かったとしても、余裕です。
なので、良いんじゃないでしょうか。付け加えると・・・まあ海渡様は全く計算されてないでしょうけど、今後発生するであろう、他の商会とか庶民からの妬みや何かも軽減出来る効果がありそうです。」
とヨーコさん。なるほど、そこ(他の商会とか庶民からの妬みや何か)までは全く考えてなかったな。
「そうか、それを聞いて安心したよ。どうせ、この隠し部屋にあったお金も、綺麗なお金じゃなくて、人の涙や生き血を吸ったお金だと思うんだ。
だから、生きたお金に換えて、還元したいと思ってるんだ。これからまた色々忙しくなると思うけど、宜しくお願いしますね。」
と頭を下げてお願いした。
じゃあ、この縁起のわるそうな屋敷は綺麗サッパリ取っちまいましょうかねw
と、土台からアイスカッターで切り離し、アイテムボックスの肥やしにしちゃいました。
一瞬で巨大な屋敷が消えたのを見て、ヨーコさんは爆笑してました。
あと、従業員宿舎で塞ぐ様な形になっているのを90°回転させて、門(店舗とカフェ)からの通路を確保しました。
従業員からは、急に建物の配置角度が変わった事で、驚かれたけど、逆に圧迫感が減った言ってくれました。
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